タイトル含めちょっとした野球ネタ入れてしまいました(笑)
今回は一応優美目線です。
「じゃあまず、せっかくだし林崎くん、何か意見とかない?」
「せっかくって・・・まあ、確かに依頼受けたのは俺だしね」
優美はそういう圭に結構期待してた。依頼してからまだ一日しか経ってないとはいえ、頭にキレは割と良さそうな人だし依頼に対して熱心に考えてくれてそうだったから。しかし・・・。
「うーん・・・。期待してるから言いにくいけど、昨日の今日だしさすがにまだ何も考えられないよ」
優美は残念そうな顔をしたが、隣にいた亜由美から「仕方ないでしょ?」と言われ、持ち直しす。
「そうだよね、なんか勝手に期待しちゃって、嫌な顔してごめんね」
「いや、別に謝られるようなことじゃないよ。事実、依頼を受けたのは俺だし依頼主の期待には応えなきゃダメだもんね」
優美は改めて圭が責任感が強くて優しい人だと思い、こんな人が自分の以来を聞いてくれて、一緒に考えてくれて嬉しいと思った反面、あまり押し付けてもいけない、そうも思った。
「そういえば、ちょっと聞きたいことあるんだけど」
と圭がいい、続けて、
「部員を増やさなきゃマズイって思った時期、それと先輩たちに色々提案したって聞いたけど、どんなことを提案したのかなって」
そういえば、そんなこと最初に言ったなあ・・・。大したことでもないけど、聞かれたことは答えないわけにはいかないしね。
「そうだねえ。マズイなあって思ったのはやっぱり今年の4月に一年生が入らなかったときかなあ。もともと部活の中では少ない部員ではあったけど」
あのときはちょっと寂しかったなあ・・・。部活に入ってる他の友達に後輩が~とか言われると悔しかったもん。
「私はそのときよりも春の公演が終わったあとにそう思ったかしら」
優美のあとに亜由美がそう言った。
「あ~、私もショックだったなあ。公演あとなら見てくれた一年生が少しは入ってくれるかなあ、って期待してたから」
「でも当然と言えば当然だとも思ったわ。あんな素人みたいな演劇を見て、ここに入りたいと思う人がいるとしたらよっぽどの演劇好きで最初の部活見学の時に入っていると思うわ」
亜由美は少し早口に、怒りっていうほどではないけど、感情をこめてそう言ったあと、それに、と続け、
「私がショックだったのはこんなひどい演劇しかやらない演劇部にこれからも入りたいと思う人がいることはない、そう確信してしまったことのショックも大きかったわね」
それを聞いた林崎くんは、あれ?という顔をし、
「でも二人とも1年間演劇部にいたんじゃないの?それまでにも公演とかはしたんじゃ?」
もっともな質問。なぜそれまで気が付かなかったのだろうと思うのは普通だよね。
「それがね、去年は公演らしい公演は全然しなかったの。部活自体も週に2,3回でいつも即興ばかりやってたし、文化祭でやったのもかなり短い劇だったし」
「それでたまたま先輩の気まぐれで春公演をやろうって話になって、せっかくならちょっと長めにって。ようやくまともな台本使った劇が出来るんだ!って最初は嬉しかったけど・・・」
そこまで優美が話したあと、圭はなるほどという仕草を見せ、
「魅せる公演ではなく楽しんだだけの公演になって、ショックだったってことだよね」
「そうだね・・・」
優美と亜由美はそのことを思い出し、ちょっとつらそうな表情になった。
「最初からあれ?とは思う感じだったけど、そこでヤバい、このままじゃ新入部員は入って来ないだろうって」
「確かにそうだね。じゃあ4月の終わりから何かしようと思ったって感じかな?」
「そうだね。それからは・・・まあ・・・」
その話になると更に浮かない表情になった優美に変わって亜由美が話してくれた。
「まずは先輩に言ってみたわ。今まで楽しくやってたのもいいけどもっとしっかりとした舞台もやりたいってね」
圭が最初に優美から聞いていたことを亜由美は話す。
「それを言ったら何を言われたと思う?」
亜由美の顔がいっそう厳しくなり、
「いや、学生の部活なんだから楽しめなきゃダメでしょ?別に大会出るわけじゃないじゃん?って。私はこれを言われてこう思ったわ。この人たちを説得するのは無理なんだわって」
私も亜由美と一緒にいたけど、ああ言われたときはショックだったよ・・・。何も言えないくらい・・・。
「そうか・・・。そこまで言われてると確かに手の打ちようがないね・・・」
「彼らが引退するまで待つっていうのも、思いついた、けど・・・」
そこまで圭が言うと圭は話すのをやめる。
私も亜由美もそれはちょっと考えてはいたけど…。でもいきなり部員2人で活動するなんて色々厳しいよね。
「・・・ということは、他にも色々提案したけど『楽しめなきゃ』で一蹴されたのかな・・・?」
「色々って言ってもいきなりあそこまで言われたらこちらは参ってしまったわ」
「一応ね、部員が少ないからこれからもあるし増やしたいってことは伝えたんだけど・・・」
優美がそれを言い終わると圭は察して何も言えなかった。亜由美も特に何も反応せず下を向いていた。
3人とも黙り、動かない。これだけでも今回の件が相当な難題というのがみんな痛いほどわかってしまう。
やっぱり誰に相談してもダメなのかなあ・・・。クラスの友達にも聞いてみたりしたけど・・・顧問の先生も幽霊顧問だからあんまり聞いてくれなかったし・・・。それで生徒会で悩み相談受けてるって聞いて最後の希望で・・・けど生徒会でも無理そうだし・・・。やっぱり、む・・・り・・・?
