優美の力強さが書けていたらうれしいです!
先輩と別れた後、数分後に林崎くん、続いて亜由美と麻由美ちゃんが来た。来る人来る人私を見るなり「何かいいことあった?」と聞いてくる。
全然意識してるつもりはなかったけども、やっぱり横田先輩へのことがあり自然と表情が緩んでいたのだろう。
あ、ちなみにだけど先輩は私の提案に乗ってくれた。学校が開いてから朝のホームルームまでの、私たちにとってはほんのわずかな時間だけど、私はこの時間を大切にしようと心に決めた。
× × ×
そして翌日、いつもよりも早く起きいつもよりも早い時間の電車に乗り学校へと向かった。
朝練はしないし、こんな早い時間は初めてだったため、何かと新鮮だった。
学校に着いた私は待ち合わせ場所である、先輩のクラスへと向かう。教室の中には既に先輩がいた。
「おはようございますっ!すいません、遅くなりました!」
私の声に気がつき振り向く先輩。
「竹下ちゃんおはよう。私が早く付き過ぎたから大丈夫」
「あ、いえ!」
先輩は立ち上がり、私のいる廊下へと来る。
「じゃあ行こう」
それだけ話し先輩は歩き出す。
「え!あ、はい!」
そう言えば特にどこでやるとは決めてなかったけれど、先輩は決めているらしい。私はとりあえず着いて行くだけ。
階段を降り、クラス棟を出て、通路を通り着いたのは体育館だった。
「え!ここ大丈夫なんですか?」
というのも卒業式は体育館で行うため、色々準備が整っており、勝手に使うのはさずかにマズイんじゃないかと言うこと。
そんな私の問いに対し、先輩はケロリと返す。
「え?使ってないから問題ないよね?」
逆に聞かれた(笑)いやまあそうですけども!
「大丈夫だよ。ちょっとステージ上がるくらいだし。ほら行こう!」
「あ、待って下さい~!」
体育館の中を真っ直ぐ通り、先輩は軽やかにステージへと上がる。先に上がった先輩は私へと手を貸してくれる。
「はい」
「あ、ありがとうございます!」
先輩のおかげで私も簡単にステージに上がれた。
「意外と軽いんだね」
「いえ、そんなことは!お世辞ですよね?」
「ううん、違うよ。・・・あっ」
何かに気がついたのかな?と、目線が胸のあたりに来ているような・・・?
「胸が・・・あ、なんでもないからー」
「え!!」
ちょっと!今「胸がないから軽いんだ」みたいな感じに思ったんですよね!?
「も~!先輩酷い!胸のことは気にしてるんですよ~!」
「ごめんね、ほらほら、胸じゃ人の良し悪しは決まらないよ?」
何やらフォローをしてくれけどもそういう問題じゃないよね!
そんなことを思っている私を横目に先輩はステージから体育館を見渡している。それに釣られ私も隣に立って体育館を見る。
そう言えば・・・文化祭での舞台はここだったんだよね。今見る景色と全然違うなあとふと思う。ここに上がると何かそのときのことを思いだすかのように、自然と気持ちが高ぶるのがわかる。
「なんか・・・思い出すな」
「え?」
「文化祭で初めてここでやったことを、ね」
「あ・・・」
まさか先輩も同じことを考えいたとは。もちろん、私とは違う文化祭のことだけどね。
「私も、ここでの初めてのことを。あ、もちろんついこの間の文化祭のことですけどね」
先輩は笑顔を浮かべ、私へと話す。
「ちゃんと見てたよ。竹下ちゃん凄く楽しそうで。それでいてお客さんも楽しませる凄くいい演技だった」
お世辞でも嬉しい。だって何があっても先輩は先輩なんだからね!
