いやまあそもそも逆バレンタインが予想外だったとは思いますがね(笑)
日曜日から中1日挟み、ついにバレンタイン当日へとなった。
優美であるが、月曜日はそのまま学校は欠席した。こういうことはあまり言ってはいけないとは思うが、正直言って昨日は彼女がいなくてある意味ホッとした俺がいた。
普通に学校に来ていたら、部活中はずっとそわそわしてただろう。そして亜由美と麻由美からは部活の時間中、ずっとからかわれてた、と思う。
今日に関しては、実は朝に通学路で見かけており 、学校に来ていることは知っている。
ただ、いつもなら多少の距離はあっても小走りで声をかけに行くところだが、今日はそれをしなかった。まあ、要は自然と意識してしまっている感じだ。
「林崎おはよ」
「おう」
いつぞや出てきた友人Aだ。
「お前はいいよなあ!チョコ1個は確定だもんなー」
やっぱりその話題がきたか。どう答えればからかわれずに済むか・・・。
「あれ?どうした?あ!!もしかして・・・別れた!?」
俺が考えていたら彼はとんでもないことをクラスのだいたいの人に聞こえるデカさで言う。・・・あ~、これどうすんの!
もちろん、色恋沙汰に興味がある連中が絡んでくる。
「え!マジで!?」
「どうしたの!?」
「うそ~!あんなに仲良かったのに!」
男子だけでなく女子も。そうそう、優美と「付き合ってる」という(デマが)のが流れたあたりから、なぜか女子に絡まれる機会が増えた。
うう・・・、どうしよう!どうやって切り抜ければいいのさ!
・・・まあ、あれか。付き合ってることになってるなら、普通に付き合ってると言った方がいいか。
「いやいや!この人が勝手に言ってるだけで普通に今も付き合ってるから!」
一瞬静寂。
「・・・な~んだ!」
「つまんないのー」
「まあそうだよなあ」
「やっぱり爆発だ!」
おい、お前ら!まるで別れて欲しいみたいな反応やめろ!いや、別に付き合ってないけど!
とにもかくにも、「俺がチョコレートをあげる」というのは秘密に出来たので良しとしよう。
そして放課後。いよいよ、だ。
教室を出るときも若干そわそわし、部室へと向かう。
途中、職員室に寄ったが、すでにカギはなかったので誰か持っていってる。優美との2人きりは今日に限っては回避したかったので、優美が1人で借りなかったことを祈りつつ、閉まっている部室の扉を恐る恐る開けると・・・。
「あっ・・・」
「あ・・・」
優美が1人で部室にいました・・・。
俺が彼女に対してならわかるが、なにやら彼女もそわそわしていて余計にそわそわする。
まあ、あれか。休み明けだしな。
そう考えていると、まずはそのことについて触れられた。
「あのさ、昨日は休んでごめんね!」
別に謝ることではない。優美らしいとは思う。
「いやいや、気にしなくても大丈夫!それより体調は?」
「うん!まだお薬は飲んでるけど、だいたいバッチリだよっ!」
彼女は明るくそう話したが、そこで会話は途切れ、またそわそわし出す。
数秒間ではあったが、俺的にはかなり長い静寂の後、優美は言いにくそうに話を始めた。
「あ、あのさ・・・」
「うん?」
「今日ってその、バ、バレン、タイン、だよね」
きたか・・・バレンタインの話題が・・・。
無言で頷く。
「あのね、ホントはね、その、日曜日にね、作るはずだったの、チョコレート・・・」
「・・・うん」
「でも風邪引いちゃって・・・」
「・・・うん」
「私ダメだなあ、って。あはは・・・。でね、手作りはその、無理だけどさ、せめて市販のでもと思ったんだけどさ・・・」
そこまで話すと彼女は言葉をつまらせる。正直その先は聞かないでもどんな内容かはわかる。
少し涙ぐむ優美。本当に彼女にとっては、凄く大切なことで、本当に勇気を振り絞って自分から言ったのだと。
そんな優美、俺の大切な・・・だから俺はもう自分をコントロール出来ず、何を言われようがどんな態度をされようが、とにかく自分が今一番したいこと、言いたいことを彼女へと伝えた。
「そんな顔しないで。気持ちだけで凄く嬉しいし、話しにくかったことを素直に伝えてくれて凄いと思う。だから全然気にしないで」
まずそう伝えると優美は顔をあげる。
少しばかりの時間を置いたあと、涙を軽くハンカチで拭い、いつもよりは弱いが笑顔を見せ、一言告げる。
「・・・ありがとう」
言葉自体はそれだけだけども、今の彼女の気持ちは十分伝わった。
