今回のタイトル、どうしてこうなったのか(笑)
「一応台本、完成したわ。これから修正を少しは加えると思うけど」
「おお~!」
「早い…」
あれから一週間ほどたった放課後、亜由美から仮完成した台本をそれぞれ受け取りおのおのそれを黙読した。ちなみに台本が出来るまでは亜由美指導のもと基礎連を連日行っていた。
× × ×
「どうかしら?」
「いや…素人なんでどうなのかわからないけど原作を崩さずこれだけ見せ場作るのは凄いんじゃ…!」
「私も面白いって思ったよ!お客さんもこれで演劇に興味持ってくれそう!」
確かに台本読む限りではかなりいい感じだと思う。だが見せ場を増やした分、演技力がかなり重要になる気がする。
「こちらで進める段取りなのだけど、何か質問はあるかしら?」
「はいは~い!」と優美が手を上げる。
「これ、最初の方に女性役3人のところがあるんだけど…」
最初の方というのはシンデレラが嫌がらせを2人から受けるシーンである。確かにそれは俺も思った。応援でも呼ぶのだろうか?
「ふふふ…。それは心配ないわ。彼にも女性役をやってもらうから」
「あ、なるほど!さすが亜由美だね!その手があったか~!って感じ!」
「ふむふむ、その通り…って!マジかよ!」
ついつい乗せられそうになったがおかしい…よね?
「えーと、いじめ役1人とかには出来ないんすかね…?」
僅かな希望を胸にそう聞いたが…。
「ありえないわ。1人だけじゃ絶対面白くならないもの」
デ、デスヨネー!まあぶっちゃけそれは俺も思ったが…。
「私は…林崎くんの女装も、ちょっと見てみたいなあ~。なんてっ!ダメ、かなあ…?」
と上目遣いで優美から言われてしまった。それをやられると俺は弱いんだよー!
「わ、わかった…。やります、むしろやらせて下さい」
「やったー!」
喜ぶ優美。どんだけ女装見たかったん…。と、亜由美が横に来て耳元で優美に聞こえないように言う。
「あなた、優美にはとても弱いのね。これからも今の感じで使わせてもらうわ」
ひぇ~!怖い!次は優美と打ち合わせとかしてきたりしないよね!?
「ねぇねぇ!さっそくだしちょっと台本読んでみようよ!女装するところ!」
う…。まあ最終的には舞台でやるわけだし…もうどうにでもなれ!
× × ×
3分ほどであったが読み合わせは終わった。恥ずかしいとかそういう感情を吹き飛ばして本気で女役(嫌な姉役)を演じた。
自分ではしっかりと演じたつもりではあったが、2人はどのように見ていたか気になりチラリと顔を上げると2人とも固まっていた。やっぱり女役は厳しいという見方なのだろうか…?
「…えーと、どう、でした?かね?」
「…す」
と亜由美。
「す?」
「…凄いわ。素人とは思えないわ。女性役が演じられたかどうかとかそういう枠を超えて演技が良かったわ」
「え…マジで?」
「お世辞で私は誉めたりなんてしないわ。才能あるのかしらね?」
そ、そこまで!?いや、嬉しいけども驚きのが…!
「わ、私もほとんど素人だからよくわからないけど…完全に役になりきってたというか…凄かった!」
どうやら2人に言われてしまったらホントに凄いらしい。
「あ、ありがとう」
「せっかくだしさ、他のシーンもやってみない?あ、この王子様と踊るシーンみたいなあ!林崎くんの王子様役、凄く見たくなっちゃった!」
え~!?そりゃあ誉められたらのは嬉しいけど王子様役とか言われるとなんか勘違いしそうになるよ!いやまあ、台本なのは知ってるけどね?
「私もせっかくだしみたいわね。シンデレラ役はもともと優美にやって貰おうと思っていたけどいいかしら?」
「え!?亜由美じゃないの!?私全然下手だけど!」
「私は演出とか改稿とか他にも色々やることあるし、それに演技力についてはこれから鍛えるから心配しないで」
「う、うん、わかった!が、頑張る!」
今めちゃくちゃプレッシャーかけてましたね!親友でも容赦ないんすね。
「じゃあ林崎くん、じゃなくて王子様、よろしく!」
王子様とかマジで勘違いしそうになるよ!まあ台本だけど、台本なんだけど!(大事なことなので)
× × ×
「……。」
「……。」
台本を読み終わると静寂が訪れた。
というのは自分でもわかるくらい全然さっぱりうまく演じられなかったからである。
「さっきの素晴らしい演技はいったい…」
「た、たぶんだけど…王子様役って難しいんだよっ!」
優美は必死にフォローしてくれるが…。
「林崎くん、あなた女装癖とかあるのかしら…?」
「え!?そんなのないよ!?」
「実は女の子…?そうね、そうだったのね、それしかないわ」
亜由美がおかしくなった!これどうすればいいの!?
「あ、亜由美!?林崎くんは男の子だよ!?だって私かっこいいって思ったもん!」
ちょっ!かっこいいとか何普通に言ってるの!?…普通に嬉しい。
「かっこいい女性なんていくらでもいるじゃない!つまりそういうことよ!ああ、これじゃあまた振り出しね、台本、台本どうしょうかしら…女の子3人の台本…」
「亜由美~~!」
× × ×
結局15分ほど経った後、亜由美のこんらんがとけた!
「取り乱してしまってごめんなさい」
「いや、別に大丈夫だけど。そもそも俺が悪いんだし」
悪いってわけではないと思うが一応。
「とりあえず王子様役は俺しかいないんだから頑張るよ」
とにかく今はそういうしかない。かっこいい役とか難しいけどやるしかない。
…亜由美からの返事がない。
「…どうした?」
「…思いついたわ。」
「え?何を?」
「林崎くんがシンデレラ役、適役だわ」
はい…?
「王子様は…優美、あなたよ、頑張って」
「えぇ~!!」
冷静にはなっていたがまだ壊れてました。
「ちょ、ちょっと!それはないよ~!だって私、王子様役の林崎くんに好きとか結婚しようとか言われたかったもん!下手だったけどさっきので胸キュンしたもん!」
いや!そういうことなの!?合ってるけどおかしくない!?
と、優美は何か気がついたらしくピクッと体を動かしたあとゆっくりこっちを向いた。顔がみるみる赤くなっていく。と、次第にこっちに近づいてきた。
「ば、ばか~!!」
そう叫びながら両手で倒された。我々の業界…でもご褒美じゃないッスね!
その後本当に冷静になった2人からこれでもってくらい謝罪を受けました。