私たちの「舞台」は始まったばかり。   作:かもにゃんこ

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さて、依頼も終わり今話から演劇要素はほぼなくなります。

え?「舞台」って入ってるのにタイトル詐欺じゃんか!って?・・・まあ、気にしないでください(笑)


「だから焦る必要ないかなって」

「おはようっ!」

 

「おはよう」

 

優美からの依頼が完了した次の日、電車の時間を合わせて学校の最寄り駅で待ち合わせしていた。

 

学校まではたった10分ほどではあるが、俺にとっては本当に大切な時間になるはず。

 

自然に2人で並んで歩き出す。最初のうちはちょっと緊張もあるのか2人とも無言。でも優美も微笑んでいるし、なんとなく2人でいるだけでも幸せだなあって俺は思った。

 

ちょっと歩いていると、前に手を繋いだ男女の姿が見える。と、そんな姿を見ていた優美から声がかかる。

 

「ねぇねぇ、あの人たちはどうみてもカップルに見えるけどさ」

 

「うん」

 

「私たちはどうなんだろう?」

 

「うーん・・・」

 

なんとも言えない質問をしてくるなあ・・・。

 

ぶっちゃけ言うとだが、俺がもし俺たちのことを見ていたらカップルには見えないと思う。手を繋いでいない初々しいカップルとかもいたりするけど、そういう雰囲気にはちょっと見えないしなあ。

 

ってかまあ、実際カップルではないが。でも優美からしたら、形の上では付き合ってなくても、そう見えたらやっぱり嬉しいのだろう。実際俺もそうだし。

 

なので俺は優美が喜ぶであろう答えをする。

 

「男女2人で歩いていたら普通にカップルに見えるんじゃないか?」

 

それを聞くと優美は笑う。

 

「えへへ、そっかあ、嬉しいなあ・・・!」

 

この笑顔を見れるだけでもああ言って良かったかも!

 

「うん、俺もそう言ってくれると嬉しいよ」

 

これは本当。好きな人とカップルに見えて嬉しくないわけないじゃないですか!

 

それから学校までは端から見たら本当のカップルに見えるくらい、周りからは「爆発しろ」と言われるくらいイチャイチャ話していたかなって感じ。

 

と、校門のところであんまり会いたくない・・ってわけじゃないが、絡まれるだろう人に会う。

 

「あれ?優美と林崎くんじゃ~ん!」

 

「あ、麻由美ちゃん、おはようっ!」

 

「おはよ」

 

普通に挨拶を交わすが、何やら麻由美の態度がおかしい。

 

「あれあれ?いつも2人で来てなかったよねぇ?もしかして~!」

 

もしかして付き合い始めたの?って聞きたいんだろうなあ~!昨日麻由美に「告白するの?」って聞かれたとき、黙ってたからなんて言えばいいのさ・・・。

 

俺が黙っていると優美があっさり答えた。

 

「うん!今日から2人で来ようってなったの!あ、でもね、まだ付き合ってはいないよ。えへへ」

 

苦笑いでも嬉しそうにそう話した優美。もう彼女からしたら付き合ってるのも同然で、嬉しくて付き合ってることを誰かに言いたいアレだろう。

 

「あ、そうなん?まあ、キミら2人は前から付き合ってなくてもそんな感じだから一緒か~!あ、優美優美!」

 

「えっ?」

 

麻由美は優美の近くへ行き、小声で話す。

 

「後でさ、聞かせてね~!」

 

麻由美からしたら周りには聞こえないように言ったつもりだったが、何を言ったか気になって耳を澄ましていたら聞こえた。

 

たぶん推測するに、昨日のあの後に何かあったと予想してるのだろう。だから付き合ってはいないと聞いても何もないわけないからってことはわかっているから、か。

 

麻由美は一度自転車を置きに行ったので別れる。

 

「なんか変なこと言われた?」

 

知ってはいたが、聞いてみた。

 

「いや、私たちのこと聞きたいって言われただけだよ?」

 

「あ、そっかそっか」

 

「言っても大丈夫?」

 

優美は一応確認してきた。あの時のことは秘密にしなきゃいけないってわけでもないけど、突っ込まれると後々面倒だと思った。

 

「適当に言っといてくれない?本当のこと言うと後々面倒になりそうだから」

 

「あ~、確かに色々聞いて来そうだもんねぇ。うん、わかったっ!演劇部だし、演技で適当に言っておくよっ!」

 

それは逆になんか怪しまれそうだと思ったけど、なんかやる気満々だったのでそれは黙っておいた。

 

× × ×

 

 

放課後、俺は今日も生徒会室へと移動。予算申請の書類が各部活動から届くのでそれの受け取りを同級生の会計ちゃんと2人で、のはずだったが何故か麻由美も登場。

 

「あれ?まゆ?どうしたの?」

 

「あ、いやね~、こういうのも一応見といた方がいいかなって思って」

 

「あ、なるほどね!じゃあ書類の整理の仕方とかも一応教えるね」

 

会計ちゃんはそう言ったが、ぶっちゃけ今教えても来年いないし意味ないよ、って思ったけど、麻由美は会長になってからなんでもやる気なんで、そういうことは言わないことにした。

 

