私たちの「舞台」は始まったばかり。   作:かもにゃんこ

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バレンタイン回も終了し、予定通りの演劇回です(^^♪

と言っても稽古がメインではない、ある人との会話がメインとなります!まあぶっちゃけ演劇は部活として添えただけで、メインは恋愛のお話ですからね(笑)


「なんだったら私の子供になっちゃう?」

ちょっと色々あったバレンタインも終わり、2月も下旬に入る。

 

物語で書いてる中では、お出かけとかイベントごととかしかなかったけど、ちゃんと稽古だってやってます!

 

3月の最初には学校が受験会場になって何日か使えなかったり、その後にはすぐに学年末試験もあり実質的稽古を出来るのは後1ヶ月ほど。

それに春休みにもなれば、舞台装置やら衣装やら小道具やらに時間を費やすことも多いだろうし、また、部活動紹介の準備だってある。私と亜由美は当日の稽古、林崎くんと麻由美ちゃんは司会を務めるのでそれの準備等々。

 

だから残された時間は多そうで少ない。毎日の時間を無駄にせずにきっちり稽古をやらなくてはいけないと思う。

ただ、ヤバいんじゃない?とは誰も思っていない。みんながみんな自分の役割を果たし、予想以上に進み具合はいいし、演技の質は殺陣も含めかなりいいと思う。だから心配することはあまりなく、むしろうまく行き過ぎて怖いくらい。

 

そんな中、今日の稽古では私が出ないシーンをやる。

 

具体的には夢遊病になったマクベス婦人演じる亜由美が何度も何度も手を荒い続ける。それを見ながらメイド役の麻由美ちゃんと医者役の林崎くんが会話をするシーン。

 

そう、何を隠そうこの場面の私なんです・・・!

 

一応、私なりにどんな感じに台詞を言うかとか、どんな感じに動くかとかは決めてきて、それを元に稽古をやってみたんだけども・・・。

 

「ちょっとこの動きじゃお客さんにわかりにくいんじゃないかしら・・・?」

 

「確かにそうかも~!私たちは演じやすいけど、お客さんからじゃ見にくいよね~!」

 

「俺も思った。婦人はこっち側のがいいんじゃない?」

 

「そうね・・・そもそもこのセリフは・・・」

 

と、ダメ出し祭に・・・。経験不足が露呈してしまう形になっちゃいました・・・。

 

「ごめんなさい・・・!やっぱり全然ダメだったよね・・・」

 

少しは何か言われるかもと少しは覚悟をしていたけども、まさかここまで言われちゃうとは思わなかったこともあり、私はかなり落ち込んでしまった。

 

「ごめん、ちょっと言い過ぎたかな。ある意味演出に関しては初心者だしね」

 

と林崎くんはそんな私をフォローしてくれたけど・・・。

 

「ううう・・・私より経験短い林崎くんに初心者とか言われちゃった・・・」

 

今の私には追い討ちをかけられた言葉に聞こえる。

 

そんなお互いに慰め合って(?)うじうじしていた私たちに、亜由美からガツンとくる。

 

「もう良いわ、林崎くん。フォローしたって出来ていないものは出来るようにならないわ。別にあなたのこと悪く言うつもりじゃないけども、今はそういうのは必要ないわ」

 

かなりキツイ言葉ではあったけども、それは全く正しいこと。私の勉強不足が原因だもの!

 

「優美、とりあえず今日はこの場面は一旦打ち切りにするわ。今のままじゃどうにもないないからね」

 

「それと、私だってうまくいかないのは嫌だし、色々教えたいのはやまやまだけど、今回は時間も十分あるしもう少し優美には頑張って考えて欲しい。もちろん考えてもどうしてもうまくいかないようならまた言って頂戴」

 

真剣に話す亜由美を私も真剣に聞く。厳しいかもだけど、これは亜由美なりの気遣いというのは十分わかる。またチャンスをくれたんだから答えないわけにはいかないよね!

