私たちの「舞台」は始まったばかり。   作:かもにゃんこ

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予告通りの体育祭回です('ω')ノ

え?普通体育祭は秋じゃないかって?うちの母校は5月だったのでそれに合わせた感じです(笑)

体育祭回ですが、もちろんメインは圭と優美のイチャイチャになります(*^▽^*)


「私にはいくらでも優しくしていいからね」

もう夏もすぐそこまで来ている5月も下旬、わが校では毎年恒例の体育祭が開催される。今年は強い日差しが照り付け、なかなかしんどそうになりそうな感じだ。

 

うちの学校の体育祭はクラス対抗。1年から3年まで同じ組の合計得点で競われる。よくある紅組白組対抗ではなく、合計6組、色も緑やオレンジなど様々。

 

また、行われる競技もなかなか個性的。まあ、そのあたりは実際に行われている様子を説明する感じで。

 

ちなみにではあるが演劇部の方はどうかというと、優美から聞くに特に問題なくやれているらしい。3年生と1年生しかいない部活で、近々3年生も引退するのでちょっと心配ではあったが、彼女の表情や言い方から察するにそれは本当なのであろう。

 

 

『続いての競技、「2人2脚」に出場する方は入場門へお集まりください』

 

放送部の非常に通りやすい放送が流れ、出場するものは移動する。放送部と言えば去年の文化祭、今年の春公演とお世話になった。聞いた話によると、新入部員も何人か入ってくれたらしい。

 

っと、忘れていたが俺も出場する競技だったわ。クラスの人たちから「頑張れ」とか声をかけられ他に出る人と共に移動する。どうでもいいが、体育祭の時って普段話してないような人ともなんか話せるよね。終わったらまたいつも通りに戻るけど。

 

前の競技も終わりそうになり、集まった人たちは準備をする。え?「2人2脚」ってどんな競技って?ざっくり説明するとお互いに右足と左足を縛り合い、向かい合わせになりながら進むというもの。簡単そうで難しい。

 

俺はいつもの友人Aとコンビを組む。

 

「林崎はこれ何回目?」

 

「3回目だな」

 

運動神経あんまないから、こういう競技で頑張らないとって思って1年からずっとやってる。

 

「お、マジか。俺初めてだから頼むな!」

 

「頼むとか言われて出来る競技でもないんだがな」

 

俺はお前を引きずって進めというのか!

 

「あはは、確かにな。ってかさ」

 

「うん?」

 

「こういう競技やるときってやっぱり、あの例の好きな人とと一緒にやりたいんじゃねえか?」

 

「あー・・・」

 

図星と言えば図星か。別にこの友人をどうとかいうわけではないが、正直優美と一緒だったら凄く楽しそうとか、あわよくば・・・。

 

「あ、今あわよくばわざと倒れて抱き合おうとか考えただろ!」

 

「いや!俺は彼女をそんな目で見ないぞ!」

 

とか言いつつバッチリ考えてましたけどね!

 

「ホントかあ~?・・・っと、もう始まるな」

 

そんなことを言われてしまったもんで、競技が始まるまでずっと優美となら、って考えてしまった。

 

 

× × ×

 

 

午前に2人2脚に出場した俺は、午後にもう1つ、「たま止め」という競技に出場。これはだな、籠に入る球を指定された範囲に立って体のどこでもいいから止めるというもの。6チームが2対2の3組に分かれて、攻守を交代し時間を測って行う。

 

実は少し嬉しいことがあった。この競技をやってた場所が優美のクラスに近く、なんと敵にもかかわらず彼女から応援をもらった。やっぱり好きな人からの応援って嬉しいもの。

 

・・・まあ、優美の応援は結構大きい声だったため周りにも聞こえ、俺はクラスの人にからかわれ、優美は応援をした後に優美のクラスの人たちに色々言われシュンとしちゃってたりで、色々大変ではあったが・・・。

 

競技もだんだん少なくなっていき、あと2つを残すのみとなった。

 

『次の「輪っかバトンリレー」に出場する人は入場門へお集まりくださーい!』

 

あ、そういえばこの競技、優美が出場するんだったな。俺は少し前の方に自然と移動。さっきの二の舞にはなりたくないからクラスを応援して、優美への応援は心の中でだけど。

 

あ、そうだ、この競技も説明しないとな。リレーはリレー・・・なんだが、バトントスというか次走者につなぎ方がおかしい。走者はフラフープを持って走り、バトンゾーンに入ったらそのフラフープを数m先の自チームのコーンに入れる。入らなければまた投げ、入れば次走者がスタート出来るという感じ。全然入らなくて一向に終わらない年があり、それ以降に3回入らなかったら5秒後にスタートという現行ルールになったらしい。

