ソードアートオンライン ater & violaceus(一時休載中)   作:Nyan0726

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皆さん遅くなって申し訳ありません。Nyanです!

今回は題名からもわかる通り、シリカ編です。

拙い文章ですが、お楽しみ下さい!


009《竜使いの少女》

「ハァ……ハァ……」

 

暗い森に荒い呼吸の音が響く。その音の発生源は蒼い小竜を連れ、短剣を構えているツインテールの少女。彼女は今、《ドランク エイプ》という、左手に壺を持つゴリラのようなモンスター3体襲われている。

彼女のレベルは敵よりも少し上だ。しかし、厄介なことに、この《ドランク エイプ》はHPが減ると他の一体とスイッチし、回復してしまう。両手剣や、両手斧のような一撃が重い武器を使用していれば話は別だが、あいにく、彼女の使っている短剣にそのような火力はない。

そして、いよいよ彼女のHPが危険域(レッドゾーン)まで減ってしまった。

だが、突然視界がキラキラとした光に覆われ、HPが2割ほど回復する。

 

「ありがとう、ピナ。」

 

この、ピナと呼ばれている蒼い小竜は少女のお礼に対し『キュルルルル!』

という愛らしい鳴き声で返答する。

しかし、HPが少し回復したとはいえ、まだ危険である事に変わりはない。

そこで、回復ポーションを使用しようと、彼女は腰のポーチに手を伸ばす。

 

──………無い!?

 

と、次の瞬間、《ドランクエイプ》の攻撃によって、少女が後方へと吹き飛ばされ、木に叩きつけられる。少女は、その衝撃のせいで、よろけて立ち上がることができない。そこへ、《ドランクエイプ》の棍棒が少女めがけて勢い良く振り下ろされた。

少女は、目を瞑る。

しかし、少し経っても衝撃はこなければ、視界のHPバーも全く減らない。恐る恐る目を開けてみると少女の目の前には蒼い小竜が倒れ、やがて羽一本を遺し消滅した。

 

「ピナ! ピナッ!!!………うっ………うっ………」

 

森に少女の嗚咽が響く。

しかし、《ドラ(A)(I)イプ》はプレイヤーが泣き止むまで待ってくれるほど親切では無い。先程と同じ様に少女に向けて容赦なく棍棒が振り下ろされる………

 

……直前に、《ドランクエイプ》達が動きを止め、やがて3体同時に爆散した。

少女は驚き、顔を上げる。すると、髪の毛、防具、武器に至るまで紫色に染め上げられた少女が立っていた。

 

「大丈夫?」

 

紫色の少女は心配そうに問いかける。

 

「はい………ありがとうございます…」

 

「その羽は?」

 

「ピナです。」

 

「ピナ?………もしかして君はビーストテイマーなのかな?」

 

「はい。」

 

「そう……ごめんね。キミの友達、守れなくて。」

 

「いえ、助けて下さって有難うございます。」

 

「困った時はお互い様だよ。ところで、その羽、アイテム名って設定されてたりする?」

 

そう言われ、羽を人差し指でちょんっと突く。すると、羽からウィンドウが浮かび上がり、名前が表示された。

 

「《ピナの心》…………うっ……」

 

またも泣き出してしまった少女に向けて、紫色の少女は慌てながら言う。

 

「お、落ち着いて……《ピナの心》が残っていればまだ蘇生出来るかもしれないんだ。」

 

「えっ?………」

 

「えっとね、第47層にある思い出の丘に蘇生アイテムの花が咲くらしいんだよ。」

 

「47層………」

 

「ボクが行ってきてもいいんだけど、ビーストテイマー本人が行かないと咲かないらしいんだよね。」

 

「いえ、情報だけでもありがたいです。いつかレベルをあげて……「蘇生できるのはビーストテイマーが消滅してから3日以内なんだ……」

 

「そんな…………」

 

ビーストテイマーの少女はまた泣きそうになってしまう。

 

「だから、一緒に行こう!」

 

「え?」

 

「この装備があれば、レベルを10くらいは底上げ出来るはずだよ。」

 

そう言いながら紫色の少女はトレード画面に【イーボンダガー】や、【シルバースレッド・アーマー】などをヒョイヒョイと入れていく。

 

「え……どうしてここまで…」

 

「言ったでしょ?困った時はお互い様だよ、って。ボクはユウキ!よろしくね!」

 

紫色の少女改め、ユウキはとてもいい笑顔で言う。

 

「わ、私はシリカです!本当に、ありがとうございます!」

 

そう言い、二人は35層主街区【ミーシェ】へと歩きだした。

 

 

 

 

 

「おっ!シリカちゃん発見♪」

 

【ミーシェ】に着くとぽっちゃりとした明るい男性と、少し暗い雰囲気の痩せ細った男性が話しかけて来た。

なんとも対照的なコンビである。

 

「ねぇねぇ、俺達とパーティー組んでよ!好きな所連れてって上げるからさぁ〜!」

 

ぽっちゃりとした方がシリカをパーティーに誘う。

シリカは少し困惑した顔つきで

 

「ごめんなさい。暫くこの人と組むことにしたので………」

 

