今回は優美×美結からの美結×健太の回です!
入学試験もすべて終えた2月下旬、私は同じく試験を終えた美結ちゃんと会っている。
何で今?と思う人もいるかと思うけど、実は美結ちゃん、進学する大学がお家から遠く、1人暮らしを始めるらしい。
入学ギリギリでも大丈夫じゃない?って私は最初思ったけど、慣れるために早めに始めるらしく、3月頭にある卒業式を終えた後にお引っ越しするとのこと。
別にこれから会えなくなるわけじゃないと思うけど、お互いに新生活が始まったらなかなか難しいよね。だから今日は美結ちゃんとの思い出、ちゃんと作らなきゃ。
「おはよう」
「おはようっ!」
林崎くんと会うわけじゃないけど、なんとなく今日はおしゃれをした。春らしく黄色いカーディガンに薄紫のスカート。早速お洋服のことを言われた。
「優美ちゃんそれ可愛いね、凄く似合ってるし」
そんな美結ちゃんも可愛い。リボンが可愛いブラウスに薄いピンクのジャケットを羽織り、下はデニムのミニスカート。会う人間違えちゃった?と思うほど(笑)
「ありがとう!美結ちゃんも可愛いよ」
「ありがと。去年買ったけど着る機会なかったから着れて良かったって感じなんだけどね」
あははと笑う美結ちゃん。そんな姿も余計に可愛い。
「それはそうとどこ行こっか?」
そう、いきなり決まったこともあり、どこへ行くとか決めてない。
「う~ん、じゃあさ、じゃんけんして買った方の好きなところで!で、またじゃんけんしての繰り返しでどう?」
我ながら適当だなと思ったけど美結ちゃんは笑顔でオーケーしてくれた。
まあ、たぶんだけどそんな変なところには行かないだろうし、美結ちゃんとならどこでも楽しいしね!
と思った私が甘かった・・・!いきなりいわゆるBL本が売っているお店に行って・・・なんか凄く恥ずかしかったというか、場違いだなと思いつつも、なんだかんだで楽しめたし良かった。そんな私を見て美結ちゃんは布教しようとしてたけど、断りました(笑)
それからは特に普通。お昼食べたり本屋行ったりゲームセンター行ったり・・・色々なところに行ったこともあり、あっという間に時間は過ぎ、じゃあ最後はゆっくりしようという感じで、喫茶店にいる。
「楽しかったけど結構疲れたね~」
「だね。なんか途中から何ヵ所いけるか!みたいな感じになっちゃってたし」
「だね~!ねぇねぇ、ゆっくりしたところで聞きたいことがあるんだけどいいかな?」
前から気になってたことをせっかくだし、直接会ってるときに聞くことにした。
「うん?何かな?」
「うん、あのさ、前にちょっとだけ聞いたかもだけど、大会のすぐ後に入った後輩くんいたじゃない?」
「あ、うんうん」
「私的にはさ、美結ちゃん凄く楽しそうに話してたからもしかしたらあれからその、恋とかに発展したりしたのかなって気になって」
思いきって聞いてみた私だったけど、答えはあっさりだった。
「あー、優美ちゃんからはそう見えちゃってたんだ。結論から言うとね、ただの後輩くんだよ」
苦笑いでそう答えた美結ちゃん。あらら、相変わらず私の勘って全然冴えないね。
「そっか~。あー、なんか面白い話でも聞けると思ったのにっ!」
「あはは、なんかごめんね。そんな優美ちゃんは林崎くんとはどうなの?」
「えっ!」
いきなり過ぎてびっくり!まあ聞かれるだろうとは思ったけどね。
「うーん、えと、ちょっと恥ずかしいけど・・・」
「うんうん」
「じゅ、順調です・・・!」
「おお~!」
いざそういうことを人に言うとなんか恥ずかしいっ!
