タイトル見ればわかりますが、イチャイチャも少しありますよ~!
「皆さん、ご迷惑をおかけしました。昨日リハーサルは出来なかったけど、本番ではしっかりやります」
大会本番、全員集合するなり美結は謝罪をした。
「頼むわよ。もうここまで来たら代役なんて立てられないのだから」
「うん、頑張るよ、みんなよろしく」
リハーサルが終わった後俺たちは解散し、美結のことは優美と麻由美に任せていた。正直、優美から大丈夫と連絡が来るまでは気が気じゃなかった。彼女に選択肢を与えなかったとはいえ、本当に出られるかどうかなんてわからなかったし、連絡が来たときは思わず飛び上がったしまったほど。
何はともあれ、俺たちは出ることになった。文化祭が終わり、誰も部員が入らなく試行錯誤をしてたあのころを振り返るとまさかこうして大会なんて出てるとは正直誰も想像出来なかっただろう。
せっかくなのでこの大会の概要を説明。この大会の位置づけとしては県の予選みたいもの。演劇をやってる高校自体はそこまで多くないため出場校は5校。うち、1校のみ、県大会へと出場出来る。
他の高校が演じるときは基本的に、見るような感じ。ちなみの俺たちの出番は抽選により最後。
というわけで俺たちA校B校合同チームは座席へと移動。
席順は適当であるが、亜由美・優美・圭・美結・健太の順番で見ることに。
「なんかすっごく楽しみだね~!初めてだからってこともあるのかな!」
隣にいた優美が笑顔を俺に向かって話しかけてきた。ちょっとからかいたくなった俺。
「楽しみなのは今のうちじゃない?」
「え!?」
「ほら、他の学校の演技みてさ、めちゃくちゃうまくてさ、どうしようどうしようってなるぞ」
言ったあと、実際そうなりそうだと思った。
「ええ~!!そ、そんなことないもん!もっと頑張るぞーってやる気出るもん!」
わたわたわたわた焦っていたので、多少、言われたことが頭をよぎったのだろう。なんかごめんね(笑)
「もう、林崎くんたら。優美ちゃんいじめちゃダメだよ?」
逆隣にいた、美結からそんなことを言われた。やばい、これは挟まれている俺が悪者になるパターンか!
「美結ちゃん・・・!」
「私的にはね、優美ちゃんはね、緊張して本番セリフ忘れちゃって失敗しちゃうと思うよ」
と、めちゃくちゃ笑顔で言った。おいおい、俺よりもっとひどいこと言ってるじゃないですか・・・ってか、実際本番で失敗したら困るんですがそれは・・・。
「ががーん・・・!美結ちゃんまでひどい・・・!亜由美!亜由美!助けて!!」
美結に予想に反したことを言われて、今度は亜由美に助けを求めに・・・なんか結果見えてるよね?
「優美、本番で失敗したら許さないから」
と真顔の亜由美。笑顔も怖いけど真顔も怖いよぉ!
