ラブライブ!~化け物と呼ばれた少年と9人の女神の物語~ 作:そらなり
今回遂に『心のメロディ』回最終回になります。
今までやりたかったことがついにできる……!
それでは、自分の限界を超える力を見せる彼とそれを受けた彼女たちの頑張りをご覧ください!
関係ある話
音ノ木坂の生徒が、風見学園の生徒が作ってくれた道をただひたすらに走っていた。だけど、それは途中で終わってしまう。雪の量が多く女子生徒の多い音ノ木坂の生徒ではたとえ男子がいても3分の1ほどの距離しか雪かきができていなかった。
穂乃果「ここからはペースダウンしちゃうね……」
だから目の前の光景を見て少しだけ残念そうに穂乃果がつぶやく。
今近くにはもっと穂乃果たちが早く進めるように雪かきをしている生徒がいる。確かにそれは助かることだ。
空也「あまり人がいなきゃ……」
だけど、今の空也にとってその人たちは最大の不安要素でしかなかった。空也がやろうとしているのは魔法。さくらたちのおかげでこの本島でもなんとか魔法を使うことができるようになったとはいえ、おいそれと魔法を使うことは出来ない。
そこへ……、
清隆「なら俺たちが隠す。それなら魔法が使えるだろ」
空也の秘密を知っていてなぜ今ためらっているのかがわかる人が声をかけてくる。……清隆だ。
その声のしたほうを見ればそこには夏休みに見た見慣れた顔。
空也「……! 清隆……。みんなも……。…………頼めるか?」
制服の上に防寒着を着た風見学園公式新聞部のみんながそこにはいた。風見学園の生徒が来たと聞いたときから予想はしていたがこうして目の前に現れるとどこか嬉しい気持ちになる。
清隆の提案はどうやって隠すのかは知る由もないがその提案は現状一番頼りになるものだった。
清隆が最初に話したと思ったら今度は立夏が空也たちのほうに歩み寄りながら話してくる。
立夏「任せなさい。そのために来たようなものなのよ。事情はさくらから聞いたわ」
確かに、これから起こることを知っているのは立夏が話を聞いたというさくらと義之でしかない。さくらに聞いたのであればここに来たのもうなずける。
あまり話してほしくなかったことではあったのだが、今この状況を見ると立夏たちの助けはとても助かるものだ。
空也「全く……。さくらはおしゃべりだな……。じゃあ頼む! 穂乃果達は俺に触れえててくれ」
だから空也は気兼ねなく魔法が使える。空也は穂乃果たちに自分に触れるように指示を出して制服の懐に入っているワンドを取り出した。
この先起こることを説明したときにどんな手段で回避するのかは話していなかった。
ことり「何をするの!?」
だから新聞部のみんなが手伝わないといけないことをやろうとしている空也に驚きを隠せないことり。
でも、一番効率的で確実なのはあの魔法を使うしかない。悪夢を見た時に思いついた自分にしかできなくて大きな魔法。
空也「一番未来を変えられる方法。空間移動魔法で会場入り口まで飛ぶしかないからな それを6人で隠して使う」
空間に関与する魔法は空也の十八番。だからこそ使い慣れたこの魔法で助けようと思っていた。けど、本島では大きな魔法は使えない。枯れない桜を依り代に世界規模の大きな魔法を使った代償として空也はある条件下でしか魔法が使えなくなってしまった。それは穂乃果たちにも説明したことで。
でも、さくらたちに手伝ってもらったこともあり何とか1回だけなら大きな魔法を使うことができる。それを使うのがいまだ。決意を固めて空也はワンドを握りしめる。
空也が魔法と使う。そう直感的に認識したシャルルたちはそろってワンドを取り出す。
シャルル「任せてね。あたしたちだってそのくらいできるんだから」
明らかに魔法を使うつもりだ。そんなことをしたら不思議がられるのは当然なのに何も気にせずにただ、空也たちのことを想って魔法を使う。
