三人の方が不利かもと思いましたが、その分四人の方は落とされればポイントもその分取られるし、オペレーターの処理も大変らしいとか、色々考えた結果です。
異論反論は受け付けます。
そんなこんなで、2月1日になった。三雲隊のボーダーB級ランク戦開始。佐鳥と武富のランク戦の説明の間、綾辻、出水、国近の3人は観客席で座っていた。
「いやーいよいよだね。出水くん」
「そーだな。楽しみだわ」
「賢介くんの初陣だねー」
「そっすね。俺の初陣っす」
「「「何故いる」」」
隣にいる伊佐にツッコんだ。
「け、ケンくん!試合前だよ⁉︎準備しないと……!」
「迷子になっちゃった」
「出水くん、お願い」
「こっちだ。伊佐」
連れてってもらった。
*
吉里隊、間宮隊、玉狛第二の試合は、千佳と遊真の二人で勝ってしまった。修も伊佐も何もせずに終わった。
「勝ったよハルちゃん」
「ケンくん何もしてないじゃん」
いの一番に報告に行ったら、当然の切り返しが来た。
「まぁ、B級下位で伊佐の実力見せるのもアレだしな」
「そっか。賢介くんは一応実力隠してるもんねー」
「いや隠してないですけどね」
「この前、緑川蹴散らしてたしな」
「あれは緑川くんが悪いです」
「いや、そもそもケンくんが余計なこと話さなきゃ良かったんだよ」
「その話はもういいじゃん。それより、俺の初勝利を祝して食べ行こうよ」
「自分で言うのかそれ?」
「しかも何もしてないし」
「せめて次の諏訪隊と荒船隊を倒してからだね〜」
そんな話をしながら四人はランク戦会場から出た。
*
翌日。玉狛支部。
「しょくん!きのうは初しょうりおめでとう!わたくしもせんぱいとして鼻がたかいぞ!」
陽太郎が腕を組んで修達を前にして言った。小南がわしゃわしゃと遊真の頭を撫でる。
「あたしが鍛えてるんだから当然ね」
「ありがたきしあわせ」
「あんたたちが蹴散らした下位グループとは違って、水曜に戦うB級中位グループはそこそこまあまあよ。部隊ごとに戦術があってちゃんと戦いになってるわ」
「『そこそこまあまあ』……?」
「ふむ、じゃあ上位グループは?」
「上位グループはかなりまあまあ。どの隊にもA級レベルのエースがいるわ」
「……じゃあ、A級は?」
「A級は……全力でまあまあね」
「まあまあしかいないじゃん」
「強いって言うと負けた気がしちゃうんだよきっと」
「賢介?今から10本やらない?」
ギロリと睨まれたので、伊佐は全力で首を振った。すると、烏丸が真面目に言った。
「実際、B級中位は舐めてかかれる相手じゃないぞ。戦闘経験で言えば、当然千佳や修、賢介よりずっと上だ」
「おれたちが次に当たるすわ隊とあらふね隊ってどんな部隊なの?」
「諏訪隊は……」
「京介」
遊真の質問に答えようとした烏丸をレイジが止めた。
「なんでもかんでも教えるな。自分たちで調べさせろ」
「レイジさん……」
「作戦室に過去のランク戦のデータがある。宇佐美が来るまで見ておけ」
「「はい!」」
「了解」
「あんたたちじゃデータの見方わかんないだろうから、あたしが教えてあげるわ」
「いや、前に弄ったことあるんでいいです」
「賢介、やっぱりやりましょう」
「なんかその言い方卑猥ですね」
別の部屋に向かった修、遊真、千佳、伊佐、小南の背中を見ながら烏丸が言った。
「ちょっと厳しくないすか」
「自力で対策を練るのも訓練のうちだ。あいつらの戦いはもう始まってる」
*
数日後、B級ランク戦ラウンド2。またまた観客席に綾辻、出水、国近が集まった。
「いやーようやくだな」
