私たちの「舞台」は始まったばかり。   作:かもにゃんこ

89 / 100
毎度恒例の「区切り」の話となります(^o^)/

書きたいことは後書きで)ry


「私たちの「舞台」は始まったばかり」

4人の新入部員の入部が決まった日、私は部活が終わった後に林崎くんに「話がある」と呼び出された。

 

私たちは話さなければいけない話があるのは私もわかっている。でも私としては、私の方は部活もあって時間も結構遅くなるし、今日の今日でなくてもいいかなって最初は思っていた。

 

けどやっぱり部活中もその話で頭はいっぱいだし、なんだかんだで私も今日中に話さなければいけないなあ、って思い、林崎くんに感謝。もしかしたらそんな気持ちになってしまうことを見越しての、彼の考えだったのかも知れない。

 

学校を出た私たちは近くにある公園へと向かった。そういえばこの公園、去年の文化祭の後の「あの日」の朝に寄って、林崎くんから大事な話を聞かされたなあ・・・。

 

ベンチに腰を下ろした私たち。少し無言の時間があったので私から何か言うべきかなとも思ったけど、林崎くんの方から呼んだのだし、私は黙って彼が口を開くのを待った。

 

少しの時間が経った後、林崎くんは息を吸い、覚悟を決めたかのように私に話しかけた。

 

「・・・俺は・・・キミが好きだ」

 

男女が2人きりで、男の子が女の子へ好きと言う。傍から見たら普通の告白に見えるかな。もちろん私だって好きな人に改めて好きと言われて嬉しくないわけがない。でも、今はそんな彼の言葉に特に反応するわけでもなく、彼の話の続きを静かに聞く。

 

「でも・・・まだキミとは付き合えない」

 

正直、予想外で驚いた。だって約束では依頼が達成されたら「付き合う」ってことになっていたから。だから今日呼び出された理由は、改めて告白されるんじゃないかって思ったんだもん。

 

私が驚いていると、林崎くんは心配そうな表情で私に声をかけてくる。

 

「突然でごめん!約束と違って・・・でも・・・」

 

そんな戸惑っている林崎くんに私は元気よく、声をかけた。

 

「あのねっ!」

 

「・・・え?」

 

「私もね、実はキミが言ったことと同じことを思っているから・・・!」

 

「・・・え?・・・ええ!?」

 

林崎くんからしたら「まさか」なのだろう。だってきっと彼からしたら私は「今日から付き合いたい」って思っていて、それを否定するために呼び出したはずなんだから。

 

だから私はちょっと悪いなあ、とも思ってしまった。せっかくあれだけの覚悟を決めて話したはずなのに、実は私も同じことを考えていて、って感じだからね。もし私が彼だったら、色々な意味で泣いちゃったかもしれないねっ!

 

「えーと・・・つまり・・・」

 

突然の私の言葉にまだ戸惑っている林崎くんに、私も同じことを言う。

 

「うん、私もね、林崎くんのことは好き。大好きなの!でもさ、大好きだから、大切に思っているから、私もまだ付き合えない、付き合うべきではないって思う」

 

私のその一連の言葉を聞いた林崎くんは、「ありがとう」と一言言った後、一息つき凄くホッとした表情になった。

 

「・・・そっか。なんかホッとしたというか、力が抜けちゃったと言うかね。なんか覚悟を決めて言ったのに、って感じかなあ。あはは・・・」

 

「うう、なんかごめん・・・」

 

「ううん、別にキミが悪いわけじゃないからさ。ってか反論とかされたときにさ、結構理由とかも考えてきたんだけどねえ・・・」

 

実は私も同じことを考えていたり・・・(笑)

 

「そうなんだっ!私もね、そんなこと考えていたかなー、なんてっ!あはは」

 

それから2人で少しの時間笑い合った。それから私は彼に、果たしてどんな理由でそうなったか、聞いてみることにした。

 

