今回は麻由美のお話。受験を終えた麻由美は圭と・・・というところから始まります。
2月も下旬。この時期になるといわゆる一般入試で大学へと受験しているものの合否が出てくる。
俺もその1人で夏休みからの猛勉強の成果もあり、見事志望校へと合格した。つまり優美へと告白出来る挑戦権みたいなものを俺は得た。
ただ優美の志望校の試験はまだ終わってなく、その学校の合格発表はなんと俺たち3年生の卒業式に日。
優美とはその話を既にしており、こちらの進路が先に決まったとしても、優美の進路が決まるまでは言わない約束にした。
それに伴っていわゆる「勝負の日」も卒業式の日。いいのか悪いのか、それはわからないが、その日に付き合えることになったとしたら、一生忘れない記念日になるだろう。そんなこんなで受験が終わった俺。今日は以前から麻由美と予定していた、生徒会室の片付けをした。立つ鳥跡を濁さずってわけじゃないが、必要のない書類や私物等を片付けた。
あ、一応だか麻由美も進路は決まってます。
「こんなもんかな~?」
「だな。捨てるものももうないだろう。ってかキミの私物多すぎだろ!1年しかいなかったのになんであんなにあるんだ?」
漫画やら小物やらなぜあるんだというものがいっぱい出てきた(笑)
「だって~!友達に貸したの持って帰るのめんどくさいんだもん!」
会長だからって誰も何も言わないから、ってか!
「まあ、今日ちゃんとどうにかしたから許してやるか・・・」
「あはは~!」
「とりあえずお疲れ様。ほら」
俺はさっき買ってきた飲み物を麻由美へと渡す。
「お~!さすが!気が利くね~!」
飲み物を飲みながら少し雑談。せっかくだし、改めて聞きたいこともあったし。
「なあ」
「ん~?」
「柳さんから告られたか?」
「ん~?いや?」
「マジか」
「うん、マジだよ~!」
そう答えた麻由美。最初は普通の顔だったが、だんだんと残念そうな顔になっていき、聞いてもいないのに愚痴みたいな感じで色々話される。
「いやね~、受かった日すぐにたかくんに電話したの。志望校合格出来たのもめっちゃ嬉しかったしさ、私だってもちろん何かあるかなあ、って期待して電話したの」
「なるほど」
「でね、ちょっと話した後にね、たかくん何か言いたそうな感じになったんだけど・・・」
「何もなかったんか」
「そうなの~!これは絶対に『今すぐ会いたい。話があるから』って感じのセリフが来ると思って私もスッゴい緊張してたら何も言ってこないんだもん!」
麻由美の気持ちももちろんわかるが・・・うん、柳さんの気持ち、同じ男としてよくわかるぞ!
