デート回が終了し、二人は幸せに・・・とはすぐにいかないです(笑)
今回はギャグ多めです(^O^)
8月もお盆の時期が終わりいよいよ夏休みも終盤に差し掛かる。宿題や課題等に追われる学生も多い中、俺たち「劇団けゆあ」は9月上旬本番、文化祭に向け、練習にも気合いが 入る。
実際、ここ数日は長めに稽古をしており演技の質も飛躍的によくなってきた。
今日も朝から3人で稽古を始める。
「おはよー、亜由美~!」
「おはよう、優美。それと林崎くんもおはよう」
「おはよう」
ちなみにだが、優美とは毎日一緒に来ているが、別に時間を合わせて来ているわけではない。単純に練習時間に合わせた時間に電車に乗っているだけ自然と一緒になる。
「あれ?亜由美、そのおっきなバッグは何?」
優美がそんなことを言ったので、俺も亜由美の方を見たら、旅行に行くときに使うようなキャリーバッグが彼女の近くにあった。まあそうは言ってもめちゃくちゃデカいわけではないが。
「あ、これのこと?なんだと思う?」
「え~!なんだろう?・・・ご褒美のお菓子、とか?」
どんだけお菓子持って来てるねん!と一人で突っ込んだ(笑)
「・・・優美、友達、やめてもいいかしら?」
亜由美はものすごく冷たくそう言った。うん、今の季節にならちょうどいい(違う)。
「ひ、ひどい~!」
「酷いのは優美の答えよ。・・・この前何をしに一緒に買い物に行ったか覚えてないのかしら?」
「この前・・・?ああ~!わかった!」
本当にわかったのだろうか!また変なこと言って怒られそうな気がしますがね!
「衣装!衣装だね!」
「そうよ。家で作っていたものも出来たから試しに着て貰おうと思って持って来たの」
あ、なるほど。衣装じゃあのくらいのバッグじゃないと無理だよな。
亜由美はバッグを開け中から衣装を取り出し、圭と優美に渡す。
「はい、林崎くん。王子様とミスターチャリンコと嫌な姉の衣装よ」
「おう、ありがとう」
ちなみにミスターチャリンコとは魔法で出てきてシンデレラを自転車でお城まで運ぶ運転手のことである。作中でその名前が出てくるこてはないので仮名ではあるが。
「優美はシンデレラの衣装2着ね。はい」
「ありがとー!」
おのおの自分の衣装を受け取ると、
「じゃあさっそく着てみて。あ、林崎くんは外に出てね」
・・・まあ、そうなるわな!わかっていたとは言えそこまで冷たく言われると心に響くものがありますね・・・。
廊下に出た俺はまず何を来てみようか悩んだが、いきなり女装するわけにはいかんし、かと言って王子様もアレなんでミスターチャリンコのを着ることにした。
どんな衣装かと言うと、江戸時代の飛脚みたいな感じだった。
「おいおい、なんでヨーロッパっぽい雰囲気なのにこれだけ和風なんだよ!」
ついつい独り言が出てしまう。
着替えてから暫し待つと中から声が聞こえた。
「林崎くん、入って大丈夫よ」
さて、女性陣はどんなもんか、と期待もちょっとしてドアを開ける。
まず目に入ったのは亜由美だった。嫌な姉の衣装を着ていた。
なんか派手だが安っぽさが出ており衣装だけでも嫌らしさが伝わってくる。
ぶっちゃけ似合っていたが、そんなこと怖くて言えませんでした(笑)
「どうかしら?」
う、感想聞くか・・・。どうしよう?
「嫌な姉っぽくっていいな」
無難、無難に逃げたぜ!
「ふうん。それだけ?」
ぐ・・・。めんどくさい・・・。とりあえず黙り。と、隣にいた優美から、
「わ、私はどうかな・・・?」
と声をかけられた。ラッキー!これで逃げられる!
優美はと言うと、魔法がかかる前の衣装を着ていた。
生地が破けていたり、つぎはぎがあったりかなりボロボロな感じではあったが、何か優しい雰囲気もある衣装であり、なんとかなく優美にぴったりだったため、
「おおー・・・。なんかいいね」
小学生並みの感想になってしまった。
「ありがと。そっちもおもし・・・いいね!」
今面白いって言おうとしたよなあ!まあ実際そうなんだが。
と、隣にいた亜由美が何か企んでいる顔になる。と同時になんと優美が来ている衣装を脱がしにかかった!ええ~!?
