今日も貪食   作:4256巻き

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貪食ドラゴンのあの小さいほうの頭が
食べ物を食べてたら結構かわいいと思う

でっかいの口ほうは色々と思い起こされる


6話 少し可笑しく?

夜の冷たさを残す早朝の風は日の光りに当てられ

暖かさを感じるそよ風へと変わる頃

 

一体の竜と一人の少女が朝早くから対面し続けていた

 

「はぁ、はぁ・・・・わかった!?」

 

『理解はできた』

 

貪食ドラゴンからの返事を聞くと

声を出し続けていたルイズは一息着いてベッドに座る

 

『朝ではなく昼に起こす』

 

「そうじゃなぁぁぁぁい!!」

 

思わぬ言葉にルイズの抗議は再発するが

魔法学院の生徒としての活動の時間が近い為、抗議は中断された

 

「もうこんな時間じゃない!早く準備しなくちゃ!」

 

『やはり早く起こすべきだったか』

 

「早すぎるのよ!」

 

ルイズはタンスやクローゼットを開けて

着替えを取り出すと貪食ドラゴンが顔を出す窓へ近づく

 

「それじゃあ着替えさせて、貪食ドラゴン」

 

少し間を置いて貪食ドラゴンは答える

 

『服が破れるかとても時間が掛かる事になるが』

 

「自分で着替えるわ」

 

自分の使い魔が強力であることは誇らしくもあるが

その分使いどころに困ってしまう事をルイズは学んだ

 

「それじゃあ私は先に食堂に行くわ

お腹が空いたらメイドか厨房の誰かに言って」

 

ルイズはドアを開き、歩いて行こうとするが

貪食ドラゴンに言う事があったようで振り返る

 

「それと今日は召喚した使い魔の顔見せがあるから

ちゃんと私の居る教室に来るのよ」

 

そう言うとルイズはドアを閉めて行った

 

しかし言われた貪食ドラゴンなのだが

食堂や教室の場所などは全く知らなかった

 

どうしたものかと貪食ドラゴンは考えるが

まず厨房へと向かいその後、教室へ行く事にした

 

厨房ならば食べ物が発する香りで位置が分かる上

それを調理する人間に教室の場所を聞けばいいのだからと

 

行き先を決めると貪食ドラゴンは壁に張り付かせていた

体の上半分を地面に降ろし、地を這う普段の体勢に戻る

 

ズズン

 

そして食べ物の匂いがする厨房へと歩き進んで行く

 

ズシャン、ズシャン

 

しばらく歩き進むと様々な調味料と食べ物の匂いが

色濃く流れる厨房の入り口らしき場所にたどり着いた

 

食材を積んだ荷馬車や樽を入れる為なのか

その扉は両開きの大きな物として作られている

 

しかしそれでも貪食ドラゴンの体が入れる大きさではなく

人を呼ぶ為、扉をコンコンと指で叩きその場で大人しく待つ

 

・・・・・・

 

少し経つと誰か来たようで扉の片方を開け

そこから黒髪のメイドが出て来る

 

「はいどなたで・・・・しょう、か・・・・」

 

黒髪のメイドは貪食ドラゴンを目に入れると

喋りかけの言葉は止まり、次第にふるふると震え始めた

 

貪食ドラゴンはその状態に陥った者を

何十と見てきた故に理解できていた

 

このメイドが現在心に浮かべている思いは恐らく

ああ、私は食べられてしまうのか・・・・なのだろうと

 

しかしメイドを物理的に喰らうつもりはないので

手に文字を書いて震えるメイドに見せる

 

『ここが厨房か』

 

「え・・・・・・ええ!?」

 

メイドは文字を見て伝わった意味にとても困惑した

 

なにせ目の前の竜と言うべきか迷う恐ろしいものが

文字を書き、ここが厨房かと言葉を伝えてきたのだから

 

メイドは落ち着いてきたのかじーっと

大人しくしている貪食ドラゴン見つめる

 

そうしていると少し迷った様子ではあるが

メイドは貪食ドラゴンに声を掛ける

 

「こ、こんにちは」

 

『まだ昼ではないが』

 

「そ、そうですね、おはようございます」

 

『おはよう』

 

挨拶を間違えメイドは少し慌てるが

会話ができると分かり、ある程度の緊張が緩む

 

「あの、もしかして誰かの使い魔さんですか?」

 

『昨日使い魔として呼ばれ、契約をした』

 

「よかった、使い魔さんなんですね・・・・」

 

メイドは安心したようでほっと息を小さく吐く

 

『聞きたい事があるのだが』

 

「はい、なんでしょうか」

 

『ルイズと言う少女の居る教室を探している』

 

「もしかしてミス・ヴァリエールのことですか?」

 

『名前の一部がそうだった』

 

「たしかミス・ヴァリエールが居る教室でしたらあそこです

以前、その教室の掃除をしていましたので」

 

黒髪のメイドは建物の一部に指を向けてそう言った

 

『感謝する』

 

そう伝えると貪食ドラゴンはその建物まで移動して行く

 

建物の前まで来ると裂けた体の部分を起き上がらせ

壁に張り付かせると体の割りに小さい顔が窓と重なり

教室内の様子が伺える位置に着いた

 

しかしルイズの姿は見えず貪食ドラゴンはルイズが来るまで

数十分程の待ちぼうけくらう事になった

 

 

 

貪食ドラゴンに教室の場所を教えたメイドは

なにをしに行くのかと気になり少しその行動を見ていた

 

とても大きく恐ろしい竜ではあるが体の上半分を

ペタンと壁に張り付かせて微動だにしない姿は中々可笑しく

 

会話ができる事も相まって黒髪のメイドは

貪食ドラゴンに感じていた怖さはそこそこ消えていた




実は食べ物食べたかった貪食ドラゴン

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