私たちの「舞台」は始まったばかり。   作:かもにゃんこ

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文化祭編、今回で最後となりますが話はまだまだ続く予定です(^o^)/

区切りみたいなのは(章とか)どこかでつけようと思いますが('◇')ゞ


「じゃあ・・・今日までだね」

優美の教室を出た俺は自分のクラスへと向かった。

 

ぶっちゃけさっきのこともあり、からかわれるのは目に見えていたため出来ればサボりたかった。

 

俺は出来るだけ気配を消して教室へと入ろうとしたが入り口にて捕まってしまった!

 

「おう!さっきはお疲れ!普通に楽しかったぜ!」

 

「演劇見るの初めてだけどああいうのならまた見たいわー!」

 

・・・あれ?普通に舞台を誉められた。少し身構えていたため拍子抜けする。

 

「お、おう!ありがとう!そう言ってもらえると良かったわ」

 

「んじゃあ、交代だな!残りの時間頼むわ!」

 

あ、良かった!何も聞かれずに切り抜けられそう!と思ったとき、

 

「あ、そういやあシンデレラ役の子が彼女なん?終わったあともめっちゃ仲良さそうだったし」

 

逃げ切れませんでした!

 

「あー、いや、なんていうか・・・」

 

「ナニナニ?言っちゃえよ~!」

 

仕方ない、言い訳しても一緒っぽいしここは本当のことを言うか・・・。

 

「ぶっちゃけマジで彼女じゃない。まあ好きなことは好きだけど。・・・これでいいか?」

 

「なんだ、ただの片思いなのかー!頑張れよ!じゃあな~!」

 

付き合ってないことを言ったら普通に逃げられた。つまり彼は付き合ってたとして、どんな感じか、どこまでいってるかに興味があったということだろう。男ってだいたいそんなもんですよね!

 

彼の背中を見送りつつ、今度からはこれで逃げようと思った。まる。

 

 

× × ×

 

 

それから時間は経ち、現在16時半。文化祭の一般公開終了の時間となった。

 

これからは野外ステージにて後夜祭があり、昼間行われたカラオケ大会やミスコンの決勝、3年生のクラス対抗ダンスコンテスト等が行われる。

 

ホームルームも一旦行われ、後夜祭は自由参加という形。部活の大会が近いものは部活に行ったり、バイト等で帰る人もいる中、俺はせっかくだしクラスの友人と見ることにした。

 

ステージ前は椅子とかあるわけじゃなく、各自適当に座ったりして見る感じ。

 

たまたま、本当にたまたまではあるが、俺が座った右ちょっと前に優美と亜由美がおり、声をかけたら笑顔で手を振られて可愛かった。もちろん友人共にはからかわれました!

 

 

× × ×

 

 

ステージでは3年生のダンスコンテストが行われ、審査員による優勝クラスが決まったこともあり後夜祭最高の盛り上がりとなる。

 

次はカラオケ大会の決勝というところだが、なにやら文実と放送部がバタバタしている。

 

『文化祭実行委員からです。ただ今音響機器にて不具合がありました。次のステージまでしばらくお待ち下さ・・・え?何?』

 

司会の説明が途中で止まるとステージの横から麻由美が来て司会からマイクを奪う。

 

『え~、少しばかり時間もかかるということなんですがここでゲストに場を繋いでもらいま~す!』

 

ゲスト?OBかなんかかな?

 

『それでは劇団けゆあの皆さま、よろしくお願いしま~す!』

 

ん・・・?え・・・?

 

「えぇぇぇぇぇぇぇ~!!」

 

立ち上がって驚きの声を上げたのは優美だった。

 

なんで驚いてんの?あ、劇団けゆあがステージに上がれって言われたからか。

 

「ってマジかっ!!」

 

遅れて俺もついつい立ち上がって驚いた。

 

俺と優美は立ち上がったままお互いビックリした顔を見合わせた。

 

と、もう1人の団員がすくっと立ち上がる。

 

「優美、林崎くん、ステージに行くわよ!私たちのまたとないアピールの場よ!」

 

そんな(実質)団長の鶴の一声により、俺たちはステージへ上がった。

 

会場はざわめきと歓声とが交わり、異様な雰囲気になっている。

 

『劇団けゆあの皆さん、いきなりすいませ~ん!さてさて~、今回は何をしてくれるのでしょうか~?』

 

いわゆる丸投げされた。麻由美、恐るべし!

 

だが亜由美は怯まず、打ち合わせをしてたかのように対応。

 

「こんにちは、劇団けゆあです。今から即興を行いますが、テーマをどなたか下さい」

 

マジか!ただでさえぶっつけなのにテーマまで決めさせるとは・・・恐るべし!

