聖十字の盾の勇者   作:makky

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神聖なるもの

―来客室―

 

 通された来客室には四人分の豪華なベッドが用意されており、四人はそれぞれのベッドを決めて座っていた。熱心に自身の『伝説の武器』とやらを確認している。

 視界の中に存在しない物が映るのは違和感しかないが、これでしか武器の性能確認ができないので諦めるしかない。何かと使うことが多くあるだろうし、使い慣れておくようにしておくべきだろう。

 

 説明によると

 

 ・この武器は整備が必要とされない特殊なもの

 ・使用者の練度、『レベル』と武器に組み込むことができる物質、そして『モンスター』を倒すことによって『ウェポンブック』とやらが埋まっていく

 ・ウェポンブックとは、武器がどの系統に変化させられるかという『変化できる武器の種類』を記載される一覧表のこと

 

 とされている。

 

(確認したウェポンブックとやらはすべて『変化不可能』になっていた。今後の戦いなどで変化できるというわけか。)

 

 何とも面倒なものだと思った。何より使用者の練度によって武器の性能が変化するのが厄介だった。これが銃剣にも適用されていると、完全な力を発揮できない可能性があった。確認事項が更に増え、思わず頭を抱えたくなる。

 

「なあ、これってさゲームじゃね? 俺は知ってるぞ、こんな感じのゲーム」

 

 キタムラが顔を上げ得意気に言う。

 

「え?」

「というか有名なオンラインゲームじゃないか、知らないのか?」

「いや、俺も結構なオタクだけど知らないぞ?」

「お前しらねえのか? これはエメラルドオンラインってんだ」

「何だそのゲーム、聞いたことも無いぞ」

「お前本当にネトゲやったことあるのか? 有名タイトルじゃねえか」

「俺が知ってるのはオーディンオンラインとかファンタジームーンオンラインとかだよ、有名じゃないか!」

「なんだよそのゲーム、初耳だぞ」

「え?」

「え?」

「皆さん何を言っているんですか、この世界はネットゲームではなくコンシューマーゲームの世界ですよ」

「違うだろう。VRMMOだろ?」

「はぁ? 仮にネトゲの世界に入ったとしてもクリックかコントローラーで操作するゲームだろ?」

 

(ゲーム?そういえば孤児院の子どもたちが話をしていたことがあったような…それのことを言っているのか?)

 

 どうやら三人の中でこの世界の認識にズレが有るようだ。いずれにせよゲームが前提のようだが。

 

「クリック? コントローラー? お前ら、何そんな骨董品のゲームを言ってるんだ? 今時ネットゲームと言ったらVRMMOだろ?」

「VRMMO? バーチャルリアリティMMOか? そんなSFの世界にしかないゲームは科学が追いついてねえって、寝ぼけてるのか?」

「はぁ!?」

 

 話が堂々めぐりし始めそうだ。

 

「あの……皆さん、この世界はそれぞれなんて名前のゲームだと思っているのですか?」

 

 カワスミが手を挙げながら確認する。

 

「ブレイブスターオンライン」

「エメラルドオンライン」

「生憎とそちらには明るくなくてな、答えられん」

 

 空想世界、と言うか妄想を固めたような印象は受けたが実際知らないのだから答えようがない。

 

「あ、ちなみに自分はディメンションウェーブというコンシューマーゲームの世界だと思ってます」

 

(コンシューマー?VRMMO?ネット、とは確かパソコン関連の用語だったな。確かマクスウェルが使っていたような…)

 

 曰く『慣れるまではたしかに大変だが、便利なのは確実だ。どこかの誰かが必要以上の経費を使っていてもすぐに修正できるからな』ということらしい。少し怒気をはらんで言ってはいたが。

 

 「まてまて、情報を整理しよう」

 

 流石に混乱したのか、キタムラが額に手を当てながら他の三人を窘める。

 

「錬、お前の言うVRMMOってのはそのまんまの意味で良いんだよな?」

「ああ」

「アンデルセン、はともかく樹、お前も意味は分かるよな」

「SFのゲーム物にあった覚えがありますね」

「言わんとしていることはなんとなく分かるがつまり、あー、ファンタジーと言うのか?アレのようなことと思えばいいか?」

「そうだな。俺も似たようなもんだ。じゃあ錬、お前の、そのブレイブスターオンラインだっけ? それはVRMMOなのか?」

「ああ、俺がやりこんでいたVRMMOはブレイブスターオンラインと言う。この世界はそのシステムに非常に酷似した世界だ」

 