「ありがとうございます!そう見えていたら嬉しいです!あ、先輩の、アドバイスのおかげだと思いますよっ!」
先輩はちょっと考えた後、思い出したみたいで「余計なことじゃなくて良かった」と呟き、続いて「さてさて」と。
「さてさて、思い出話も楽しいけどそろそろ始めようか。時間なくなっちゃうしね」
「あ!そうでしたね」
先輩はなにやらホチキスで束ねてある、用紙を私に渡す。
「これ、昨日言ってたやつね」
「ああっ!」
そう、台本は先輩が2人芝居のがうちにあるから持ってきてそれをやろうと言うことになっていた。
「どれやりたい?」
パラパラとめくり台本に目を通す。
「そうですね・・・あ、この『銀行強盗』っていうの面白そうっ!」
「じゃあそれにしよ。じゃんけんで勝った方が犯人役で」
「はい!」
「じゃんけん・・・」
× × ×
「あ!それ!ダメです!それ押したら!」
「え?」
犯人、金庫についてるボタンを押す動作。
「爆弾のスイッ・・・」
爆発する金庫(架空)、ぶっ飛ぶ2人。
・・・・・・。
「はい、終わり!」
「なんですかこのストーリー!なんで銀行に爆弾があるんですかっ!」
「なんでだろうね?私もわからないよ」
「え~!・・・ふふふっ!」
「・・・あははっ!」
お互い顔を見合せて笑う私と先輩。
「なんかアレ、ですね」
「え、何アレって?」
「なんかうまく言えないですけどね、なんかアレなんですよっ!」
「いやいや、全然わからないよそれ!」
先輩はそう言いながら笑っていたけども、私が感じていた「アレ」の正体と同じことを先輩も感じているんだなあって思った。
「あ、もうこんな時間なんだ!思ったよりも時間なかったね」
最初雑談をしたこともあったり、『銀行強盗』の台本が思ったより長かったこともあり、あっという間に時間は過ぎていた。
「じゃあ戻ろっか」
先輩はそうあっさりと言ったけれども、よくよく考えなくてももうこれが最後の会話になるかも知れない。
・・・これで終わりでいいの?和解は出来たけど、和解が出来たからこそ、これで終わりでいいの?言いたいこと、言わなくていいの?
・・・ダメだよね。竹下優美という人の性格上、言いたいことを言わなかったら絶対に後悔する。
何を思われたって、何を言われたって構わない。でも後悔だけはしたくないから・・・!
そんなことを考えていた私が、ステージから降りないので先輩は不思議に思う。
「どうしたの?」
私は息を吸い、先輩へと「最後の言葉」を伝えた。
「・・・寂しいです、せっかく分かり合えたのに、これが始まりで終わりなんて」
予想してなかった、いや、予想してたのかも知れない。突然の言葉に少し驚いた表情を見せつつも私の言葉を静かに聞く。
「もっと、もっと一緒に演劇やりたかったです・・・。そんなの、無理なのくらいわかってます。それでも私がこう思っていることを先輩には伝えたかったんです」
「だって今、私・・・先輩ことが大好きだから!ちゃんとお互いに分かり合えて、あんなことがあっても先輩が好きだってちゃんと伝えたかったんです!」
最初は冷静にと思っていてもだんだんと感情が言葉に乗ってしまう。
私はもう押さえきれずに、悪いことだと、言ってはいけないとも思われることも言ってしまう。
「そりゃですね、あの頃は先輩なんて大っ嫌いでしたよっ!なんで私たちの言うこと全然聞いてくれないんだ、なんでこんな人たちが先輩なんだって・・・!」
「それでも、本当に最後まで悩んだんですよ!?そんな風に思っていたって、やっぱり先輩にはお世話になったしで・・・あんな、あっさり、あっさり言いましたけど・・・本当は、凄く、辛かった・・・です・・・」
あーあ、やっぱり泣いちゃったよ・・・。泣くもんか、って思いながら言ったのだけれども、やっぱりこらえなれなくなっちゃった・・・それでも私は最後まで、伝えなきゃ・・・!