 

競技が始まり、1発で決めるものもいれば3回外すものもおり、様々。うちの組はいい位置。と、よく見たら次は優美の番らしい。

 

優美の前の走者は1発で決め、優美のクラスは1位に。絶対勝ってやるというやる気に満ちた表情で優美はバトン(フラフープ)を持ち、駆け出す。

 

今まで知らなかったが速い。なんで運動部に入らなかったというくらい。彼女の知らないことなんてまだまだいっぱいあるんだなあと。

 

心の中で応援しながら優美はバトンゾーンへとたどり着く。俺は心の中で「頑張れ!1発で決めて!」と、応援。クラス応援するなら外せって思えって話だよね(笑)

 

1回目惜しくも外れた。と、優美がバトン(フラフープ)を取りに行ってる間に2位の走者もバトンゾーンへ。優美も再び定位置に戻り、2人が一斉にバトン(フラフープ)を投げる。次の走者がアンカーのため、入った方が1位か・・・!俺だけでなく、なんとなく会場は緊張感へと包まれる。

 

優美が投げたのは真っ直ぐ、コーンに向かって進む。入る!!と思ったのもつかぬまだった。なんと隣のバトン(フラフープ)に接触してしまった。互いに方向が変わり、無情にも優美の方はコーンの外側、2位チームの方はそのまま自チームのコーンへ。

 

「あっ・・・!」

 

そんな出来事もあり会場も一瞬ではあるが静寂しており、優美のその声は俺まで届いた。驚きや焦り、悔しさ、色々な感情が込められていたその一言。

 

だが勝負はまだ終わりではない。1位は絶望とはいえ、まだ上位だ。が、そんなことが頭に思い浮かび焦ったかどうかはわからないが、バトン(フラフープ)を取りに行く途中、優美は思いっきり転倒してしまった。

 

「頑張れ!」

 

あっ!っと思ったときには声に出ていた。でもこんなときくらいは敵味方関係なく応援したっていいじゃないか!

 

ちなみにだが、この声に対する周囲の反応は一切なかった。ただ「頑張れ」と言っただけだったし、誰かに言ったかなんていうのはわからなかったからだろう。

 

結局、もう一度だけ投げる機会があった優美ではあったが、結果は外れ。最終的には4位まで落ちてしまっていた。

 

順位よりも俺には気になることが他にあった。優美は転倒した際に、膝を怪我したみたいで、グラウンドから退場する際痛がっているように見えた。

 

ただ、俺が心配するようなことではなく、今日に関してはクラスメイトがどうにかこうにかしてくれるだろう。

 

輪っかバトンリレーが終わり、俺はクラスの応援席の後ろの方へ移動していたら、偶然、優美の姿が。特に無視する理由もないんで声をかける。

 

「大丈夫?」

 

「う、うん!見た目はかなり痛そうかもだけ大丈夫だよっ!」

 

そう話した優美ではあったが、顔は言葉とは違い、痛そうだった。

 

「平気?一緒に行こうか?最後の競技は出ないし」

 

「ううん、大丈夫!クラスの子にも付き添いしようかって言われたけど、迷惑かなって思って断っちゃったから・・・」

 

それを聞いた俺に迷いはなかった。気がついた優美の手を取って一緒に歩き出していた。

 

「一緒に行く。別に俺は迷惑じゃない」

 

「え!?」

 

「それにさ、次の競技なんかより、キミの方が大事だから」

 

言った後思ったが、何恥ずかしいセリフ言ってんだ!と。

 

「あ・・・うん、ありがとう・・・」

 

優美はそう笑顔で答えてくれた。

 

もしかしたら優美のためではなく、自分の自己満足のためかも知れないと2人で歩いている途中に思ったりもした。

 

外の水道で足を洗い、保健室へ。と、先生がいない。

 

「あれ、どうしたんだろう?」

 

「もしかしたら他で何かあって外出てたりするかなあ?」

 

「でもとりあえずそのままじゃマズイよな」

 

「う、うん・・・」

 

とりあえず消毒とか絆創膏とかありそうな場所を探すとすぐに見つかった。

 

漫画とかならドヤ顔で「俺がやるよ」って言う場面ではあるが・・・。

 

「えーと・・・自分でやった方が良かったりする・・・?」

 

なんかまあ、その、同性ならまだしも異性の肌に直接とか悪い気がするし・・・。

 

「う、うん。なんか逆に気を使わせたみたいでごめん」

 

いや、そもそも俺が付いてきたのが悪かったか・・・?

