インフィニット・ストラトス Re:Dead《完結》 作:ひわたり
ある日。
フランスにて。
僕は完成した建物を見上げていた。
僕自身が手を出したわけではないが、これが感無量という感情だろうか。
「おい、シャルル。これで良いか?」
「ええ、ありがとうございます」
これを建ててくれた大工さんに礼を述べる。大工さんだけでなく、町の人々が手伝ってくれて完成した。
「いやー、完成したな」
「良かった良かった」
小さい作りだが、しっかりとした建物だ。十分に満足である。
「なぁに、この町に医者が来てくれたんだ。俺逹だって嬉しいことさ」
「医者といっても、この腕ですからね。手術とかだと結局隣町ですよ」
「そこまで期待してねぇよ。風邪とかでも使えるなら便利だろ」
「そうそう。少しのことでも見てくれるだけで随分違うからね」
町の人達はそう言って笑ってくれる。それが少しばかり小っ恥ずかしい。
「おーい、シャルルくん」
「あ、どうも」
カフェの旦那さんが家族を連れてやってきた。
ここに帰ってきた時を思い出す。
一番初めに顔を出した。何も言わずに消えてしまったので、殴られるのを覚悟していた。僕の顔を見て、彼はコーヒーカップを落とした。
僕が何かを言う前に、彼は僕を抱き締めてくれた。
カップの音に驚いた奥さんと子供も顔を出し、僕を見て更に驚いた。そして、家族総出で僕を抱き締めた。
後に聞いたことだが、その日に割ったカップは店主のお気に入りだったらしく、僕はかなり申し訳ない気持ちになった。
「君との再会に比べたら大したことはないさ」
その台詞を聞いた時、僕は一生この人に頭が上がらないと思った。
どうも僕は割と有名だったのか、やたら町の人に歓迎された。色々な意味で。単純に日本人というだけで目立っていたのかもしれないが、覚えてくれていたというのは、とても嬉しいことだった。
「どうした?」
少し前のことを懐かしんでいると、彼は首を傾げた。
僕は何でもありませんと答え、子供に振り返る。二人とももう小学生くらいの子供だ。男兄弟であるが、親が親だけに、多分大きく育つだろう。
「此処がシャルルくんの病院か」
「ええ。病気でなくとも、気軽に来て下さい」
僕はかつて僕達が住んでいた空地に小さな病院を建てた。
そして、医者として此処で過ごしていく。
「毎日通うぞ」
「働いて下さいよ」
「まさか、体の弱いお前に働けと言われる日が来るとは」
町の人達が笑う。
いや、そりゃ体弱かったけど、というか弱いけど、皆して笑うことないじゃないか。
「お、愛しの奥方逹も来たぞ」
「俺の所は鬼嫁だぜ」
「チクッてやるよ」
「馬鹿!やめろてめえ!」
男達が騒ぐ中、道の向こうへ視線を向ければ、シャルロットが歩いてくるのが見えた。シャルロットの他にも女性達が荷物を持ってやってきている。
病院開設記念にパーティを開くと言っていたが、結構な人数になりそうだ。
シャルロットに向かって僕は右手を大きく振った。
シャルロットも僕へと手を振り返す。
そして、シャルロットの後ろに付いている子供も手を振り返してくれた。
まだ小さな僕達の子供。
まだ小さなその手。
これから未来を生きて行く子供逹。
その子供達を支えていく大人達。
医者という立場で、その少しでもその役に立とう。
この世に生まれた恩義を返す為に。
生きている人達に祝福を。
死んだ者達に安らぎを。
僕は此処で生きている。
愛しい人逹と共に生きて行く。
僕達は、此処にいる。
FIN