「でもでも!まだ付き合ってはないからね!?」
「うん、知ってた」
「えっ!?」
「ふっふっふ、全部まゆちゃんから聞いてました!」
え、じゃあ私が今言わなくても・・・。
「どんな反応するのか見たかったの!ごめんごめん!」
そうは言いつつも笑いを堪えきれず、手で口を押さえても笑い声が聞こえる。
「もぅ~!亜由美もだし麻由美ちゃんもだし、みんなして私をからかわないでよ~!」
そう私は言うけど、私の性格的にいじられキャラが定着しちゃってるからなあ・・・大学行ってもこんな感じなのかなあ。
そんな私を見ていた美結ちゃんは、何故かちょっと真剣な顔になり、改めて私へと話しかける。
「やっぱり優美ちゃんはさ、可愛いし、一緒にいて楽しいし、優しいし、愛されてるしキャラだし・・・林崎くんが好きになっちゃうのって私もなんかわかる気がするなあ」
「えっ!そ、そんなことないよ!いつもドジでおっちょこちょいでみんなに助けてもらってばっかりで・・・」
「うん、だからだよ。いつも頑張って頑張って、いっぱい頑張ってるからときにはそうなっちゃう。そんな頑張っ
てる姿が好きなんだよ」
美結ちゃんからとは言え、なんか顔が赤くなっちゃう。そんな私を横目に美結ちゃんは、何故か苦笑いでこう言う。
「私もこんな固い性格じゃなくて、優美ちゃんみたいな子だったからなあ・・・」
私に言ったわけではない。どこか遠くを見ながら呟いた感じ。
「私みたいだったら」・・・?
だったら・・・?
「あ・・・」
私は1年くらい前に、林崎くんに言われたある言葉を思い出す。
『キミが知らない何かがあるのは本当なんだ』
さっきの美結ちゃんの言葉と、林崎くんのこの言葉を合わせると、私はある結論にたどり着いていた。
「・・・美ちゃん!」
「え!?」
「どうしたの?」
っと、考え過ぎて美結ちゃんの言葉が聞こえてなかったみたいで。
「あはは、ごめん、ボーッとしてたっ!」
私は自分の考えが気がつかれないように、笑顔で答えたけど、美結ちゃんの表情を見たら私の考えていることは見透かされてて、美結ちゃんもちょっとしまった、という顔をしてた。
× × ×
私のちょっとした失言もあったけども、私たちはすぐにいつも通りに戻り、それからまた色々話した後、時間も時間になったため、優美ちゃんとお別れ。
「元気でね、美結ちゃん!ちゃんとご飯食べるんだよ!」
「もう、なにそれ!私のお母さんじゃないんだから」
「あははっ!じゃあ名残惜しいけど、バイバイだね!」
「うん、ありがとう!」
最後に、優美ちゃんは凄く嬉しい言葉を言ってくれる。
「美結ちゃん、『さようなら』じゃなくて、『また』だよっ!」
「そう、だね・・・!『またね』!」
そんな挨拶を交わし、優美ちゃんとお別れをした。
お別れした後、ちょっと口が滑っちゃったかなあと思った。あんなこと言うつもりなんてなかったのだけど、なんかついつい。
いつかはちゃんと言えたらなあ、とは私も思っていたり。あのときこんなことがあって、みたいな感じの笑い話に、ね。
駅の方へ向かっていくと後ろから声をかけられた。
「あれ?美結センパイ?」
「え?」
声の方を振り向くと、ムラくんがいた。
「偶然ですね!今帰りですか?」
「うん、ムラくんも?」
というわけで、途中までだけど一緒に帰ることに。
普通に雑談をしていたけど、話が一旦途切れるとちょっと真剣な顔になるムラくん。
「あの・・・もうお話する機会ってないかと思いますし、せっかくですしちょっと聞いて欲しいことがあるんです」
改まっていることを察するし、かなり大事なことかな。
「うん」
「あのですね・・・」
話はあゆちゃんのことだった。私は以前からムラくんが憧れているというか、恋愛の意味で好きとかそういうことは彼から聞いていた。
それで今回の相談と言うのは・・・。
「色々自分なりに考えたら、やっぱり亜由美センパイのこと好きだなって確信したんです」
「それでやっぱり好きならボクだって告白してお付き合いしたいんです。でもあんまり経験とかないですし、どういうタイミングでとかわからなくて・・・」
私は静かに聞き続ける。ムラくんの話はまだ続く。
「友達とかにも聞いてみたんです。そしたら『大学行ったら出会い多いだろうし今のうちがチャンスだよ』って感じで。もちろんそれも考えたのですが、自分としてはまだ早いかと思って・・・」
