私たちの「舞台」は始まったばかり。   作:かもにゃんこ

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64話に続きちょっと妄想を捗らせるようなタイトルですが、全くそういうのはありませんよ!

タイトルを見てわかる通り、イチャイチャもありますが基本的には公演の話が中心になります('◇')ゞ


「ちょっとびっくりしたけど、なんかいい気分かも」

月曜日の放課後、亜由美に呼ばれた俺は演劇部の部室へと向かった。この日は生徒会の活動などは特にない。

 

コンコンと軽くノックをし、ドアを開けると亜由美だけがいた。

 

「こんにちは」

 

「どうも。あれ?1人?」

 

優美も麻由美もいないのは珍しい。

 

「ええ。小テストの補修があって。15分から20分くらいで終わると思うけども」

 

「そうか」

 

それだけ答え、適当に座る。

 

「台本は読んだかしら?」

 

「うん、まあ」

 

と、いうのも先週末に決まった台本が亜由美からメールで土曜日に来たのだ。『じっくりとは読まなくてもいいから。目だけ通しておいて』という感じで。

 

まあ確かに月曜日に初めてもらって読んでだとその間に亜由美と優美は手持ちぶさたになるもんな。いい案だと思った。

 

ちなみにだが、やる劇はかの有名なシェイクスピアの、これまた有名な「マクベス」だった。演劇に対して詳しくない俺も名前だけは知っていた。

 

「どうだったかしら?」

 

あまりにもざっくりな質問ではあるが、まあ、適当に答えるか。

 

「素直にいいと思ったよ。男が多かったのはかなりビックリだったけど」

 

「そうね。ただ個人的なことになるけども『女性ばかりのマクベスも見たいわ』って思ったからこれに決めたわ」

 

確かに面白いと思うな。少し違った感じで、舞台に興味ある人も「どうなるんだろ?」と思わせて興味を更に引くかも。

 

「もちろん演技力次第ってところだけれどね」

 

ふふふっと最後にそれを付け加える。難しくはあるが、演技力を見せるという意味ではドンピシャですね。

 

一通りの話が終わったせっかく亜由美と2人きりなので、俺は気になることを質問をした。

 

「1個聞いてもいいか?」

 

「ええ、構わないわよ」

 

「竹下さんの台本はなんでダメだったんだ?」

 

マクベスを選んだのが亜由美なのはなんとなく聞かないでもわかるが、実は圭はあの日の帰りに優美から「私の持ってきたのはダメだった」と聞いていた。

 

圭の問いに対し、亜由美は冷静に答える。

 

「私的にはね、そもそも優美が台本なんて持って来れないと思ったのよ」

 

「思っててもそれは言うなよ!・・・まあ、続けて」

 

「ええ。だから私は私がやりたいと思う台本、3人からも問題なくオーケーが出そうな台本を最初から選んだの」

 

「だからまずは優美が台本を持って来て、それがかなり良かったと言うことに驚いたわ。ある意味嬉しい感情もあったわ」

 

なるほど。だから優美はあのときに「凄く頑張って選んだんだけどね・・・」とかなり残念がってたのか。

 

「もちろんさっきも言ったけども、優美が持って来た台本は良かった。けれど新入生を勧誘出来るかって言われたらちょっと無名だったわ」

 

「だからあなたが思ってるような私のわがままとううわけでは決してないわ。優美も有名ではないというのは自覚してたしね」

 

別にそんなことは思ってなかったけど、まあいいでしょう!