「結局その日はそれでバイバイしちゃって。せっかく志望校に合格してうきうきになった気分ががっくりしちゃった、って感じかな~?」
「そっか・・・」
ただこれで言えることは、柳さんはいつ麻由美に告白してもおかしくないような状況になったとも言えるか。いや、麻由美が言う「何か言いたそうな感じ」がそれとは確実に言えるわけではないが・・・。
麻由美も同じことを考えていたのか、さっきのガックリとした感じからすぐに立ち直る。
「でもさ、その日も家に帰ってから思ったんだけどね~、普通に考えたらこれっていつ告白されてもおかしくないって感じだもんね~!」
めちゃくちゃテンションも高く、明るい表情かつ、少し恥ずかしそうな感じで麻由美はそう言う。普通の人がそんな発言をしたら、自意識過剰もいいところだが、麻由美と柳さんを知っている俺に関してはそんなことはない。
麻由美はもう何年も前から柳さんが好きで、疎遠になってしまいそうになっても必死にしがみつき、ダメになりそうになりながらも前以上の関係になれた。
手伝ってと言われてから特に大きなことを俺はしたわけではないが、やっぱり嬉しいものは嬉しい。
「もうアレだな」
「う~ん?」
「もうキミと柳さんのことで手伝うことなんてないもんな」
「あ~!うん、そうかもね~!というか、色々ありがとう~!」
麻由美が「ありがとう」と言ってるのはきっとダブルデートのこと。もしあの時観覧車で2人きりになってなかったら、もしかすると今の微妙な関係だったとしたら・・・。
「いや、こちらこそ。ってかさ、もう自分から柳さんに告っちゃえば?」
どう考えても成功する告白ならしてもいいんじゃね?ということでそう聞いたが、麻由美は考えるまでもなく。
「それ絶対しないよ~!女の子はみんな告白されたい体質だも~ん!それにさ、男の子だってプライドみたいものがあるでしょ?男なら自分から言わなきゃ!みたいな感じでさ~!」
そう言いながら俺の方をじーっと見る麻由美。
確かに考えてみれば優美から告白されるのはなんとなく違和感があるというか、男が告白されるのはなんかアレというか・・・。
「・・・一理あるな」
「でしょ~!わかってくれればそれでよし!ふっふっふ、林崎くんも、男なら頑張ってね~!楽しみにしてるよ~!」
「お、おう!」
そう言われた俺は、優美へ告白するシチュエーションを頭の中で思い浮かべてしまい、なんとなく恥ずかしくなっ
てしまった。
× × ×
生徒会室の片づけを終え、林崎くんと少し雑談し私はいつも通り自転車で帰宅中。よくよく考えたら、彼とも自然にお話しできるのは普通に今日が最後だったんだな~!卒業式で話す機会なんてきっとないだろうしね。
彼にはホントにお世話になったかな。生徒会のこと、恋愛のこと、それ以外にも色々・・・。彼のおかげで私は色々な一歩が踏み出せたし、本当に感謝してる。
よくある漫画とかアニメだったら、私は彼に告白して、それでフラれて、、ってパターンになるけども残念ながら私にはすでに好きな人がいたのでそれはないけどね。
でも好きな人がいる私でも、彼が凄く魅力的に見えたのは事実。好きな人がいるのに、美結が好きになってしまったというのもなんとなく私はわかってしまう。
そんなことを思いながら走っていた私は、ついつい笑顔になり、そして1人で一言つぶやく。
「・・・ありがとう!」
「何がありがとうなんだ?」
「へっ?」
振り向くとなんとそこには・・・。
「たかくん!?え?えぇ!?」
まさかの出来事にびっくりの私。私と同じく自転車に乗ったたかくんがそこにはいた。
「いやあ、麻由美が見えて最初はすぐに話しかけようと思ったけど、ちょっと驚かせたら面白いなあって思ってて」
「ちょっと~!危ないでしょ!」
・・・って私も前に優美へこういうことやったなあ・・・うん、優美ごめん!
「まあまあ」
「むぅ~!」
それから私とたかくんは自転車から降りて転がしながらしばらく歩く。と、家の近くにある小さな公園のところでたかくんは止まった。
「ん~?どしたの?」
たかくんも駅までの道のりでいつも通ってるだろし、特別止まるようは場所でもない気がする。なにかあったのだろうか?