それはμ'sに確かな恩義があるから。応援したいと心から思えるから。
さら「そうです。皆さんにはいろいろ勇気づけられましたから」
葵「精一杯やってきちゃってください!」
姫乃「島ではあまりお手伝いできませんでしたしね」
同じ学校の生徒なら応援してくれる気持ちだってわかる。でもこうして他校の生徒から心のこもった応援をされれば奮い立たないわけがない。
穂乃果も空也の肩に手を置きながら深々と立夏たちにお辞儀をする。
穂乃果「皆さん……。じゃあお願いします!」
それに合わせて海未とことりも同じように頭を下げる。
穂乃果たちの覚悟が決まったことが分かった空也はこれから魔法を発動しようとしていた。
空也「じゃあ行くぞ」
ワンドを振り空間移動の入り口を創ろうとする空也。
しかしその空也を止める声が発せられる。
立夏「あ、ちょっと待って。空也、これを持って行きなさい」
立夏が取り出したのは空也が持っているワンド以上に古いワンドが渡された。空也はこれが何だかわかっている。以前の生まれ変わる前の立夏……リッカだった時に使っていたワンド。
それがどんなに大事なものかまで空也は知っている。
空也「……! これって!」
昔の立夏がずっと使っていた。ある魔法使いが魔法使いだった時の証。
このワンドはもともと立夏の手にはあるはずのないものだったはず……。立夏とリッカは同一人物ではあっても直接かかわりがあるわけではないのだから。でもこうして立夏はワンドを持っているその理由は……。
立夏「この前さくらに渡されたのよ。私の最高の想い出を。でもね、一回貸してあげるわ。きっと……ジルがあなたを助けてくれるから」
またしてもさくらだった。大事なものを空也に託す。それが空也のためになると思っての行動。このワンドに宿っているもう一人の魔法使いがきっと空也に力を貸してくれると信じて。
その重さをしっかりと受け止めた空也は立夏からワンドを受け取り、
空也「……わかった。ありがとよ、立夏。ジルさん……お願いします」
その中にあるであろう彼女に話しかける。リッカの親友でずっと支え続けていた魔法使いだった、ワンドに宿る魔法使い。空也は自分のワンドを懐に戻し、リッカのワンドを力強く振った。
ワンドを振ると空也の体は白く光り消える。空也に触れていた穂乃果たちも同様に。魔法は成功している。が終わったわけではない。清隆たちのおかげで誰にも気が付かれることなく別空間に移動できた。
立夏たちは空也たちのことを想い、ずっと空也のいた場所を見つめていた。
夏合宿の時によく見ていた白い空間が周りに広がる。そこには当然雪がなく走って行くには十分すぎるコンディションだった。これから空也たちはテレポートで行くわけではない目的地を直線で結んだ距離を走る。移動まで魔法でやってしまえば確実に空也の体がもたない。この状況でさえもギリギリなのにそれ以上のことは難しくなる。
その証拠に空也の体調がだんだんと悪くなっていく。顔色は青く冷や汗が額を伝う。肩で息をしていて体調が悪いのは周りが見ても明らかだった。
空也「はぁはぁ……。じゃあ、行くぞ。3人共……」
それでも空也は歩みを止めようとしない。否、してはならなかった。
明らかに様子のおかしい空也を見て穂乃果が途端に心配になる。
穂乃果「空也君大丈夫!?」
さっきまでは普通だったのだ。風邪をひいていたというわけでもなさそうなこの状況で急に倒れそうなほど体調の悪い空也を見て心配にならないわけがない。
けど、空也は立ち止まることをしない。早くしないと……
空也「あぁ大丈夫だ。とにかく早く行こう」
空也はそのことが分かっている。今のこの状態でこの空間を維持できる最長の時間を。そんなに長くない。ここでゴールにたどり着かなかったら確実に別空間に飲まれ元の場所には戻れないだろう。