「あのさ、林崎くんがそういう結論になった理由とか聞いてもいいかな?」

 

「ああ、うん、大丈夫だよ」

 

部活後のため、それなりの時間にはなっていたが、どうしても今日、今、聞きたかったので。

 

「いやね、もちろんさ、俺としてはさっきも言ったけどキミが好きで、あの頃からずっと付き合いたかったし、依頼が達成出来たら、って言う約束もしたし、ちょっと前まではそのつもりでいたんだ」

 

「うん」

 

「でもさ、色々考えてみたんだ。これから新入部員が入って竹下さんは今まで以上に忙しくなる。もちろん、部活の時間じゃなくて、それ以外の時間もかなって」

 

「そう思ったらさ、俺はちょっと邪魔物・・・って言う言い方はアレかもしれないけど・・・」

 

林崎くんが言いたいことはわかる。私に対して凄く気を使ってくれているんだ。

 

このままじゃ林崎くんが悪者になっちゃうと思い、話の途中っぽいけど私は割り込む。

 

「私はね、逆のことって言って正しいのかわからないけど・・・」

 

「うん」

 

「林崎くんが言った通り、部活は今まで以上に忙しくなるというか、やっとちゃんとしたメンバーで部活が出来るってこともあるし、今まで以上に部活に費やす時間が長くなっちゃうと思ったの」

 

「そしたらさ、私なんかじゃあんまり器用じゃないから・・・その、部活と恋愛の両立なんて絶対無理だと思って・・・」

 

これは正直言うと私のワガママだよね。約束したのにそれを破って、ってことにもなっちゃうしで。

 

「竹下さんも、そんなこと考えてたんだ・・・」

 

林崎くんはちょっと驚き、それからまた少し笑顔になった。私もだけど、お互いがお互いに、お互いのこといっぱいいっぱい考えてたんだなあって、我ながら思う。

 

お互い話したいことも言い合い、これで約束は先延ばしになることが決まった。と、ここで1つ今までは考えてなかった疑問が浮上する。

 

この段階で付き合わないと、次はいつになるのだろうか・・・?

 

そんなことを私が考えていると、私の心を見透かしたように林崎くんが答えてくれた。

 

「とりあえず、っていうわけでもないけど、今は現状でいいってことで大丈夫だよね?」

 

「え、う、うん!」

 

「うん、ありがとう。それでさ、その、これからもずっと竹下さんが俺のこと、その、好きっていうか、考えていてくれるのが前提なんだけどさ・・・」

 

林崎くんはそんなことを言うが、それは私にも言えること。いつ私から気持ちが動くかなんてずっと心配だもん。

 

「キミが部活引退する文化祭後にもう一度、って最初は考えてたんだけどさ、よくよく考えれば俺たちもう3年生で、今はそうでもないけど、その頃になったら進学のための受験勉強とか色々あるよなあ、って思って」

 

「だから俺たち2人とも、ちゃっと次の道が確定したら、そしたら・・・」

 

確かに言う通りだ。私だって大学に進学する予定だしきっと林崎くんだってそう。もしお付き合いしても今度は勉強と恋愛、私は共立出来るなんて無理。ましてや、もし受験に失敗なんてしちゃったら林崎くんのことだしきっと自分のせいにしちゃう。

 

少し考えた後、私は林崎くんの意見に賛成する。賛成した後思ったけど、また後1年も先延ばしになっちゃうのは寂しいなあって。なんてねっ!

 

「うん、それでいいと思うかな!」

 

私は彼に不安など一切与えたくないから、満面の笑みでそう答えた。そんな私に対して笑顔を返してくれる。

 

「うん、ありがとう!よし、これからもキミに嫌われないように頑張らなきゃな」

 

うーん、それは私のセリフなんだよねえ~!

