チビちゃんと行く灰と幻想のグリムガル   作:amaあま雨音

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ベットしているのは命なんだ

 オルタナの北西約4キロ。歩いて1時間と少々の所にダムローと言う街がある。

 

 いや、かつて街だった場所と言う方がより正確だろうか。

 

 市街を余すことなく囲い込んでいたであろう防壁は8割方崩れている。中の建物も崩壊率はおおよそ半分を超えているだろうか。

 瓦礫だらけで、あちこちに雑草が生い茂り、朽ちかけた剣だの槍だのがあちこちに突き刺さっているのと同じように骸骨なんかもゴロゴロ転がっているから恐ろしい。

 

 今でこそ、そうではあるがダムローも昔はアラバキア王国第二の都市だったらしい。

 

 だが、それから王国に起こる不幸や反乱なんかは正直、あんまりハルヒロ達には関係ないので詳細を省いていきなり核心を突くと、今現在のダムローはゴブリンの根城になっており、その中でも旧市街と呼ばれるダムローの南東部はこのとおり整備されることもなく荒れ果てている。と言う事である。

 そうかといって、ダムロー旧市街にゴブリンがいない訳じゃない。というかいる。

 

 むしろゴブリンがいないとしてこんな場所には来ない。

 

 ハルヒロは2階部分が半壊して、殆ど吹き曝しになってしまっている廃屋に目をつけると足の入りと抜き、バルバラ先生の体重移動を参考にして、早く短く丁寧に、音1つ立てないで廃屋の階段までの移動を成功させ、2階に頭が出ない程度の場所まで登ってから、一息つく。

 

 今回の足運びは中々うまかった。

 

 ハルヒロはそう思う反面、まだまだバルバラ先生には程遠いと思い知らされる。

 地面の材質に伴い、入りや抜きの角度についても微妙に変化させて見たのだが、まだ何か足りていないようだ。

 まあ、次は重心の位置についても試してみるか。

 

 ハルヒロは内省もそこそこにしばらくの間、無秩序に響く4つの足音に耳を澄ませる。

 ゴブリンの大体の位置を音で感じ取りながら、そろそろ奴らの死角に入っただろうと言う所で階段から頭1つ程突き出して目でもゴブリンの位置を確認する。

 

 するとゴブリン4匹がもう少しもしないうちにこの廃屋の目の前を通りかかろうと言う所だった。

 

 ハルヒロは最高のロケーションに思わず舌なめずりしたくなったがどうにか我慢して、通りを隔てて斜向かいの方にある塀で息を潜めているカエデに打ち合わせ通り挟み撃ちでいく事を、あらかじめ取り決めていたハンドサインで示す。

 カエデからの了解が返ってきた事を確認して、ハルヒロはカエデに向かって突入のタイミングを指折りで伝える。

 

 3……、2……、1……行け!

 

 カエデが飛び出すのを見届けないうちにハルヒロも廃屋から身を躍らす。

 浮遊感で落ち着かない内臓を腹筋で締め上げながら、突然のカエデの出現に一瞬硬直する4匹のゴブリンの中から、目当ての弩持ちのゴブリンの位置を確認し、裏から心臓を狙うか、首を飛ばすかで一瞬思案するが、今の弩ゴブリンの態勢なら首の方が取りやすそうだと結論付ける。

 ハルヒロは落下の衝撃を体全体でいなし、弩ゴブリンに音もなく近づき、後頭部にほど近いうなじあたりの首の骨の間を狙ってナイフを通す。

 

 こう言う時、焦ったり、無理に断ち切ろうと刃の速度を上げると十中八九失敗する。

 だから、本当にこんなゆっくりで大丈夫なのだろうか? と思う位の速度で丁寧に骨の間をなぞるようにして開いてやる。

 

 そうすると、ほら。綺麗に真っ二つだ。

 