だからこそ早く到着する必要がある。
海未「……行きますよ穂乃果。空也は行けるのですか?」
海未は今の現状がどれだけもつかなんてことは知るすべがない。けど、必死になっている空也を見ると余程急がないといけないということは伝わってくる。だから海未は空也の肩を持ってでも前に進もうと想っていた。
けど、空也はそれを受け入れない。無駄な体力を穂乃果たちに使わせることは出来ないからだ。
空也「俺を誰だと……思ってる……行ってやるさ……」
今にも空也の意識が途切れそうになる。この空間を作り出しているのは空也だ。その空也が気絶したらどうなるのか。それは誰でも察しのつくことだ。白く、ただただ白い空間は歪みところどころに穴が開き、とても普通じゃないことが火を見るより明らかで。
けど突然空也の首元にあるペンダントから小さなピンク色の光が飛び出した瞬間、穂乃果たち4人しかいないはずのこの空間に金髪のツインテールの少女が現れた。それと同時に立夏から預かっているワンドも光始め、空也のことを包み込む。
光の中に包まれた空也はそこにオレンジとピンクの中間色の髪をした少しだけそばかすがある少女だった。赤いスカートに黒いローブ。その姿をしている人に、その人に空也はあったことがある。その人とは……立夏が先ほど言っていたリッカの大事な親友"ジル・ハサウェイ"。
ジル『やっと、あなたに恩返しができるね。君のおかげで私はまたリッカと言葉を交わすことができた』
目の前にいるジルに空也は声をかけることができなかった。この光が空也が話すことを拒んでいるかのように。
ジル『あの時はありがとう。だから今度は私が力を貸すね。だから安心して走って行って』
ジルがそう言うと空也を包んでいた光に優しい暖かさが宿り空也の中に入っていく。
中に入り込もうとしていた光が空也の中に入りきるとそこには先ほどよりも幾分体調が良くなった空也の姿があった。
そして目の前にいる人物に驚き戸惑う。
だってそこにいたのは……
???「にゃはは。お兄ちゃん、魔法がどんなものか忘れてないよね?」
子供のような容姿で金髪の髪をツインテールにしている、昔の芳乃さくらにうり二つだった。
でもその姿はもう20年ほど前の姿で、今はしっかりとした大人の容姿になっているはず。
空也「……さ、くら?」
だからこそ目の前にいる人物が自分の知っているさくらでないことが伝わってくる。
だけど……
???「うん。ボクはさくら。ねぇ、お兄ちゃん。魔法はどんな力だっけ?」
女の子はそう名乗った。水色のリボンで髪をくくってピンクのワンピースを着た少女は"さくら"とそう名乗った。
でも今重要なのはさくらという子が言った後半の言葉。
魔法使いなら誰でも知っているはずのその言葉はもちろん空也も知っている。
空也「魔法は……」
知っているからこそ、今がある。海未やことりの言葉を気が付かないふりをして隠してきたものがある。
空也がその答えを言おうとした瞬間に前にいる海未がその口を開いた。
海未「想いの力でしたっけ?」
そう。海未が言うように魔法は想いの力。想いの強さが直接魔法の強さにつながる。
でも魔法使いであればわかる答えであったとしても海未はなぜこのことを知っているのか空也は知らない。
空也「海未?」
魔法に関してわからないはずの海未だからこの答えは知らないと思っていた。
海未は小恋から恋をすると魔法が使えなくなるとそう聞いた。だからけどこの言葉に少しだけ矛盾があるとすれば、それを海未が気づいたとしたらこの現状を何とかする方法を思いつくことが出たのかもしれない。
海未「いい加減認めてください。きっとそれが今の状況を変えることに繋がります」
