ソードアートオンライン ater & violaceus(一時休載中) 作:Nyan0726
今回は題名からもわかる通り、シリカ編です。
拙い文章ですが、お楽しみ下さい!
「ハァ……ハァ……」
暗い森に荒い呼吸の音が響く。その音の発生源は蒼い小竜を連れ、短剣を構えているツインテールの少女。彼女は今、《ドランク エイプ》という、左手に壺を持つゴリラのようなモンスター3体襲われている。
彼女のレベルは敵よりも少し上だ。しかし、厄介なことに、この《ドランク エイプ》はHPが減ると他の一体とスイッチし、回復してしまう。両手剣や、両手斧のような一撃が重い武器を使用していれば話は別だが、あいにく、彼女の使っている短剣にそのような火力はない。
そして、いよいよ彼女のHPが
だが、突然視界がキラキラとした光に覆われ、HPが2割ほど回復する。
「ありがとう、ピナ。」
この、ピナと呼ばれている蒼い小竜は少女のお礼に対し『キュルルルル!』
という愛らしい鳴き声で返答する。
しかし、HPが少し回復したとはいえ、まだ危険である事に変わりはない。
そこで、回復ポーションを使用しようと、彼女は腰のポーチに手を伸ばす。
──………無い!?
と、次の瞬間、《ドランクエイプ》の攻撃によって、少女が後方へと吹き飛ばされ、木に叩きつけられる。少女は、その衝撃のせいで、よろけて立ち上がることができない。そこへ、《ドランクエイプ》の棍棒が少女めがけて勢い良く振り下ろされた。
少女は、目を瞑る。
しかし、少し経っても衝撃はこなければ、視界のHPバーも全く減らない。恐る恐る目を開けてみると少女の目の前には蒼い小竜が倒れ、やがて羽一本を遺し消滅した。
「ピナ! ピナッ!!!………うっ………うっ………」
森に少女の嗚咽が響く。
しかし、《ドラ
……直前に、《ドランクエイプ》達が動きを止め、やがて3体同時に爆散した。
少女は驚き、顔を上げる。すると、髪の毛、防具、武器に至るまで紫色に染め上げられた少女が立っていた。
「大丈夫?」
紫色の少女は心配そうに問いかける。
「はい………ありがとうございます…」
「その羽は?」
「ピナです。」
「ピナ?………もしかして君はビーストテイマーなのかな?」
「はい。」
「そう……ごめんね。キミの友達、守れなくて。」
「いえ、助けて下さって有難うございます。」
「困った時はお互い様だよ。ところで、その羽、アイテム名って設定されてたりする?」
そう言われ、羽を人差し指でちょんっと突く。すると、羽からウィンドウが浮かび上がり、名前が表示された。
「《ピナの心》…………うっ……」
またも泣き出してしまった少女に向けて、紫色の少女は慌てながら言う。
「お、落ち着いて……《ピナの心》が残っていればまだ蘇生出来るかもしれないんだ。」
「えっ?………」
「えっとね、第47層にある思い出の丘に蘇生アイテムの花が咲くらしいんだよ。」
「47層………」
「ボクが行ってきてもいいんだけど、ビーストテイマー本人が行かないと咲かないらしいんだよね。」
「いえ、情報だけでもありがたいです。いつかレベルをあげて……「蘇生できるのはビーストテイマーが消滅してから3日以内なんだ……」
「そんな…………」
ビーストテイマーの少女はまた泣きそうになってしまう。
「だから、一緒に行こう!」
「え?」
「この装備があれば、レベルを10くらいは底上げ出来るはずだよ。」
そう言いながら紫色の少女はトレード画面に【イーボンダガー】や、【シルバースレッド・アーマー】などをヒョイヒョイと入れていく。
「え……どうしてここまで…」
「言ったでしょ?困った時はお互い様だよ、って。ボクはユウキ!よろしくね!」
紫色の少女改め、ユウキはとてもいい笑顔で言う。
「わ、私はシリカです!本当に、ありがとうございます!」
そう言い、二人は35層主街区【ミーシェ】へと歩きだした。
「おっ!シリカちゃん発見♪」
【ミーシェ】に着くとぽっちゃりとした明るい男性と、少し暗い雰囲気の痩せ細った男性が話しかけて来た。
なんとも対照的なコンビである。
「ねぇねぇ、俺達とパーティー組んでよ!好きな所連れてって上げるからさぁ〜!」
ぽっちゃりとした方がシリカをパーティーに誘う。
シリカは少し困惑した顔つきで
「ごめんなさい。暫くこの人と組むことにしたので………」
と言い、ユウキの方を指す。