 アマギの話を参考にすると、VRMMOとは『仮想現実大規模多人数オンライン』という正式名称で簡単に言うとネットとやらに現実と異なる世界を作りそれを同時に多数の人間が遊ぶゲームらしい。アマギにとって当たり前のようにある技術で、脳波を認識して人々はコンピューターの作り出した世界へ入り込む事ができるらしい。

 

「それが本当なら、錬、お前のいる世界に俺達が言ったような古いオンラインゲームはあるか?」

 

 キタムラが確認する。が、アマギは首を横に振る。

 

「これでもゲームの歴史には詳しい方だと思っているがお前達が言うようなゲームは聞いたことが無い。お前達の認識では有名なタイトルなんだろう?」

 

 キタムラが頷く。日本人だからかそういった方面には明るいだろうし、何よりこの状況で嘘をつく利点はない。

 

「じゃあ一般常識の問題だ。今の首相の名前は言えるよな…アンデルセンは日本の首相は分かるか?」

「ああ、一応知っている」

 

 これでも先進国の状況判断が重要な場所に所属していた。最低限の情報は把握している。

 

「一斉に言うぞ、せーの」

 

「湯田正人」 

「谷和原剛太郎」

「小高縁一」

「壱富士茂野」

 

「「「……」」」

(なるほど、な)

 

 四人が四人とも異なる結果になった。どうやら違う世界なのは、連れてこられたここだけでは無さそうだ。

 

「どうやら、僕達は別々の日本、と言うより世界から来たようですね」

「そのようだ。間違っても同じ世界から来たとは思えない」

「という事は異世界の地球も存在する訳か」

「時代がバラバラの可能性もあったが、幾らなんでもここまで符合しないとなるとそうなるな」

 

 アンデルセン以外は違う日本から来たことになる。そうするとますます自分がここにいる理由が分からない。

 

「このパターンだとみんな色々な理由で来てしまった気がするのだが」

「あんまり無駄話をするのは趣味じゃないが、情報の共有は必要か」

 

 趣味の問題なのか、ただ背伸びしているだけなのか。上からの物言いでアマギが話し始める。

 

「俺は学校の下校途中に、巷を騒がす殺人事件に運悪く遭遇してな」

「かなり刺激的だな、それは」

「まあな。それで一緒に居た幼馴染を助け、犯人を取り押さえた所までは覚えているのだが」

 

 どうやら脇腹を刺されたらしく、さすりながら説明する。

 犯人を取り押さえてもみ合いになっている時、ナイフか何かでやられたようだ。

 

「そんな感じで気が付いたらこの世界に居た」

「なるほど、自己犠牲でその幼馴染とやらを助けたのか。誇れることだな」

 

 素直に感心すると当然だ、という顔で笑う。少々図に乗りやすい性格だな。

 

「じゃあ次は俺だな」

 

 軽い感じでキタムラが自分を指差して話し出す。

 

「俺はさ、ガールフレンドが多いんだよね」

「…そうか」

 

 純粋に呆れる。自らの不貞を明かす、ここへ来た原因だとしてもカトリックの神父からみて(たしな)めるべきかもしれないが、こいつはカトリックどころかキリスト教徒でもない。それに、言った所でここに来る前の事なのだから無意味だ。

 

「それでちょーっと」

「二股三股でもして刺されたか?」

 

 アマギが小バカにするように尋ねる。

 するとキタムラは目をパチクリさせて頷いた。

 

「いやぁ……女の子って怖いね」

「…そうか」

 

 先程と同じ受け答えをしてしまったアンデルセンを誰が責められるだろうか。もう言葉も無い、反省しているようには見えないのでこちらでも同じことをしそうだ。

 

 次にカワスミが胸に手を当てて話し出す。

 

「次は僕ですね。僕は塾帰りに横断歩道を渡っていた所……突然ダンプカーが全力でカーブを曲がってきまして、その後は……」

「「……」」

「三人の中で一番理不尽な理由だな、それは」

 

