つまらなかったらすいません!
※作中で「下手」という単語がでてきますが、「しもて」と読みます。客席から見て左側のステージ出入り口のことです。ちなみに右側は「上手(かみて)」となります。
『続いて、有志団体「劇団けゆあ」の舞台「シンデレラ」となります。劇団けゆあのみなさん、どうぞ!!』
俺たちの「舞台」が今始まりを告げる。
まず、舞台に上がったのは優美「シンデレラ」である。亜由美と俺はしばし下手で待機。シンデレラの1人舞台から物語は幕を開けた。
「毎日毎日朝早く起きて夜遅くまで家事をして、また寝て起きて・・・」
シンデレラは掃除をしながらそんなことを話す。
「それだけでも辛いのに、お姉さまたちからは嫌がらせ・・・というほどでもないけども」
「ソースの中身が醤油になってたり・・・椅子の上にブーブークッションおかれたり・・・朝起きたら顔に落書きされてたり・・・」
「なんなのもう!!嫌がらせするならもっとわかりやすい嫌がらせしなさい!!あーもー、もやもやするわね!!」
シンデレラはいきなりキレ箒を放棄した。このシンデレラは亜由美が考えた普通とは一味違うシンデレラ。優美はうまく演技してる。
「あ、いけない、いけない!こんなところお姉さま達に見られたら変な人かと思われるわ。おほほほっ!」
その後もシンデレラの独り舞台は続く。観客は静かに見ているところを見ると掴みはなかなか良さそうですね。
「なかなかうまくやってるわね」
「いい感じだね」
俺は亜由美と顔を見合わせ、笑顔になる。「よし、行きましょう」
下手から俺と亜由美、2人の「嫌な姉」が舞台へ。
「お掃除ご苦労様あ~!いつもありがとうねえ!」
ものすごーくイヤーな感じで嫌な姉(亜由美)は演技。うん、これマジでリアルにいたらヤだわ!
俺はというとポケットに隠していたゴミをこっそりたくさんばら撒く。
「シンデレラあ~??ゴミ!まだいっぱいあるわあ~!早く片付けなさいよお~?」
会場からは少し笑い声を起こる。女装というのも相まって面白いらしい。
「ちっ!今自分で捨てたじゃないの!」
「はあ?今舌打ちしたわねえ??そんな暇があったら早く片付けなさあい!」
「おほほ!舌打ちなんてするわけないじゃないお・ね・え・さ・ま!片付けますわよお!」
口ではそう言っているが、顔を超ゲスイ顔を観客に見せつけるシンデレラ。またしても笑いが起きる。
そんな形で舞台は進み、第1場面(姉2人による嫌がられの場面)は終了。俺と亜由美はいったんステージからはける。
舞台上ではシンデレラの1人舞台が続き、裏では俺と亜由美は衣装を着替えながら麻由美と話す。
「つかみはなかなかよかったみたいだね~!」
麻由美がそういうと亜由美も、
「ホントよかった。優美があの感じなら私たちもうまく乗せられていい感じになりそうね」
「この流れで行こう!」
「ええ。じゃあ私は行くわね。麻由美、衣装チェンジ頼んだわよ?」
「任せなさーい!」
シンデレラのところへ魔法使いが現れ魔法をかけるシーンとなる。
「まず服ね」
と言いながら魔法使いが杖を振るう。下手で待機してた麻由美がさっと出てさっと服を引っ張る。うまくいった。観客からおおー!とか可愛いー!とか歓声が上がる。成功だね!
「うまくいったね~!」
戻ってきた麻由美が笑顔で話しかける。が、場面は進んでいくため俺もすぐ出ていく。自転車を持っていくため少々大変だったが。
「あら?馬車を出すつもりが間違えて別のものを出してしまったわ!」
「えー、馬車じゃないのー!こんなのでお城までいけるのー?」
観客からはクスクスと笑い声が聞こえた。予想通りとはいえやっぱりちょっと複雑な気分ですね。
場面は変わり、舞踏会のシーンへ。
「なんて美しいお姫様・・・僕と一緒に踊りましょう」
「え?美しいって私!?べ、別に美しいとか言われても嬉しいとか思ってないんだからっ!」
「そんなことありませんよ?今まで見てきた中で一番美しいお方です」
「ふ、ふん!!そんなに言うなら一緒に踊ってあげないこともないわよ!」
「喜んで」
ここのツンデレの演技、優美はよくなるまで結構時間かかったなあ・・・。まあ本人はツンデレとは程遠い性格だしね。
俺はシンデレラと一緒に踊る。ここのシーンは俺が一番大変だった。踊りながらセリフを言わなきゃいけないし。
ぶっちゃけ、前日練習したときもちょっと足がもたついた。
「踊り上手ですね」
「べ、別に!?このために練習したとかないからっ!」
と、足が引っ掛かった!