「なんか珍しいものでもあったの~?」
私は特に何も思うことなく、普通にそう聞いたが、たかくんはいつもと様子が違うようで。
「いや、別に。ただな、ここって俺たち2人が初めて会った場所だったなあって。あ、麻由美はこんなちっちゃかったから覚えてないか。あはは」
確かにこの公園でよくたかくんとかそれぞれのお母さんとよく遊んだ記憶はある。初めてのことは確かに全然覚えてないけどね。
「なんかそう考えると私たちにとっての思い出の場所なんだね~!」
「だな・・・なあ、ちょっと寄ってかないか」
「え・・・」
ただ、ただただたかくんはそう言っただけだ。だけど、その何気ない一言、それと彼の雰囲気には何か色々なことが詰まっているような気がして・・・。
後で思えば私はこの時「覚悟」を決めたのだろう。
「・・・うん」
私はたかくんに導かれるように、公園にある小さなベンチへと移動する。
「・・・わからないけどさ」
なんの前触れもなく、そう話すたかくん。
「・・・うん」
「あのとき、初めてキミを見て、それで話しかけたときにはもう心のどこかで興味があったんだと思う」
彼も特に何か返事をして欲しい雰囲気ではなく、ただただ聞いて欲しい感じだから、無言で話を聞く。
「でも今まではその感情がなんなのか、それはよくわからなかった。わかっていたことは『一緒にいたい』『離れたら寂しい』とかそういう感情だった」
そこまで話したたかくんは、今までより一層真剣な表情になり、私に顔を向ける。自然と私にも緊張が走る。
「・・・麻由美とまた仲良くなって気がついたんだ。どう考えたって異性に対する『そんな感情』って好き・・・ライクの好きじゃなくて、ラブの好きだよなって」
そこまで聞いただけ、この後に来る言葉は聞くまでもなくわかってしまう。だからもう私はだんだんと・・・。
「麻由美」
「・・・うん」
嬉しさで出た涙を必死に堪え、そう一言だけ。
「好きだよ。妹とか友達とか、そういうんじゃなくて、1人の女性として好きだ。お付き合い、して下さい・・・!」
手は膝の上に置いたまま、少しだけ頭を下げ私がずっと待ってた言葉を告げた。
その言葉を聞いたとき、何故か、何故だかわからないけど、小さい頃に一緒に遊んだ記憶、学校に通うようになって一緒に登校した記憶、雨の日、傘を忘れたときに一緒に入った記憶、話しかけても無愛想にされちゃった記憶・・・色々な、彼との記憶が私の頭の中を駆け巡った。
きっとずっとずっと、ずっと、どんな時も私は彼のことが好きだから・・・そんなことを思い浮かべたのだと思う。
待って待って、待ち続けて・・・頑張って頑張って、頑張り続けて・・・ようやくたどり着いたゴールでありスタート。
もちろん嬉しい。嬉しくなくないわけがない。それでも私はここまで来るのになんでこんなに時間がかかっちゃったのかなあ、ってまず思っちゃって。
「遅いよ、バカ・・・」
だから私はそう言ってやった!だっていつまで経っても言って来ないでこのまま終わっちゃうのかと思ったんだもん!その時のたかくんの驚いた表情、私は一生忘れない。きっと「もしかしてもう相手が出来たの!?」って思ったんだと思う(笑)勘違いしちゃってもまずいし、私はすぐに次の言葉を彼へと告げた。
「ありがとう・・・こちらこそよろしくお願いします・・・!」
その時にはすっかり嬉し涙なんてなくなっていた。笑顔で、とびっきりの笑顔で、私の気持ちがぜーんぶ伝わるように、ね!
「・・・私もたかくんのこと、大好きっ!!」
公園にある桜の木には小さなつぼみがあるように、私たちの中でもきっと、将来大きな花が咲くような、小さいけれど強くたくましいつぼみが芽生え始めていた。
良かった・・・2人がこうやって幸せになれて( ;∀;)
・・・ってまあ、作者の自分が言うのもおかしいですが(笑)
最初2人を出したときは、作中でくっつけるか、読者様の想像に任せるか迷いましたが、やっぱりキレイに終わりたいなあ、と思い、このような形になりました!
実はこの話、1回全部書き終えた後に誤って消えてしまい(柳さんが麻由美に好きと言ったシーンより後)、また新たに書き直すハメになっていたんです・・・。
書いたことを思い出しつつ改めて書いたのですが、やっぱりなんとなくですが最初に書いた方のがよかったなあ・・・(笑)まあ、何を言っても遅いですが・・・。