「村崎くん・・・」
亜由美にまで見捨てられた優美は健太へ最後の希望を求めに行ったが・・・。
「あ、健太はさっきトイレに行ったぞ」
無情にもそこは空席だった・・・。
「・・・もういいもん!」
誰にも助けてもらえなかった優美は口を尖らせてそんなことを言っているが、顔は笑っていたので冗談でみんな言っているのはさすがにわかっているようで(ホントに冗談かはわからないが)。
「林崎くん」
となりの美結にポツリと話しかけられた。
「どうかした?」
「一応、謝っておこうと思って。昨日の舞台装置のこととか1人で任せちゃって」
かしこまって言うから何かと思えば。
「ああ、大丈夫だよ」
俺はそれだけ言った。余計なこと言わない方がいいと思ったし、十分伝わるず。
「うん、ありがとう」
美結もそれだけ。それから少し間が空く。
「・・・あのさ」
「うん?」
「えっと・・・」
何やら彼女にしては珍しく言葉を選んでいる。
「ギリギリ間に合いました・・・もう始まりますね」
と、そこで健太が戻って来た。隣に座る美結はさすがに無視するわけもいかず。
「あ、うん。ホントにギリギリだったけどね」
結局、それからすぐに最初の学校の演技が始まり、美結の話も途中までしか聞けなかった。
最近、美結からの発言に少し気にしてしまうことがあったので尚更続きが気になる圭であった。
× × ×
あれからあっという間に他校の演技は終了し、4校目の演技が始まり俺たちは舞台裏へと移動した 。
まず、他校を見た感想ではあるが総合的な演技力ではやはり俺たちよりは上なのは間違いない。
また、人数も多い学校が多く、色々やれることが多いためそういうところでも演出面等で差がついてしまっている印象。
ただ、今回の代表候補であり1つ飛び抜けた学校はあるものの、それ以外の学校はそこまで圧倒的に差を感じるレベルではないため、優美を始め、他校の実力に圧倒され萎縮してしまうということはなく、むしろみんながみんなやる気が増したと言ってもいいくらい。
今は衣装の着替え等終了し、控え室にいるところである。隣に座っていた優美が話しかけてきた。
「なんかさっきまでは緊張してなかったけど、今になって緊張してきたよお!」
優美は両手をグーにして膝に置いてちょっとわたわたしている。
「確かにね。文化祭のときとはなんか違う雰囲気で緊張するよね」
表には出してないが、衣装を着たあたりから本当に始まるんだな、と俺も内心緊張している。
「え~、林崎くん全然普通だよねえ?いつも通りって感じ!なんか緊張が解けるようなことないかな?」
優美にそう言われ、俺は少し考えた後、座っている優美の後ろへ行き肩をもみ始めた。
実際触れてみると見た目よりも小さい肩になんとなくドキッとしてしまう圭。あまり意識しないようにかるーく揉み続ける。
「どう?少しはほぐれたかな?」
「あ、言われてみれば・・・あ、もうちょっと外の方が・・・」
優美はそう言いながら右手で肩を指す。と、俺の右手触れてしまった。
「「あ・・・!」」
2人とも手をサッと引き、お互い謝るような感じになる。
「ご、ごめん!!」
「いや、こっちこそ!」
「いや、その・・・そもそも別に嫌じゃないというか・・・」
自分では聞こえないようにそう言っていた優美であるが、俺が彼女の肩をもみ始めたあたりから、他の3人はニヤニヤニヤニヤしながら静かに俺たちを見ていたようで・・・。
「本番直前なのに2人は相変わらずラブラブね」
まず美結が先陣を切ってからかってくる。
「ホント仲いいですね!羨ましいです!」
次は健太。そして最後は亜由美。
「別にそういうことするのは構わないけど、失敗したら許さないわよ」
畳み掛けられた俺と優美は完全に固まってしまう。
と、扉が開く。
「A高校B高校合同チームの皆さん、そろそろ舞台袖に移動して下さい」
これはちょっとラッキー。変な空気は一瞬でなくなった。
「はい、わかりました。みんな移動しましょう」
亜由美の号令にて各自必要なものを持ち、移動する。
× × ×
「いよいよだわ」
「ですね」
「緊張する~!」
「静かなのが余計にな」
「あゆちゃん、いつものやつお願い」
美結が「いつもの」と言っているのはおそらく円陣みたいなやつだろう。
「ええ、わかったわ」
亜由美がそう言いながら右手を差し出す。それに習い全員その手に重ねていく。
自然と全員改まり、心地よい緊張感が走る。
「今さら細かいことは言わないわ。とにかく悔いの残らないようにだけ、それだけよ」
「うん!」
「はい!」
「うん」
「おう!」
亜由美は息を吸い、いつもよりも幾分力を込める。
「頑張りましょう!」
「「「「おー!」」」」
俺たちの「舞台」は幕を開けた。
次回は本番回。ちょっと特殊な感じでお届けしようと思います(*'▽')