私たちの「舞台」は始まったばかり。   作:かもにゃんこ

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タイトル、なかなかいいセリフがなくて長くなっちゃいました('ω')

今回は圭は出ません!よってイチャイチャもないのでつまらないかも・・・?

オーディションの前半回、という感じでしょうか?




「バカだなあって思ったけど、泣けるほどやり切った!ってことかなって」

「どっちにしようかなあ・・・」

 

今日は日曜日、明日の放課後までに自分がやりたい役を決めなきゃなんだけど・・・まだ決まってない!

 

台本は何度も読んで2人がどんな人かと私なりにはわかったつもり。それで私に合う、というか私らしくて自分でも入りこめやすそうなのはサトコの方なんだけど、せっかくの演劇なんだし自分とは全然違う性格のキャラもやりたいとも思うし・・・。

 

「あ~!!もうっ!どうすればいいんだろう!」

 

昨日も悩んでは台本を読み返し、また考え、気分転換に本を読んで、の繰り返し・・・。

 

「はあ、家にいても余計悩んじゃうだけだからちょっとお出かけしようかなあ・・・」

 

軽く髪を整えて服を着替えてるとき、ふと思い出した。

 

「そう言えば文化祭の振り替えで出かけたとき、林崎くんに会ったなあ・・・」

 

あの時はまさか会うなんて思ってもなかったし、全然おしゃれしてなかったんだよね(笑)

 

優美はそう思うと、また鏡の前に行き髪を整え直す。そして着替え途中だった服も着替え直し、お出かけ用の自分的には可愛い服を来た。

 

「もしね、会ったらね~!・・・って2回もそんなことはないかっ!」

 

そんなことを思いつつ家を出る。でも前に会った場所に行こうと思ったのはやっぱり少しくらいは期待してる自分がいたからだよね。

 

 

× × ×

 

 

電車に乗り、例の駅にある大型複合施設へと到着した。時間的にはお昼をちょっと過ぎたところと言うこともあり、結構な人。

 

まずはお昼~!いつものところにしよう!

 

女子高生がこんなところに1人でランチって普通に考えたらアレかも知れないが、優美はここにあるラーメン屋が好きで結構1人で来る。というかまあ、ラーメンなんて一緒に食べる友達なんていないのが正解。

 

少しの時間並んでお店へと入れた。

 

「いらっしゃい!」

 

店員さんが気持ちのいい挨拶をしてくる。

 

「こんにちは!」

 

「あ、優美ちゃん!いつもありがとう!」

 

何回何回も通ってることもあり、このお兄さんとは顔見知りになった。

 

「今日もいつもの下さいっ!」

 

「はい~!了解しました!って今日なんかいつもよりおしゃれしてんね」

 

「えっ!あ、いや、その・・・」

 

びっくりしてついつい変な声を出してしまった!

 

「あ、ごめんごめん!驚かせちゃった?」

 

「い、いえ!大丈夫です」

 

「いやね、女の子がおしゃれするなんて1つしかないんじゃないかって思って」

 

「俺のツレも俺と会うときは頑張ってるって言ってたからな」

 

私はそう言うんじゃないですっ!って言おうと思ったけど、彼に会うことを想定して自分を着飾ってたんだよね。そもそも会えるかなんてわかんないんだけど。

 

自分で意識しようとしなくても自然と私は彼を意識してしまっているんだ。だから私はこう答えた。

 

「その通りというか、その、好きな人が・・・ここ、彼の地元だしいつ会ってもいいように・・・っておかしいですよね」

 

自分でも訳のわからないことを言ってしまったのがわかる。それでも店員さんは、

 

「そうかそうか。頑張れよ。なんかあったら俺も相談に乗るぜ?人生の先輩だしな!」

 

と背中を押してくれた。私は嬉しいのと恥ずかしいのでそれからラーメンが来るまではうつ向いて待っていた。

 

それからは食べながら少しではあるが、彼の話だったり、店員さんの彼女さんの話を聞いたりして時間は過ぎていった。

 

 

× × ×

 

 

それから自分が見たいお店を一通り廻ったあと、定番(?)の1人カラオケをして気がついたら辺りは真っ暗になったので家に帰ることにした。

 

結局、この日は彼に会うことはなかった。まあ二度も同じことはないよね(笑)

