本番も3回目となり、どんな構成にしようとか迷いました・・・。
ちょっと目線がコロコロ変わって見にくい部分がありますが、個人的にはユニークな感じに仕上がったと思います(^^♪
『お待たせしました。ただいまより演劇部による舞台、マクベス、開演致します』
講堂に一瞬の静寂が訪れ、暗転が数秒、ステージが明転し舞台が幕を開ける。
「きれいは汚い、汚いはきれい・・・」
セリフとともに雷の照明や音響、雰囲気作りのBGMが流れ舞台は開幕。魔女の予言のシーンから始まり序盤は中盤にかけては特に問題なく舞台は進んでいく。
× × ×
「マクベスよ、マクベス。攻めろ、憶するな。人間の力など笑い飛ばせ・・・。女から生まれたものにマクベスは倒せぬ」
今はマクベスである私が再び魔女の元へ趣き、予言を乞いに行くシーン。私が一番苦手だったこの場面。どうしてもこの時のマクベスの感情が読み取れなくて亜由美に何度も何度もダメ出しされたシーン。
「マクベスは決して敗れない、バーナムの大森林がダンシネインの丘に向かって攻め上って来ないかぎり」
魔女がセリフを言うこののシーン、セリフを言わないシーンでも『しっかり感情を作って表情で、体全体で表現しないさい』って亜由美に言われた。
私は亜由美みたいに器用じゃないし、自分なりに頑張ってるつもりだったし、ちょっと不貞腐れて『少しくらい苦手なところがあって仕方ない』って思うことも、ね。
でもそんな私を変えたのは亜由美だったの・・・!ある日のお昼休み、始まってすぐに亜由美がいなくなる時が何日か続いた。最初は「なんだろう?」って思うくらいだったけど、あまりにも続くのでこっそり付いて行った。
たどり着いた先は屋上だった。そこでね、亜由美は演劇の練習をしていた。私は物陰からこっそり見ていたんだけど、何度も何度も同じシーンを練習してて、『違う』『こんなんじゃダメ』みたいなことを言いながら・・・。
亜由美本人に聞いたわけじゃなかったけど、きっと亜由美も苦手なことはある。けど、人より努力して、他人に苦手を見せない、凄いって思った。
それから私は演劇もそうだけど、勉強でも苦手な教科はなるべく時間を割いてやるようにした。
このシーンもいっぱいいっぱい練習した・・・!だから、絶対に失敗なんてしたくないっ!
「教えてくれ、その魔力でわかるなら。バンクォーの子孫は、この王国を支配するのか・・・?できぬというなら、永遠に呪ってやる。・・・教えろ」
× × ×
「ほら、あそこに! いつもあんなご様子です。あれで本当に眠っていらっしゃるのです。見ていてください」
「何をしているんだ? ほら、手をこすり合わせて」
「消えろ、忌まわしい染み・・・消えろ・・・!消えろ!!」
ふと思ったけど、もうなんだかんだで5年も演劇やっているのね。私が始めたきっかけは・・・なんだったかしら?
私はそこまで運動が出来るわけでもなく、運動部に入るという選択支はなかった。だから興味がありそうな文化部の方いくつか見学して・・・。
そこまで部員は多いわけじゃなかったけど、その中で一番熱心に活動してたのが演劇部だった。どんなことをやるとか、自分が好きか嫌いかとか、そういうのではなくて、ここなら、こんなにみんな真面目に取り組んでいるところなら、3年間しっかりやれるかも知れないって思った。
それがここまで長く続けられるなんてね。今は演劇はすごく好きだもの。
この舞台ももちろんそうだけど・・・来週からの部活見学の期間、私も、私たちもしっかり活動すれば、あのころの私みたいな人が入部してくれるかも知れないわね。優美、本番が終わってからもしっかりやらなくては駄目よ!
ってまずはこの舞台、しっかり演じなくてはね・・・!
「まだここに血の臭いが・・・。アラビア中の香水をかけても・・・この、小さな手を甘い香りに出来やしない・・・!ああ・・・・」
× × ×
最初は・・・2年生の最初の頃には今演劇なんてやっているとは思いもしなかったね~!優美に会って、それを手助けしている林崎くんに会って・・・。そうそう、そう言えば最初はそんな優美を助けている林崎くんに憧れてたなあ~!