と言い、ユウキの方を指す。

ユウキは自分を見ている男達に ニコッ と微笑むと、ぽっちゃりとした方は顔を赤くし、遠くへ逃げ去って行く。痩せ細った方は慌ててぽっちゃりとした方を追いかけていく。

そんな様子を見て、二人は顔を見合わせ同時に フフッ と笑った。

 

「シリカは本当に人気者なんだね〜」

 

「いえ、どうせ、マスコット代わりに誘われているだけですよ。」

 

シリカは顔を俯ける。

 

「そういうユウキさんこそ、可愛いし、強いしで結構人気者なんじゃないですか?」

 

そう言いながら、シリカは俯けた顔を上げユウキの方を見る。

ユウキは……

 

()()ふぁ()()()

 

肉まんの様なものを美味しそうに頬張っていた。

それを見てシリカは

 

「ふふふっ……あははははは!」

 

と大きな声を上げて笑った。

──本当に、自由な人だなぁ…ユウキさんは。

 

「ふぉふぇんふぉふぇん、ふぁふふぁふぃいふぉふぉふぁふぁっふぁふぁふぁふい………」

 

「飲み込んでから!飲み込んでから喋ってください!」

 

シリカに言われ、ユウキは急いで口の中の物を飲み込む。

 

「ぷはっ!………ごめんごめん、懐かしい物があったからつい…」

 

「懐かしい物?」

 

「うん。これなんだけど…」

 

ユウキは自分の持っているあんまんの中身をあんこからクリームに入れ替えた様な食べ物を指差す。

 

「《タラン饅頭》っていう名前で、名前の通り第2層の【タラン】っていう街に売ってたんだよ!こっちにも支店があったみたい。」

 

ユウキはシリカにタラン饅頭の説明をしながら、これを初めて食べた時のことを思い出していた。

──そういえば、キリトと一緒にこれを初めて食べた時、かじり付いた途端クリームがすごい勢いで飛び出してきて顔にかかったんだっけ。その直後にアルゴが部屋に入って来て……あの誤解を解くのは大変だったなぁ……

 

「へぇ〜そうだったんですね。ところで、ユウキさんってホームどこなんですか?」

 

「第層だけど………戻るの面倒くさいからここの宿屋に泊まろうかな。」

 

「そうですか!ここのチーズケーキ美味しいんですよ!」

 

「チーズケーキ!!」

 

と、二人がはしゃいでいると不意に女性の声が耳に入って来た。

 

「あ~ら、シリカじゃない。無事に戻ってこれたのね。」

 

「…ロザリアさん……」

 

「あれ〜?あのちっちゃいトカゲはどうしたのぉ〜?もしかして……」

 

「ピナは死にました。でも、絶対に生き返らせてみせます!」

 

「ふ〜ん、【思い出の丘】に行くんだ〜。でも、あんたのレベルで攻略できるのぉ〜?」

 

「そんなに難しいダンジョンじゃないから大丈夫だよ。」

 

ユウキがシリカの肩の上に手を乗せ、ロザリアに向けて言う。

 

「なに?あんた。もしかして、あんたも誑し込まれたの?男だけじゃなく女まで誑し込むなんて、すごいわねぇ、シリカ。」

 

「もういいよ。行こう、シリカ。」

 

ユウキはロザリアに嫌気がさしたのか、はたまたチーズケーキが食べたいのか、もしくはその両方か、話を無理矢理打ち切って宿屋へ向かった。

 

 

「どうしてあんな事言うんでしょうか。」

 

宿屋の1階にある喫茶店でチーズケーキを待ちながらシリカはユウキに尋ねる。

 

「シリカはMMOはSAOが初めて?」

 

「は、はい。」

 

「そっか、ボクも初めてなんだ。それで、いつもコンビを組んでる人に聞いてみたことがあるんだ。そしたら『どんなMMOでも人格が変わるプレイヤーは多い。中には、進んで悪人を演じる人も居る。』らしいよ。」

 

と、ユウキはそれを言った張本人である、黒衣の剣士の声を出来る限り再現しながら言った。

 

「へぇ〜…」

 

と、納得するシリカ。そして、首を傾げる。

 

「そのコンビの人って女の人なんですか?」

 

「いや、男の人だよ。」

 

少し驚いた顔を見せるシリカ。

 

「いつからコンビ組んでるんですか?」

 

「SAOが始まった日からずっとかな。」

 

更に驚いた顔を見せるシリカ。そして、ニヤニヤしながらユウキに聞く。

 

「…その人のこと、好きなんですか?」

 

「えっ?いいいや、そそんな事無いよ…」

 

ユウキは顔を真っ赤に染め、慌てふためきながら答える。

 

「そそれにしても、チーズケーキ遅いなぁ〜。店員さーーん、チーズケーキまだですかー!」

 

シリカは フフッ と笑った。

 

 

 

 

 




皆様、お疲れ様でした!

今回はシリカが苦戦しているシーンから書きたかったので三人称視点でお送りしました。

次回は、出来るだけ早く上げたいのですが、ユウキの二つ名が決まらなくて困っています。
何か案がありましたら教えて下さると幸いです。

それでは、感想・アドバイスなどお願いしますm(__)m


To be continued...

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