 

家に着いた私はベッドの上に体を投げたし一息ついた。

 

「ふ~・・・」

 

期待してたことは起きなかったけど、今日はいつも以上に楽しかった気がする。

 

いつもと違っておしゃれして出掛けただけなんだけど、自分の気分的にもなんとなくわくわくしてたし、いつもと違う自分だったからなのかも。

 

「いつもと違う自分かぁ・・・」

 

そつ呟きながら考えたことは、出掛ける前にさんざん悩んでいたどっちの役をやろうか、のこと。

 

「いつもと違う自分、楽しかったかな。・・・よし、決めた!」

 

私はベッドから身を起こし、亜由美へと、やりたい役をメールで送った。

 

 

× × ×

 

 

翌日、放課後いつものように私はB高校へと向かう。今日は林崎くんは生徒会の活動があるとのことで、私と亜由美の2人で向かう。

 

今日のここまで役の話が出てないため、なんとなく不安になった優美は亜由美へと聞く。

 

「亜由美、もしかしてメール届いてなかった?その話全然してこなかったからちょっと心配になって」

 

それを聞いた亜由美は、え?っという顔をする。あれ?なんかいけないこと聞いちゃったかな?

 

「届いてたわよ。別にその話する必要なかったからしなかっただけ。むしろメール来なかったらたくさんしたと思うけど」

 

ふふふっと亜由美は不敵な笑みを浮かべた。

 

これからすぐにわかることではあるけど、ぶっちゃけ美結ちゃんと役がかぶってるかどうかは気になったから、うまく聞き出そうかな~?とは思ったけど・・・この感じじゃ無理そうだよね。

 

そんなことを考えている最中、私は自然に亜由美の顔をじっと見つめるような感じになっていた。

 

「・・・何?私の顔をなんかついているの?」

 

「え!?ううん!なんでもないよ!」

 

「そう?・・・ふふふ」

 

なんだろう、多分だけど私が気になっていることが見透かされている気がする・・・。これ以上聞いても無駄だと思うし、この話はいったんやめることにし、ほかの話題で話ながらB高校へと向かった。

 

 

「みんなこんにちは。早速になるんだけど、この場で優美と美結の希望がどうなったか発表するわ」

 

緊張する私。美結ちゃんも見ると少し緊張してそう。

 

「結論から言うとオーディションになるわ。2人ともリサコ役を希望していたわ」

 

私と美結ちゃんは顔を見合わせる。お互い頷き合うだけだったけど、色々な言葉が伝わってきた気がする。

 

「オーディションのルールなんだけど、いいかしら?」

 

「「うん」」

 

「1人ずつ、別の場所に来て指定のセリフを言ってもらうわ。私とそれと村崎くんもいいかしら?」

 

「あ、はい!大丈夫です」

 

どうやら亜由美だけでなく、村崎くんもオーディションを見るとのことらしい。

 

「じゃあ基礎練習が終わったらさっそく開始、という感じでいくわね」

 

 

というわけでオーディションは始まった。じゃんけんの結果私は後。今は美結ちゃんの番が終わるのを一人で待っている。

 

正直言って美結ちゃんには勝ちたい。美結ちゃんも亜由美と一緒で中学の頃から演劇やってみたいだから、はっきり言って単純な技術の差では勝ち目は薄いかも知れない。

 

でも私だってやりたい役が決まってからは、台本を何回も何回も読み直してリサコがどんな性格の人間か、このセリフはどんな気持ちで言ったのかとかは自分なりに理解をしてきた。

 

だた、少し気になることはある。台本を亜由美が最初に持ってきた日、彼女は「演じる人も考えて台本は書いたから」と言っていた。

 

ぶっちゃけこれは私の想像でしかないが、亜由美としてはサトコが私、リサコが美結というイメージで台本を書いたような気がする。そうすると私は不利だよね。

 

でもあの亜由美が、そんなことを考えていたらオーディションなんてしない。それともしかしたらこれは私に「リサコにチャレンジして技術を磨いて欲しい」というメッセージなのかも知れない。

 

・・・ダメだ!余計なこと考えちゃ!それに村崎くんも一緒に判断するんだし、やっぱり私の考え過ぎだよね。

 

