私たちの「舞台」は始まったばかり。   作:かもにゃんこ

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「好きな人が欲しいなあって思って」

優美がいきなり道を間違えそうになったが、まあその後は問題なく目的のホームセンターへとついた。美結に聞くと、どうも前にも2回来たことがあるとのこと。

 

一方、優美はというと、ホームセンターはほとんど来たことがなく、なんか凄くわくわくしながら歩いていた。そんなテーマパークみたいなところじゃないよね?

 

そう言う圭も、ホームセンターは家族と数回来たくらいでなんだかんだ楽しみだったり。

 

入り口の前には色々な植物が売っており、優美は驚く。

 

「へぇ~!ホームセンターってこういうものも置いてるんだ!面白いね!」

 

そう言いながら優美は背丈ほどある観葉植物をちょんちょんと笑顔で触っている。うん、今日も可愛い。

 

「あはは、せっかくだし目的のものが売ってるところ以外も回ってみよっか」

 

「うん!」

 

まるで姉妹のような会話だなあ!

 

と、言う感じでお店の中へと入る。

 

優美と美結が並んで歩き、そのあとを圭が着いていくような感じで店内を回る。

 

途中、調理用品売り場のところで2人は止まり、商品を見ながらなにやら話を始めている。さすがは女の子というところか。2人ともお料理とか好きそうな雰囲気だもんね!

 

「へぇ~!今はこういう形のもあるんだ~!」

 

「そうだね。これなら私でもうまく作れそうかも」

 

「あ、美結ちゃんもお料理するの?」

 

「うーん、お母さんのお手伝いくらいかな。少しずつだけど覚えないと将来困りそうだもんね」

 

「そうなんだっ!私は結構1人でお弁当とか作ってるんだけど、なかなかうまくいかないかなあ」

 

・・・はい、これ男が入り込める余地ないですよね!なんかめちゃくちゃ盛り上がってるし。

 

手持ちぶさたの圭も近くにあった鍋を触る。まあ、あんまり興味があるわけじゃないが。

 

そんなことをしつつも2人の話は盛り上がる・・・となんか話の方向が変わる。

 

「ねえねえ、今度一緒にお料理作らない?」

 

「あ、いいよっ!」

 

「それで・・・あっ。林崎くん!」

 

「あ?え?」

 

突然話を振られてびっくりする。

 

「林崎くんも来てね、私たちが作ったの食べてどっちが美味しいか決めてもらうとかどう?」

 

「「え!?」」

 

「それで勝った方が・・・うふふ、なんでもないかな」

 

何か意味深なこと言いたげな美結であったが、途中で打ち切る。勝った方が・・・なんだろう?負けた方になんでも命令出来るとか・・・?そんなわけあるか!

 

俺はそんなくだらないことを考えていたが、優美はどうも美結の言ったことが気になるみたいで。

 

「え~!何々~?美結ちゃんの考えてること聞きたいなあ!」

 

「・・・秘密、かな」

 

美結はちょっと俯いてそう答えた。そのときは俺も彼女が何を考えてるかはわからなかった。

 

 

× × ×

 

 

それから、予定通り木材とかの材料を買い、また、圭が個人的に気に入った工具類もついつい買ってしまった(笑)

 

「木材って結構安いんだな」

 

「あ、私もそれ思ったよ~!むしろドリルとか高くてびっくりした!」

 

「でも大丈夫だよ。うちの顧問の先生に頼めば部費でなんとかしてくれるから。ね、林崎くん」

 

ぶっちゃけそう言われてホッとした。もの欲しさだけついつい買ってしまい、レジで金額を見たときにびっくりしたので・・・。

 

「あはは・・・よかった・・・」

 

俺が心の底から改めてホッとしてると、優美がある提案をする。

 

「ねえねえ!せっかくだしどこかでお茶でもしない?」

 

「うん、私はいいよ。特に用事もないし」

 

「俺も大丈夫」

 

大丈夫というか、彼女と一緒に過ごせる時間が増えてむしろ嬉しいです。まあ、あんまり顔や声に出すとからかってきそうな人がいるんでそう言ったが。

 

「じゃあ決まりだね!」

 

というわけで、近くにドーナツ屋があったのでそこに寄ることに。

 

「やった!今日100円の日だ!いっぱい食べちゃおうっ!」

 

「優美ちゃん優美ちゃん、あんまり食べると太っちゃうんじゃない?」

 

「う・・・!そうだね・・・」

 

喜んだり、悲しんだり、感情の起伏が激しい優美。でも圭はそんな彼女の性格が好きだったり。

 

「じゃあこれ、せっかくだから林崎くんにあげる!」

 

「え?」

 

優美はチョコをまとったオールドファッションをひょいと俺の皿へと入れた。ぶっちゃけ、チョコはそこまで好きではなかったが・・・。

 

「あら、良かったね、優美ちゃんからプレゼントだね」

 

「え!いや、その・・・まあ、そう言うことでっ!・・・もらってくれる・・・よね?」

 

そんなこと言われるし、上目使いだし、もらわないわけにはいかなかった(笑)

 

「うん、俺これ好きだからもらうよ。ありがとう」

 

そう答えると、優美はパァっと笑顔になった。嘘言ったけど、彼女の笑顔が見られてよかったです。

 

おのおの好きなものを取り、席へと座る。

 

他愛のない雑談をしながら食べていたが、話がひと段落すると美結が「あのね」といつもに増して真面目な雰囲気で話を切り出す。

 

「あのね、私ね、2人のこと見ててさ、やっぱり羨ましいなあって思って」

 

「え?それって・・・」

 

「うん、2人同時には言ってはいないけど、2人のお互いを思う気持ちとかさ、そういうのいいなあって思って」

 