 糸が切れたように崩れ落ちる弩ゴブリンに気付き、異常を察知してこちらにボブゴブリンが振り返るが、動揺がまだ残っているのか脇が甘い。

 ハルヒロはボブゴブリンの左腕を掴み、上体を崩させ、そのまま鋭く一歩踏み込みながら左脇から心臓を狙って力強く一突き。

 ナイフをねじりながら抜き去るとボブゴブリンは口から血を吐いて倒れた。

 

 瞬き程の間に弩ゴブリンとボブゴブリンが倒れてしまった事により動揺したのか、決定的な隙が出来た槍ゴブリンはカエデのショートスタッフの一撃に見事に顎を砕かれて、そのまま失神してしまった。

 

 最後の剣ゴブリンは、あられもない程に動揺して剣を無茶苦茶に振り回したが、息継ぎにできる一瞬の間を縫って剣の持ち手に手打(スラップ)を決め、ゴブリンが剣を取り落としたところでカエデがハルヒロの手打(スラップ)にかぶせて放っていた強打(スマッシュ)が綺麗な弧を描くようにして後頭部に炸裂し、その一撃で被っていた兜ごと頭がひしゃげてしまった剣ゴブリンはさっきまでの暴れぶりが嘘みたいに一瞬で息を引き取った。

 

「このやり方だとゴブリン4匹くらいなら危なげなく倒せるね」

 

 正直予想以上の結果だ。カエデとハルヒロの相性がいいのか、それともカエデがハルヒロにあわせてくれているのかは不明だが異常に息が合う。

 今日初めて一緒に肩を並べて戦っているという事を忘れてしまいそうになるほど綺麗な連携が飛び出るときもあった。

 2人パーティだからそもそも連携も取りやすいと言うのもあるだろうがこれはきっと凄い事だろう。

 

 ハルヒロは実際に戦ってみるまで安全に行くなら奇襲で1匹確実に潰した後1対1に持ち込める3匹あたりが相手できる限界だろうと思っていたが、嬉しい誤算のおかげで、奇襲を成功させると4匹程度なら相手取る事ができると言う事がわかった。

 

 そして、その確信の源となる嬉しい誤算と言うのが、

 

「……ハルヒロ、頑張った」

 

 カエデのその小さな体の何処に詰め込んだのかと言うほどの戦闘能力である。

 

「うん、カエデは凄く頑張ってくれてるよ。いや、ホント、マジで」

 

 具体的には俺の存在意義が危うくなるくらいに。失神しているゴブリンにとどめを刺しながらハルヒロはちょっと顔が苦笑いしそうになりながらも、今朝から今までの事を思い返す。

 

 

 手習い修了の後、逸る気持ちを抑えて向かったルミアリス神殿の前には、既にカエデが居てハルヒロの到着を待っていた。

 どうやら神官は手習い修了祝いに、前の打ち合わせ部分に青のラインの入った白地の神官服とスタッフを贈られるらしく、それらを装備したカエデはいかにも神官っぽく見えた。

 いや、神官で間違いないんだけども。どうしてもカエデってちっこいからさ。

 それからお互いに7日間の手習いについての感想を述べたりしながら、既に情報収集のお約束となりつつあるシェリーの酒場へと向かった。

 そこで朝から元気に管を巻いている親切で有名らしい先輩義勇兵に飲み物を奢って、新米義勇兵におすすめの狩場とそれぞれの狩場の注意点を教えてもらう事に成功したハルヒロ達は、新米義勇兵の殆どはまずそこで団章を買うための銀貨20枚を貯め、経験を積むのだと言うダムロー旧市街を自分たちの実力を測る試金石として選んだ。

 

 ハルヒロはある程度正確かつ安全に自分たちの実力を図るために、丁度良さそうなはぐれのゴブリンを見繕い真正面から打ち合って、どれくらいやり合えるのかを試してみた。

 はぐれゴブリンは動きにキレがあり、頭も悪くなかったし、生命力に至っては想像以上のものを持っていたが、結局はそれだけだった。

 7日間の手習いでなんとか身になった手打(スラップ)を実践したりしながら、結局一撃も貰う事なく倒す事に成功したが、これがグリムガルの中で最弱のモンスターと言われれば首を捻らざるを得ない。

 

 弱くは、なかったよな?

