私たちの「舞台」は始まったばかり。   作:かもにゃんこ

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いつも読んでいただいてありがとうございます(≧ω≦)b

今回は稽古のシーンもあります!楽しんでいって下さい!


「何変なこと考えてるのかしら・・・?」

学校が夏休みに突入し、いよいよ俺たちも本格的に練習を始めた。練習は毎日基礎から始め、立ち稽古を場面ごとに行うスタイルだ。最初はなかなか続かなかった腹式呼吸もかなり出来るようになったり、繰り返し台本を読み込んでいくうちに台本なしでも稽古が出来るようになり、徐々にではあるが演劇というものを掴めていった。

 

そんな感じで今日は魔法使いが出てくるシーンを行っていた。

 

「シンデレラ、魔法がかかってドレスになる瞬間はもっと感情をしっかり込めて」

 

稽古中では「役」で呼ぶことになっている。今は優美への指導を行っているというところだ。

 

「う~、難しいなあ・・・。どんな感じで演じればいいんだろう?」

 

「もっとシンデレラの気持ちになってみなさい。自分が今まで着たことのないような綺麗なドレスが着れるようになって、非現実だったお城の舞踏会にも行けるようになるのよ?」

 

確かにその通りではあるが実際にはなかなか難しいものではある。まあそれをしっかり演じるのが役者というものではあるが。

 

「シンデレラの気持ちかあ・・・。むむむ。ちょっとシンキングタイム下さい!」

 

そう言って優美は教室の隅の方へ行き、台本と格闘をし始めた。ちなみに教室はエアコンがない。だから暑い。だからなんだって話ではあるが。

 

「優美が外してる間にちょっとあなたに聞いておきたいことがあるのだけれど」

 

「え?なに?」

 

また優美への好意が、っていう話だと思って構えたが違った。

 

「このシーン、わかってるとは思うけど服が一瞬にして変わるじゃない?今は演技の質を高めるのが大事だけれどもどうやって服を変えればいいのかしら、と思って」

 

「あ~、確かに・・・」

 

圭はちょっと驚いた。亜由美ほどの演出能力があればそんなのはもう考えてると思った。さすがに亜由美も女子高生というわけか。いや、変な意味じゃなくてね?

 

「シンデレラの原作を見たときにどうしようかと思っていたのだけど、なかなかいい案は思い浮かばなくて。どうかしら?」

 

「と、言われましても・・・」

 

いきなり聞かれても思いつくか!と思ったが、亜由美がめっちゃ笑顔(怖い)で見てたので思考回路をフル回転して何かないかと考えまくった。

 

「あ、思い・・・ついた・・・!」

 

「誰かが黒子をやって服を変えるとか・・・?あ、服は重ね着になるけど」

 

ぶっちゃけかなり適当に思いついたことを言ったので何も言わない方がマシだったかもしれないが。

 

「なるほど、悪くはないかしら?」

 

「まあ、俺たち以外に誰かお手伝いの人が必要になるけど」

 

「そうね、でもそれくらいなら大丈夫だと思うわ」

 

確かにこの人ならクラスでも人望ありそうだし、頼めば誰かやってくれそうだよね。脅すとかそういうのはきっとないよね?

 

そんなことを話してたら自主練をしていた優美が戻ってきた。

 

「よし、なんか掴めたかも!・・・2人は何の話してたの?」

 

置いてけぼりもかわいそうなので今まで話していたことを簡単に説明した。

 

「へえ~。確かにどうするかは難しいねえ。着替えるの私だけど全然考えてなかったよ」

 

「そういうわけで着替えるまでは重ね着になりそうだわね。ちょっと暑そうだけど我慢できるかしら?」

 

「あ~!確かに・・・。こうなったらドレスの方はめっちゃ涼しげな感じにするとかっ?」

涼しげ・・・?ということは露出が多いのになるんすかね!おっと、いかんいかん!変な想像をして顔がにやけてしまった!うん、変なことは考えちゃいかん。

 

と思っていたらやっぱり亜由美が反応してきた。

 

「何変なこと考えてるのかしら・・・?」

 

「いえ、別に?とりあえずそういう方向で演じる本人もいいかな?」

 

変に反応したりするとマズイのでついでに話も変えた。

 

「私はそれでいいよ~!暑いのはなんとか我慢するよ!よし、演出も決まったわけだしまた同じシーン練習しよう!」

 

それから同じ場面を何回か練習し稽古は終了となった。ちなみに、夏休みというわけだが、一日中練習するわけではなく、暑さや集中力にも限界があるため、だいたい基礎連を含めても3時間ほどの練習量である。せっかくの夏休みだし遊びもしたいしね!

「じゃあ亜由美、また明日~!」

 

「ええ、また明日」

 

いつも通り亜由美とは校門のところで別れ、俺と優美で駅までの道を歩く。麻由美と食事に行ってあんな話をしたから、少し気まずい感じになってしまうかと思ったが、意外と大丈夫だった。まあ、お互いにそういう話をさけてる感じではあったが。

 

「もう8月になるけど林崎くんはどっか出かけたりした?」

 

「いや、全然。クラスの友達とかは部活で忙しいしな。それに稽古も疲れるし休みの日は普通に休んでる」

 

「そうなんだ~!そういう私も全然出かけてなかったりするけどね~。せっかく夏休みだしどっか出かけたいって気持ちはあるけどっ」

 

うーん・・・これは俺に誘って欲しいって間接的に言ってるのだろうか・・・?いや、まさか。だが・・・。

 

『素直に嬉しい、です・・・』

 

不意にこの前の優美のセリフを思い浮かべてしまう。こんなセリフ言われたら普通に特別な感情があると思うだろう。もちろん俺も。でも・・・。

 

「どうしたの?」

 

「あ、いや、なんでもないよ?」

 

そう?と優美はいつもの笑顔で短く答えただけだった。と優美が少し改まった表情になる。

 

「あ、あのさ、今度の日曜日空いてる?うちの親がさ、水族館のチケットもらって最初は亜由美と一緒に行こうと思ったんだけど家のことで色々忙しくて無理だって言われて」

 

「ほかの友達は・・・色々あって無理で・・・どう、かな?」

 

まさか優美の方から遊びに誘ってくるとは思わなかった圭は普通にびっくりした。でも素直に嬉しかったし、断る理由もなかったので、オーケーした。ほかの友達が「色々あって」っていうのが少し気になったが(笑)

 

「うん!じゃあよろしくね!時間とかはまた後で決めよう!」

 

こうして俺は「依頼人」と2人で出かけることになった。

 




いかがでしたでしょか?

稽古のところで「役」で呼ぶシーンありましたが、自分がいた演劇部でそうやっていただけで一般的かはわかりません(笑)

では、また!

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