優美はそういうことを聞くといつものように赤くなって俯き、小声で「ありがとう」と言う。そんな俺もいざ、面と向かって言われると恥ずかしい気持ちになる。

 

「それでね、そんな2人に聞いて欲しいことがあって・・・」

 

美結は改めて、真剣な表情になりそう告げる。俺と優美は無言で頷く。

 

「私さ、前に好きな人出来たことないって優美ちゃんに言ったのおぼえてる?」

 

「え!?う、うん。覚えてるけど・・・」

 

美結から突然恋愛の話が出るものだから、優美は驚く。俺も内心驚いた。もちろん態度に出さないけれども。

 

「アレね、実は嘘だったの」

 

「ええっ!!」

 

俺は話を聞いてるわけではないのでよくわからないが、どうやら2人でそういう話をしたらしい。

 

「なんかね、あんまりいい思い出じゃなくてついつい。ごめんね」

 

「ううん!大丈夫!ちょっとびっくりしただけだったから」

 

「うん、ありがと」

 

美結は改めて、私ね、と続ける。

 

「私ね、中学の頃好きな人がいて」

 

「うん」

 

優美も真剣に聞き始める。

 

「小学校の高学年の時から中学も一緒の学校で、一緒のクラスで。それで一緒に話したり放課後も遊んだりすることも多くてね」

 

「時を重ねていくごとにやっぱり気になっていくのがわかってきて。それでね、2年生の時の修学旅行の夜に思い切って告白したの」

 

それを聞いた優美は少しピクッと体が震えた。おそらく、自分の経験のことを多少なりとも思い出してしまったからだろう。

 

「そうなんだ」

 

俺はそう答えた。優美の気持ちを少しでも、美結には見せたくなかったただの自己満足にはなるが。

 

「うん。それでね、告白したんだけど答えは保留にされて。それでね、一か月くらい返事来なくなって、思い切って聞いてみたんだけど・・・」

 

話が最初に比べ、かなり深刻な雰囲気となってきた。なんとなくだが、話の先が見える気がした。優美はそんな圭の気持ちを察するかのように聞く。

 

「・・・フラれちゃったの?」

 

「うん、まあ結果的にはそうなったけど、ただフラれただけじゃなくてね、私がね告白する前からその男の子に実は他に好きな人がいたの」

 

「ええっ!!何それ!?好きな人がいたのに断らなかったって・・・!じゃあキープされちゃってたってこと!?」

 

優美は驚き、声を上げた。当然だろう。俺だって彼女と同じく驚き、同じことを思った。

 

「本人に直接聞いたわけじゃないけど、多分そう言うことになるよね。確かに告白したときに好きだったけど、そんなこと言われたらもう好きじゃなくなっちゃったし、その後彼とその好きな人とがどうなろうが私には関係なかった。けど・・・」

 

けど・・・けど、か・・・。彼女の中ではその人とどうなったかが問題でなく、要はその後が問題になったということか。そんなことを考えていると美結と目があった。

 

「・・・うん。それからね、私男の子が信じられなくなっちゃって。別にただ話すだけなら全然大丈夫なんだけど、好きになるとかそういうことはなくなっちゃって」

 

「そっか・・・大変だったね・・・」

 

男性不信とまではいかないが、少しそういう感じになったのだろうか。

 

「でもその後はいわゆる恋愛ゲームとかアニメとかそういうのにハマって。現実での恋愛よりもそういうことのが楽しくなったし、リアルの恋愛に対してもいい思い出はなかったから、もういいやって思ってね。だからあの時も面倒とかそういうこと言ったの」

 

美結はそこまで話すと、圭と優美を交互に何度か見る。なんとなく、圭は話の流れがわかった。美結はというと、今までとは違い、笑顔で話す。

 

「でもね、2人と会って、2人を見て、2人の関係が羨ましくなってね、私もまたリアルでも好きな人が欲しいなあって思って」

 

そう言うと美結は圭の方をじっと見つめた。それからまた2人に向き直り、

 

「なんかごめんね、変な話して。結局ね、何が言いたかって言うと」

 

そこまで話すと、美結は口を開いたまま話を止め、そしていったん何かを考えるような仕草をする。

 

そんな美結に優美は心配する。

 

「どうしたの?大丈夫?」

 

「あ、うん、ごめん。結局ね、2人のおかげで私変われて良かったって言いたくてね。だから、ありがとうございました」

 

軽く頭を下げ、美結は感謝の言葉を口にした。

 

「いやいや!私何もしてないよっ!林崎くんもそう思うでしょ!?」

 

優美は予想通り(?)そんなことを言うが、俺はそんな優美の言葉に同意はしなかった。

 

「あのさ竹下さん、せっかく感謝してくれたんだし、ここは素直を受け取るべきだと思うよ」

 

人の感謝は素直を受け取る。だって受け取らないとどっちも損するだけだしね。だから圭は彼女の感謝を素直に受け取り、気持ちを伝えた。

 

「そんなこと思ってくれてこっちもありがとう」

 

短い言葉ではあったけど、美結は微笑んでくれた。圭がそういうと優美もそれに続く。

 

「全然その・・・ただ、一緒にいただけだけど・・・その、なんか嬉しいよ」

 

優美も笑顔でそう告げた。その言葉を聞いた美結は「ありがとう」とまた言った後、「ごめん」と口だけ動かしたように、圭には見えた。

 

 

美結からそんな話を聞き、彼女とは更に仲良くなったような気がした圭。ただ、美結の言動の中には、これから圭も考えなければいけないようなセリフも少なからずあった気がした。そんなことも思う圭であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




なんか美結ちゃんの後付け設定が多いなあと今更ながら・・・。

次回はクリスマス・イブの話になる予定です(*^_^*)果たしてイブのヒロインは誰になるのか・・・?

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