私たちの「舞台」は始まったばかり。   作:かもにゃんこ

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さあさあ!今回は甘々な回になりました(*^_^*)

圭と優美のリア充姿をお楽しみ下さい!


「私のワガママ聞いてくれてもいいかな?」

衣装合わせが終わったあとはせっかくなのでという亜由美の意見もあり、そのまま衣装を着て通し稽古の練習した。黒子で手伝いする人はまだ決まってないため、シンデレラが着替えるシーンは練習出来なかったが、俺と亜由美は2回舞台裏で着替えるシーンもあるため、そこを確認できたのは良かった。

 

通し稽古が終わったあとは、3人で出来てなかったところを確認し合い、その後はまだあまり出来てなかった後半のところを稽古し時間はお昼頃になった。

 

「時間も時間だしお昼にしよう~!お腹減った~!」

 

「そうね、練習も切りがいいし。この辺でで休憩にしましょう」

 

と、携帯を見た亜由美お表情が少し曇る。何かあったのだろうか?優美もそれに気が付く。

 

「亜由美?何かあったの?」

 

「ごめんなさい、どうも妹が熱を出したみたいで・・・今弟から連絡があって・・・両親は今日仕事だから私が帰らないといけないわ・・・」

 

「え!?」

 

「2人ともごめんなさいね。あ、衣装は2人で持ってて大丈夫だから」

 

亜由美は急ぎ足で帰り支度を始めた。

 

「明日の練習どうするかはまた後で連絡するわ。それじゃあまた」

 

「う、うん!気を付けてね」

 

「お大事に」

 

亜由美は教室を後にした。

 

「・・・俺たちはどうしようか?」

 

「うーん・・・」

 

もともと練習は午後も続ける予定ではあったが、亜由美が抜けるとなると指導する人がいない。ただ、本番までは残り3週間ほどと少なく、二学期が始まればクラスの出し物等の準備もしなくてはならないため、目いっぱい稽古が出来るのは今のうち。

 

「俺は、せっかくだし練習したい。小松さんがいないのはアレだけど、出来る範囲で。時間もあんまりないし」

 

「実は私もそう思ってたんだ。亜由美にダメ出しされてるところまだ治ってない部分多いし、出来るうちにいっぱいやっておきたいし!」

 

優美との意見が一致したため、午後も練習をすることにした。

 

 

それから俺たちはお昼ご飯を食べ始めた。

 

優美はいつも家からお弁当を持ってきている。対する圭はだいたいコンビニでおにぎりなどなど。

 

「いつもお弁当だけど、自分で作ってるの?」

 

「うーん、作ったり作らなかったり?時間ないときはお母さんに甘えちゃってるかな~!えへへっ!」

 

「へぇ~。偉いね!あ、だから日によって出来が違うのか」

 

あ、しまった。ついつい思ったことを言ってしまった!

 

「ううう・・・気にしてたことなのに~!」

 

めっちゃ落ち込んでいたけど可愛かったので心の中でガッツポーズした(笑)

 

「ま、まあ!まだこれからだし?作ってればうまくなると思うよ」

 

必死にフォロー。とまたいつもの笑顔に戻る。

 

「そうだね!頑張る!」

 

からかおうと思ってたわけじゃないけど、ここまで素直だとイジワルしたくなりますね!

 

「私がさあ、もっとお料理上手ならね~・・・って違うよ!そういう意味じゃないから!」

 

また突然焦りだした!いや、そういう意味ってどういう意味やねん!

 

なんかわたわたしていたので、なんとなく言いたいことがわかってしまった圭ではあった。

 

 

お昼を食べ、少し休憩したあと午後の練習を始めた。

 

自分が気になるシーンをお互いに見てもらうという形で練習をすることに。

 

優美は終盤の舞踏会のところから魔法が溶けるところをやった。そのシーンは俺も気になるところだったけど2人とも舞台に上がると見る人がいなくなるので、客席側から朗読でやってあげた。

 

 

「う~ん・・・もうちょっと嬉しいとかびっくりとか感情の起伏が欲しい。普段の竹下さんがそういう感じだから余計に気になるなあ」

 

「そっかー・・・。うーん、どうすれば・・・」

 

「シンデレラになろうと思い過ぎるからうまくいかないのかも。いつもの感じでやってみたらどう?」

 

「うん、わかった。それでちょっとやってみる!」

 

もう一度同じシーンをやる。だが・・・。あまり変わってない。

すると圭が発言する前に優美が。

 

「はあ・・・私実は演劇って向いてないのかなあ・・・。なんか意識すればするほどうまくいかないし、前に比べて演じるのが楽しくなくなってる気がするの」

 

これはマズイ。うまくいかないから段々負のスパイラルに入ろうとしている。

 

なんとかしなければと圭は思うが、なかなかいい言葉が思いつかない。

 

「気持ちではこうしなきゃ、ってわかってるつもりなんだけど、いざ演じると・・・」

 

どうしよう・・・。こういうときは。

 

何か声をかけなきゃ!

