今日も貪食   作:4256巻き

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ダークソウル視点だと魔法が使えるかどうかは些細な事に思えてしまう
折れた直剣を持ったやつらがほいほい竜殺し達成するし

そして今回話しが長め


7話 それは馬鹿らしく?

貪食ドラゴンが教室の外壁に張り付き待ち続ける事

数十分後、教室に生徒が入り始めた

 

そしてその中にはルイズの姿もあり窓から見える

貪食ドラゴンを確認するとほっとした様子で近づく

 

「ちゃんと教室に来てたのね・・・・」

 

なにやらルイズは疲れた様子であった

なぜ疲れているのかと文字を見せて問う

 

『疲れているが走ったのか』

 

「違うわよ」

 

 

貪食ドラゴンと一時別れ廊下へと出たルイズは

となりの部屋に住む身体的にもある意味宿敵である

キュルケ、またはツェルプトーとも呼ぶ女と遭遇した

 

召喚した使い魔の自慢をされたが貪食ドラゴンと言う

神聖さ、美しさの全てを強大さに喰らわせたような竜を

自身は召喚した故、悔しさなどが湧く事はなかった

 

明らかな物騒さが滲み出ていないのは羨ましく思ったが

 

その後、ルイズは食堂にて朝食を取るが

キュルケの使い魔自慢で貪食ドラゴンの事が気になり

実際に起きそうで色々と切実な心配事が次々浮かび

食事は普段と比べて喉を通らなかった

 

そして特に騒ぎもなく教室の窓に顔を出す

貪食ドラゴンにルイズはとても安心していた

 

「ねぇ、一応聞くけどここに来るまで

誰かに騒がれたりしなかった?」

 

『メイドに道を聞いた、震えてもいたが』

 

「・・・・あとでそのメイドにお礼を言わなくちゃね」

 

自衛手段の一つすら持たないメイドが震えつつも

貪食ドラゴンから逃げず、きちんと道を教えた

 

そんなメイドにルイズは直接会って

感謝と特別給金を渡そうと心に決めた

 

「そろそろ授業が始まるから席に座るけど

終わるまで大人しくそこ待っててくれる?」

 

『待つだけならば』

 

その言葉が伝わるとルイズは席の一つに座る

 

他にも生徒や使い魔が集まると教師であろう

ふくよかな中年女性が教室に入り教壇の上に立つ

 

「みなさんおはようございます」

 

女性教師が挨拶を始めると生徒達の話し声は止まり

教師の言葉を聞こうと耳を傾ける

 

「使い魔の召喚は無事に成功させたようですね

こうしてあなた達の生涯を共に過ごす様々な

使い魔達を見れてこのシュヴルーズは嬉しく思います」

 

そう言ってシュヴルーズは教室に居る

様々な種類の使い魔達を微笑ましく眺める

 

「おや」

 

眺めていると窓の外に居る紫色の大きな竜

貪食ドラゴンの顔がシュヴルーズの目に入る

 

「ミスタコルベールから注意するようにと聞きましたが

立派で愛嬌のある竜を召喚しましたね、ミスヴァリエール」

 

「・・・・・・はい!」

 

使い魔を褒められたルイズは愛嬌と言う表現に

一瞬固まるが立派と言われた部分だけを純粋に喜んだ

 

この会話にルイズの使い魔召喚を待たずに帰った

幾らかの生徒は羨ましいと、ゼロのくせにと心の内でつぶやき

 

ルイズの使い魔召喚を眺め、貪食ドラゴンのあの体を

見た生徒は単純な羨ましさや嫉妬などは微塵も抱かず

恐ろしき竜のようなものがすぐ近くの窓にいる恐怖と

その恐ろしいものと契約を果たしたルイズに対する認識が

怪物に立ち向い続けた事実によって変わりつつある

 

ちなみにその召喚から契約まで立ち会い続けた

コルベールも中々に高い評価を得ていた

 

その後、土の魔法の説明やただそこにあるだけの石を

錬金と言われる呪文を使う事で真鍮に変るなど

ソウルと密接にある魔術とは別物である魔法大系に

貪食ドラゴンの暇はある程度まぎれていた

 

そして先程行われた錬金の実践を成績が優秀であり

貪食ドラゴンの召喚にて注目されたルイズを

シュヴルーズは名指しで選んだ

 

すると複数の生徒が反対と取れる言葉を口に出して

止めるがそれはルイズに対しての悪口でもあり

それに反発してルイズは錬金の魔法を唱えた

 

「錬金!」

 

バァーン!