「ね〜。勝てたら本当にご飯だね」
「う、うん……」
「どうしたの?綾辻ちゃん?」
「い、いや……その……あまり大きい声で言えないんですけど……」
綾辻は顔を赤くして俯きながら言った。
「………この試合に勝てたら、今度こそ処女あげることにしました」
「「「マジでッ⁉︎」」」
「馬鹿!声デカッ……!」
言いかけたところで声が三つあったことに気付いた。見れば、米屋も一緒にいた。さらに顔を赤くする綾辻。
「………いっそ殺して」
「そんなことすれば俺たちが伊佐に殺されるわ」
「だいじょーぶ!誰にも言わないから」
(信用できない……)
そんな事をやってるうちに、実況の武富の声が聞こえた。
『B級ランク戦新シーズン!2日目・夜の部がまもなく始まります!実況は本日もスケジュールがうまいこと空いた、わたくし武富桜子!解説席には先日の大規模侵攻で一級戦功をあげられた……東隊の東隊長と、草壁隊緑川くんにお越しいただいています!』
『どうぞよろしく』
『どもっす』
『今回の注目は何と言っても、前回完全試合で8点をあげた玉狛第二!注目度の高さからか会場にもちらほらと非番のA級の姿が見られます』
そう言う通り、出水綾辻国近米屋の所には、さらに黒江と古寺がやって来て、他の席には嵐山木虎時枝の姿が見えた。
『さて東さん、一試合で8点というのはあまりお目にかかれませんが』
『いやすごいですね。それだけ玉狛第二が新人離れしてるってことでしょう』
『遊真先輩は強いよ。あっという間にB級に上がってったし』
『緑川くんは玉狛の空閑隊員と個人で戦ったというウワサが……』
『うわ、その話ここでする?』
そう言いながらも緑川は特に隠す様子も気にした様子もなく言った。
『8-2で負けました!ボッコボコでした!でも今度また10本勝負する約束したから。次は勝つよ!』
『伊佐選手とも試合をしたそうですが……?』
『………あの試合は思い出したくない』
一転して暗い表情で緑川は言った。
『……あの、観客席の皆さん。忠告しときます。賢介先輩は怒らせないようにしてください。トラウマ刻まれますから』
『………………』
お通夜みたいな雰囲気に会場が呑まれる中、武富がなんとか取り繕った。
『さ、さて!玉狛第二の今日の相手は、接近戦の諏訪隊に長距離戦の荒船隊。戦法が明確な部隊です!』
『順位が低い玉狛第二はステージ選択権があるので、まずは地形で有利を取りたいところですね』
東が解説をすると、ステージが選ばれた。
『玉狛第二が選んだステージは、「市街地C」!坂道と高低差のある住宅地ですね!』
『………⁉︎』
『しかしこれは、狙撃手有利なステージに見えますが?』
『狙撃手有利……ですね。狙撃手が高い位置を取るとかなり有利です。逆に下からは建物が邪魔で身を隠しながら相手を狙うのが難しい。射程がなければなおさらです』
「ところがどっこい。下からだろうが狙えそうなキチガイがいるんだな、玉狛には」
「……それ誰のことですか?」
米屋の呟きに、黒江が反応した。
「見てりゃ分かるよ。緑川がトラウマ刻まれるほどの射撃の名手がいるんだよ」
「…………」
武富がさらに解説を進めた。
『玉狛にも強力な狙撃手がいます。高台を取れればあるいは……という作戦でしょうか?』
『うーん、どうだろう……狙撃手の熟練度が違いますから。普通にやれば分は悪いと思いますね』
『と、なると狙撃手のいない諏訪隊は……』
『いやー超きついでしょ。上取られたら動けないよ。今頃諏訪さん切れてるだろーなー』
『さぁ、まもなく転送開始です!』
B級ランク戦が始まった。