 

私は頷き、彼女に告げる。

 

「うん、わかった。もう1回頑張ってみる!」

 

落ち込む暇なんてない。やる気を全面に出さなきゃ!

 

そんな私を見て、麻由美ちゃんと林崎くんも心配そうな顔はしなくなり、笑顔で激励してくれた。

 

「優美、偉い!頑張ってね~!」

 

「頑張れ!」

 

みんな応援してくれるっ!よし!しっかりしなきゃ!

 

 

× × ×

 

 

翌日の放課後、亜由美がお家の事情、林崎くんが生徒会の仕事で不在のため部活は休みに。せっかくなので私は学校帰りに大きめの本屋さんへと向かった。

 

目的は演劇のお勉強。実際そういう演出を考える上での資料になりそうなものがあるかはわからないが、自分で考えても限界があるしとりあえずの次の手という感じ。

 

明日は日曜日だし、お休みの時間は少しでも無駄に出来ないもんね。

 

 

店内を移動し、目的のものがありそうな場所へとたどり着く。

 

うーん、よくわからないなあ・・・。

 

とりあえず「誰でもわかる演劇の基礎」と書かれた本を手に取ってみた。

 

パラパラっと見たけど演出の参考にはならなそうな感じ・・・。

 

うん、よくわからないっ!

 

どうしようかと考えていたら後ろから肩を叩かれた。振り向くと・・・。

 

「美結ちゃん!?」

 

「久しぶり優美ちゃん」

 

そこには優しく微笑む美結ちゃんがいた。

 

「久しぶりだねっ!こんなところで会えるなんてっ!」

 

「ホントだね。優美ちゃんは今日は部活お休み?」

 

「うん。美結ちゃんも?」

 

「うん、そう。でね、本屋にでもと思ったら入り口のところで優美ちゃん見つけて。声をかけようかと思ったけど結構距離もあったしおまけに途中で見失っちゃってね」

 

わざわざ見つけてくれたみたい。ちょっと嬉しい。

 

「で、探してたらここにいてちょっとびっくりかな。漫画とか小説のところにいると思ったから」

 

なるほどなるほど。私自身もここら辺は場違いだとは思うけど(笑)

 

私は美結ちゃんにここに来た理由を説明。

 

「・・・というわけなんだ」

 

理由を聞いた美結ちゃんはうんうんと頷く。

 

「そかそか。相変わらず頑張っているんだね」

 

「でもさ、自分としては頑張ってるつもりでも結果に結び付かないからなあ・・・」

 

私は苦笑いでそう言う。助けて欲しいなあとは思ってはなかったけども、美結ちゃんにはそう聞こえたらしく。

 

「ねぇ優美ちゃん、私じゃ力になれないかもだけど、私も前に今の優美ちゃんみたいな時があってね、その時買った参考書みたいなのがうちにあるんだけどどうかな?」

 

「え?それって本貸してくれるってこと?」

 

私はちょっと先走ってそんなことを言う。もし本当なら凄く助かるし嬉しいしね。

 

美結ちゃんは笑顔で頷いてくれた。

 

「うん、大丈夫だよ。優美ちゃんが良かったらだけど、今日これからうちに来る?」

 

早い方がいいと思った私は即答した。

 

というわけで本屋を後にし、美結ちゃんのお家へと移動。

 

 

少し距離はあったけど、久しぶりに会ったこともあって色々な話で盛り上がり、あっという間に到着した。

 

「ただいま」

 

「お邪魔しますっ!」

 

私たちが玄関へと入るとさっさく美結ちゃんのお母様に遭遇。

 

「あら?今日は可愛いお客様もいるわ」

 

「こんにちはっ!またちょっと訳あってお邪魔してますっ!」

 

「うふふ、いいのよいつでも来て。なんだったら私の子供になっちゃう?」

 

冗談っぽくお母様は笑う。なんかこのパターン、後が容易に予想出来る・・・。

 

「もう!お母さん!変なこと優美ちゃんに言わないで。もう私の部屋行こ。こんなのほっとこう」

 

前回の同じような、いや、あのときよりも扱いが酷いよっ!