「あ、亜由美!?だめっ!やめてっ!いやぁ~!」
ちょっ!ホントに何脱がしてんすか!優美も変な声を出すもんで顔をそむける(目ではチラ見)。
「観念なさい!」
亜由美がついに衣装を脱がせてしまった・・・今、優美は・・・。さすがにそんな格好を見れるほどの度胸はなく目線も反らす。
「・・・何目を反らしてるの?別に大丈夫よ?服は着てるわ」
・・・え?おそるおそる見て見ると真っ白なドレスに身を包んだ優美がそこにいた。
「あ、あんまり見ないでね・・・?」
肩が出ていて、袖もなく、膝上15cmほどあるミニドレスを着ていた。正直めちゃくちゃ可愛い。
あんまり見ないでとは言われたものの、そんな格好されていたらどうしても見つめてしまい、そのまま目が合いお互い顔を反らす。そんな状態になってはいたが、優美はやはり圭がどう思っているのか気にはなっていたようで、
「ど、どう?変じゃない?」
感想を求めてきた。なんて答えるか迷ったが、さっき初めて見たときの感想をそのまま言った。
「・・・正直、めちゃくちゃ可愛い」
「あ、ありがとう。私じゃ着こなせないかなって思ってたけど、そう言ってくれて良かった」
優美は多少照れていたが、その言葉通り変じゃなくてホッとしたとう感じだろう。
とあることに気がついた。
「この衣装って普段来てる制服とそんなに丈は変わらないけど、結構動くわけだし・・・その」
そこまで圭が言ったところで亜由美が、
「実はこれスカートに見えるけど分かれてるのよ」
と説明。あ、そうなんすね。残念なようなそうでないような・・・。
そう思っていたら優美が圭の心を察したように。
「残念だったかな~?なんてっ!」
いつもとはちょっと違う小悪魔的な感じでドキッとした。
「とりあえず1着目は大丈夫そうね。林崎くんは2着目に着替えてきてちょうだい」
そう亜由美に言われ俺は教室を出て、また着替える。
「女装と王子か・・・。女装は出来たら逃げたいから最後にするか・・・」
逃げられるわけないしどうせ本番では着るんだけどね!
王子の衣装に着替えてみたが・・・割と普通?もうちょっと「THE・中世の王子」的な感じかと思ったらスーツみたいな感じ。
亜由美からまた「大丈夫よ」と声がかかり、俺は教室へと入る。
「おお~!カッコいい!」
優美からそう言われた。嬉しいけどマジで照れるから・・・。
と、優美が俺の隣にくると腰に手を当ててポーズをとる。
「どう亜由美!シンデレラと王子様のツーショットだよ!お似合いかな~?」
さっきまでドレス着てるだけで恥ずかしがっていたのに、いきなりそんな恥ずかしいセリフを言ってきた(言った本人は全然恥ずかしくなさそう)!女の子の気持ちはわかりませんね・・・。
で、そんなことを聞かれた亜由美も何か思い付いたらしく、にやりと不敵な笑みを浮かべる。
「そうね・・・今のままでもそこそこだとは思うけど・・・」
ものすご~く嫌な予感。
「例えば王子様がそうね、お姫様抱っこなんてしつみたら更にお似合いじゃない?」
「「えっ!」」
・・・なんてことを言うんだ、この人!出来るわけないし・・・さすがの優美だって・・・と彼女をチラリと見ると目が合い、
「そ、その・・・王子様がしたいなら・・・いいよ?あ!いや、その、されて、みたい、かも・・・」
上目遣いでそんなことを言われた。
「王子、姫にそう言われたらやるしかないですね」
たまたま側近の衣装を着ていた亜由美に追い討ちをかけられた!本物の王子様もこんな感じなんすかね・・・。
ま、まあ、今は王子とシンデレラっていう役になりきってるわけだし!?お姫様抱っこくらい・・・!
「い、いくよ?」
「う、うん」
俺は左腕で優美の太ももあたり、右腕で背中を触る。初めて触れた優美の身体。柔らかく暖かい、女の子独特の感触。
そして力を入れ一気に持ち上げた。失礼ではあるが思ったよりも軽く、そんなに辛くはなかった。
優美の方をチラリと見ると、恥ずかしそうではあるが凄く嬉しそうな笑みを浮かべて、やっぱり俺も恥ずかしくなる。
いつまでやってればいいのかと思ったとき、亜由美がこっちにやってきて耳元でこそっと口を開く。
「王子、カッコいいわ。そのまま姫に口付けすればもっとカッコいいわよ」
はっ・・・?口付けって・・・?
「いや、それは・・・って出来るかー!!」
一瞬乗せられそうになったが正気に戻った。それで一気に恥ずかしくなった俺は優美を下ろした。
下ろされた優美が残念そうな顔をしてたのは秘密!
それから俺と亜由美は3着目を試着し、特に問題がないことを確認し合いファッションショー(?)は終了した。
ちなみに女装もしたが、お姫様抱っこなんてしたせいか、女装くらい全然恥ずかしくなかった俺であった(笑)