よ、よし!

 

「・・・つまずいた方が、ぶつかった人の方が幸せなんだよ」

 

「え・・・?」

 

優美は突然かけられた言葉に驚く。

 

「だって今の自分がダメってわからないままだったらそれ以上自分が良くなることはないじゃん?」

 

届いてるかわからないけど圭は話を続ける。

 

「まだまだ自分は伸びる、伸びたいって思ってるから。悩むのは悪いことじゃないからもっと前向きでいこう!」

 

とりあえず言いたいことは言えた。彼女を励ましたいという一心でそう言葉をかけた。

 

「暗いのはキミらしくない」

 

そう、優美はいつも前を向いていた。どんなに先が見えなくても。だって俺はそんな彼女が・・・。

 

「私らしくない、か・・・」

 

「自分らしくとか、よくわからなくなる時もあるけど、私のこといっぱいわかってくれる人がそう言ってくれたらそうなんだよね!」

 

さっきまで落ち込んでいた優美はいつもの笑顔に戻った。

 

「ありがとう。私も明るい自分が好き。だって大切な人にそう言われたら自分も好きになるもん」

 

「えっ!?」

 

思わず驚いて声が出てしまった。『大切な人』。そう思ってくれてるなんて。

 

と、優美も自分の発言したことに気がつき、顔が赤くなる。ただ、いつものように動揺はしなかった。

 

「うん、大切な人だよ」

 

今までの中で一番真剣な顔だろう。俺も、その言葉が何を意味するかはわかる。

 

動揺する自分がいる。自分はどう答えればいいのかわからない。すると優美が口を開く。

 

「大切だから、今は自分のワガママは言わないよ」

 

自分よりも「子供」に見えた優美にそう言われ、ダメってわかっても流されそうになってた自分がよっぽど「子供」ということに気がつく。

 

「キミは、俺が思ってた以上に大人だね」

 

改めて、そう伝えた。が、

 

「なにそれ!同い年じゃん~!私が年上とかないない!」

 

何故か全否定されました(笑)いいこと言ったつもりだったのに!

 

「まあ、そうッスね」

 

「それとさ、さっきの名言みたいで凄い!さすがだね!」

 

「いや、あれは・・・」

 

「中学のときの部活の顧問に言われたことをそのまま・・・」

 

「え、あ、そうなんだーへぇ・・・」

 

なんか気まずくなった・・・。今ので嫌われたらどうしようっ!

 

そんなどうでもいい(?)ことを考えて俺を横目に優美は、張り切っていた。

 

「よし!私らしく前向きに頑張るぞ~!」

 

 

それからの稽古はとても楽しくかつ有意義なものになった。優美も一皮も二皮も成長したと翌日亜由美に言われた頑張りようだった。

 

 

× × ×

 

 

「今日は色々ありがとう」

 

帰り道、優美はお礼を言ってきた。人の真似だったし大したことは言ってないがやっぱりそう言われるのは嬉しい。

 

「正直どう声かけようか迷いまくったんだけどね」

 

「ううう・・・なんか自分があんな態度とってたなんて思い出すのも恥ずかしいね」

 

「あはは」

 

「でもやっぱり不安は不安かな。あと数週間でどうにかなるのかなってね」

 

それは俺も不安、というか俺のが不安かも。依頼を受けた身としては。

 

「俺はずっと不安かなあ。こんな素人なんかに部の将来委ねられて正直不安なわけないか」

 

最近、優美の距離が近いこともあり、ついついこんな愚痴を言ってしまった。

 

「そう、だったんだ。なんかそう思ってくれてると私の不安はなくなるかも!」

 

ふいに優美の体が近くなる。彼女の目は俺をまっすぐ見つめていた。

 

「あのさ・・・」

 

「え・・・?」

 

「今日くらいは、こんな気分のときくらいは、私のワガママ聞いてくれてもいいかな?」

 

そう言った瞬間、優美は自分の右手で俺の左手で握った。

 

いきなりで少し焦ったが、次第に心地よい緊張感や安心へと変わる。

 

俺も優美も無言ではあったが、繋がれた手を通してお互いが落ち着いていくのがなんとなくわかった。

 

依頼が達成されるまでは変わってはいけない関係。でもこんな日くらいは少しのワガママくらい、神様も許してくれると思う圭だった。




作中、圭が優美を言葉で励ますシーンがありましたが、あれは作者が実際に学生の頃に部活の顧問に言われたことだったりします(笑)

それでは、また次話で!

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