そしてそれは現実となり海未はそう提案する。恋をするというのは好きな人を言ってしまえば自分のものにしたいとそういう感情。人のことを想って、大切に想う。けどそれが想いの強さなら魔法が強くなることだってあるのかもしれない。
その事に考えがいきわたった海未もことりも空也には1つの決断をしてもらう必要があった。
ことり「そうだよ。認めて。空也君の本当の想いを」
今で限界な状態でも、もし空也が空也の魔法がもっと強くなったらきっとこのまま安定してくれるはずだ。
ただ、この話に穂乃果だけが付いていけてない。
穂乃果「…………?」
魔法のことを聞いたときも恋をすれば魔法が使えなくなるということまでは聞いていなかった穂乃果は少しだけ置いてけぼり状態。
でも、魔法のことを知っているから恋をすればどうなるのかをしっかりと知っている空也だから海未たちの言葉で突き動かされる。このきっかけをくれたのは目の前にいるさくらだ。だから空也はこの考えに至るまでに言葉をくれた3人に感謝する。
空也「はぁ……。さくら。ありがとう。海未、ことり。今までずっと隠しててごめんな。だから……」
それと同時に何とかして俺の想いを外に出そうとしていた海未とことりには謝罪を入れた。
空也が覚悟を決めたのが分かるとさくらはニッコリと笑顔を浮かべる。
さくら「わかったんだったらいいんだ。じゃあボクは遊びに行くから。またね!」
無邪気に、子供みたいにはしゃぎながらさくらは踵を返し空也とは反対方向へと歩いていく。まるで時をさかのぼっているかのように。
ある距離が離れるともう空也たちの目にはさくらは見えなくなっていた。
でもこれから空也がやることは変わらない。自分の中にある大切な想いを受け入れて自分のものにする。
空也(だから、俺は認める。俺、時坂空也は高坂穂乃果のことが幼馴染だけじゃない、1人の女の子として大好きで大切に想ってる。それが俺の本心。認めてやったぞ。魔法は想いの力なんだろ、だから……だから俺に魔法使いじゃなくなってもいいから俺に力を貸せよ!!)
空也が好きな想いを受け入れた瞬間に歪んでいた空間は通常の状態まで戻り穴の開いた場所は完璧にふさがっていた。
完全に元通りになった……いや今までよりもずっと丈夫になっているこの空間を空也は、穂乃果は、海未は、ことりは走り出す。
ただひたすらに走り続けようやく目の前には周りの白とは別の明るい光が見える。あれが、空也の設定したゴール。
つまりそのゴールを抜ければ穂乃果たちは元の空間へと戻り、ライブ会場に向かうことができるのだ。だからこそ、より早く足を回転される。走る、走る。待っている6人のためにも。
ゲートを抜けるとそこには穂乃果たちを待っている凛たちがいた。あと直線を少し走るだけでみんなのもとに着く。あと少しの辛抱だった。
凛「穂乃果ちゃーん!」
花陽「間に合った」
希「よかった~」
穂乃果たちの姿を見た6人はそれぞれホッとした様子で4人が来るのを待っていた。
待っているみんなのもとにいち早くたどり着こうと穂乃果が走るスピードを上げた。
穂乃果「みんな!」
だんだんと穂乃果たちと絵里たちの距離は短くなり先頭の穂乃果が手に持っていた傘を放り投げる勢いで絵里に抱き着く。
駆けてきた穂乃果を絵里がそっと抱きかかえる。
絵里「穂乃果!」
穂乃果は力強く絵里のことを抱きしめる。大丈夫だと信じていても心のどこかでは不安があったみたいで、それを思いっきり流すように。
穂乃果「絵里ちゃ~ん」
そんな穂乃果は絵里に抱き着いた瞬間に涙を流していた。
それはそうだ。これが最後になるのかもしれない。そうしたら……。
穂乃果「寒かったよ。怖かったよ。これで最後なんて絶対に嫌だったんだよ~。みんなで結果を残せるのはこれが最後だし、こんなに頑張ってきたのに何にも残んないなんて悲しいよ。だから……」
