「俺は・・・俺はキミのことが好きだ!付き合ってください!」
夕暮れの校舎裏、俺は優美に告白していた。優美は驚いた顔をする。
「ずっと一緒に頑張って来て、頑張ってるキミを見て好きになりました・・・!」
俺はそこまで告げると恥ずかしさで顔を下げた。
「・・・めん」
「・・・?」
「ごめん・・・なさい・・・」
「え!?うわあああああ!!」
ジリリリリリリリ・・・!
「え!?え!?え!?・・・夢か・・・」
「なんて夢を・・・一学期の最後だってのに朝から最悪だ・・・」
× × ×
朝から嫌な夢を見たこともあり、いつも以上に駅から学校へ歩く道のりはしんどかった。ふと、後ろから肩をたたかれ声をかけられた。
「おっはよ~!今日で最後だね~!」
まさか朝から(夢で)告白した人に会ってしまうとは神様もひどいですね・・・。
「お、おはよ」
「あれ?どしたの?元気ないね・・・?体調でも悪い?」
「あ、いや、ほら、朝から暑いし・・・」
「今日そんなに暑くないじゃん!むしろ涼しい~!」
天気め・・・なんでこういうときは暑くしてくれないんだ・・・。
「あ、そうそう、昨日贔屓の野球チームが負けて・・・」
実は勝ったがこれでいこう、うん!
「え?林崎くんの好きなチームって〇〇でしょ?ニュースでたまたま見たよー!」
なんでこういう時にたまたま見てるんだよ・・・!あ、そうだ、話を変えよう!
「そういや今日、放課後に文化祭有志の申し込みあるじゃん?よろしくね」
「あ、そういえばそうだったね!結構大事だもんね。亜由美は家の用事でこれないけど」
とりあえずうまくかわせたぜ!というかこれのせいで今日元気なかったんだよ、これで我々の運命決まると言っても過言ではないし、うん、そうだそうだ。
「ってかちょっとびっくりしたのはさ、生徒会の人って文化祭実行委員とか強制かと思ったんだよね~!そうじゃなくてほっとしたよ~!」
そう、だいたい生徒会っていうと文化祭に関わらなきゃいけないみたいな感じが普通ではあるが、うちの学校は特殊で文化祭実行委員だけで文化祭は基本進められる。
「まあ、もし文化祭実行委員もやらなきゃいけないってなってたら演劇なんて出来ないしね」
「確かに!でももし少しでも文化祭に関わってくれてたら、公演場所とか時間とかちょっと贔屓とかできたかもって思うよ~!」
純粋に見えてちょっと黒い一面もあるんですね。仮に文実だったとしてもそういう不正はしませんが。
「まあどっちにしろ抽選だし、不正とか無理そうじゃね?」
「確かに~!で、話戻るけどなんで元気なかったの!?」
戻すなあ!戻さなくていい!
「な、なんでもないから!」
「あ、待ってよ~!」
俺は小走りでその場を去った。また今日の朝の夢を思い出して恥ずかしくなってしまった。心の中でキミのせいだー!と叫んだのは秘密です。
× × ×
そして放課後となり、俺は有志の申し込みをしに優美と一緒に会議室へと向かっていた。ちなみに何を決めるのかというと、各有志団体がどこでどんな時間に自分たちがやれるか、を決める感じである。参加団体が少なければある程度場所は選べたり、また何度も出来ることもあるが、多い場合は場所時間含め抽選になる、という感じである。
別にやれるならどこでもいいじゃん?みたいなもの正直あるが、自分たちにとっては部員を集めなければいけないというのがあるため、出来る限り目立つ場所や人が集まりやすい時間でやりたいというのもある。
「ちょっと緊張するねぇ~。いいところに入れるかな」
「どうだろう?見た感じ割と参加団体は多そうだから抽選必須になりそうかなあ」
「うわあ…変なところになったらどうしよ」
「そんときはそんときだね」
ちなみにどんな場所があるかというと、野外ステージ・体育館・多目的室と割り振られ、多い場合は余った教室、となる。
野外ステージは魅力的だが、通常プログラムが多く、弾かれてしまうケースも多いため、体育館を狙う方向になっている。
「じゃあ有志参加団体のみなさん、用紙に必要事項を書いて提出して下さい。場所・時間に関してはダブった場合は抽選になります」
と、用紙を見ると参加団体名、とあった。あ、そんなの決めてないわ…。
「なあ、ここの参加団体名どうする?」
「え?」
「やっぱり劇団○○とかのがいいのかな?」
大学のサークルとかこんな感じだよね。優美はうーんと考えたあと閃いたとばかりに、
「劇団けゆあ、にしよう!」
「え?どういう意味?」
と圭が聞くと優美はふふ~ん!とドヤ顔で、
「私たちの名前の頭文字を合わせたの!どう?」
あ~、なるほど、そういうことね。悪くはない…が、何故に俺が一番目なんすかね。
「とりあえず団体名なんてそこまで関係ないしこれでいいよ」
「やった~!じゃあ後で亜由美にも言っとく!」
あんたバカじゃないの?とか言われそうだけどまあ、仕方ないね!決まったことだしね?
「じゃあこれで出してくるね」
それから文実にて集計後、場所と時間が発表された。俺たちは狙い通り体育館、しかも時間も希望通りの13時からとなった。ちなみに野外ステージは抽選になってた。ホットした。
「ふぅ、とりあえず良かった」
「教室とかだったら目立たないし、狭いしねー」
と、2人でホッとしてると後ろから声をかけられる。
「やっほー!」
声の方を見ると見知った顔がいた。
「あれ?麻由美ちゃん?あ、そっか!文実だもんね!」
どうやら後ろにいたらしく気がつかなかった。
「いい場所に入れたみたいで良かったじゃん!あ、林崎くんもどうもー!」
「あ、こんにちは。えーと…」
名前しか知らなかったがいきなり名前で呼ぶのはマズいと思い、言葉がつまる。
「私?そういえば自己紹介すらしてなかったね~。梅田麻由美(うめだまゆみ)っていいま~す!麻由美って呼んでもいいよ~?」
「あ、いえ、梅田さんで」
「あははっ!面白いねっ!あ、君たちって今日は活動ないんでしょ?」
「うん、そうだけど?どうしたの?」
「良かったらさー、2人と話したいなあー、って!どう?」
そう麻由美は2人に向かって少しニヤニヤしながら聞いた。嫌な予感するなあ…。
「私は別にいいよ~!林崎くんは?」
うん、仮に嫌だとしても彼女からのお願いは断れませんね。
「おー、けー、です」
「やたー!ふっふっふ、楽しみ~!」
こうして俺たちは「お姉さん」に連れて行かれた。
今回の話の中で「生徒会だからと言って文実は強制ではない」というのがありましたが、自分の母校がそういう感じでしたので同じにしてみました!
ぶっちゃけこういうのは珍しくないんですかね?