 

とりあえず渡した消毒液を膝に出す優美。

 

「うわっ!シみるっ!」

 

と、同時に手に力が入ってしまったらしく、勢いよく消毒液が・・・。

 

「あ!」

 

「うわあっ!」

 

「大丈夫!?」

 

咄嗟の判断で近くにあったティッシュで足に付いた消毒液を拭く俺。

 

「あ・・・」

 

彼女の足に直接触ってることに気がつき咄嗟に手を引く。

 

「ご、ごめん!」

 

「ううん!大丈夫!私が悪いんだしっ!」

 

とここで2人で見つめあって固まる。数秒たった後、優美が口を開く。

 

「あ、あのねっ!」

 

「え!?」

 

「その、別に嫌じゃ・・・いや、むしろやって下さい!」

 

と言うわけで手当てをすることに。

 

 

「こんな感じかな?」

 

「うん、ありがとう!」

 

簡単ではあるが、消毒液を拭き取った後、大きめの絆創膏を張り完了。「ふぅ」っと思わず一息。

 

だってもうドキドキしっぱなしだっだんだよ!足は綺麗だし、なんかいい匂いするし、可愛い反応はするし・・・。

 

それでも優美が喜んでくれたのは嬉しかった。まあ、下心も少なからずあったけど(笑)

 

「どうする?戻れる?」

 

一応まだ体育祭中ではあるしね。

 

「うーん、戻れるけど、もうちょっとこのままがいいかなっ!」

 

出た!小悪魔優美ちゃん!堂々サボり宣言!

 

「あはは、そっか。せっかくだし、俺も戻りたくないかな」

 

何がせっかくなのかって感じ。

 

「じゃあもうちょっといようねっ!」

 

満点の笑顔。ただいつも違い、悪い笑顔って感じかな。

 

「あ、そう言えばさ!」

 

「うん?」

 

優美は前に麻由美が怪我をして、俺が保健室まで連れていって・・・の話をした。俺からは言ってないからおそらく麻由美から聞いたのだろう。

 

「そんなことあったなあ」

 

「今だから言えるけどさ、あのとき麻由美ちゃんに取られちゃう~!ってちょっと思ったんだよ?」

 

「え!」

 

驚く俺。

 

「だってさ、麻由美ちゃん嬉しそうに話しててさ、ヤバいって思ったっ!」

 

そう言えばあのとき、麻由美から『勘違いしちゃうよ~!』って言われてのを思い出した。あれ、マジな話だったのか、と今さらながら思うと同時に優美には悪いとも思った。

 

「あ~、なんか今さらになっちゃうけどなんかごめん・・・」

 

「林崎くん誰にでも優しいからね、女の子はそういうのに弱いからあんまり優しすぎちゃうのはダメだよ?」

 

なんか悪いことしてないのに悪いみたいになった。いや、悪くないよね、俺?まあ、ノリで謝るか・・・。

 

「あ、はい、気を付けます」

 

「うん、よろしい!あ、ちなみにだけど・・・」

 

「え?」

 

「私にはいくらでも優しくしていいからねっ!今日みたいにっ!なんてねっ!」

 

優美はちょっと頬を赤くして目を反らした。優美なりに、恥ずかしながらも頑張って言ったのだろうと思うとこっちまで恥ずかしくなる。

 

「あ、う、うん。お、おーけー・・・」

 

と、扉がガラッと空いた。

 

「もう見てられないわ~!イチャイチャしちゃって~!」

 

「「え!?」」

 

そこには保健の先生がいた。もしかして、途中から、それも結構前から聞かれてたみたい・・・?

 

「ほらほら、歩けるんでしょ!戻った戻った!ベッドはあるけどここは『そういう場所』じゃないからねー!」

 

「はいっ!」

 

「すいません!」

 

2人は逃げるように保健室を後にした。

 

戻るときに優美に聞かれた。

 

「ねぇ林崎くん。『そういう場所』って何だろう?」

 

「そういう場所ってのはなあ・・・って!言えるかっ!」

 

「えっー!わからないから聞いたのにぃっ!」

 

キミはまだわからなくていいよ!

 

 

・・・ちなみに、体育祭ではあるが、俺の組と優美の組は最後の競技でトチり、最下位と5位になった。戻ったときには競技は終わっており、何故か、負けたのは俺のせいにされた。うん、理不尽。




ちょっと今回は長くなりました。でも2話に分けるほどでもないし、ってことで1話にまとめましたが。

実はこの話、劇中でも優美が言っていた、麻由美のあの回をあいた後思いついた話なんです。あの時圭が「優美だったら」と言ってたことを実現したかったのと、優美の気持ちを考えたらやった方がいいな、という感じで(*'▽')

お話が長くなるとネタも尽きますが、こうやって前の話を新しい話の中で出せたりするのはいいですよね!

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