東方楽曲伝×ラブライブ!   作:ホッシー@VTuber

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キャラの口調に違和感を覚えたらすぐに言ってください。
急いで書き直しますので……。


第2話

「……」

 桜舞い散る中、俺はゆっくりとその建物を見上げる。今日から俺の学び舎となる高校の校舎を。

 国立音ノ木坂学院。

 それがこの高校の名前だ。

「……行くか」

 周囲でこれからの高校生活を想像しながら和気藹々と校舎の中へ入って行く新入生を一瞥した後、俺もその後を追った。

 国立音ノ木坂学院は秋葉原と神田、神保町の狭間にある伝統校であり、女子校だ。体は女だが、中身は男である俺が女子校に通うのはどうかと思うがこの学校の名前を見た時に直感で決めた。伝統校と言う割には校舎も綺麗だし、当たりの学校なのではないだろうか。少なくとも生徒が銃を常に携帯しているあの物騒な学校よりかはマシだろう。

「ここか」

 考え事をしながら歩いていると目的地である1年生の教室に着いた。教室の中からは女の子特有の高い声がいくつも聞こえる。教室に入る前に前後の教室を観察するが1年生の教室ではない。つまり、1年生は1クラスしかないのだろう。伝統校なのに入学者は少ないのだなと首を傾げた後、教室に入った。とりあえず、黒板に貼ってある座席表を確認する。『音無』なので出席番号は若い。一番廊下側、前から4番目の机だ。

「あ、あの!」

 鞄を机の横に付いているフックに掛けていると不意に左から声が聞こえる。そちらに目をやると眼鏡をかけた子が不安げに俺のことを見ていた。その後ろにはショートカットの子が『かよちん、頑張るにゃ!』と眼鏡の子を応援している。

「どうした?」

「え、えっと……こ、これから、よろしくお願い、します」

 どうやら、挨拶がしたかったようだ。確か俺の隣の子は――。

「おう、よろしく。小泉」

「え、どう、して……」

「座席表見たから」

 自分の名前を当てられて目を白黒させている『小泉 花陽』。そんな彼女に黒板を指さしながらそう言った。

「すごーい! じゃあ、私は私は?」

 『あ、そっか』と納得している小泉の後ろにいた子が手を上げてアピールして来る。

「いや、座席に座ってないとわかんねーよ」

「凛の席はあそこにゃ!」

「自分で答え言ってるぞ、星空」

「あ、ホントにゃ……って、苗字当たってる!?」

「一回見ればだいたい覚えるからな」

 驚いている『星空 凛』を横目に腕を枕にして机に突っ伏し、2人に向かって手を振った。昨日は色々あって眠たいのだ。

「あ、あの……お名前は?」

「名前? あー……」

 そうか。普通、座席表を丸暗記なんかしないか。突っ伏した状態で小泉たちの方を向く。

「音無 響。よろしく」

「よ、よろしく」

「よろしくにゃー」

「……ということでおやすみ」

 眠い。とにかく今は寝たかった。顔を元の位置に戻して目を閉じる。

「え、だ、駄目だよ! もう少しで入学式だよ?」

 横から小泉の声が聞こえるが返事をする前に俺は意識を手放した。

 

 

 

 

 

 

 

 入学式も無事に(ほぼ寝ていた)終わり、永遠に続くかと思われたホームルーム(桔梗に話を聞いて貰って俺は寝ていた)を乗り越え、自由時間となった。他の新入生は親御さんと合流して色々と話していることだろう。そんな中、俺は校内を散策していた。自由時間だし、別に問題はないだろう。校内で感じる気配の少なさから上級生もすでに帰っているようだ。

「あれ、響ちゃん?」

 音楽室をドアの小窓から覗いていると聞き覚えのある声が聞こえた。視線をそちらに移すと手を振ってこちらに歩いて来る東條を発見する。胸のタイは緑色。昨日聞いたように3年生だったらしい。

「東條先輩、こんにちは」

「もう、昨日も言ったやん? タメ口でもええよって」

「……俺は駄目だと思うんだけどな」

「そう言いながらもタメ口にしてくれる響ちゃんであった」

 くすくすと笑う東條から目を逸らし、そっとため息を吐く。昨日、『魔法使い』だと言った後、東條は目を輝かせて色々と質問して来たのだ。彼女曰く、そう言ったスピリチュアルな物が好きらしい。昨日、あんな時間に道を歩いていたのも神社のバイトが遅くなったからだそうだ。

「どう? 体の調子は」

「まぁ、動く分には問題ないよ。しばらく戦闘はできないけど」

 その質問の後で『魔法を使って欲しい』とお願いされ、今は地力が足りなくて大変だと言う話をしたらやたらと心配されてしまった。思わず、『地力がなくなれば死んでしまう』と言ってしまったせいだとは思うが。今だって心配そうにしているし。