 

 確かに一撃も貰わずに戦闘を終える事ができたが、それは後ろにカエデが居て、守らなければという思いと、心配させたくない、見得を張りたいという気持ちがあった部分が大きいような気もする。

 だけど、もしも5人とか、6人パーティだったりして、必ずしもハルヒロが頑張らないといけないような状況じゃなかったりしたらどうだっただろうか? 後ろに守りたい、見栄を張りたい人が居なかったらどうだっただろうか?

 多分ハルヒロはもっと人まかせにしようとしただろうし、そしたらきっともっと腰が引けていただろう。

 もしもパーティメンバーみんなが皆そんな風に思っていたらゴブリン1匹に苦戦する事も考えられない話ではない。

 

 それに、ゴブリンの種族としての本領はその繁殖力。つまり数にある。

 このはぐれゴブリンを見つけるまでにハルヒロ達は4匹や5匹、それ以上で集まってたむろしているゴブリンを見かける事もあった。

 先輩義勇兵の話ではそう言うゴブリンが何匹も集まっている場所は一族とか一門とかそんな感じのゴブリンの集団の縄張りだったりする事が多くて、近くに同じような集団がいくつもいたりするので迂闊に手を出すのは虎の尾を自ら踏みに行くようなものだからやめておいた方がいいと言う言葉を思い出して索敵に力が入ったりもした。

 

 ハルヒロは普段では考えないような事まで考えなければままならない身の上にうんざりしつつも、取りあえずこれでハルヒロが1匹を1人で仕留める事ができる事がわかったので奇襲をかけたら2匹で動いているゴブリンも狩りの圏内に入るという事がわかった。

 

 後はカエデの存在がどれくらい戦闘に影響を与えるのか、そこだけが未知数だ。

 確かにカエデは神官だし、万一怪我をした時なんかは治してくれるかも知れないが、それでもハルヒロは戦闘中に怪我を負う訳にはいかないだろう。

 何故なら、ハルヒロが治療が必要な程の怪我を負った場合、戦線が維持できなくなるかも知れないからだ。

 

 ハルヒロはあの地獄の7日間を思い出す。

 バルバラ先生が執拗に攻撃してきた左手は感覚がなくなると一気に重さが倍以上になったような感じがしてまともに歩く事も難しくなったのを思い出す。あの時はいっそもう左手を切り落としてしまった方が楽なんじゃないかと真剣に思ったほどだ。

 つまり、手足だからと言って容易に攻撃は受けられない。体のバランスが崩れるし、いざ撤退と言う時に生死を分けるかもしれないから極力避けていきたい。

 次に内臓関連だが。

 あれは死ぬほど痛い。バルバラ先生が横腹に冗談抜きでナイフを突き刺してきた時は視界に火花が散って、ショック死するんじゃないかと思った。マジで。

 他にも、頭や首は言わずもがなヤバいし、それ以外でも正直かすり傷より深いものはどこに受けてもヤバいものはヤバい。

 だけれど、痛みを覚悟しておけば1戦くらいならやせ我慢はできるし、結局はハルヒロ次第とも言える。

 やってみない事にはわからないか。

 

 ハルヒロはそれから2匹のゴブリンを標的に定め、攻撃を開始した。

 奇襲に失敗し1匹削りを削り損ねたが、それなりの深手を負わせたので特別苦労する事もなくそのゴブリンを始末する事ができ、残りの1匹のゴブリンを2人で叩くと言う方法で難なく戦闘を終了させた。

 2匹が相手でも問題がない事がわかったので、さて、じゃぁ3匹はどうなるだろうか。

 

 と考えていた所でゴブリン3匹に不意を打たれてしてしまった。

 

 嘘だろ? ゴブリンに奇襲された?