 

錬金を発動すると石は爆発に変わり

近くに居たシュヴルーズは爆風に吹き飛ばされ

微笑みを浮かべたまま壁に叩きつけられ気絶

 

遠からずに居た生徒も爆発の被害を受け

爆風爆音になれぬ使い魔達の混乱する騒ぎが起こった

 

「・・・・・・ちょっと失敗したわね」

 

この騒ぎに別室の教師が駆けつけ事を収めた

 

しかし騒ぎの元とされたルイズは荒れた教室の掃除と

その間の魔法の禁止を言い付けられ

教室にはルイズと貪食ドラゴンだけが残された

 

 

一人と一体、ルイズと貪食ドラゴンは

それぞれ役割を決めて教室の掃除を進めていた

 

ルイズは割れたガラスや細かい廃材を慣れない手つきで片付け

外にいる貪食ドラゴンは窓から大きな手を教室に入れて

倒れている教壇、机、椅子などの大きな物を片付ける

 

この掃除の役割分担は貪食ドラゴンが自分から

ルイズに提案し、実行に移した事である

 

「ねぇ、貪食ドラゴン」

 

『なんだ』

 

片付けを続けながらルイズが話しを掛け

貪食ドラゴンは言葉を書いて答える

 

「なんで言ってもいないのに手伝ってくれるの?」

 

『こうしたほうが早いからだ』

 

「・・・・そっか」

 

ただ単純に手早く済ます為と使い魔として手助けであるが

自分の為に動いてくれていると分かるとルイズは嬉しく思った

 

そして少し気が軽くなったルイズは

気にしている事の一つを聞いてみる事にした

 

「・・・・気にならないの?」

 

『なにがだ』

 

「そこらから私を・・・・ゼロのルイズって呼ぶのが」

 

『どこがゼロであるかを知らない』

 

「馬鹿にしないって約束したら・・・・教えてあげるけど」

 

ルイズは顔を俯かせて小さな声で喋り

貪食ドラゴンをちらりと見る

 

『馬鹿にする気も興味もないのだが』

 

「ああぁぁぁもうっ!

言ってあげるんだから聞きなさい!!」

 

「まずゼロの意味は私が唱える魔法の成功率の事よ!」

 

ルイズは貪食ドラゴンの顔を真っ直ぐ見つめて話す

 

「私が魔法を使うと全部爆発して失敗するわ!

使い魔の召喚だって数十回も失敗してから一回だけ!」

 

「・・・・・・これが、ゼロって呼ばれる理由よ」

 

ゼロの意味を伝えるとルイズは沈んだ様子で黙り込み

じっと貪食ドラゴンの返事を待つ

 

魔法がまともに使えないメイジをこの使い魔は

どう思うのかと不安を抱きながら

 

 

・・・・

 

 

『そうか』

 

「・・・・・・・・」

 

『そろそろ食事をしたいのだが』

 

愛嬌のある顔の竜が伝える言葉は

そっけない返しと食事の催促だった

 

もしかしたら聞き逃したのかもしれないと

ルイズはわかり易く話しの内容を貪食ドラゴンに伝える

 

「もう一度言うわ・・・・・・

メイジなのに魔法が全部、失敗魔法にしかならないのよ」

 

『そうか』

 

特になんらかの変化もない返事を返した

 

「不満・・・・ないの?」

 

『ない』

 

「魔法が爆発しても気にしないの?」

 

『しないが』

 

「貴族なのに魔法が爆発しかしないのよ?」

 

『変わった魔法だ』

 

「みんな普通にできて私だけ変なのよ?

そんなのがご主人様でも・・・・良いの?」

 

『かまわないが』

 

ルイズはこの一連の返答を聞くと

呆けた顔からまた困った顔へと戻り俯いた

 

「(どうしてここまで受け入れてくれるの?

あんたに相応しいメイジでもないのに・・・・)」

 

・・・・・・

 

貪食ドラゴンは大きな指でルイズの頭を

コンッと軽めにつついた

 

コッ

 

「いたっ、なにするのよ!」

 

『お前は忘れている』

 

「忘れてるって・・・・なにをよ」

 

貪食ドラゴンが顔の位置を更に上に上げると

大きく縦に裂けたあの体がルイズの眼に映った

 

『お前が呼び出した己は更なる変わり者である事を』

 

「あ・・・・・・そうね」

 

気にしていた心配事が全て吹き飛ぶような言葉であった

 

この貪食ドラゴンの姿からして変わっているどころか

異端とも言える恐ろしき異形である事をルイズは思い返す

その言動からしてメイジかメイジではないかなどは

全くどうでもいいのだろうといま完全に理解した

 

ただ単純に会話して条件を出し、契約してもいいと

思ったから自分自身と契約を交わしたのだと

 

「契約の時にもう認めてられてたのね・・・・

なんだか、落ち込んでたのが馬鹿みたい」

 

ルイズは一人遠回りをして損をした気分にもなるが

とても晴れやかな気分でもあった・・・・しかし

 

ガシッ

 

「・・・・・・・・え?」

 

ルイズは体を外に居る貪食ドラゴンの手に掴まれ

窓から外に持ち出された

 

「ねぇ、なんで私は外に出されているの?」

 

『厨房へ行く為だ』

 

「で、でもまだ教室の掃除が!」

 

そう言ってルイズが教室を見ると割れた窓ガラスや

机や壁に罅が入っているが一通り片付けられている

 

『話しを続ける中、片付けた』

 

「・・・・私は廊下を歩くから教室に戻して、お願い」

 

『このまま行くのが早い』

 

 

このあと、貪食ドラゴンに掴まれたまま厨房まで移動し

降ろされたルイズは食堂へ行き、昼食を取るのだが

少し涙目で貪食ドラゴンの文句をぶつぶつと呟きながら

クックベリーパイを延々と食べ続けた




次回、無理ゲー

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