それで彼に突き動かされて『自分も人のために何かやってみたい!』って思うようになって。
文実やって、生徒会にも入って、それで生徒会長になって、そして最後は憧れだった彼のように優美を手伝うようになって演劇やって・・・。
私って変わったなあ~!前はどちらかと言えば現状をあんまり変えたくないタイプだったんだよね~!・・・まあ、今になって考えればそういう性格のせいでたかくんともうまくいってなかったのかなって思う。
でもいっぱいいっぱい新しいことやって、たかくんとも昔みたいに、いや、それ以上に仲良くなれて・・・もちろん行動したのは私だけど、きっかけをくれたのは林崎くんとそれに・・・優美も、だよね。
だから今日は2人に恩返ししなきゃ!精一杯頑張らなきゃね~!あ、もちろんあゆちゃんもだけど(笑)
「王を殺した裏切り者、マクベス。もう、お前には・・・騙されないぞ!!」
私はそんな「恩返し」の意味も込めて全力で優美に剣でぶつかる。
少しは、ほんの少しだけでもみんなの力になれたら・・・誰かの力になって、誰かの為に頑張ることって、誰かを喜ばせることって、私、凄く嬉しいし・・・楽しい!
× × ×
「無駄だ・・・!俺の命にはなあ・・・まじないがかかっているんだよ!!女から生まれた奴には俺は殺せないんだよお!!」
マクベスとマクダフがセリフを交え、戦うシーン。とにかく一番練習した。でも全然苦ではなかった。きっと、相手が俺の大切な人で・・・そんな人と一緒に、一番近くいられる時間が長くなるんならむしろいくらでも練習出来たって感じかな。
本番である今だって、凄く楽しい。彼女にとって凄く大事な日に、大事な時に、俺は一緒にいられること、一緒に何かしているってことが凄く嬉しい。
きっと舞台は大成功、観客だって思った以上に入っている、その中にはもちろん未来の新入部員だってきっといて、今日で依頼は達成される。
依頼が完了したら俺は・・・もう一度、彼女へと告白し、それから・・・いや、違う。何か違う。確かに依頼が達成出来たらと約束した。
でもそれは『あの時の話』であって。今は・・・今は・・・俺は、彼女はどう思っているんだろうか・・・?
・・・ダメだ!今は演技に集中しよう!考える時間は後でいくらでもある。
「そんなまじないは絶望して捨てろ・・・!残念だがな、俺は帝王切開で引きずり出されて生まれてきたんだよ!降参しろ、マクべス!」
「降参なんかするか!バーナムの森がダンシネインに来ようとも、女から生まれたわけではない貴様が相手であろうとも・・・!さあ、来い!!」
最後の殺陣のシーン・・・!優美の言葉を借りるなら、全力で、悔いを残さなように、楽しくやろう!!
俺がマクベスを刺すまで、最後の演技。優美も本気で、全力で、楽しそうに、きっと俺と同じ気持ちで・・・!
「うわあああ!!」
マクベスが倒れ、数秒の静寂後、暗転。
これで舞台は終わりではあるが、この後すぐにカーテンコールがある。感慨にふけるのはその後。暗転の中、4人は舞台に中心へとたち、カーテンコールへ備える。
舞台が明転した瞬間、これで終わったということを認識した人が拍手をすると、その他の人も全員拍手で迎えてくれた。この拍手だけでも、今回の舞台がうまくいった、すごく良かったというのがわかる。
「本日は演劇部春公演、『マクベス』にご来場くださいまして誠にありがとうございます!」
部長である亜由美が司会を務める。客席からはもう一度拍手が起きる。
優美、俺、麻由美と順々に紹介される。ちょっと驚いたことは、俺と麻由美は「助っ人」というくくりで紹介されたこと。俺たちも驚いたが、観客席からも驚きの声が聞こえた。
「それから、本日の音響と照明は・・・放送部のみなさんです!」
亜由美は後方の小部屋を手で示し、お客さんもみんなそちらを見る。
「放送部のお二人は、何かございますか?」
紹介されることもまさかだった上、そんなことを亜由美から聞かれるとは思ってもなかった放送部は、驚いている。
少し2人でどうするどうするしてた後、マイクを掴み、話し始めた。
『えーと・・・いきなりでめちゃくちゃ驚いていますが、私たち放送部はこういうこともやっております!興味がある生徒がいたら、いつでもお待ちしておりますので、よろしくお願いします!』
話が終わるとまた拍手。さすが亜由美、サプライズで粋な計らいですね!
そして最後は部員募集を伝え、挨拶をし今回の舞台は幕を閉じた。
今回の舞台、どうだっただろうか?みんなきっと同じことを思っているはず。でも今回の舞台の目的は「舞台の成功」ではなく「新入部員獲得」なのである。今の段階では評価はわからない。それでも俺たちは失敗など絶対にしないという、そんな自信に満ち溢れながら終了を迎えたのであった。
いかがでしたでしょうか?舞台本番にて、4人がそれぞれどんな思いで臨んでいたか、うまく表現出来ていたでしょうか?
マクベスの内容にはほとんど触れず、そっちの方は疎かになりましたが(笑)まあ、原作読んで補完してください!