 

 ハルヒロは直前で矢が風を切る音に気付いてどうにかカエデを守る事に成功したが、正直辛い。

 とっさに遮蔽物に身を隠した後、傷の具合を確かめてみるが結構ヤバい。

 矢が刺さっている左肩は動かさなくても凄く痛いし。無理に動かそうとしたらヤバい位に痛い。だけど幸い骨はやられてなかったのか痛いには痛いが動かせない事は……。

 

「……ハルヒロ、ちくっとする」

 

 え? 何が? ハルヒロはカエデにそう問い返そうとしたが、左肩に走る激痛に呼吸ごと邪魔をされた。

 カエデが力任せに矢を引き抜いたのだ。矢のかえしの部分にはハルヒロの()がついている。

 

 え? 痛い、痛い痛い痛い。え? ちょっと、だめだこれ。カエデは何でこんな酷い事するんだよ? 俺が索敵を怠ってたから? 庇ってやったのにそれはあんまりだろ? いや、もう、取りあえず無理だ。このままは本当に無理。

 カエデはそんなハルヒロに構わず六芒を示す仕草をして祝詞を唱えた。

 

「光よ、ルミアリスの加護のもとに……癒し手(キュア)

 

 カエデの掌から放たれる光が傷を塞いでいく。だんだん楽になって、思考も割と落ち着いてきた。

 魔法って、すごい。

 

「ごめん……ありがとう。カエデ」

「ううん……ハルヒロを治すのは私の役目だから」

 

 ハルヒロは神官の重要性を身を持って体験し、戦士も神官もパーティには必須と先輩義勇兵達が異口同音に発していたのを思い出す。確かに神官は必須だ。

 

 その後すぐに圧倒的不利な現状を思い出し、撤退を考えるが敵はすぐそこだ。背を見せればまた矢を射られるだろう。

 くそっ、ゴブリンと遭遇しないようには気を遣っていたが、奇襲なんて考えても見なかった。

 敵地のど真ん中だってのに自分たちだけは攻撃されないってか? 何呑気な事考えてたんだよ、さっきまでの俺!

 ハルヒロは悪態をつきそうになったが、今はそれどころではない。口を動かす暇があるなら頭を、手足を動かさなければならない。

 

 遂に角を曲がってこちらに向かってくる剣ゴブリン2匹と少し後ろに控える弩ゴブリンの計3匹を見て思う。

 確かに……、戦士も必須だ。

 乱戦になればそれほど矢も飛んでこないだろうが、それでも気を抜くことはできない。心から盾役が欲しい。

 そうすれば盾役が剣ゴブリン2匹を引き付けているうちに、弩ゴブリンを始末して後顧の憂いなく残りの剣ゴブリン2匹と戦えるのに。

 

 だが、実際問題盾役になれるような人間はハルヒロのパーティに居ない。そもそもパーティにはハルヒロとカエデしかいない。

 つまり常にいつ飛んでくるかわからない矢に気を揉みながら剣ゴブリンを相手にしなければならないと言う事だ。

 これで相手ゴブリンの中に神官にあたるゴブリンでも居ようものなら義勇兵パーティのテンプレートの出来上がりだ。相手にしてみてわかるが勝てる気は確かにしない。

 それでも生き残るためには戦うしかない。カエデを守るんだ。

 意を決して、さぁ剣ゴブリンに向かって走り出そうとするハルヒロの隣を颯爽と駆け抜けていく影が1つ。

 

 そして今ここにはハルヒロを除いてそんな事をするのは1人しか居ない。カエデだ。

 

「……前の2匹は、私が引き付けるから」弩ゴブリンが放つ矢を身体を翻して避け、その反動を利用して剣を振りかぶっている剣ゴブリンAの脇腹をショートスタッフで殴り飛ばし、その後にかぶせるようにして振るわれた剣ゴブリンBの横なぎの剣を身を屈めて躱す。「ハルヒロは、後ろの弩持ちを……」剣ゴブリンBの伸びきった腕の下からアッパーのように伸びやかな動きで振り上げたスタッフが剣ゴブリンBの顎を捉える。

 