ユウキは自分を見ている男達に ニコッ と微笑むと、ぽっちゃりとした方は顔を赤くし、遠くへ逃げ去って行く。痩せ細った方は慌ててぽっちゃりとした方を追いかけていく。
そんな様子を見て、二人は顔を見合わせ同時に フフッ と笑った。
「シリカは本当に人気者なんだね〜」
「いえ、どうせ、マスコット代わりに誘われているだけですよ。」
シリカは顔を俯ける。
「そういうユウキさんこそ、可愛いし、強いしで結構人気者なんじゃないですか?」
そう言いながら、シリカは俯けた顔を上げユウキの方を見る。
ユウキは……
「
肉まんの様なものを美味しそうに頬張っていた。
それを見てシリカは
「ふふふっ……あははははは!」
と大きな声を上げて笑った。
──本当に、自由な人だなぁ…ユウキさんは。
「ふぉふぇんふぉふぇん、ふぁふふぁふぃいふぉふぉふぁふぁっふぁふぁふぁふい………」
「飲み込んでから!飲み込んでから喋ってください!」
シリカに言われ、ユウキは急いで口の中の物を飲み込む。
「ぷはっ!………ごめんごめん、懐かしい物があったからつい…」
「懐かしい物?」
「うん。これなんだけど…」
ユウキは自分の持っているあんまんの中身をあんこからクリームに入れ替えた様な食べ物を指差す。
「《タラン饅頭》っていう名前で、名前の通り第2層の【タラン】っていう街に売ってたんだよ!こっちにも支店があったみたい。」
ユウキはシリカにタラン饅頭の説明をしながら、これを初めて食べた時のことを思い出していた。
──そういえば、キリトと一緒にこれを初めて食べた時、かじり付いた途端クリームがすごい勢いで飛び出してきて顔にかかったんだっけ。その直後にアルゴが部屋に入って来て……あの誤解を解くのは大変だったなぁ……
「へぇ〜そうだったんですね。ところで、ユウキさんってホームどこなんですか?」
「第層だけど………戻るの面倒くさいからここの宿屋に泊まろうかな。」
「そうですか!ここのチーズケーキ美味しいんですよ!」
「チーズケーキ!!」
と、二人がはしゃいでいると不意に女性の声が耳に入って来た。
「あ~ら、シリカじゃない。無事に戻ってこれたのね。」
「…ロザリアさん……」
「あれ〜?あのちっちゃいトカゲはどうしたのぉ〜?もしかして……」
「ピナは死にました。でも、絶対に生き返らせてみせます!」
「ふ〜ん、【思い出の丘】に行くんだ〜。でも、あんたのレベルで攻略できるのぉ〜?」
「そんなに難しいダンジョンじゃないから大丈夫だよ。」
ユウキがシリカの肩の上に手を乗せ、ロザリアに向けて言う。
「なに?あんた。もしかして、あんたも誑し込まれたの?男だけじゃなく女まで誑し込むなんて、すごいわねぇ、シリカ。」
「もういいよ。行こう、シリカ。」
ユウキはロザリアに嫌気がさしたのか、はたまたチーズケーキが食べたいのか、もしくはその両方か、話を無理矢理打ち切って宿屋へ向かった。
「どうしてあんな事言うんでしょうか。」
宿屋の1階にある喫茶店でチーズケーキを待ちながらシリカはユウキに尋ねる。
「シリカはMMOはSAOが初めて?」
「は、はい。」
「そっか、ボクも初めてなんだ。それで、いつもコンビを組んでる人に聞いてみたことがあるんだ。そしたら『どんなMMOでも人格が変わるプレイヤーは多い。中には、進んで悪人を演じる人も居る。』らしいよ。」
と、ユウキはそれを言った張本人である、黒衣の剣士の声を出来る限り再現しながら言った。
「へぇ〜…」
と、納得するシリカ。そして、首を傾げる。
「そのコンビの人って女の人なんですか?」
「いや、男の人だよ。」
少し驚いた顔を見せるシリカ。
「いつからコンビ組んでるんですか?」
「SAOが始まった日からずっとかな。」
更に驚いた顔を見せるシリカ。そして、ニヤニヤしながらユウキに聞く。
「…その人のこと、好きなんですか?」
「えっ?いいいや、そそんな事無いよ…」
ユウキは顔を真っ赤に染め、慌てふためきながら答える。
「そそれにしても、チーズケーキ遅いなぁ〜。店員さーーん、チーズケーキまだですかー!」
シリカは フフッ と笑った。
皆様、お疲れ様でした!
今回はシリカが苦戦しているシーンから書きたかったので三人称視点でお送りしました。
次回は、出来るだけ早く上げたいのですが、ユウキの二つ名が決まらなくて困っています。
何か案がありましたら教えて下さると幸いです。
それでは、感想・アドバイスなどお願いしますm(__)m
To be continued...