「やっぱり・・・無理だよね」
沈黙に耐えれなくなったのか優美は力なくそう言った。
「・・・まだでしょ!?まだまだ!」
え・・・?まだってなにが・・・?
「まだ2日しか経ってないのに俺は諦められない。確かに今の話聞いたら正直お手上げ。でもまだ2日だよ?何かいい案が思いつくかも知れない!」
「諦めちゃ終わりだしまだ諦めるような時間じゃないと思う」
そこまで聞いた2人は顔をあげた。確かに無理なのかも知れない。でも彼の熱い気持ちが伝わってくる。
「野球だってツーアウトからって言うじゃん?実際そういうことが起きるし!もう100パーセント無理って言うまで諦めなきゃ何か起こる!」
圭は2人の目を見て、2人は圭の目を見て。わからない、わからないけど…。
圭は息をすぅっと一息吸った。2人は圭がこれから言うであろう言葉に耳を傾けた。
「日本文理の夏はまだ終わらない!・・・じゃなくて君たち2人の『舞台』はまだ終わらない!」
圭からしたらまさに「どやあっ…!」って感じの決めゼリフであったが2人はぽかーんとし、
「なに・・・それ・・・!全然意味わからないんだけど!ぷぷっ!」
「何を言うかと思ってたら・・・マニアック過ぎてわからないわ!」
2人は笑った。2人からしたらまさか自分が知らない言葉がくると思ってなかったから。それを見た圭は唖然、それから恥ずかしくなってしまい顔がどんどん赤くなってしまい・・・。
「知らないの!?マジで!?知らないのか…。野球ファン以外でも知ってると俺は思ってたのに!!」
確かに最後のはよくわかんなかったけど、言いたいことはわかるかなー!諦めちゃダメだよね、当たり前のことなのに言われないとわからないよね。当たり前だからかな。
「いいセリフが台無しになったけど、暗い雰囲気吹き飛ばしてくれたみたいだし結果的には良かったわ」
亜由美の悪いくせが出た!掘り返し!
「結果的にを強調して言わんでくれるかね!」
「でも、林崎くんの言う通りっていうか!その野球のはよくわかんないけど・・・」
「う、君は小松さんとは違って優しい人だと思ったんだけど!」
「なあに・・・?私は優しくないってこと・・・?」
圭のセリフにすかさず亜由美が反応する。
「う・・・。そうだって言いたいけど言ったら・・・」
言い終わる前に、
「さっきの?なんだっけ?恥ずかしいセリフクラスにばら撒こうかしら?」
すかさす反撃!さすが亜由美!ってそうじゃなくて!
「すいません俺が悪かったです優しい人ですはい!」
圭もすかさす言い返した。亜由美は「心がこもってない」とかぶつぶつ言ってるけど。さっきの言葉、2人の、私たちの舞台は終わらない、か・・・。というかまだ始まったばかりじゃん!私たちの舞台は始まったばかり!
圭と亜由美が騒いでる中、優美はこれからもっと頑張ろうと思うのであった。
作中にあった「日本文理の夏はまだ終わらない」というネタですが、前に高校野球中継で実況が言った名言そのままです。
色々な動画サイトに映像が残っておりますので興味ある方は検索かけてみて下さい(^_^)v
以上、余談でした。