優美は考えることをやめ、一人で発声練習をすることに。

 

そんな感じで待っていたら美結ちゃんが戻ってきた。

 

「ただいま優美ちゃん」

 

「あ、おかえり」

 

どうだったの?と聞きたかったけど、今は余計なことを言っちゃいけない気がしてやめることに。

 

「今度は私の番だよね。言ってくるね」

 

「うん。頑張ってね」

 

ライバルに頑張ってと言われてなんか気まずくなった優美は、うん、と首を縦に振っただけでその場を後にした。

 

「失礼します」

 

多少緊張した声色で私は2人の前に出た。亜由美はさっそくと言わんばかりに、オーディション内容を告げる。

 

「じゃあ始めるわ。セリフは6ページの3行目のセリフ、『私も・・・ショウゴくんと恋人になれるなら・・・サトコちゃんに憑かれてもいいよ』をお願いします」

 

リサコがサトコと会ってまだあんまり時間が経ってないこの場面。サトコにうまく言われて・・・って感じだったね。

 

私はセリフを言った。緊張して少し声が震えてはいたが、自分的にはうまく出来たと思う。

 

亜由美は無言、村崎くんはおお~!と言ってて、ちょっと嬉しかった。

亜由美は少し間をあけた後に、

 

「あともう1ついいかしら?」

 

と。

 

「15ページの6行目、『・・・!!わかった・・・。もう、何も言わないから・・・私はまだ生きていたいから・・・』をお願いします」

 

このシーン、サトコに「あんたを完全に奪うことが出来るんだから」に続くセリフ。はっきり言って難しいけど・・・。

 

私は自分が感じたままにセリフを言った。言ったあと、少し、リサコじゃなくて自分っぽいなあって思ってしまった。

 

亜由美は相変わらず何も言わずにメモだけをし、村崎くんはうんうん、と首を縦に振っていた。

 

「ありがとうございました。これでオーディションは終わりよ。私と村崎くんは少し話してから戻るから先に戻っていて頂戴」

 

まだ余韻が残っていたけど、亜由美に促され教室を出る。

 

やり切った。今自分が出来る限りの範囲だけど・・・。私は充実の表情で体育館へと戻る。

 

 

体育館では美結ちゃんが1人で発声練習をしていた。

 

「ただいま」

 

私の声が聞こえた美結ちゃんは練習をやめ、こちらを振り向く。

 

「おかえり、優美ちゃん。どうだった?」

 

私は聞けなかったけど、美結ちゃんはそう聞いてきた。私は素直を答える。

 

「結構緊張したけど、自分としては出来る限りは出来たけどかな」

 

「うん、よかった。全力じゃなかったら、勝っても嬉しくないしね」

 

確かにそうかも。全力でぶつかるからこそ、勝負っていうのは楽しいものだしね。

 

「優美ちゃんってオーディション初めてだった?」

 

「え、うん、そうだけど」

 

「私はね、中学の頃から結構やってきたよ。緊張してうまく出来なかったり、負けちゃって泣いたこともあったかな」

 

あはは、とちょっと恥ずかしそうに話す美結ちゃん。

 

「そのときはさ、泣いたりしてバカだなあって思ったけど、今思うとね、泣けるほどやり切った!ってことかなって」

 

そう話す美結ちゃんは、私から見ると凄く眩しかった。彼女は前から全力で演劇を取り組んできた。キャリアの長さもそうだけど、私とは取り組む姿勢、そういうのが全然違う。

 

普段の彼女からじゃわからないが、ホントに凄いと思う。

 

「え?何が凄いって?」

 

あ、また声に出てたみたい(笑)

 

「ううん!なんでもないよ、独り言!」

 

「そう?」

 

そして、亜由美と村崎くんが戻ってきた。

 

「待たせたわ。じゃあ結果発表するわ」

 

私にとっての初めてのオーディション。

 

「リサコ役は・・・」

 

私は唾を飲み込んで結果を待った。

 




最初はオーディションを1話でやろうかと思いましたが、思ったより長くなってしまって2話構成になりました(^^♪

美結ちゃん、めっちゃいい子やな~!(作者が言うのもアレですがw)
いつか麻由美みたいに特別編みたいなの書けたらなあって思います(*'▽')

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