私たちの「舞台」は始まったばかり。   作:かもにゃんこ

46 / 100
どうもどうも!修学旅行編も3話目!・・・たぶん、あと1話で終わると思います!

圭と優美、2人の恋はまだ終わりませんが(笑)


「なんで私が嬉しくなるようなこと、簡単に言えちゃうのかなあ・・・」

今日は修学旅行3日目、生徒全員が楽しみにしている自由行動の日だ。

 

前日の夕方までは圭も友人とどこに行くかとかでめちゃくちゃ楽しみにしていたが、夜に優美のあの話を聞いてからはそればかりが頭の中でグルグル回っている。

 

わかっている。彼女が昨日の朝に「他の人に告白されても断る」と言っていたし、前からその時期が来るまで待っている、とも言ってくれている。だから心配しなくてもいいのはわかっている。

 

だがそれでも、やはり実際はどうなったのかがわかるまでは不安過ぎる。じゃあ聞けばいいじゃないかと思うところだが、やっぱり聞きにくい。

 

それなら亜由美とかに聞けばいいのかというと、こんな大事なことを本人に聞かないのは圭自身がなんとなく許せないのだ。

・・・というわけで朝からテンションが上がらない。

それでもせっかくの沖縄だし、楽しまないとは思う。それに一緒に行動するクラスメイトも心配・・・いや、面白がりそうだからもっと嫌だ!

 

というわけで極力普通の感じで今はいる。

 

俺たちのグループはバスを乗り継いで移動し、今は北部にある水族館へと到着した。ここは俺が自分で行きたいと押しまくって行くことになった場所。イヤでもテンションは上がってくる。

 

「なかなか良さそうじゃん!」

 

「そうだな!水族館なんてあんまり行かないからわかんないけどなんか楽しそう」

 

そう友人たちも言っているので来て良かった。

「だろだろ?沖縄来たら行きたかった場所なんだよ~!」

 

気持ちだけでなく声にもわくわくしてるのが出る。それを聞いた友人は、

 

「林崎だけ時間までここにいてもええんやぞ?自由行動だしな!」

 

そんなことを言った。

 

というのも、この日の自由行動は本当に「自由」なのである。例えば一緒に回るのは誰でもいいし、極論から言えば1人で1日行動しても良い。とにかく時間までに宿泊するホテルへと戻ればいいわけで、これについてはうちの学校グッジョブ!という感じ。

 

「楽しかったらマジであり得るかもなー!ぶっちゃけ途中で置いて行ってもいいわ!」

まあさすがに冗談だが、友人たちにはそんな感じで言った。

 

俺たちはまず、この水族館のシンボルとも言えるジンベイザメのモニュメントの前で写真を撮った。ここに来たらね、せっかくという感じ。

 

と、少し遠くに見知った顔を見つけた。

 

優美だった。優美の他に亜由美と麻由美もいて、どうやらたまたま3人もここに来た感じだった。

 

俺は声をかけようかと思ったが、昨日のことを思い出してためらってしまった。

 

「なあなあ、あの子ってもしかして林崎の彼女?」

 

友人の1人が優美に気がつきそんなことを言う。

 

「あ、本当だ!C組の竹下さんやん!」

 

「そういや彼女いんのになんで自由行動俺たちといるんだ?」

 

他の2人も続く。

 

そんな話をしてたら彼女たち3人もこちらに気がつき麻由美は軽く手を振ってあいさつをしてくれる。

 

「やほやほ!奇遇だね~!」

 

「梅田さんたちも来たんだ」

 

「うん!ずっと行こう行こうって優美が行っててね~!ね、優美!」

 

そう優美へと声をかけたが、

 

「え!?あ!うん!」

 

と他に何かを考えてたような反応をした。

 

そりゃそうだ。俺からは彼女が何があったか彼女自身が知らないとは言え、やっぱり少し複雑な気分になってもおかしくない。

 

でも俺としては、正直優美と話がしたかった。でも彼女のことや、友人と廻っていることも考えて、

 

「あ、クラスメイトも待ってるしここで」

 

と3人にそう言って、後ろを振り向いた。

 

・・・アレ?誰もいないやんけ!

 

「言おうか迷ってたのだけれど、麻由美と話してるうちに3人とも行ってしまったわ」

 

と亜由美が冷静に教えてくれた。

 

「マジか・・・!」

 

たぶん、彼らは気を使ってくれたのだろうなあ!

 

と、携帯が鳴る。見ると友人からメールが来てた。

 

 

『俺らはお邪魔だから先に行くぜ!頑張れよ!』

 

俺がメールを見ながらポカンとしてると、麻由美が話す。

 

「ねねね!せっかくだし優美と2人で回りなよ~!」

 

そう麻由美が言うと隣にいた優美がえっ!という反応をする。普段でもそういう反応はしそうとは思ったけど、明らかにいつもとは違う感情だった。

 

「いいんじゃないかしら?私は麻由美と2人でまわるわ」

 

優美の抗議と裏腹に亜由美もそういう。だけどいつもの嫌らしい言い方と言うよりは、何か優美を勇気付けようとしているように聞こえた。

優美の方を見ると「でも・・・」と小声で呟いているのが聞こえたが、それを聞いた亜由美は圭に聞こえないように優美の耳元で小声で何やら話す。それを聞いた優美は「わかった・・・」とだけ短く話し、頷いた。

 

「それじゃあ私たちは行くから」

 

「優美のことよろしくね~!」

 

2人は圭にそう声をかけると行ってしまった。

 

圭は1人取り残されてしまってポツンとしてる優美へ声をかけた。なるべく自然に、いつも通りで振る舞わないといけない。

 

