鷲巣-Washizu- 宿命の闘牌   作:園咲

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目標ができました。鷲巣様に全ての役満を上がってもらうことです。
ここ最近この小説のことばかり考えているせいか夢に優希と透華が出てきました。


入部

「ふあ~…眠い…」

 

鷲巣は眠かった。猛烈に眠かった。理由は昨晩にある。

あの対局のあと龍門淵家に招待された鷲巣は夕食をご馳走になった。

(本当に焼き鳥だった。透華がやけ食いしていた。)

そこまではよかった。だがそのあと衣の提案で麻雀を打つこととなった。

寝る前に軽くと思っていた鷲巣だったがしばらくして鷲巣と衣にあてられたのか透華が豹変し、打ち筋が昼の時と全く変わった。

鷲巣も流石に手を焼いたが結局透華がなぜか気を失い強制終了した。

ほぼ夜通しとなったためほとんど寝ていない。朝そのまま高校まで送迎してもらったのは正直助かった。

授業が終わり今日は早く帰ってさっさと寝てしまおう。そう考えていた鷲巣だったが…

 

「衣和緒ーーー!」

「ぐふっ」

 

授業後すぐに教室を飛び出したのかやってきた衣が腰あたりに抱きついてきた。

衣は鷲巣と同様昨日はほとんど寝ていないはずなのになぜか昨日より活気に満ちていた。

やはり自分と同等以上に打てる鷲巣との戦いが彼女を変えたのだろう。

 

「昨日は楽しかったな!さあ早く行こう!」

「いきなり何を…行く?どこへ?」

「それはもちろん…」

 

******

 

「来ましたわね!衣!衣和緒!」

「これで全員だな」

 

衣に連れてこられたのは昨日同様麻雀部室。そこにはあらかた顔を合わせた面子が揃っていた。

 

「さて!新入部員も迎えたところで我が龍門渕高校麻雀部今年度も始動ですわ!」

「すまん…」

「なんですの衣和緒」

 

鷲巣は違和感を覚えた。おかしい。いつの間にか新入部員になっている。

 

「儂は入部した覚えはないが…」

「「「「「えっ」」」」」

 

鷲巣の当然の主張に5人が驚きの声を上げる。

 

「入部してくれないのか…」

「新入部員じゃなかったの…あんなに強かったのに」

「オレも透華が説明したもんだと思ってたよ。なし崩しに入部させちまおうとでも思ってたんじゃねーの」

「大体透華はいっつも強引に物事を押し進めるんだよね。ボクのときだって…」

「うるさいですわ!そこ!」

 

順に衣、智紀、純、一、透華である。かなりの小声で喋っていたが透華には聞こえていたらしい。

遠い岩手の地で謎のシンパシーを感じた少女がいたようだが今はどうでもいい。

透華にとっては鷲巣衣和緒は是が非でも入部してほしかった。

衣相手に勝った打ち手は今までいなかったし、衣も鷲巣に相当懐いている。

あとなぜか昨日の夜に打った記憶がないが後で牌譜を見せてもらうと鷲巣はきっちり2人に勝ち越していた。

 

「是非入部してくれませんか。あなたがいればあの白糸台を破って優勝できるかもしれません」

「白糸台?」

「知らないの?えーと…はいこれ」

 

透華の口から出たのは白糸台という知らない単語。会話の流れから言って高校名だろう。

その言葉に疑問符を浮かべると、一が本棚を漁って1冊の雑誌を手渡してきた。

「ウィークリー麻雀TODAY」

麻雀愛好家御用達の週刊雑誌であり、勿論この龍門渕高校でも定期購読している。

渡された週では高校生大会の特集をしており、有力校の紹介やインタビューなどが載っていた。

 

(龍門渕グループは日本有数の大企業…付き合っておいて損はないが…ん?)

 

「あーそれな。白糸台や千里山に比べてうちの紹介が少なくて透華が不機嫌になったよな」

「だっておかしいですわ!」

「おかしくないよ…向こうは全国常連でこっちは新鋭だよ?長野はしばらく風越だったし」

「だからこそ!注目されるべきでしょう!」

「そんなこといっても…」

 

透華たちが何やら言い合っているが鷲巣の耳には入っていなかった。

鷲巣の目には去年優勝したらしい白糸台の大将が映っていた。あまりの衝撃に眠気が吹き飛んだ。

宮永という先鋒と共にダブルエースとして紹介されている。

(赤木しげみ)

流石に偶然にしてはできすぎだった。牌譜が載っていたが常識に囚われない異常な打ち筋である。

もはや間違いない。赤木しげるだろう。

 

(そうかそうか…そういうことか…お前とは再戦せねばならんとは思っとったが…よもやこんな形とはな…)

 

「クックックックッ…」

「衣和緒…?」

 

思わず上機嫌で笑う鷲巣に対し訝しげにこちらを見る龍門渕麻雀部一同。

透華たちも言い合いをやめこちらを見ている。

 

「…入部しよう」

「ほ…ほんとに!」

「うぬ…ちょっと戦いたい奴がいての…」

 

 鷲巣のその言葉に一番喜んだのは衣。また抱きついてきた。

鷲巣はうっとうしそうにしながらも満更でもない様子。

その光景を微笑ましく見る一同。

しばらくし、透華がわざとらしく咳払いして言い直す。

 