 

亜由美はさらに「それにね」と付け加える。

 

「それにね、内容自体は凄く楽しい作品選んでくれて。新入生どうこうが関係なかったら優美の台本を選んでいたわ」

 

そう言う亜由美はいつもに増して笑顔だった。それを見た俺はつられて微笑む。

 

「どうしたの?いきなり笑って」

 

「いや、別に?」

 

「そう?ふふふ」

 

俺も優美に会って色々なことが変わったように、彼女も優美と長い時間一緒にいて変わったんだなあ、と思った。

 

 

15分くらい経つと亜由美が言ったように優美と麻由美が来た。

 

挨拶だけ交わしさっそく本題へと入る。

 

「ではさっそくだけれど公演について話すわ」

 

各々頷く。

 

「まず先に言うけれども、今回に関しては演出はみんなで考えようと思うわ」

 

「え!?」

 

優美は驚く。俺も内心驚いたが、態度には出さないようにする。麻由美はたぶん初心者だからとりあえず話を聞こう、みたいな感じ。

 

亜由美は続ける。

 

「もちろん私が中心になって演出は考えていくとは思うけれど、4人用に改稿した台本は私もそれなりに舞台に出ないといけないような感じになったわ」

 

「だから外から見れない場面もかなり多くなるの。そこでそういう場面は出てない人であったり、そこまで出ない人がその場面の演出を考えた方がいいのでは?と」

 

・・・なるほど。確かに一理ある。亜由美が1人で色々考えるのもありではあるが、「演技力」で魅せるとなると色々な人の意見で決めるのもいいと思う。

 

少し考え、俺は意見に賛同する。

 

「いいんじゃないか?俺は賛成。それに竹下さんもいつまでも小松さんに頼りきりもなんだと思うし」

 

最後に1つニヤリと笑いながら付け加えた。

 

その言葉に対し、優美が反応する。

 

「う・・・確かにそうかも・・・。私も頑張らなきゃだし私も賛成かなあ・・・」

 

少しはそういうことも考えてたいたみたい。ある意味肩を押したのは正解だったかも知れない。

 

「私はよくわからないケド・・・だから3人がの意見が私の意見でいいよ~!」

 

麻由美も賛成。というわけで。

 

「じゃあ決まりね。どうするかはまた後で説明するわ。次は演じる役なんだけどね、優美と相談して既にこちらで決めてしまっているのだけれどもいいかしら?」

 

俺は麻由美と顔を見合わせた。2人で首を横にして変な顔になる。

・・・要するになんて反応すればいいかわからない!

 

と、優美が付け加える。

 

「あのね、一応理由なんだけど、麻由美ちゃんは初めてだし大変な役は任せられないし、林崎くんには唯一の男性キャストとしてやって欲しい役があったしで・・・」

 

優美は自分なりに必死に説明をしてくれた。まず、俺が答える。

 

「うん、構わないよ。それに任せたい役があるなんて言われたら逆に燃えるものがある」

 

その人じゃなきゃ出来ないって言われるとやっぱりやる気出るよね!この前の大会の美結だってそうやって出てくれたし。

 

「ありがとうっ!」

 

優美は笑顔になる。この笑顔が見られるなら俺はなんでも了解するぜ!

 

続いて麻由美も答える。

 

「私も大丈夫!台本読んだけどどの役も魅力的だったし、どんなことでもチャレンジしたいって気持ちもいっぱいあるし~!」

 

麻由美らしい。生徒会選挙のときもそんな気持ちだったかな。

 

「麻由美ちゃんもありがとう!亜由美、良かったね!」

 

「ええ、もし反対されても押し切る言葉は用意してたけど、これならその必要はないわね」

 

笑顔だけどさらっとヤバいこと言ってるぞ!その言葉も少し気になったのは秘密。

 

 

というわけで亜由美は誰がどの役かを発表。なるほどな、という役周りになっていた。

 

「という感じになるのだけど、どうかしら?」

 

「俺は大丈夫。バンクォーとマクダフは重要な役だし、やりがいはあると思う」

 

「私もいいよ~!いっぱい色々な役が出来て楽しそう!」

 

それを聞いた亜由美と優美はお互いに頷く。

 

「じゃあこれで行くわ。それと今回はなんだけど、オリジナルの作品というわけでもないし、このキャラクターはこんな感じでこんな性格とかのキャラクター設定みたいなのを全員で考えようと思うわ」

 

亜由美の意見に全員が1つ頷く。

 