「だからセンパイには今日会わなくても近いうちには聞くつもりでした。女性ですし、なにより亜由美センパイのお友達ですし・・・」
・・・なるほど。そかそか。私は男の子じゃないからムラくんの気持ちが完全にわかるってことじゃないけど、確かにあゆちゃんのことなら結構わかっているつもりではある。
私は考える。だって可愛い後輩の悩み事だもの。それに親友のことでもあるし。
しばらく考え、私は答える。もちろん正解がどうかなんてわからないけど。
「あのさ、結論としては私もまだ告白は早いと思う」
その答えに対してちょっと驚くムラくん。
「そうなんですか?」
「うん。なんとなくだけど、あゆちゃんの方も今言われても困っちゃうんじゃないって。経験ないのはムラくんだけじゃなくてあゆちゃんもだしね」
「そう、ですか」
少しホッとした表情になる。きっと、自分と同じようなことを思っていることに安心した感じかな。
「うん。あ、そうそう、話は変わるけどさ、実は林崎くんと優美ちゃんってまだお付き合いしてないんだって」
「えぇ!ホントですか!・・・って思いましたけど、確かにあの2人ならなんかわかる気もしますね」
私もまゆちゃんに聞いたとき同じく感想でした(笑)
「うん。お互いがお互いに困らないようにいっぱいいっぱい話し合って、決めたらしいの。もちろん、我慢出来なくなりそうなときもあるだろうけどね」
そう伝えた私に対して、ムラくんは疑問を投げてくる。
「でもそれってあの2人だからですよね?お互い好意がわかってる状況だから出来る判断って感じで。友達が言った通り、待ってたら失敗することもあるかなって」
最もな疑問。でも私はムラくんとあゆちゃんの2人を見てこう思う。
「心配いらないんじゃない?それは」
「え!どうしてですか?」
「大学行ってもあんまり出会いないはずだよ」
「えぇ?」
「だってあゆちゃん女子大だから」
これは本当。嘘かと思った?うふふ!
「・・・そうなんですか~!あ、いや、あんまりこういうこと言うのもって感じですけど、それは朗報ですね!」
「でしょ?合コンとかもするように見えないし、他の男が寄りつかないからきっと頑張ればムラくんにメロメロになると思うかな」
「それに・・・」
「はい!」
・・・と、続きを言おうと思ったけどやめることにした。だって自分であゆちゃんにぶつかって、直接感じて欲しいことだったから。
「・・・なーんでもない!」
「えぇ!何ですか気になりますよー!」
「何回聞いても教えないから」
「センパイってちょっとケチなところありますよね~!」
む・・・どさくさに紛れてなんてこと言うの、この後輩くん!
「そんなこと言う悪い後輩くんはもう相談されても無視します」
「うわあ!それだけは勘弁して下さい!さっきのなかったことに!」
「まあ今回だけは、許すよ。今回だけだからね?」
「良かったッス!あ、というかセンパイこの駅ですよね?」
と、いつの間にか私が降りる駅に着いていたみたい。
「あ、本当だ」
話に夢中で全然気がつかなかった。
「あ、センパイ!」
「うん?どうしたの?改まって」
「いえ、その、学校ではもう会えるかどうかわからないですし、今言わせて下さい!」
そう言ったムラくんは、笑顔になり私へと話す。
「ご卒業、おめでとうございます!」
「あ・・・」
なんか全然言われると思ってなかった。だからなんか照れ臭いね。もちろん嬉しいけど。
私もそんな彼に向け、笑顔で返事。
「ありがとう」
瞬間、ドアが閉まる。返した言葉はそれだけだったけど、私の気持ち、十分伝わってたら嬉しいかな。
頑張ってね、ムラくん、それとあゆちゃんも。
・・・って私が一番出遅れてる立場でした。大学、いい出会いあるといいなあ。
あ、ちなみにだけど、さっき言おうと思って言わなかった言葉はね。
『それに、私から見たら2人も両思いに見えるよ』
はい!というわけで本編は終了!
ちなみにですが、今話で美結ちゃんと健太くんは出番終了です。つまり、亜由美と健太の恋愛模様もこんな感じで終わりです。麻由美と柳さんは付き合うまでやりましたが、この2人はこれでいいかなあ、って感じで(*^_^*)続きも特に書く機会はないので、あとは読者様の想像にお任せします!
では、また次話、卒業式回となります(^○^)