「では改めて…我が龍門渕高校麻雀部今年度も始動ですわ!」

「衣和緒!また打とう!」

「勘弁してくれよ…」

 

そう悪態をつくのは純…実は昨晩一番割を食ったのが純である。

満月の夜の衣、豹変した透華、鷲巣となると卓を囲むにはあと1人必要なわけで。

まず智紀が逃げた。そして一が打つのを拒否。足早に自室に戻っていった。

よって残された純は仕方なく最後まで打っていた。

そんな純も苦笑いしながら卓に座る。リベンジといきたいのだろう。対局が始まった。

 

日にちが過ぎる。5月の連休では合宿替わりに龍門渕家にて泊りがけで麻雀を打った。

女子の麻雀を見てみたりもした。そこで気づいたのが衣以外にも明らかにおかしい打ち方をしている者が僅かながらいることだ。

ツモ切りリーチをすれば必ず一発ツモしたり、突然打牌が変貌したりしている。

曰く能力だったりオカルトだったりいうらしい。つくづく面白いと感じた鷲巣であった。

そして長野県予選を間近に控えることとなった。

 

「それでは!県予選オーダーを発表します!」

 

龍門渕高校麻雀部室。そこで県予選のオーダーが透華から発表される。

 

「先鋒は純。鳴いて場を荒らしてきなさい」

「よーし」

「次鋒、一。期待していますわ」

「次鋒…か」

「中堅は私。大船に乗ったつもりでいるといいですわ!」

「はいはい…」

 

透華の余りの自信に呆れ気味の一。いつもの事なので慣れたように軽く流す。

 

「副将は衣。出番が遅い方が都合がいいでしょう」

「うん!衣はどこでだって全力で打つぞ!」

「大将は衣和緒。…任せましたわ」

「…うむ」

 

鷲巣は大将以外には興味がなかった。見たところ赤木は個人戦には出場していないらしい。

よって大将でないと再戦が叶わないためである。

 

「……智紀は補欠です。あとデータ収集などをおねがいしますわ」

「うん」

(ともきー…)

 

「あと昨年と大きくルールが変わっています。大まかに言うと平凡な競技麻雀から運要素の強い赤ドラ新ドラ裏ドラ一発あり…ですわね。

細かいルールは…」

 

透華が言いにくそうに述べる。これまではちょうど5人だったため補欠選手はでなかったが今年はそうはいかない。

自分が連れてきたのでやはり申し訳ないと思っているようだ。

その後透華はルールの変更点の説明に移ってしまい、オーダー発表は終わる。

智紀自身覚悟はしていた。これといった強みもなく打ち筋は至って普通のデジタル麻雀。

龍門渕の皆の中で一番下は間違いなく自分だろう。

一はそんな智紀の様子を心配そうに見つめていた。

その日の晩、夕食の片付けをしていた智紀のところに一がやってきた。

 

「ともきー…ホントに大丈夫?」

「…気にしないで。私は私の出来ることをするから…」

「で、でも…」

「衣和緒が来てからあの子は…衣は本当に笑うことが多くなった。私たちではできなかった事。

衣和緒のためなら私は枠を譲る。一…頑張って」

「ともきー…う、うん!」

 

珍しく饒舌に話した智紀。その口から語られたのは鷲巣への感謝だった。

衣があそこまで明るくなったのは間違いなく衣と真っ向に打てる衣和緒がいてのことだと智紀は思っていた。

それを聞いた一は必ず全国に行くと心に誓ったのであった。

 

そして後に語り継がれることとなる長野県予選を迎えることとなる。




日常回難しいですね。次回から県予選編です。
赤木in白糸台。タイトルからバレていたと思いますが…
赤木の名前迷いましたが、たかみーと韻を踏むという理由でしげみに決定しました。
レギュラーから外れるのは智紀です。ファンの方はすいません。
原作派の私は智紀の打ち筋がわかりません。次鋒戦軽視されすぎなんですよね…
ちなみに雑誌では衣は別枠で特集されているため龍門渕自体の扱いは控えめです。
個人戦は悩みましたが鷲巣様は出ません。

設定資料2
赤木しげみ(あかぎしげみ)
鷲巣が唯一負けを認めた、かつて裏社会の頂点に君臨していた男。
安楽死した後なぜか蘇り再び麻雀を打っている。
白糸台高校2年生。昨年の夏から大将を務めている。
団体戦のみに出場している。

身長172cmと高めで白髪。髪型は肩を超えるロング。

赤木の雀力

運…S 読み…SSS (一般的な女子高生雀士をCとした場合)(SSS~E)

強運
鷲巣には及ばないまでも脅威的な運をもつ。若返ったことで全盛期にまで戻っている。
1.裏、槓ドラが手牌に乗りやすい。
2.ドラを引きやすい。

領域(エリア)
赤木のみ実行できる高度な捨牌読み。
相手の当たり牌を高確率で看破する。

常識に囚われない大胆不敵な打ち筋をする。捨牌の迷彩もうまい。
雑誌でもたびたび取り上げられ「神域」「悪魔」「すこやん2世」など異名も多い。
企画で小鍛冶プロと打ったことがあり半荘5回を4勝1敗と勝ち越している。

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