 え、うそ。

 え? なに? なんだ? 何が起こってる? いや、いやいやいや、今はそれどころじゃない。早く弩ゴブリンを仕留めないと。

 

 その後、ハルヒロが弩ゴブリンを始末するまでの間、カエデは宣言通り剣ゴブリン2匹を引き付けてくれてて、奇襲された時に決めた決死の覚悟が嘘みたいにサクサク片付いた。

 と言うかハルヒロが弩ゴブリンを片づけた後、ハルヒロが援護するまでもなく既にカエデは剣ゴブリン2匹を屠りさっていた。ちょっと凄すぎるだろ。

 

 その後、周囲に十分気を配りながら、戦利品を回収して、カエデに少し話を聞いてみたのだが、ハルヒロはちょっと動揺を隠せなかった。

 さっきの戦いを鑑みるにカエデは判断力もあるし、頭もいい。驚く事に力だって結構あるみたいだし、走る速度はもしかしたらハルヒロよりも早いかも知れない。何より身体が小さい事で小回りが利くし、体力もある。

 さっきは驚く事に2匹の剣ゴブリンを相手にして一撃も貰わなかったらしいし、弩ゴブリンの矢を避けた事から、目も体幹も相当に良い筈だ。

 それらを考量するとハルヒロは実に情けない結論に行きついてしまう事に気付いた。

 

 これ、俺がカエデ守ってるんじゃなくて、守られてない?

 

 実際そんな感じだったさっきの戦いを思い出してハルヒロは大きくため息を吐いた。

 

 

 そんなこんなでハルヒロは4匹でも全く問題なく戦えるだろうと言う判断を下したのだ。

 結果は予想以上。殆ど一瞬で戦闘が終了してしまった事からもわかるがハルヒロとカエデの2人で充分すぎる位義勇兵としてやって行けそうだと感じる事ができた。まぁ、感じただけだから外から見たらまた違うのかもしれないけど。

 

 でも今、思い出して見てもゴブリンに奇襲されたあの時のカエデの素早く的確な判断と、しなやかで力強い動きは正直に言ってかっこよかった。

 鳥肌が立つどころか、足が震えて動けなくなるような状況であれだけ動けたカエデをもはや新米と形容していいものかどうか悩んでしまう位だ。

 

 ハルヒロはオルタナの暮れなずむ街並みを眺めながら今日の稼ぎについて考える。

 4匹を危なげなく倒した後、まだ日もそれなりに高かったが初日と言う事もあり、知らず疲れも溜まっているかも知れないと言う事で帰る事にしたのだが、その時、索敵に引っかかってしまったゴブリン3匹の群れを避けて通るのも面倒そうだったのでやっぱりサクッと片づけて、今日は1匹、2匹、3匹、4匹、3匹の順で合計13匹のゴブリンを倒した。

 中にそのまま入っていた銀貨や、綺麗な石。そして割りかし綺麗なゴブリン袋を全部売ると占めて22シルバーと30カパーになった。ゴブリン袋が一番高いので3シルバーもしたのには驚いたが、カエデとハルヒロ2人で半分に分けて11シルバーと15カパー。

 一気に見習い義勇兵の時にもらった特典の銀貨10枚を超えるだけの稼ぎを出してしまった。

 まともな宿だと月極で1部屋借りると5シルバー、3食つけると追加で4シルバーと言ったところなので他に雑費なども入れて1ヵ月で10シルバーといった所だから、ハルヒロ達は1回の狩りでおよそ1ヵ月分もの生活費を稼いだことになる。

 こんなに上手くいくなんて拍子抜けしそうになるが、忘れてはいけない。

 

 今日、カエデのあの的確な判断とその小さな体からは考えられないような戦闘力がなければ、ハルヒロは今頃ダムローの旧市街で冷たくなっていたのかもしれないのだ。

 

 こっちは命をベットしているんだ、それを忘れてはいけない。

 そう締めくくって、ハルヒロは適当に見繕ってきた下着と服を抱えて宿を目指した。


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