私たちの「舞台」は始まったばかり。   作:かもにゃんこ

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タイトルのセリフ、圭はいろんな人に言わせてますね(笑)あ、ちなみに今回は美結ちゃんのセリフです(*'▽')

話の中盤はかなり舞台舞台した要素になっているので、よくわからない場合は飛ばしていただいて構いません!




「優しくて、頼りにもなる人に好かれて幸せものなんだね」

時は師走、12月。季節は真冬へと突入しつつある。気温は日に日に寒さを増していくが、稽古の方はどんどん熱く・・・と言いたいところだが、約1週間後に2学期末のテストが迫っているため、今日から部活はいったんお休み。俺たちは学生の本業である勉学に励んでいたりいなかったり・・・。

 

ちなみにB高校のテストは1日遅いため、稽古再開はテスト終了日の1日後になる。

 

稽古自体はというと、順調だと思う。なぜ「思う」なのかと言うと、俺は出たり出なかったりだからはっきり言えない部分はあったりする。

 

裏方の方も衣装OK、小道具OK、広報OKとこっちも順調。えっ?大道具・・・?と、言うことで俺は今日、1人B高校へと来ている。

 

校門のところで待ってくれたみたいで、寒空の中、美結がいる。

 

上にコートを着ていたり、少し短めなスカートの下にはタイツを履いてはいるがそれでも寒そうだ。圭は悪いと思い、まず 彼女へ謝る。

 

「ごめん、寒いのにここで待っててくれて」

 

「ううん、大丈夫だよ」

 

とは言えやっぱり寒いだろうと思い、適当に買って来た温かい飲み物を美結へと渡した。

 

「え?いいの?ありがとう。本当に寒くないのになんか悪いね」

 

どうやらコートもタイツも裏地がめちゃくちゃ暖かくなってるらしく、コートは脱げるので大丈夫だが、タイツは教室とかでは結構暑いらしい。今どきはそういうのもあるんだね。

 

「まあこんなの履いてる人はあんまりいないけどね。タイツ履かないで頑張ってるし」

 

いつも思うが、なぜ女子高生は真冬でもそんなに頑張るのか。美結を見るとタイツも十分キレイだと思うけどね。

 

「そう言えば優美ちゃんに言わないでって言ってたけど。なんで?」

 

わかってるようなわかっていないような、そんな口調で聞いてきた。

 

「あ、いや、あの子に言ったらなんか用がなくても着いてきそうだったから。テスト期間って言うのもあるしね」

 

「ふぅん」

 

美結は他に何か言うわけでなく、それだけで答える。

 

「あの、何か・・・」

 

「うん?いや、確かにそれはありそうだなって。部活の用事とはいえ好きな人が他の女の子と2人きりでいたら不安だろうね」

 

「え!?」

 

好きな人・・・だと・・・?誰かバラシたのか?

 

「あの、何か・・・?」

 

美結は先ほど俺が言った口調を真似して、ふふっと笑いながら聞いてくる。さすが演劇部、なんか俺の言い方に似てるぞ!

 

「あ、いや」

 

気になるっちゃ気になるのだが、まあ別にいいかと思いそう答える。

 

「そう?なんで私が優美ちゃんの好きな人知ってるのかなって思ったんじゃないの?」

 

・・・鋭い。いや、鋭くなくても今のセリフの中で気になる点って言ったらそれなのくらい誰でもわかるか。

 

「・・・まあ、そうだが」

 

そう言うと彼女はこの前優美と話した内容を簡単に教えてくれた。

 

それを聞いた俺は、あれでバレないわけないかと思うのであった。まあ、健太にはなんやかんやでバレてないみたいだが。

 

そんな話をしているうちに部室へと到着した。

 

美結はコートを脱ぎ、適当に座る。俺も適当に座る。

 

「寒くない?ストーブあるけどつけよっか?」

 

「大丈夫だよ。それにつけたらキミが暑いんでしょ?」

 

