書きたいことは後書きで書きます(笑)
では、本編をどうぞ!
前と同じように私は駅まで林崎くんと一緒に歩く。私は緊張し何も話せずにいるし、この緊張は彼にも伝わってしまっている気がする。
私は決めていることがあった。今日絶対に彼に私の気持ちを伝えることを。どうなるかなんていうのは言わなくてもわかっている。わかっているけども私はリサコを演じてどうしても気持ちを伝えたくなってしまったのだ。
だから、駅について別れるまでに私は彼にこの話をしなければならないんだけど・・・やっぱりいざそういう場面になると緊張して声なんてかけられない。
そんなことを考えているうちにもう駅前までついていまい、彼の方から別れのあいさつを言われる。
「それじゃあ、また。今日までありがとう。学校近いし簡単に会えると言えば会えるけどね」
「確かにそうだね」
声をかけられて私はとっさに作り笑顔でそう冗談交じりで答えた。・・・だめだ、このままじゃ何もできないまま終わってしまう。
私に何か声をかけなければ、何か・・・そう考えていると彼の方から私に声をかけてくれる。
「・・・何か話でもある?」
まさか、そういわれるとは思ってなかった。でもここで嘘つくわけには行かない。
「あ、うん、まあ、ね」
どう答えていいかわからない私はとりあえずそう言うしかなかった。
「別に急いでるわけじゃないし、言えるようになるまで待つよ?」
彼はそういう。私としては話さないのに待たせるなんて悪いとは思っていたけども、でも彼の表情を察するに本当に私が言うまで待ってくれそうな、そんな表情をしてた。どんなに時間がかかってもいい、俺は待ってる、だからキミも考えてていいから、そんなことを思ってるんじゃないかと。
そんなことを思うと私は更に彼に対する感情が高ぶっていくのがわかった。どうして?どうして?なんで、私にそこまで優しく出来るの?あなたには他に好きな人がいるんでしょ?それとも・・・。
私の心の中で、僅かな、ほんの僅かな光が射したとき、私は力をぐっと込めて決意した。言うんだ、言うんだ・・・!
「・・・聞いて欲しいんだ」
絞り出したその声は、いまにも消えそうだった。
「・・・うん」
彼は私の声を聴くと同時に、今までよりも少し真剣な表情へと変わる。
私は再度左手を胸に当て、2度深呼吸をする。気持ちをもう一度整理し、私は気持ちを伝える。
「・・・好きです」
「何事にも真剣で、全力で、真摯に、それでいて心の中には熱いものがあって・・・そういうあなたを、私は好きになりました」
私の思いは叶うはずは絶対ない、それでも、どうしても私はこの気持ちを伝えたかった。
少し考えていたとは言え、やはりいきなりそんなことを言われた俺は驚いた。もちろん彼女の好意が嫌というわけでは全くない。ただ、ただ、だ。俺には好きな人がいる。それも彼女は知っている。だから、彼女の言葉になんて答えればいいのか、俺はわからないでいた。
俺が黙ってしまっていると彼女が口を開く。
私の言葉を聞いた彼は少し驚いたあと、やっぱり困った顔をしてしまっていた。そんなのわかっていたことだったけど、やっぱり言いたかった。
何も話さない彼に私は自分の思っていることを続けた。
「私、リサコを演じたでしょ」
「リサコはさ、後悔ばかりの人生を送りそうだったけどさ、サトコに出会って少しずつ変わっていったよね」
聞いているだけの彼に私は話し続ける。
「私もさ、前に話したの覚えてる?キープされちゃった話。それからさ、私は恋愛なんてって思うことが多くて。でもさ、優美ちゃんと林崎くんに会って、2人に会って羨ましい、私もまた恋したいって話は前にしたよね」
私は話が進むごとに、だんだんをこらえきれなくなりそうなのが自分でもわかる。それでも・・・。
「そのときにはさ、もう君のことが好きだった。だけどさ、君に好きな人がいることは私知ってたし、正直ね、この気持ちは言わないで、自分の中に抑え込もうと思ったの」
「でもさ、リサコを演じてたらさ、私も負けたくないって思うようになってね、もし言わないで、そのままずっと引きずっちゃたりしてさ、ずっと前に進めなくなったらダメだと思ったの」
涙をこらえ、私は彼を見る。最後の言葉を、私は言う。
「だから告白した。迷惑だってわかっていたけどね、それでも・・・」
俺は素直に凄いと思った。自分絡みのことだから変なこと言ってるとは思うけども、それでも彼女の考えは凄いと思った。結果が見えていることなのに、それでも結果を気にすることなく、自分が前に進むために彼女は行動した。
とても強い。そんな彼女に圭も強く答えないといけない、そう思った。
「・・・ありがとう。気持ちはすごく嬉しい。人に好きになってもらって嬉しくない人なんていないしな」
「でもごめん。君が知っての通り、俺には他に好きな人がいるんだ。竹下さん、優美のことが大切なんだ。だから君の気持ちには答えられない」
俺の発する言葉一句一句を彼女は真剣に聞く。
「俺もこれから先に進むために、断らないといけないんだ。だから、・・・ごめん」
最後に息を吐き、美結を見る。すると驚いたことに彼女は笑っていた。