「だから、だから・・・本当に今日お話が聞けて良かっ・・・う、う、う・・・」
もう限界だ、涙が止まらない。言葉も話せない、前も見えない。言い切ったのか、まだ言い足りないのか、それもわからない。
その場で座り込み、顔を手で隠す。先輩がどう思い、どんな言葉が返されるか、あるいは何も言わずに立ち去るか、そんなことを泣きながらも私は考えた。
少しの、長く感じたが実際は数秒だろう。少しの間が空いた後、先輩の声が聞こえ始めた。
「・・・今さら、今さら、そんなこと言わないでよ・・・?何も思ってない、感じてない、それで竹下ちゃんからいなくなろうって、さっき決めたばかりなのに・・・」
弱々しく、それでも気持ちが伝わってくる、そんな先輩からの返答。
そして、少しの間の後、ガツンとくる。
「私だって言う!竹下ちゃんに言いたいこと!」
「ホントは、引き留めたかったんだよ!?だって私にとっての唯一の後輩の2人だもの!でも今さら無理だった・・・。あれだけ酷いこと言って、今さら2人の意見に同意するなんて出来なかった・・・」
「後悔、後悔、毎日後悔・・・。でもね、それでもね、2人がちゃんと演劇やって、凄いと思った。ちゃんと自分の意見言って、それを実現させて・・・私には出来ないことが出来て・・・だから、そんな2人を見て、私は悔しかった。失敗しろとか、心の中で、本当は思ってたの、かも、知れない・・・」
先輩も、だんだんと途切れ途切れになる。顔を上げて先輩を見たら目が光ったのが見えた。
「私だって竹下ちゃんと・・・いや、戻れるなら、戻れるなら・・・2年前に戻り、たい・・・」
先輩も言い切ったのかはわからないけど、そこで一旦言葉は途切れ、体育館の中にすすり泣く音だけが響く。
私も先輩も、いっぱいいっぱい後悔してた。なんだ、一緒だったんだ。私だけが、私だけが色々なことを思っていたわけじゃなかったんだ。
先輩の本音を聞け、何か安心した気持ちになった私は泣くのをやめ、ステージを降り、先輩の元へと歩み寄った。
「先輩・・・ありがとうございました。嫌なことも嬉しいことも、先輩が思ってることを聞けて、私は良かったです」
先輩も顔を上げ、私の目を見る。
「竹下ちゃん・・・」
涙を袖で拭い、先輩も笑顔になった。
「私からもありがとう、だよ。なんか、スッキリしたかな。私もさ、竹下ちゃんと同じこと思ってると思うよ」
「え?」
「私だけが色々気にしてて、竹下ちゃんは何も感じてないかとずっと思ってた」
「あ・・・!はい、その通りですっ!」
同じことをお互いが思っていたから、嬉しくて2人とも笑顔で笑い合う。
・・・っと、最後に、たぶん最後だから、これ、言わなきゃ・・・!
「横田先輩っ!」
「うん?」
「ご卒業、おめでとうございます」
深々と頭を下げ、それだけ、たったそれだけ告げた。
「・・・ありがとう」
先輩も私の右手を取り、それだけ返答した。
お互いの言葉は短くも、その言葉に今の気持ちが、全部込もっている、私はそう思ったし、先輩もきっと・・・。
それから卒業式の後とか、話せそうなときもあったけど、私も、先輩もきっと、話さなくてもいいくらいの気持ちの交換になっていた。
だからこれが『先輩』と話した最後の言葉だった。
その日の帰り道、いつもよりも気持ちが浮いてたのは気がつかれてて、林崎くんには何かいいことがあったのか聞かれたけど教えなかった。
理由は・・・今さら横田先輩の真実を話しても、彼がどうこうするわけじゃないし、あんまり意味がないかなと思った。それに先輩とは実際には面識はないしね。
・・・いや、それは建前で、本当は今日のやり取りで大好きになった先輩との大切な思い出を、私自身が、私だけが知っている秘密にしたかったのかも知れない。
優美と先輩のやり取り、いかがでしたのでしょうか?こういうシーンってすごく難しいです(*_*)
書いてるときは感情を乗せに乗せまくって、「ああ、いいもの書けた!」とか思うのですが、読み返すと「アレ?なんだこれは・・・」ってなってしまう・・・。修学旅行編のもそうでしたけど(笑)
それでも読者の皆様に、少しでも「いい話だった」と思ってくれたらうれしいですけどね!ちょっとテンプレっぽい話ではありましけどね。
あ、それと最後に「だからこれが『先輩』と話した最後の言葉だった。」と優美が言うシーンがありますが、「横田先輩が『先輩』ではなく『横田さん』」として・・・おっと、ここから先は秘密にしましょう!
ではでは(^^)/