「明日は2人はどうかしら?」

 

「私は大丈夫だし、林崎くんも大丈夫だったよね~?」

 

「うん」

 

「じゃあ明日までに、自分が演じるキャラクターを中心にどんな感じか考えてきて頂戴」

 

そういうこともあり、今日はここまでで解散となった。

 

前までと同じように、俺は優美と一緒に途中まで帰る。

 

「台本の件さ、小松さんから聞いたよ。なんかすごく絶賛してたよ」

 

それを彼女に言うと驚く。

 

「え!本当!?」

 

「うん、『新入生どうこうが関係なかったら優美の台本を選んでいたわ』って言ってたし。凄く頑張ったみたいなんだね」

 

俺は少し恥ずかしかったけど、彼女にそう言った。どんな反応をするだろうかと思ったが、意外な反応をした。

 

「あはは・・・嬉しいけどなんか複雑な気分だね」

 

苦笑いでそう答えた。どういう理由なのか少し気になっていると続けて話してくれた。

 

「いやね、実は・・・」

 

美結とのことを簡単に話してくれた。なるほど、彼女の助けがあったからちょっと複雑な気分だったのか。それでも最終的に選んだのは優美本人であるし、素直に喜んでもいいのではと思う。

 

「きっかけは他人でもいい台本を選んだのはキミだし、俺がキミなら素直に喜びかな」

 

「そっかなあ?でも確かに亜由美に褒めてもらえるのは素直に嬉しいんだけどね。やっぱり今もだけど亜由美を見て、亜由美を目標にやってきたわけだしね」

 

「少しでも近づけたら嬉しいし、少しでも亜由美の助けになれたらいいなってずっと思って来て。だから、私も演出とかそういうの、もっと頑張らなきゃって」

 

そう話す彼女はまっすぐで、真剣で、改めて俺はそんな彼女を大切にしたいと思った。

 

「どうしたの?」

 

無言で優美のことを見ていたため、彼女に不思議に思われる。

 

「あ、いや、別に」

 

「そう?なんか変なこと言っちゃったかなって思っちゃった!えへへ」

 

無邪気に笑う優美。それすらも魅力的に感じる。そんな彼女を見て、俺はついついこんなことを言ってしまう。

 

「なあなあ」

 

「うん?」

 

「・・・優美」

 

「え!?」

 

なんとなく、特に意味はなかったけど、名前で呼びたくなった。いや、特に用事があるとかそういうわけでもなかったけど。

 

いきなりの出来事にびっくりする優美は更に可愛い。

 

「え!何!?どうしたの!?いきなり!?え、え、え!?」

 

「あ、いや、特に意味はないけど・・・なんとなく、名前で呼びたくなって・・・」

 

「そ、そっかあ・・・ちょっとびっくりしたけど、なんかいい気分かも・・・えへへ」

 

嬉しそうな表情になる優美。

 

「ねね!もう1回、呼んで欲しいなあ!」

 

まさかのリクエスト!言おうとも思ったけど、なんとなくからかいたくなる俺。

 

「え、何?どうしたの『竹下さん』?」

 

「え!」

 

まさかの俺の対応に驚く優美。うん、予想通りで面白い!

 

「あれ、なんか変だったかな?いつもはそう呼んでるけど・・・『竹下さん』って」

 

「う~!!・・・もういいもん!」

 

あ、なんか拗ねちゃった。「恋人になったらいくらでも呼んであげるよ」って思ったけど、それはさすがに恥ずかしくて言えなかった圭であった。

 




いかがでしたでしょうか?

なぜマクベスにしたかと言うと・・・学生の頃やったので書きやすかったからです(笑)もし興味がおありでしたらマクベスがどんな物語かも調べていただいたら幸いです!

ちなみですが、誰がどの役かは後で活動報告にでも書こうと思ってます(^^♪

2人きりなら名前で呼ぶようになったり、少しずつですが圭もある意味我慢が出来なくなってきている感じですかね~?

ではまた!




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