10分くらい経つと各部活動がちょこちょこと来始め、だいたい1時間くらい経過した頃にはほとんどの部活動が申請を終えた。もちろん、演劇部も。

 

ほとんどの部活動が申請に来て、残りいくつか、というところになったとき麻由美が提案をしてきた。

 

「ねね、私と林崎くんで残るから部活行っていいよ~?大会近いんでしょ?」

 

そう、麻由美が言う通り彼女は俺らとは違い普通に部活に入っている。

 

いい提案だと思う。バタバタしてるわけでもないし、暇な俺たちで残るのが妥当だよな。

 

「え?悪いよー」

 

「いいのいいの~!ね、林崎くん!」

 

「俺もそれがいいと思うよ。部活、大事だろ?」

 

俺の言葉に観念した会計ちゃん。

 

「じゃあお言葉に甘えるかな~!麻由美もだけど、相変わらず林崎くんも優しいねぇ!」

 

会計ちゃんはなんとなくそういったはずだが、麻由美はしっかり反応。

 

「ダメダメ~!優美から取っちゃダメだからね~?」

 

麻由美さん、なんすかその身内みたいな発言は(笑)

 

「そう言うまゆも取るなよ~!じゃあね、お疲れ様ー!」

 

「おつ~!って私は取らんわ!」

 

「お疲れ様」

 

会計ちゃんがいなくなり、麻由美と2人きりになった。それから途切れ途切れではあったが、全ての部活が来て問題もなく終了となった。

 

「えーと、これはここで・・・よし!これで最後~!終わった~!」

 

「うん、OKだね。とりあえず今日はこれでやることないかな」

 

「ん~、結構疲れた~!」

 

時間を見るとまだ部活動終了までは30分くらいあった。優美と帰りも一緒に帰る約束をしているため、もうちょいここで待つか。

 

「もう帰るだろ?俺はまだ学校に残るけど」

 

「え、そうなん?誰かと仕事・・・はないよね?・・・あ!もしや・・・な~るほど!ふっふっふ!」

 

あ、こりゃ口には出してないけどバレたな・・・。まあ別に嘘ついても仕方ないしな。

 

「なんかよくわからんがまあ正解だと思う」

 

「ふ~ん、ちょっと優美から聞いたけど、依頼終わってまた仲良くなった感じなんだね~!」

 

「まあ、そんな感じかな」

 

と、そんな麻由美のセリフを聞いていたら1つ思い出すことがあった。

 

「なあ」

 

「うん?なーに?」

 

「そういえばさ、前に言ってたじゃん?竹下さんの依頼が完了したくらいに勝負かけるとかさ」

 

さっきまですっかり忘れていたが、麻由美が手伝うって言った日にこれも言われたのを思い出した。当の麻由美はというと普通にそう言ったことは覚えてたみたいだ。

 

「あ~、うん。あれなんだけどね、ぶっちゃけ言うと今はまだ様子見、って感じなんだよね~」

 

「そっか」

 

「うん。あの時はさ、優美も頑張ってるし、私も頑張んなきゃ、ってすごく張り切っていたしね、実際気持ちが先走ってた部分もあってたかくんとはとにかく恋人同士になりたいって思ってたの」

 

「でもさ、あのダブルデートが終わってくらいかな。ようやくあの時に仲良くなれて、そういう関係でいいかなって思ったから。だから焦る必要ないかなって」

 

麻由美はそう俺に告げる。その表情には迷いとか後悔とかはなく、本当によく考えてたどり着いた答えなんだと俺は思った。

 

「なるほど・・・。ちなみにだが、あれからってデートとかそういう感じのことはしたんか?」

 

「ん~、私が忙しかったって言うのもあるけどね、ああいう感じのはなかったかなー。ちょっとご飯だけ食べたり、とか。でもそういうときでもね、前みたいに『恋人になれたら・・・なりたい!』って思うことはなくて、徐々に、そういう関係に自然になれたらいいなあって感じかな~!」

 

笑顔で麻由美はそう答えた。少し心配した部分はあったが、もう俺や優美が手助けする心配もなくなっているくらい、最後まで自分自身で答えを見つけることが出来るだろう。

 

と、最後に付け足す。

 

「あ、でもね~、もっちろん他の誰かに取られちゃうとかあったら困るし、勝負所とわかったら仕掛けるとは思うよ~!だからいつになりそうとかそういうのもわかんないけどね!」

 

いや、相当なことがない限り柳さんも麻由美にベタ惚れっぽいから心配ないと思うけどね。

 

「そかそか。まあ、心配なさそうで良かった」

 

「うん、まあ、もし何かあってどうしようもなくなったらまた相談するよ~!」

 

「おう、いつでも待ってるぞ」

 

麻由美もいつの間にか新しい「答え」を探し出し、それに向かって頑張っていた。そんな彼女の姿を見ていると、より一層優美との関係は大事にしなきゃと気合が入る圭であった。

 




麻由美はもともと自分から告白しないって言ったわけですし、そもそも勝負をかけるってどうやってかけたのでしょうか?今となっては不明ですが(笑)

この章でも、2人のことはまだまだ書くつもりですよ~!

次回、体育祭回となります(^^)/

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