 体が動くようになるまで色々と話していたのだが、俺の住んでいるマンション(ちょっとだけ魔法を使って借りた。戸籍を偽造するのと同じ要領である。もちろん、家賃はきちんと払っている)と東條の住んでいるマンションが同じだったり、東條も音ノ木坂の生徒だったり、と無駄に距離が近くなってしまったのは予想外だった。もう会うことはないと思って『魔法使い』だと嘘を吐いたのに。

「そう言えば、お前はなんで学校に?」

「生徒会の仕事が残っててえりち……生徒会長と一緒に片づけてるんよ。ほら、入学式で挨拶したあの子」

「……」

「……寝てたんやね」

 いや、俺だって聞こうとは思っていたのだ。思っていたのだが、昨日の疲れが出てすぐに寝てしまっただけである。

「とにかく! 無理は禁止!」

 少し過保護だと思うが会ってまだ1日しか経っていない俺をそこまで心配してくれるのは嬉しい。東條の言う通り、しばらく大人しくしておこう。

「あ、そうだ。1つ聞きたいんだけど」

「ん?」

「誰にも見つからない場所ってある?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「へぇ」

 東條が教えてくれた場所――屋上に出た俺は思わず、感嘆の声を漏らしてしまった。この学校は珍しく屋上を開放していて昼休みなどはここで昼食を取る人もいるらしい。なので、誰にも見つからないとは言えないのだが、ここで注目すべきなのは屋上ではなく搭屋である。搭屋の側面には上に登るための梯子はあるが好き好んで搭屋の上に登る人は少ないだろう。特に昼休みはお弁当を持っているため、お弁当を持ったまま梯子を登るという面倒なことはしないはずだ。

『ここなら大丈夫そうですね』

(ああ、さすがに昼休みの間ずっと教室で寝るわけにもいかないしな)

 授業中は気配を消して寝られるがさすがに昼休みまでそれをやるわけにはいかない。今日のように小泉たちに話しかけられる可能性だってある。なら、最初から別の場所で寝れば周囲に気を使わなくてもいい、というわけだ。それにもし、搭屋の上に登って来た人がいたとしても俺が眠っていれば遠慮してくれる、はずである。

「よいしょ」

 試しに搭屋に登って横になってみた。春特有の暖かい風が俺の頬を撫でる。影がないのが欠点だが、なかなかいい場所だ。教えてくれた東條に後でお礼を言っておこう。

『ですが、マスター。東條さんに関わるのはもうやめておいた方がいいと思いますけど……』

 目を閉じてまったりしていると桔梗がそう忠告して来た。

(俺もそう思うけど……向こうから来そうだろ……)

 何故か東條の中で俺は病弱キャラになってしまったようだし、住んでいる階は違うけれど同じマンションに住んでいるのだ。様子を見に来たりするだろう。実際、先ほど『響ちゃんの入学祝したいから今日、部屋に行ってもええ?』と聞いて来た。断る理由はいくつもあったが何となく断ってはいけないと思い、承諾してしまったのだが。

『マスターは女の子の頼みごとに弱いですから……はぁ』

(……すまん)

『とりあえず、東條さんに掲示する情報を決めておきましょう。すでにマスターが異能の力を持っているのを知られているため、さほど気にしなくてもいいと思いますが』

(そうだな……まぁ、これ以上変なことは言わない方がいいか。特にマタタビ)

『ええ、マタタビの件については絶対に秘密です』

 魂に猫がいる影響からかマタタビを嗅いでしまうと酔ってしまうのだ。しかも、猫型になったり人型になったりと姿が安定しなくなってしまう上、俺の性格そのものもがらりと変わる。あれだけは見られたくない。

『えっと、今のところ、東條さんが知っているのは“マスターが魔法使いであること”、“地力が足りないこと”、“地力が足りなくなると動けなくなり、下手すると死んでしまうこと”、“食事と睡眠で地力を回復できること”、“同じマンションに住んでいること”、“音ノ木坂に通っていること”、“マスターがとても可愛いこと”ですね』

(おい、最後の何だ)

『いえ、昨日、マスターが寝ている間に『ほんま可愛い子やなぁ』って言っていたので』

「……」

 今日、部屋に呼んだのは間違いだっただろうか。

(とりあえず、これ以上は秘密にしておくか)

『はい、そうした方がいいと思います』

(問題は……)

『……どうして、そこまでマスターに執着するか、ですよね?』

 そう、東條とは昨日、会ったばかりである。それなのに今日、家に来たいと言った。妖怪から助けられたという恩義を感じているせいかもしれないが。とにかく、まだ会って1日しか経っていないので今は様子をみよう。

(そろそろ帰るか)

『そうですね。家の片づけもしなければなりませんし』

「……そうだな」

 色々と見られてはいけない物が多いので片付けが大変そうだ。




希が響さんを気に掛けるわけや、花陽が響さんに話しかけた理由などは別視点の時にさらっと書く予定です。

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