だいぶ話も進んできました!
みなさんは優美のことどう思いますかね?(笑)
台本が決まってから数週間が経ち、7月、季節は真夏へと突入しつつある。
一学期末の定期考査もあり、練習自体は今まであまり出来なかったこともあり、これから本番である夏休み明けの文化祭までガッツリ練習してアピールせねば。
というわけでテスト最終日だった今日から練習が再開される。
「久しぶりだね!テストはどうだった?」
久々に聞く優美の元気な声に自然と嬉しくなる圭だった。
「いつも通りかなあ。普通って感じ?」
ちなみに成績はだいたいクラスでも真ん中くらい。社会科目が得意で数学が苦手って感じだ。
「そっかあ、ちゃんと勉強したんだねえ・・・」
それって自分はあんまり勉強してなかったって意味に聞こえるが・・・?少しがっくりしてる優美の代わりに亜由美が答える。
「この子、テスト前なのに台本ずっと読んでたらしいのよ。そっちに熱心なのはいいのだけれど、成績に影響するのは少し心配だわ」
と、まるで親みたいなことを言っている。
「だって、いっぱい頑張らなきゃいけないし・・・そりゃあテストも大事だけど公演を成功させる方が大事かなって。えへへ~!」
「えへへ~、じゃないわよ。もし補習とかになったら練習どころじゃなくなるのよ?」
「あっ!それは全然思い浮かばなかった!」
なんか結構ヤバいこと言ってる気もするが、めちゃくちゃ笑顔で話すもんだからなんか大丈夫な気がしてきますね。
ちなみにこれは後日での話になるが優美はどの教科も平均点を上回っていたという。
× × ×
いつものように基礎練をし、台本を持ちながら稽古をした。練習のやり方としてはとりあえず最後まで台本を進め、ある程度動きを決め、それを見ながら亜由美が改稿をしたりして、その後に一場面ごとにじっくり稽古をしていく、という感じでやっており、一応今日で全場面を触った。
「ふぅ~、とりあえず全部終わった~!」
「どうかしら?一通りやってみたけど?」
亜由美は初心者である俺に感想を求めた。
「実際やってみるとやっぱり演劇は難しいって思ったよ。セリフだけならそれならに出来たかなって思ってたけど、実際に動きながらだとめちゃくちゃ大変だったよ。でも演じるのは普通に楽しかったね」
「ふふふ、それは良かったわ。これからは厳しくいくつもりだけど頑張ってね」
と笑顔で言われた。普通に怖い(笑)
「私も演劇ってこんなに楽しいんだなって思ったよ~!これも色々協力してくれた林崎くんのおかげだよ」
「あ、ありがとう」
こういうセリフや笑顔慣れているとはいえやっぱり照れてついつい顔をそらしてしまう。
「えへへ!どういたしまして!」
そんなやりとりをしてたら横から亜由美がチクリと。
「2人で青春してるところ悪いけど、ちょっといいかしら?」
「べ、別に青春とかそういうんじゃないよ!?」
優美は少し顔を赤くして焦る。そんな顔されるとついつい意識してしまう。
「焦ってるのが余計に怪しいわね。まあ頑張ってね。それは置いて衣装のことなんだけど」
衣装、演劇では演技もそうだが衣装も大事である。観る側が舞台の世界に入り込めるのはもちろんのけと、演じる側も役に入りやすい、というもあるだろう。
「私が勝手に決めてしまってもいいのだけれど、せっかくだから役者の意見も聞きたいと思って」
ちなみにどんな配役かというと、優美はシンデレラのみ、亜由美は嫌な姉1・魔法使い・王子の側近、圭は嫌な姉2・魔法で出てくる自転車を運転する人・王子、である。
なお、あくまで馬車ではなく自転車、自転車である。大事なことなので)ry
「衣装かぁ~!やっぱりドレスみたいなのは着たいよね!気持ちもしっかり入りそうだし」
そう優美嬉しそうに語る。やっぱり女の子はそういう衣装が好きなのね。
「王子様はどうかしら?」
ぶっちゃけよくわからないこともあり、そこまでは気にならないという感じではあるが。
「俺はどんなのでもいいかな。2人で決めてくれた方が助かるね」
「あら、そう?なら決めさせていただくわ。もちろん女性役の衣装もしっかり用意するわ」
「あんまりヒラヒラしたのとか丈が短いのはやめてよね!?」
「何でもいいんじゃなかったの?」
「女装の方は少し気を使って下さい」
「わかったわ。飛びっきり可愛い服用意するわ」
わかってないんだよなあ…。
「ねぇねぇ、せっかくなんだし林崎くんの意見も聞きたいなあって!どんなドレスが好き?」
そういうこと聞きますかねぇ?そりゃあ俺も男だし?露出が多い方が…いや、そんなこと言ったら嫌われるな、うん。
「やっぱり白とかいいんじゃない?ちょっと無難かもだけど。あとイメージ通りに行くなら丈はロングだけど動きやすさを考えたら膝上くらいがいいかなって」
うっかりミニ丈がいいって自分の好みを伝えてしまったぜ!
「白か~!確かに王道っちゃ王道で普通に可愛いかもね!なるほど!」
結局衣装に関しては亜由美と優美で一緒に準備してくれることになった。まあそういうのは女の子に任せた方がいいよね!
× × ×
帰り道、下駄箱にて
「あ、私教室に忘れ物しちゃったみたいだ・・・!ちょっと取ってくるね-。先に帰ってもいいよー!」
と言って教室まで行ってしまった。別に急いでいるわけでもないし待つことにした。
「俺待つから先帰ってもいいぞ?」
「あら、いい人ね。・・・で、せっかく2人きりだから聞きたいことがあるんだけど」
2人きりだから聞きたいことって・・・!まさか・・・?
「え・・・なんでしょうか?」
「優美のことなんだけど」
あ、違った。
「率直に聞くけど、あなた優美のことどう思ってるの?」
「え・・・」
突然だった。亜由美からまさかそういうことを聞かれるとは思ってなかった。
「私が見てる限りではかなり好意を持ってるように見えるけど」
正直そういうのを聞かれるのは困る。前みたいに全然知らない人に聞かれたときは適当に流せばいいかなと思ったが、身近な人にこう聞かれるとどうしようか迷う。
「言われた通り確かに好意は持ってると思う。だけどそれはどっちの好きだかは正直わからない」
俺は嘘をついた。自分の中ではこの好きという感情がどっちなのかははっきりわかる。でも、やはり俺と彼女は請負人と依頼人、そういう感情は持ってはいけない。だから、自分を納得させる意味でもこう答えるしかなかった。
「そう」
亜由美はそれだけ答えた。その短い言葉にどんな意味が込められているのか、俺はわからなかった。少しの沈黙のあと優美が戻ってきた。
「あれ!?わざわざ待っててくれたんだね!ありがとうっ!」
いつもなら嬉しい優美の言葉と笑顔。だが今はそれを見るのが辛くなっていた。