意識が覚醒した。
「ぁ・・っがぼ・・?」
混濁した意識の中で眼を開け周りを見渡した。
視界が歪んで見えるどうやら水の中にいるらしい。
水の中にいるのに苦しくはない、手を伸ばして見ると仕切りがあるのかそれ以上手を伸ばせない、仕切りを手でなぞっていく。
どうやら俺は大きなカプセルみたいな中にいるらしい。
…俺は一体なんでこんな所に?とりあえずここから出ないと。
そう思った時無意識にカプセル内で正面に手を伸ばし、体内の力を励起し全身にその力を満たし一瞬で文字と図形でできた陣を手に出しなにかを使用した。
真紅の光がボール状で陣から飛び出しカプセルを粉々に破壊し支えのない体が地面に倒れこんだ。
「ぉ・・おええぇぇえ」
そして肺に溜まっていた水を吐きだした。
少し落ち着いてきた、ここはいったいどこなんだろう。
ああ、というかさっきのカプセルを粉々にしたあれは一体なんだったんだ?
「ぁいったぃ・・頭が」
魔力・魔法・術式・強化・戦技・そんなワードが頭に浮かんでくる。
そこでやっと気がついた変な知識があると、現代日本では決してありえない。
空想上の存在、魔法や戦闘の知識のそして自分はそれは擬似経験として刷り込まれ使えるという確信があった。
床に座り込みながら再度手に術式を展開した【フォトンパレット】だ。
刷り込まれた情報にあった魔法の知識を参考に展開した術式に魔力を流し発動する、真紅に輝く丸い10㎝ほどの魔力弾が形成された。
「っはは…嘘だろう?マジか、っわけわかんねぇ」
魔力弾をそのままに周りを見渡す、どうやら15畳ほどの何もない真っ白で殺風景な部屋だ。だが壁や床には、びっしりと何かしらの術式が刻まれている。
部屋の中心には自分が出てきたカプセルのみ、部屋にはあとはどこかに繋がるであろうスライド式と思われるドアのみだった。
「一応、ここ以外にはいけるのかな」
とりあえずここでじっとしてても意味がないって!?
「俺素っ裸だ…つか液体まみれで気持ち悪い。あぁ髪も長い、腰まであるし金髪になってる!?」
混乱しながら立ち上がり自分の体を確かめた。
細い、足も腕も記憶にあるより大分細くなってる?てか俺ちっちゃくない?目線が低い、たぶん140cmぐらいしかない。つまり子供になっている?
嫌な予感が脳裏を掠め股間を見た――
「……あった、ある。俺は男だ、よかった!」
とりあえず男だ、チビでガリで髪が長くても男の勲章も記憶よりちっちゃくても男だ。
何よりもそこで安堵した、わけわからん事態でさらに性別まで意図せず変更されていれば確実にそのまま失神でもしていたかもしれない。
「・・・はは、現実逃避してるな。これは」
いや体はいいだろ、よくないか。とりあえず現状を確認しよう。
俺の名前は天枷 紫苑。キラキラネームとか自分でも思う20歳の男だ。
専門学校2年生、情報処理科。昨日はバイトして帰って夕食を食べて風呂に入って寝た…はず。
特に特別なことなんてない…はずだったよねぇ?
「で、これか」
部屋は密室、ドアしかないし。進むしかないわけだ頼むぜ開いてなかったらどうしようもない。いや先程みたいに魔法でドアを粉々にする方法もあるか。
「魔法、ねぇ」
いや、考えてても仕方ないドアの前まで歩き何かあるかもと思い警戒しながらドアと思われる場所の正面に立った。
と、自動で反応タイプだったのか勢い良くスライドした。
「開いた…か」
どうやら先は部屋らしい、進んだ先にすぐ部屋とか誘われているんじゃないかと心配になってきた。
踏み込み部屋を見るとさっきと同じで全てが真っ白な15畳ほどのかなり広い部屋だった。
中央には金属でできた銀色の台座、更に宙に浮くネックレスがあった。
デザインは銀の台座に赤くでかいルビーのような宝石に鎖が巻きついた感じだ。
俺はそのネックレスに呼ばれたようにフラフラと警戒もなく近づき触れた。
「アァアアアアアアア!!!!」
頭が真っ白になったと思ったら、たくさんの情報の本流が叩きつけられた
あらゆる因子・進化・全属性の使用・長寿・高い身体能力・耐性・再生力・etc
インストール作業は終わったらしい、そして俺は理解した。
どうやら自分は転生したらしい。