いいセリフがなかったので今回のタイトルは苦し紛れです(というかセリフが少なかった)。
明日の本番、演劇部と放送部による話し合いは1時間ほどで終了した。これで本番は大丈夫!かと言われるとぶっちゃけそうは言えない。
間を何秒空けるとか、どのタイミングでとか、時間で、このセリフで、は決まったけれど、やっぱり実際にやってみないとなんとも言えない。
というわけで、本来なら宣伝に時間を割く予定だったお昼休みに難しそうな部分だけ一回合わせてみる感じ。ただそれでも時間はかなり限られてるしで、どこまで、どれだけ出来るかわからない。
ただ、今回リハーサルが中止になって良かったんじゃないかな?ということもあった。
それは演劇部と放送部で色々コミュニケーションがとれたこと。みんながみんな意見を出し合いながら話したため、お互いの人柄とかもわかり仲良くもなったし、それによって何か『感覚でしかわからないようなこと』も何か出来る気がし、ぶっつけ本番でもうまくいくんじゃないか、そんな気がしたのも確かだった。
帰りの電車の中、私は林崎くんといつもの通り2人になっていた。
「明日大丈夫かな?」
そんな不安を林崎くんは呟く。
「大丈夫だよ、きっと」
なんて答えればいいかわからないけど、とりあえずそう言うしかないと思った。ところが私の言葉に意外な表情を見せる。
「あー、停電はちゃんと復旧するかなって方の大丈夫だけど。竹下さんが大丈夫とか言うことじゃないよねー」
彼は笑いながらそう答えた。どうやら私をからかったみたいっ!
「う~!騙された・・・」
でも裏を返せば冗談を言える余裕があるってことで・・・。
「なんかさ、最初はどうなっちゃうかなって思ったけどさ、なんとかなりそうだよねっ!」
林崎くんもそう思っていたのか、笑顔で頷く。
「そうだね。俺も最初はヤバいって思ったけど・・・ってか・・・」
「え?どうしたの?」
いきなり話が転じたので私はきょとんとする。
「あ、いやね、ぶっちゃけキミに頼まれてからはさ、ずっとこんな感じなんだよなあ、って思ってね。どうにもならなそうでも、頑張れば何かしら答えはあって、乗り越えて、で、また問題があって乗り越えて。それの繰り返しじゃんか、って」
笑いながら林崎くんは少し遠くを見るような感じで話す。
本当にその通りだ。壁にぶつかるたび、みんなで考え乗り越えて今がある。あの時とかあの時とか・・・今のトラブルに比べたらどうしようもない問題だってみんなで乗り越えて来たんだもんね。
林崎くんは続ける。
「そもそもさ、最初の『部員を増やすのを手伝って下さい』っていう問題が一番どうしようもないよね。未だに解決してないし」
今度は私に向かって苦笑いでそう言う。
「あ~!出来たらそれは言わないで欲しかったよぉ!」
ですね・・・全くその通り。今思うとヤバいヤバいっ!
そう言う私に対し、林崎くんは真面目な顔つきに。
「でもさ、問題は難しければ難しいほどやりがいがあるって言うかさ。それに、そんなどうしようもなく難しい問題があるからこそ、俺たちは今も俺たちでいられるのかなって。なんだかんだ言って俺たち2人が繋がっているのって、このことだけじゃん?」
言われてみればその通りだ。もしかしたら私の依頼が簡単に解決しちゃってたらここまで長く濃い時間を彼と一緒に過ごすことは出来なかったかも知れない。
確かに私たちの頼みはいつも難しく、無理難題ではあった。でも大変だからこそ、彼との今の関係がある。
例えば文化祭が終わったときに依頼が解決してたとしよう。私たちはきっとお付き合いしただろう。そして今もそれは続いてると思う。
でも私はこういう関係を今も続けていることは決して悪いことではない。本音を出しあって考え合うからこそわかる相手の内面だっていっぱいある。だからある意味、私たちは付き合っているよりも親密な関係になっているとも言えるだろう。
文章としては結構長かったけど、私が考えた時間は実際はほんの数秒の間だったと思う。
「そう、だね・・・!林崎くんの言った通りかも。ってかさ、私たちの依頼をそんな感じで見てくれるのは私としてはね、なんか複雑な気持ちもあるけどねっ!」
「あはは。でも本当にそう思ってるのは確かだから。たまにだけど、ずっとこんな感じの関係が続いてもいいかなって思うときはあるよ」
「あー、わからなくもないかもその気持ち!あ、でも、部員入ってくれなかったら普通に困っちゃうから今回で終わって欲しいかなっ!」
今の時間が大切なのも確かだけど、部員は増えなきゃ廃部だし、それに林崎くんとだってホントは・・・。
私はこの後に来るセリフはわかっているし、それはずっと望んでいたことのはず。なのに、複雑な気持ちになる。
「どうしたの?」
そんな考えが顔に出てたのだろう。林崎くんは心配そうに声をかけてくれた。
「ううん、なんでもないよっ!」
今感じた違和感みたいなものはもしかしたら本当かも知れないけど、今は彼に言うことは出来なかった。
気が付けば最寄り駅に着いていた。
「あ、降りなきゃ!また明日だね!」
「うん、また明日。頑張ろう」
「うん!頑張ろうね!」
電車を出てからも私はさっきのことを考えた。
リハーサルは出来なかったけど、きっと本番はうまくいく。そして新入部員も入ったら私の、私たちの依頼は終了する。
そして、約束通り私と林崎くんは晴れてお付き合いする流れになるだろう。
嬉しくないわけない。ずっと、ずっと私は彼のことが好きで、どうしようもないくらい好きで、大切で・・・。
それでも私はこの時決めたことがあった。
・・・まだ彼とは恋人同士になるべきでないと。
なにやら圭と優美の関係はまだ変わりそうもないような感じになっちゃってますね・・・(笑)
今回の公演で終わるかどうかはまあ、続きを読んでいただければ大丈夫です(*^_^*)