実際寒くないんで大丈夫なんだか、なんとなくちょっかい出したくなった圭。

 

「うーん、ストーブつけるならちょっと恥ずかしいけど私はタイツ脱げばいいかなって」

 

あははと笑いながら答える。タイツを脱いだら全部生足か・・・。一(いち)男子高生としてそれはちょっと見てみたかったと思ったのは秘密。

 

「あはは・・・まあ、大丈夫だから」

 

「うん、わかった。じゃあさっそくだけど、進捗はどういう感じかな?」

 

さっきとはうって変わって本題へと入る。

 

「とりあえず何回か読んで見たけど俺としては必要そうな大道具はサトコの部屋の場面で座って演じるなら椅子かベッドみたいなものは必要かなって思ったくらいかな」

 

「そうだね。私もそんな感じ。稽古でもうあのシーンやってるけと、やっぱり椅子に座ってやってるよ」

 

どうやら必要そうなのは椅子くらい。それくらいなら俺でも簡単準備出来そう。

 

なので思い切ってある提案をしてみた。

 

「ちょっと突拍子のないこと言うかも知れんが」

 

「うん、言ってみて」

 

俺が言ったことに対しては特に驚かず、相変わらずの冷静さ。

 

「稽古は結構進んでるし、今更になっちゃうんだけど」

 

「うん」

 

「現実世界で死後世界は舞台としても少し分けた方がいいかなって思ったんだけど、どうかな?」

 

俺がそういうと、美結は少しふーんと呟き、俺へと疑問を投げる。

 

「ちょっとその説明じゃ分かりにくいから、具体的とかは話せるかな?」

 

「あ、うん」

 

確かに今のじゃあ誰でもわからんわな。

 

「今は場面場面で暗転して区別はしてるけど、基本的には同じ場所(同じ舞台の上)で演じてるじゃん?」

 

「うん」

 

「暗転して場転(場面転回)するのはもちろん今まで通りだけど、舞台に高低差をつけて、低い場所(普通の舞台の上)は現実世界、高い場所は死後世界っていう感じにしたら場転の時によりわかりやすくなるかなって思ったんだ」

 

俺の説明に美結はなるほど・・・と呟く。まだ話したいことはあるので続ける。

 

「サトコが死後世界から現実世界へと幽霊のまま戻るシーンも高い所から低い所へと移動したりすればもっとわかりやすくて良いものになるかなとも思って」

圭は説明を終えるとふー、と一息吐く。

 

「・・・以上なんだけど、どうかな?」

 

最後まで聞き終えた美結は笑顔で圭を見る。

 

「私はいいと思うよ。私も林崎くんの言う通り場転だけじゃ区別がつきにくいとは思ってたから」

 

「まあこれはさすがに亜由美にも相談しないとね」

 

どうやら美結的にはオーケーとのこと。自分の案が通って少し圭は嬉しくなった。

 

「ちなみにだけど高低差って何でつけるの?」

 

それはぶっちゃけ聞かれるとは思ってはいたが、まだ考えてはいなかった。

 

「正直に言うとそれはまだ考えないんだよ・・・ってか今思ったんだが、それなりに大がかりな舞台装置になりそうだけど、搬入とかそういうのはどうにかなるのか・・・?」

それを聞いた美結は「大丈夫だよ」と答え、話し始める。

 

「舞台装置についてはね、大会の運営の人達がなんとかしてくれるの」

 

というわけらしい。どうやら今までもそうだったんだね。

 

「なるほど。知識不足だったよ」

 

「ううん、言わなかったこっちも悪いから」

 

「えーと、私今ちょっと思いついたんだけどね」

 

「うん」

 

「・・・作っちゃう?」

 

笑顔で、あっさりと美結はそう答えた。

 

「・・・マジで?」

 