この10人で活動をしていくことができなくなる。みんなで言葉を出し合って、悩みに悩みぬいた歌も疲労できなくなる。いくつもの不安が穂乃果に恐怖を与えていた。そしてそれが解消された今、安心できたのか今までの不安が一気に解放されたようだった。
自分たちのことをそう思ってくれているということは素直にうれしいことで、安心できることで。
絵里「ありがとう」
だから絵里は穂乃果の耳元で囁くように心からの言葉を言い放つ。
海未もことりも無事でこの場所にたどり着けた。
けど空也も穂乃果同様に不安はあったのだ。それもそのはず。だって空也は3人の命を背負っていた。しかも途中で不安な場面にも遭遇している。
空也「よか、た……」
それから解放された空也の緊張の糸は完全に途切れ、そのせいか膝とついて空也は倒れる。
深く積もった雪が空也のことを包み込み怪我は幸いにもなかったが空也が倒れたという確かな事実が穂乃果たちを驚かす。
海未「空也!?」
慌ててみんなが空也のもとに駆け寄る。あの空間にいた穂乃果たちなら空也の体調が悪くなっていたということは知っているが、他の6人はなおさら驚く。
でも倒れた本人の空也は特に慌てる様子もなくうつ伏せだった身体を仰向けに直していた。
空也「やっぱり……これが限界か……。大丈夫、休めば治るから皆は……準備を……」
そして最初に出てくるのは力が確実に落ちている魔法のこと。やはり、もう空也は本島で大きな魔法を使うことができない。でも、今は自分のことよりこれから始まるライブの準備をするように促す。
でもこんな状態の空也を放っておけるほどμ'sのみんなは薄情じゃない。
にこ「そんな状態のあんたをほっとけるわけないでしょ」
だからにこは空也の腕をつかみ、自身の肩に背負う。
それと同様に反対側の腕を凛が抱える。
凛「肩貸すにゃ」
にこと凛の2人に担がれながら空也は立ち上がる。しかし、足はがくがくに震え力が自由に入っていないことが分かる。ほとんど全体重が凛たちにかかって辛いはずなのに凛たちは何も言わずに控え室に向けて進んでいく。
今まで走っていたからか、穂乃果たちの力は借りずにこと凛に担がれて進んでいくと横で海未がつぶやく。
海未「やっぱり限界だったのですね」
あの光の後も、マシになったとはいえ空也は限界に近い状態だったのだ。それを空間を維持するためとはいえより強い魔法を使った。それは今の空也の限界を超えることでとても負担のかかる手段だった。
もしそれがなかったとしても空也はここで大きな魔法を使うことは決めていた。だからこそ覚悟はしていたはずなのだが。
空也「悪い……。最初から決めてても、やっぱきっついわ……」
やってみると身体が言うことを聞かずにこうした倒れてしまった。そういう空也の声は悔しそうに、けど笑い話をしているかのようににっこりと笑い、凛とにこに連れていかれていた。
何はともあれ穂乃果たちは時間に間に合い、こうして会場に来ることができた。後は衣装に着替えて準備をするだけ。もうじき本番が始まる。
side out
穂乃果side
穂乃果たちは今、ステージの上にいる。それはこれからライブが始まることを示していた。観客席からはさまざまな声援が聞こえてくる。
空也「穂乃果ぁ!!」
好きを認めた空也はその想い人の名前を。
亜里沙「海未さーん!」
ずっと尊敬している存在であった海未の名前を亜里沙は口にし、
歩「ことりせんぱーい!」
心の中で大切な存在になりかけ、気のある歩はことりの名前を。
タクト「凛ちゃーん!」
ファッションショーの後に告白して将来結ばれることを約束したタクトはそのパートナーの名前を。
達矢「真姫ちゃーん!」
初音島にいるはずの、将来を決めるきっかけをもらった達也は惹かれ始めてる彼女の名前を。
月「小泉ー!」
あまり接点のないはずの花陽の名前を月は、大声で叫んだ。