私は彼の話す言葉を一つも聞き漏らさないように聞いた。私のわがままに対する彼の精一杯の答え。やっぱりいざそう断られるのは悲しいものではあったけど、それと同時に私は凄く吹っ切れた気持ちになったのと、彼が優美ちゃんのことをどれだけ大切に思ってるかに、自然と笑顔になった。
「・・・ふふふ、なんだろうね、この気持ち。あーあ、やっぱりダメだったか~!ちょっとくらいあるかな、とか思ってた私がバカだったね」
ホントにちょっと、0.1%くらいは可能性あるかなって思ってたかも。
「頑張ってね、優美ちゃんと。応援してるから」
私は笑顔でそういう。作り笑顔ではなく、本当に心の底から思ったことだった。
「・・・ありがとう。ごめ」
「ごめんはダメだよ?2次元のイケメンはそういうこと言わないんだから」
私はとびっきりの笑顔で彼に向けてそう言う。・・・ちゃんと、最後のあいさつしなきゃね。
「・・・改めて、今日までありがとうございました。短い期間だったけど一緒に演劇出来て良かったよ」
「いや、こちらこそ。素人なのに色々面倒見てくれてありがとう。俺も楽しかったよ」
私の言葉に彼もちょっと気まずそうだったけど答えてくれた。
「・・・じゃあ、また、さようなら」
私はそう言いながら手を振り、彼に背を向けた。
「うん、また」
俺も少しだけ手を振り、彼女の背中を見送った。あれからずっと笑顔の美結。最初は作り笑顔かな?とも思っていたけど、なんとなく俺には本当に心の底から笑っていたように見えたのがなんとなく嬉しかったしホッとした。
告白されて断ったのは事実だったけれども、彼女が前を向いているのを見て、自分も前向きに優美のことは頑張らないといけないと思った圭であった。
× × ×
『もしもし~?』
「あ、まゆちゃん、今いい?」
なんとなくだけど、今日のことは誰かに報告したくなったから、まゆちゃんに電話。
『うん、いいけど~?どしたん?』
「あのさ、今日ね・・・」
私は今日林崎くんに告白したことを簡単に説明した。そもそもまゆちゃんにはこの話は全然してなかったし、私が彼を好きということにまず驚くと思ったけど、「あ~、うん、わかるわかる!好きになっちゃうよね~!」って言ってた。まゆちゃんももしかして・・・って思ったけど、好きな人いるんだよね。
「もうちょっと驚くと思った」
『あはは~!だっていい人じゃん!一緒にいたら誰でも好きになるって!』
「なにそれ」
口ではそう言ったけど、本当にそれくらいいい人だと改めて思った。
『なんかさ、全然悲しいとか悔しいって感じじゃないけど~?』
「あ、やっぱりそう見える?」
『うん。なんか吹っ切れたーって感じかな~?』
「そうそう、そんな感じだよ。最初はさ、もっと悔しい気持ちになると思ったんだけどね、どっちかと言うと頑張るぞ!って感じになったよ」
『頑張るって?恋愛?』
「うん。好きな人欲しい。今度は好きになってもいい人がいいなあ」
『何それ~!じゃあ私も、美結に負けないように頑張らなきゃね~!』
「ねえ、まゆちゃん」
『うん?』
「演劇も楽しいけど、恋って言う舞台も楽しいね」
舞台に例えるなんて私演劇脳だね。
『面白いこと言うね~!恋が舞台ならさ~、美結の舞台と、私もこれからもっと頑張られなきゃだし、私の恋の舞台もリスタートって意味でさ、私たちの「舞台」は始まったばかり!なんてね~!』
「何それ!」
始まりはちょっと苦かったけど、まだまだ始まったばかりだもんね。甘い「舞台」になるように、頑張らないとね。
「私たちの「舞台」は始まったばかり・・・頑張ろうね!」
本編はこれにて終了です!長々と後書きを書かせていただきます(笑)
今回ですが、美結ちゃん目線になったり、圭目線になったりで少し読みにくかったところもあった思いますが、2人の心情を描きたかったためこのようの感じになりました。
さて、サブタイがタイトルと言う時点でピンと来ている読者様もいらっしゃると思いますが、この60話でまた一つの区切りとなります。一応、大会編と名を打っていましたので、今回にて大会編終了となります。
この大会編ですが、最初はこんなに長くなる予定ではありませんでした。修学旅行のことは書く予定でしたが、優美が告白されるのは書きながら思いついたことでしたし、美結が圭を好きになるというもの最初は考えてませんでした。
つまり、圭も優美も他の人に告白されたということになりました。
なぜこういう話を書いたかと言いますと、1つは圭と優美って誰がみても、どう考えてもくっつく以外の選択肢ってないですよね。なので、物語を少しでも面白くするためにこのようにしました。
それともう1つは、他の人に告白されてもお互いの気持ちはぶれることはないというこことを書きたかったためです。
全体の物語はもう折り返し地点を過ぎました。次話からは圭と優美の恋模様と4月の講演までの過程はもちろん、麻由美の恋模様や、元部長の話なども書いていきたいと思います。
長々と書いてしまいましたが、ここまで読んで下さった読者の皆様には感謝の一言です!ではまた次話、61話にてお会いしましょう(*'▽')