 

「ええっ!私は嫌いになるようなことなんてないよっ!むしろ逆だからっ!」

 

「あはは、そう思ってくれて嬉しいよ。ってかさ、今気が付いたんだけどさ」

 

「え?」

 

「ほら、依頼も完了しちゃってさ、よくよく考えたら俺たちももうあんまり会ったりする機会ってないよなあって・・・」

 

あ・・・。確かにっ・・・!ううう、前にちょっと林崎くんに言われたけど、確かに私たちが繋がっていたことってあの事だけだったんだね・・・!

 

私はちょっとうーん、と考えた後、パッと思いついたことを思い切って言ってみた。

 

「林崎くん!あのっ!」

 

「え!?はい!」

 

私も改まって言ってしまったため、彼も改まる。

 

「もし迷惑じゃなかったら・・・その、大丈夫な時だけで全然いいんだけど・・・」

 

「うん」

 

「朝とか帰りとか、一緒に・・・って思って・・・。ああ!ほんとに迷惑じゃなければだよっ!全然強制とかじゃないか・・・」

 

恥ずかしくて、照れちゃって、早口になっちゃって、変なことも言っちゃって・・・そんな私の言葉を林崎くんは途中で止めて、すごく嬉しい答えを言ってくれた。

 

「全然迷惑じゃ、いや、むしろ嬉しいっていうか・・・いや、そもそもこういう話って男の俺からすべきであって・・・うん、だからその、俺は・・・出来たら毎日でも、お願いしたい、かな・・・」

 

「あ・・・」

 

私は林崎くんの答えが凄く嬉しかったと同時に、変なところで男の子らしいなあって思ってなんとなく笑ってしまった。もちろん、そんな彼も私は好きなんだけどねっ!

 

「うふふっ!」

 

「え!なんか今のおかしいところあった!?」

 

「ううん!ありがとうだよっ!じゃあ時間も時間だしそろそろ行こっか!さっきの件はまた後で連絡すればいいかなっ!」

 

私はベンチから腰を上げ、足早に駅の方へと向かった。

 

「おい、ちょっ!」

 

どうしてかこの時だけは、彼に顔を見られたくなかった。だって私、色々嬉しくて泣いちゃってたんだもん!男の子じゃないけど、女の子だって好きな人に泣き顔なんてみられたくないしねっ!

 

林崎くんとのこれからもちゃんと決まり、いよいよ明日からは部活の方も本格的に新しいメンバーでスタートする。

 

私の彼への依頼という舞台は終わった。でもそれは別の舞台の、私がずっと心待ちにしていた舞台の始まりを意味しているってことだもんね!

 

「やっと、始まったんだよね・・・!」

 

私は後ろから追いかけてくれる林崎くんに向けてそう笑顔を言った。

 

「・・・だな!頑張らないとな、『先輩』!」

 

「うん、誰かの力になれるように精一杯頑張るよっ!・・・私たちの「舞台」は始まったばかり、だもんね!」

 

 

 

 

 

 

 




最後はかなり強引でしたが、タイトルを入れることが出来ました(笑)

さてさて、この物語の中心であった「優美の依頼」がついに解決し、ある意味物語は終了となりました。

もちろん、この話でキレイに圭と優美が付き合う、というのも出来ましたが、2人の性格的に考えたらこうなるかなって思った次第です。

だからはっきり言って今回で物語はエンディングを迎えたと言えなくもないって感じです。ゲームで例えるなら残りの話は「エンディング後の要素」でしょうか?

それゆえに、次回からは話も進みが早いです。例えば次回は5月、その次は夏休み、って感じですかね(予定ですが)。

理由はまあ、もう一年間色々なイベントとかやりましたし、何よりも依頼が終わり「圭が演劇部にほとんど関わらない」のが一番の理由です。ゆえに、物語の中心は恋愛になりますね。圭×優美はもちろん、他のカップリングの話も・・・。

最後になりますが、今まで閲覧して下さった読者様には本当に感謝の一言です。あと少しですが、これからも見て下さったら嬉しいです(*^_^*)

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。