宗平「にこー!」
昔から放っておけなくて大事な存在になっているにこの名前を宗平が。
藍斗「希さーん!」
希のバイト先の親しい先輩は希の名前を。
幹「絵里ー!」
そして入学当初からずっと近くにいた幹はその最愛の人の名前を呼んでいた。
今まで穂乃果たちの近くで支えてきた人、本来ならここにいるはずのない風見学園の生徒、そして大切な恋人を応援する熱意のこもった声がステージに向けて発せられる。その声援が今の穂乃果たちにとって何よりもうれしいことだった。
穂乃果「皆さん、こんにちは。これから歌う曲はこの日に向けて新しく作った曲です。たくさんのありがとうを込めて歌にしました。応援してくれた人、助けてくれた人、そして支えてくれた人がいてくれたおかげで私たちは今、ここに立っています。だからこれは みんなで作った曲です!」
だから今日ここに来るまでの間にお世話になった人に感謝するために歌う。勝ちたいとか、負けないとかは置いておいてとにかく感謝の気持ちが届きますようにと願いながら。
μ's『聞いてください』
みんなが声を合わせて観客席に向けて言う。μ'sが横に並び自分の隣の人と手をつなぐ。
みんながこれからライブをするための心作りを最後の最後で行う。この曲はラブソング。だから自分たちの大好きを歌に込めるため目をつむって好きなもの、人を思い浮かべる。
絵里(学校が大好きで)
絵里の頭の中には音ノ木坂学院の情景とあの時、幹が告白してくれた時の想い出が。
真姫(音楽が大好きで)
真姫が思い浮かべるのは音楽室で音楽を奏でている時のこと、そして誕生日プレゼントを作っている時にやりたいことを肯定してくれた先輩の顔。
にこ(アイドルが大好きで)
にこはずっと心から大好きなアイドルのこと、そして妹たち家族とずっと隣に住んでいる幼馴染の顔が。
凛(踊るのが大好きで)
凛が想うのはみんなで練習したダンスのこと、そして女の子らしくなると決めた時に受けた告白の光景。
花陽(メンバーが大好きで)
花陽は今までずっと一緒にいた大切な仲間の顔を思い浮かべている。
希(この毎日が大好きで)
希は高校に入る前の生活からがらりと変わった日々のことを想い、大切なことを教えてくれた神田明神での藍斗のことを思い出していた。
海未(頑張るのが大好きで)
海未は頑張って練習している毎日を思い浮かべて、
ことり(歌うことが大好きで)
ことりは歌の練習をしていた毎日を思い浮かべ、そして初めて男性と洋服を選びに行ったときのことを思い出す。
穂乃果(μ'sが大好きだったから)
穂乃果が思い浮かべることは今この場所にいる10人のメンバーのこと。大好きだから、大好きだったから今まで一緒にいて頑張ってこれた。今があるのは大好きになれたみんながいたから。それを身に染みてこの場所に立っている。
みんなの集中力が頂点に達したときに流れるイントロ。
"Snow halation"
雪の結晶のように儚くもきれいに輝く想いのことを描いた曲。みんなが言葉を出し合って、心を込めてできた曲。
歌に想いを込めた今回のライブは今までに例を見ないほど大成功だった。少なくともμ'sのみんなはそう思っている。あとは結果を待つだけだ。結果が出るのはクリスマスイブ……。
ようやく……(露骨すぎる)伏線を回収できました。
かなり、登場人物の心情に動きがあった、そんな回になったと思ってます。気持ちを認めた空也がこれからどんな行動をしていくのか。それは次回のお楽しみということで!
次回はオリジナル回! 楽曲ベース回第4弾です! 曲名は『言葉より強く』
次回『言葉より強く想いを伝える』
それでは、次回もお楽しみに!
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