 

観客からちらほら手が上がる。

 

「はい、そこのメガネのあなた!」

 

適当に亜由美は指す。

 

「まだ暑いし、海とかでどーすか!」

 

「海ね、じゃあそれで」

 

どうやら決まってしまった。海とかテーマ広すぎ!第一声が大事か。

 

「では時間は5分前後、区切りのいいところで区切って。麻由美」

 

『了解~!』

 

「劇団けゆあ、テーマ海で即興。3・2・1、スタート!」

 

 

 

× × ×

 

 

 

「はい!終わり!」

 

パンっ!という麻由美の手拍子による合図があり即興は終わる。

 

どんなことをやったのかをざっくり説明すると、俺と優美はカップルという設定で海で遊んでる→そこへ亜由美が元カノという設定で登場→ドロドロが始まる→2人ともヤンデレ化→俺刺されて死ぬ→男は酷いと2人で確認し合う→女同士でくっつけばいいのよ→百合でハッピーエンド!

 

ぶっちゃけ死にたくなかったが、流れ上死ぬしかなかった!悲しい。

 

『劇団けゆあの皆さん、ありがとうございました!』

 

わあー!という歓声と笑い声、拍手が入り乱れる。どうやら割りと好評だったみたい。

 

「みなさん、ありがとうございますっ!劇団けゆあはこれからは演劇部として活躍します!部員募集してますっ!」

 

好評だったことが嬉しかったのか優美がそう叫ぶ。圭はこっちを向いた優美と目が合い、ナイス!と親指を立てる。

 

と、放送部から丸のジェスチャーが。どうやら準備オーケーらしい。

 

『みなさん!放送機器が大丈夫になったみたいなんでプログラムを再開しま~す!』

 

『場を繋いでくれた劇団けゆあにもう一度拍手を!』

 

観客のほとんどが拍手をしてくれた。俺たちは再度感謝を言い、ステージを後にした。

 

 

× × ×

 

 

それから後夜祭はトラブルなく終了した。

 

俺はなんとなくではあるが、行かなきゃいけない場所がある。そこで会わなきゃいけない人がいる。そんな気がした。

 

クラスの友人から一緒に帰ろうと誘われたが、断りそこへと向かう。

 

夜ではあるがクラス棟では文化祭の余韻、グラウンドと体育館では部活による生徒たちの声が響くが、特別棟にあるそこへ来たときは静寂に包まれる。

 

生徒会室の前に来た俺。少し落ち着き目を瞑ると彼女と初めて会ったときに時間が戻される。

 

『手伝って下さい』

 

そこから始まった今回の「舞台」。大成功で終わった。

 

依頼を受けたのは俺ではあるが、やっぱり感謝の気持ちは伝えたかった。普通に、皆がいる場所でも伝えることは出来たが、2人きりになって話さないこともある気がした。

 

彼女もきっとそんなことを考えている。約束をしたわけじゃないしここに来る保証もない。だけどここに来る気がする。

 

と、後ろから肩を叩かれた。

 

目を開けるとそこには待ち人がいた。

 

「林崎くんならここに来てる気がした」

 

「俺も、キミがここに来ると思った」

 

俺と優美はお互い笑う。おかしいからではなく、嬉しかったから。

 

「竹下さん」

 

「うん?」

 

「ありがとう」

 

「え!びっくりした!って!それ私が言いたかったセリフなんだけど~!」

 

彼女はあははっと笑い、

 

「私からも、ありがとう!」

 

「感謝しても感謝仕切れないし、今更色々言われてもわかってると思うし。だからありがとう、それだけにした!」

 

いつもの笑顔。だけどすぐに真剣な表情に変わる。

 

「・・・部員、誰か来るかな?」

 

「あんなに良かったんだ。きっと来てくれるよ」

 

「・・・そっか。じゃあ・・・今日までだね」

 

・・・今日まで、か。何が「今日まで」とは優美からは言われなかった。でも俺にはわかる。

 

「一緒に演劇の活動を出来る」のが今日までなことを。

 

そして2人の関係が「劇団けゆあの仲間」から他の何かになるのも「今日まで」なのかも知れない。

 

俺は何も答えることは出来なかった。この日までで終わるというのはわかっていたし、優美に言わなきゃいけないセリフも用意して、それを言うためにここに来たつもりだった。だが、実際に優美に「今日まで」と言われ、そのセリフを彼女へ告げてしまったら、色々なことが「今日まで」で終わってしまうんじゃないかと。それが怖かった。

 

何も言わない俺に対し、優美が発言をする。

 

「なんかごめんね、変なこと言って。私、先帰るね。今日のうちに言っておきたいことは言えたから」

気まずい雰囲気を察したのか、優美はそう言い残し俺から去っていく。

 

言っておきたいことは言えた、そう言ってはいたが、まだ何か話したそうな彼女の背中を俺は追いかけることは出来なかった。

 

1人残された圭。

 

優美は「今日まで」と圭に言った時、期待してたのかも知れない。

 

ただ、圭は言えなかった。なんとなくではあるが、まだこの関係をまだ変えてはいけないと神様が言っている、そんな気がしたからだ。


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