 

私はまた美結ちゃんに手を引かれ美結ちゃんのお部屋へと移動した。

 

部屋に入るとさっそく、と言わんばかりに美結ちゃんは本を取り出す。

 

こんな感じのことが書いてあるよとかを簡単に説明してくれた。

 

私は説明を聞きながら軽く目を通しただけだけど、絵とかもあって凄くわかりやすそう。

 

 

「どうかな?簡単にこんな感じの本だけど優美ちゃんの参考になりそう?」

 

まだじっくり読んでいるわけじゃないからなんとも言えないけど、私でもわかりそうな感じ。

 

「うん、ありがとうっ!お家でじっくり読んでみるよ」

 

「そっか、良かった。わからないところとかあったらメールしてくれれば教えるよ。私も明日はお休みだから」

 

と、部屋のドアが叩かれる。

 

「コンコン、お邪魔します。うふふ、楽しそうね」

 

美結ちゃんのお母様がお菓子を持って入ってきた。

 

「これ良かったら食べてね」

 

「あ、ありがとうございますっ」

 

私はお菓子を受け取ると、美結ちゃんのお母様はニヤニヤって感じで話しかけてくる。

 

「優美ちゃんって彼氏さんとかいるでしょ?凄くいい子だもんね」

 

「へっ!?」

 

予想もしてなかったことを聞かれ、凄くびっくり!

 

「どうなのどうなの?おばさん気になるなあ」

 

「あ、いえ、その・・・いない、ですけど・・・その、えっと・・・」

 

普通にいませんって言えば良かったものの、林崎くんとの関係を思い出し、ついついそんなこと言う。

 

「ふぅ~ん。あ、わかったわ。好きな人はいる感じかな?」

 

「え!あ、まあ、はい・・・!」

 

ぎこちない返事でそう答えるとたまらず美結ちゃんが。

 

「もう!お母さん!優美ちゃん困ってるから!黙って見てたけどもうダメ!」

 

と言いながらお母様を手でズイズイって押し退ける。まあ、そこまで困ってるわけでもないけどね。

 

「もう、いいところだったのに。ねぇ優美ちゃん」

 

お母様は押し退けられながらも話しかけてくる。

 

「私からのアドバイスよ。あんまりグイグイいかない方がいいわよ。優美ちゃんが好きになりそうな人ってきっと真面目で凄くいい人だろうし、たぶん困っちゃうからね」

 

「え、は、はい!わかり、まし、た・・・」

 

お母様はそれだけ言い残し、部屋から消えて行った。

 

その言葉は短くも、私にとっては凄く納得出来るものだった。

 

「美結ちゃんのお母様ってなんか凄く鋭いね。美結ちゃんもそんなお母様に似て鋭いけどねっ!」

 

「えー、似てないよー。お母さんに似てるなんてなんかね」

 

「あはは、確かにそれは言われたらアレかもっ!」

 

それから少しだけお互いの親のこととか話して、美結ちゃんのお家を後に。

 

「お邪魔しました!色々ありがとう!」

 

「うん、私も楽しかったしありがとう。演出、頑張ってね」

 

美結ちゃんは腕で『ガンバレ』のポーズをして応援してくれた。

 

「うん、ありがとう!お母様もありがとうございましたっ!」

 

「頑張ってね、優美ちゃん。うふふ」

 

お母様の頑張っては、「恋愛を頑張って」に聞こえました(笑)

 

林崎くんのこともそうだけど、今はまず演出、頑張らなきゃね!

 




またしても美結ちゃん登場!作者、本当に美結ちゃんが好きなんです(*^▽^*)

美結ちゃんと、美結ちゃんの学校の演劇部に入った例の後輩くんの恋路も入れようかと最初は思いましたが、優美のために登場したというのがぶれてしまうのでやめました(笑)

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