「せっかく来たんだし俺たちも行こう・・・2人で一緒に回れるのは嬉しいかな」

 

本音のつもりではあるが、言った後にちょっと大げさすぎて恥ずかしかった(笑)

 

「う、うん!」

 

優美はそう短く答えた。いつもとはなんとなく違う反応。はっきり昨日何があったかは全く知らないが、おそらく俺の予想は合っていて少なからず気にしてしまっているのだろう。

 

俺は出来るだけ笑顔で頷き、じゃあ行こうかと声をかけ歩き出した。優美はいつもの隣ではなく、少し後ろをついて来た。

 

入り口でチケットを買い、奥へ奥へと進む。水槽には沖縄らしく、サンゴや熱帯魚等キレイな生物がたくさんいて、俺とテンションは嫌でも上がってしまう。

 

「ほらほら!あのお魚、綺麗だね!」

 

「うん、そうだね!」

 

優美は明るくいつもの感じでそう答えてはいたが、なんとなく無理してるような雰囲気はあった。それでも俺は彼女と一緒にいられるだけで良かったし、何も言わないことにした。

 

3階の「サンゴ礁への旅」を一通り楽しんだ俺たちは2階へと移動。ぶっちゃけ、水槽を見ているときは気が付かなかったが結構はしゃぎまくっていて今思うと恥ずかしい。

 

2階はこの水族館でも目玉とも言える大水槽があり、それの目の前に来た俺は「お~!」と声を上げ、優美も低かったテンションが少し回復したようで「凄い・・・!」と言い、笑顔が戻った。

 

しばらく近くで見ていたが、後ろにイスがあることに気が付いた圭は、優美と一緒にそこに座り少し遠くから見ることにした。

 

しばし無言の状態の後、優美が口を開く。

 

「・・・なんか、その、ごめん」

 

いきなりの謝罪で驚く圭。

 

「いや、その・・・ちょっと昨日色々あってそれで変な態度取っちゃったりして・・・」

 

内容は知ってはいたが、そんな素振りは見せないことにする。

 

「そっか。でも全然気にしてないよ。大丈夫」

 

「う、うん、ありがと。林崎くんは全然関係ない・・・なくはないんだけど・・・って!そうじゃないし!」

 

何かポロリと少し漏らした。彼女の言い方や、態度を見ると秘密にしたいというよりは俺に何か話したいんじゃないかと、そう思えた。

 

「関係ないけどなくはないってなんだろ?ちょっと気になるかも」

 

決して無理には聞き出そうとはせず、いつもの感じでそう聞いてみた。

 

優美は少し迷ったあと、よし!と力を込めて話始めた。

 

「林崎くんのこと考えたら言おうか迷ったけど、聞きたいって言うなら教えるね」

 

「うん」

 

「昨日の夜、なんだけど・・・同じクラスの男の子からね好きだって告白されて・・・」

 

「そう、なんだ」

 

やっぱり俺の予想は当たってた。と言うかあの状況なら予想するまでもなかったか。

 

「あれ・・・?あんまり驚かないんだね?」

 

予想に反して冷静な俺に対し、優美は不思議な反応を見せる。

 

「あ、いや、内心驚いたけどない話じゃあないなって思っただけ」

 

「そっか」

 

これからが本題だ。果たして彼女はどう対応したのか・・・。

 

「えっと・・・それでね」

 

「うん」

 

「色々、色々あったんだけど・・・断った」

 

それを聞いた圭は少しホッとしたと同時に色々って言う言葉が気になった。

 

優美は話を続けた。あの場で彼女は何を思い、どんな言葉を発したか。覚えている範囲ではあったけど教えてくれた。

 

それを聞いた圭は優美らしいなあ、と何度も思った。

 

「なんかその、ごめん。あんまり聞きたい話でもなかったよね・・・」

 

優美は俺を気遣ってか、そう尋ねる。

 

でも俺はそんなことは全然思っていない。むしろ改めて思ったことがあった。少し恥ずかしいが、伝えないと・・・!

 

「そんなことないよ」

 

「え・・・?」

 

「そんな優しいキミだからこそ、何事にも熱心に考えてくれるキミだからこそ、告白されたんだと思う」

 

彼女に伝わるかなんてわからない。それでも俺は自分が本当に思ってることを伝えたかった。

 

「他の人からも好かれるような人を好きになれて俺は嬉しいし、そんな人から好きになってもらえて、それにいつになるかわからないのに待っててもらえるなんてもっと嬉しいよ」

 

優美は圭の話を聞いた後、まず驚き、そして笑い、最後は目から少しの涙が零れた。

 

涙は昨日流した悲しみの涙ではなく喜びの涙。

 

「なんで・・・」

 

優美は涙でつまりそうになりながらも、必死に圭へと伝えてくる。

 

「なんでそんな私が嬉しくなるようなこと、簡単に言えちゃうのかなあ・・・」

 

優美は泣きながらもいっぱいの笑顔でそう答えた。

 

「・・・ありがとう」

 

「本当に、ありがとう!」

 

ずっと不安そうにしてた優美はもうなくなっていた。

 

自分に起きた問題を優美は自分で悩み、そして考え納得し、優美自身でまた1つ壁を乗り越え強くなった。その中で少しでも自分が、彼女の手助けになっていたら良かったなあと思う圭であった。




自分で書いといてなんですが、圭ってかっこいいセリフいうよなあ( *´艸`)

あんなことリアルで言える人本当にいるんでしょうか・・・?作者?言いたいけどそんな場面来なかったし、これからも来る予定ありません!!


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。