ぶっちゃけ最初はここで渡す気は全くなかったが、この流れで渡さなきゃダメだと思った。それに、今渡した方が優美の気持ちもいい方向に変わる気がした。
意を決し、彼女へと話す。
「竹下さん・・・!」
「はいっ!」
あくまで自然に言ったつもりではあったが、逆に意識してかしこまって話してしまったので、優美もそんな感じになってしまう。
「いや、その、別にそんな改まって話すようなことじゃないんだけどね!?」
「あ、う、うん!」
とにかく言葉で色々言うよりももう渡した方がいい、よな。
俺は無言で鞄から可愛い袋に入ったそれを優美の前に出した。
「えっ!?」
当然驚く。
「バレンタイン・・・」
「えっ?」
「欧米ではさ、男女問わずに大切な人に贈り物をってことだからさ・・・」
いやもうめちゃくちゃ恥ずかしい。いくらそうは言ってもここは日本。顔が赤くなってるのは自分でもわかるくらい。
「あ・・・!」
優美はおそらく、俺の言いたいことがわかったような表情に変わる。
「まあ、だから、そういうわけなんで・・・あ、いや、嫌ならその・・・」
そこまで言うと途中で彼女に遮られる。
「ううん!すっごく、すっごく嬉しいっ!いや!もちろんめちゃくちゃびっくりしたけどっ!」
そう言いながら小さな袋を受け取り、大事そうに胸の前で抱えた。
「あ、ありがとう・・・ 」
受け取ってくれたのと、とりあえず渡せて一段落したので俺はホッとしてしまいそんなことを言う。
「え!?ありがとうって言うのは私だよ~!」
もちろん突っ込まれた。そして、いつもの満面の笑顔で俺にも同じ言葉を返してくれた。
「ありがとうっ!」
お互いほほえみあっていると、ドアがガラリという音を起てて開くと同時に・・・。
「林崎くん頑張ったね~!」
拍手をしながら麻由美が突入してきた!
「「え!?」」
いきなりで驚く俺と優美。よく見たら後から亜由美もいた。
・・・あれ?もしかしてこれは・・・?
「・・・どこから・・・聞いてた?」
「ん~?そりゃもうね、キミが入ってすぐに覗いてたよ~!」
麻由美は嘘をつくまでもないって感じでどや顔でそう話す。
「・・・覗くのはちょっと、って私言ったのだけれど・・・」
亜由美はそう言うが・・・。
「え~!あゆちゃんだって途中から真剣に見てたじゃ~ん!むっふっふ!」
見事に麻由美に一刀両断された。
つまり、さっきのを2人にずっと見られてたってことか・・・。
その後、俺と優美の時間が止まったのは言うまでもない。
それからしばらくして2人の時間が動き始めたあと、優美からの質問もあったと言うことあり、なぜバレンタインに彼女へチョコレートを渡すことになったのか経緯を説明した。
「そっかあ・・・なんかいかにも麻由美ちゃんと林崎くんって感じの考えだねっ!」
そんなことを優美は言うが、それは誉めてくれているんだよね!?
「唐突に決まって勢いでやった部分もあるから、渡せて、もらってくれてホッとしたのは本当なんだ」
「あははっ!・・・あっ!」
会話の途中であったが、優美は何やら思いついたことがあるみたい。
「あのね、最初はさ、バレンタイン過ぎても林崎くんにはちゃんと渡すって思ってたし、今日もそれを言うつもりだったんだけどさ」
「林崎くんからバレンタインもらっちゃってさ、なんか改めて、って言うのもどうかなって。だからね、1ヶ月楽しみにしてて欲しいなあって!」
それって・・・。
「お~!なるほど~!」
と麻由美はうんうんという表情。
「いいんじゃないかしら?むしろそういうのも面白いと思うわ」
亜由美も優美の意見に賛成している。
そうだな、仮に優美からバレンタインをもらっていたら、ホワイトデーでお返しはもちろんしたわけだし、それが入れ替わるだけだし。
「・・・楽しみに待ってるよ」
そんなわけでバレンタインに続き、ホワイトデーも逆さまになることも決まった。
世間一般の人達とは違うことをするのが今はなんとなく嬉しいような気持ちになった。優美も笑顔になっていたのできっと同じことを考えていたのだろう。
こうして、色々あった優美との初めてのバレンタインデーは笑顔のプレゼントを貰って終了した。
以上、バレンタイン回終了!
え?麻由美が柳さんに渡したシーンがないって?まあないってことは普通に、特に何もなく渡したってことで捉えて戴いたら・・・(笑)
次回は演劇回です( ^_^)/□☆□\(^_^ )