あっ!と思った時にはもう倒れていた。俺の体を優美が支えてくれて転倒はまぬかれたが・・・。やばい!ここはなんとかアドリブで切り抜け明ければ!と思ったが、焦りと優美に密着してしまったことで冷静さが失われていく。
「お、王子・・・!?そ、その、大丈夫か・・・?って、いつまでもくっつくなあ!」
俺とは違い優美は冷静に対処してくれた。しかもアドリブなのにちゃんとシンデレラの演技になっている。俺も頭をフル回転して違和感がないようにセリフを続ける。
「す、すいません!!すぐに離れます!・・・じ、実は僕、こういうのまだそこまで慣れていなくて・・・」
よし、うまく繋いだ!もともとこういう設定ならバレない!
それからは特に問題なく、舞踏会の場面は終了。舞台はいよいよ終盤にさしかかる。
<亜由美・麻由美side>
「2人ともうまく演技してるね~!」
「ええ、優美の演技、今日が今までで一番良いわ」
と、圭が躓く。
「あ、あゆちゃん!林崎くんが!」
麻由美は焦っていたが、亜由美は冷静。
「ふふふ、やってしまったわね。でもここでどう切り抜けるかが、大事よ」
「本番なのに~!相変わらずに鬼演出家だ~!あ、優美が!うまいうまい!」
「優美、成長したわね。あそこで冷静にアドリブ出来るようになったなんて」
「ってかさ、林崎くん、ホントは優美にくっつきたくてわざとやったんじゃないの~?」
「彼ならありそうね。後で聞いてみようかしら?」
「だね~!」
<亜由美・麻由美side 終わり>
「この靴に合う人と探していまして・・・あなたはどうでしょうか?」
「え、私・・・?」
「ええ、この家に住むほかの人は違ったみたいで・・・あなたはどうかと」
原作通りならここでシンデレラは靴を履き、王子が探していた人となるが・・・。
「あ、やばい!あのときの王子様だ・・・。ぶっちゃけ私、こういう人は好きじゃないんだよなあ・・・。でも靴はぴったりのはずだし・・・どうにかして逃げる方法は・・・あ、そうだ!」
そう、この脚本ではシンデレラはぶっちゃけ王子が好きじゃないのだ。ちなみにここの演技は観客だけに聞こえるという設定になっている。
「じ、実はねえ、私足臭くて・・・」
「構いません!僕が愛した人なら何があっても大丈夫なんですから!」
「あ!ちょっと!無理やり!」
「やっぱり!最初見たときから顔が似てると思ったのですよ!僕の運命の人ですね!」
「いや、その、私は・・・別にあなたのこと好きじゃないんですけど!!」
演技とはいえ、毎回毎回こうも冷たく言われるとやっぱり少し傷つきますね!
「え・・・そんな・・・うわあああああ!!」
「いやだ、いやだ!!ぼ、僕はキミと一緒だああ!死んでも一緒になるはずだったんだあああ!!」
「そうか・・・死んでも一緒・・・じゃあ、今死んじゃっても一緒だよね・・・?」
「うわあああああああああああああああああ!!」
王子は優美を持っていたナイフで刺す。この王子、ヤンデレ設定なんです。
「こ、こ、これで・・・ずっと、ずーっと一緒だね・・・」
「あはははははははは!!」
最後に高笑いし、舞台は終了。この後は文実の司会と打ち合わせをしており、最後のあいさつとなる。
役者が舞台に並び、おのおのあいさつを行う。1人があいさつをするたび、拍手と歓声が起きるため舞台は大成功だったと言えよう。
全員のあいさつが終わったあと、私たちはいよいよ重大発表をする。打ち合わせ通り、私が言わなくきゃいけないんだけど・・・よし!頑張る!「さて、みなさま、今回は劇団けゆあの舞台見てくださってありがとうございます!劇団けゆあは有志団体として文化祭で演技をしましたが、実は文化祭後は私たちが演劇部となるのです!」
「うちの学校の演劇部は3年生だけのため、文化祭をもって部員は誰もいなくなります。だから私たちが演劇部となります!」
「私たちの舞台を見て興味を持ってくださった方、この後すぐでも、後日演劇部部室でも構いません。まずは見学というだけでも大歓迎です!ぜひお待ちしております!」
「私たちの活動は始まったばかりです!だから一緒に新しい演劇部を作りましょう!」
部長・・・どこかで見ているんですよね。こんなこと言ってごめんなさい。でもでも・・・私は決めたんです。自分で思ったやり方を貫くって。自分のやりたいことが出来なかったらイヤ!!
こうして、私たちの初めての「舞台」は終わりを告げた。
公演は終わりましたが、文化祭はまだまだ続きます!次回もよろしくお願いします(^o^)/