この後の美結の話を要約すると、自分たちで作った方が思いのままのものが作れるのこと。材料(木材とか)に関してもホームセンターとかに行けば簡単に揃えられるらしい。それに、前からそう言うことはやってたらしく、道具もある程度は揃っている、なにより・・・。

「なにより、自分たちで作った方が楽しいしね」

 

まあ、わからんでもないが・・・。

 

「とりあえずまだあゆちゃんにも確認してないからそれからになるけどね」

 

「まあ、そうだわな」

 

圭は美結の意外な積極さにたじたじになっていた。うん、マジでびっくりですね。

 

「林崎くんってやっぱり凄いね」

 

「え?」

 

いきなりそんなこと言われるもんだから圭は少し驚く。

 

「あ、いや、ね。まさか舞台に高低差を付ける、なんて私は全然思いつかなかったから。誰も想像出来ない案とか思いついて凄いと思う。優美ちゃんやあゆちゃんもそういう感じで助けてきたんだよね」

「いや、それほどでもないが・・・でも、素直に嬉しいよ」

 

美結から褒められ、少し照れてしまう圭。

 

「うふふ・・・後は何か今日のうちの聞いて置きたいことある?」

 

「あ、いや、今は大丈夫だよ」

 

「うん、じゃあ帰ろっか」

 

そんなわけで俺たち2人は部室を後にする。

 

外へと出るとすっかり真っ暗になり北風もいくぶん強くなった。

 

「寒いね」

 

「私は寒くないよ。これのおかげ」

 

美結はコートとタイツを指差して、ほらね!みたいな感じで話す。

 

「備えあれば憂いなしってやつか」

 

「そうだね。ね、せっかくだし駅まで一緒に行こう。自転車取ってくる」

 

悪いよ、と圭は言ったがそんなに遠回りにはならないらしく、素直に一緒に帰ることに。

 

「おまたせ」

 

淡いブルーの自転車を転がし、美結が来た。

 

「カバン、かごに入れていいよ?」

 

いやいや!さすがにそれは・・・?

 

「それはちょっと悪いよ!」

 

「そう?別にいいよ?」

 

うーん、どうしよう・・・あっ、いいこと思い付いた!

 

「じゃあお言葉に甘えて・・・」

 

圭はかごに入れると同時に美結から自転車を奪う。

 

「え!?」

 

びっくりする美結。そりゃそうか。

 

「変わりに、自転車は俺が転がしてくよ。これでトントンでしょ?」

 

実際は全然トントンじゃないが、まあ、いいだろう。

 

それを聞いた美結は、一本取られた、みたいな顔になった後しんみりとした笑顔になる。

 

「・・・優美ちゃんはこんな優しくて、頼りにもなる人に好かれて幸せものなんだね」

 

誰に向かって言ったわけでもないような、そんな感じで呟いた。

 

俺は特に反応せず、そのまま2人で歩き出す。

 

「ねぇねぇ」

 

「うん?」

 

「私、手袋持ってなくてさ、手はちょっと寒いなあって」

 

「俺もそうだな」

 

当たり前のようにそう答える圭に対し、美結は恥ずかしいそうに話始めた。

 

「・・・私がさ、優美ちゃんだったら・・・手、握った?」

 

だがたまたまその時、強い風が吹き、美結の言葉は圭には届かなかった。

 

「え?何?」

 

美結は改めた言うか言わないか迷ったが、答えは決まってるだろうと思い、「なんでもないよ」と。

 

寒空の中、美結は両手に息をふーっと吹き掛け、考えたことは圭には届いてはいなかった。

 




後半は優美の顔が真っ青になってしまうような(?)圭と美結ちゃんのイチャイチャな感じでしたね( *´艸`)

まあ、さんざん言ってる通りハーレムとかドロドロ展開にするようなことはないので、ご心配なさらず。

でも、美結ちゃんを恋愛面でもう少し絡めて行こうか、そんなことも考えているかもにゃんこです(^^ゞ

では、また!

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