 轢かれてしまったわけだ、不幸だな。

 

「最後は俺か、と言ってもお前たちと同じだ。お前たちと違って、俺は間違いなく死んだのだがな」

「確かに僕たちは正確に死んだことを覚えていませんね」

 

 あの時、自分の右手が崩れてゆくのを確かに感じた。あれは確かに死の感覚だった。

 

「死因は…神父をしているといったがその関係でな」

「神父ってそんなに危険な仕事なのか…」

 

 アマギが驚いたように聞いてくる。本当のことを言っても信じられ無いだろうし、たとえ信じそうだったとしても言う必要はないだろう。

 

「つまり、俺以外はこの世界の決まりやなんかは把握しているわけだな?」

「ああ」

「やりこんでたぜ」

「それなりにですが」

 

 なるほど、一歩どころか二、三歩出遅れているわけか。

 

「ふむ…ヘルプとやらでも探すのに限界があるな…ん?」

 

 ふと顔を上げるとアマギは冷酷に、キタムラとカワスミは何故かとても優しい目でアンデルセンを見つめる。

 

「よし、元康お兄さんがある程度、常識の範囲で教えてあげよう」

「そう言うのは、にやけ顔をやめてから言うと印象が良くなるぞ」

 

 何かを企んでいるようだが、知っているのなら教えてもらったほうが楽だろう。

 

「まずな、俺の知るエメラルドオンラインでの話なのだが、シールダー……盾がメインの職業な」

「ふむ」

「最初の方は防御力が高くて良いのだけど、後半に行くに従って受けるダメージが馬鹿にならなくなってな」

「ほうほう」

「高Lvは全然居ない負け組の職業だ」

「まあ、納得できるなそれは」

 

 どう考えても盾だけで戦うなど、基本すらできていないことはよく分かる。盾を使わないアンデルセンでも理解できる結果だ。

 

「…驚かないんだな?」

「そもそも盾は武器と組み合わせて使うものだ。単独で使うなど聞いたことがないからな」

「まあ、ゲームの話だしな」

 

 それもそうか、と一人納得する。

 

「ちなみに武器の変化とやらは何かあったのか?」

「転職のことか?残念だが不人気すぎてその系統自体がなくてな。スイッチジョブもないゲームだったし」

「スイッチジョブ?」

「別の系統職になれるジョブのことだ」

「あぁ、それこそ剣や槍、弓に変更できるということか」

「そんな感じだな」

 

 つまり、盾という武器は

 

「ハズレとまでは言わんがかなり苦労することになる、と。お前たちの方はどうだ?」

「悪い……」

「同じく……」

「なるほど」

 

 大体は把握したが、これではますます銃剣(バイヨネット)の存在が重要になってくる。本数もそこまで多いわけではないから、基本は切りつけでの攻撃になるな。

 アンデルセンが考え込んでいると、他の三人はそれぞれのゲームの話題で話を咲かせる。

 

「地形とかどうよ」

「名前こそ違うが殆ど変わらない。これなら効率の良い魔物の分布も同じである可能性が高いな」

「武器ごとの狩場が多少異なるので同じ場所には行かないようにしましょう」

「そうだな、効率とかあるだろうし」

(相変わらず考えが甘いな)

 

 ゲームの中に入ったと思い込んでいるのか、逆に自分がそれを理解していないだけか。どちらにせよモンスターとやらを確認する必要性は変わらないようだ。

 

明日(あす)からの行動が重要というわけだ、お前たち以上にな」

 

 三人が乾いた笑みを浮かべているが、事実なのだから仕方がない。

 

「勇者様、お食事の用意が出来ました」

 

 案内役が部屋に入ってきてそう伝えた。

 

「ああ」

 

 全員が扉を開け、そのまま騎士団の食堂に招待された。

 

―食堂―

 

 高い天井、吊るされたシャンデリア、三列に並べられた長い机の上には、いわゆるセルフ方式の食事が用意されていた。

 

「皆様、好きな食べ物をお召し上がりください」

「なんだ。騎士団の連中と同じ食事をするのか」

 

 何故だか知らないが、騎士団の連中を見下した発言をするアマギ。

 

「そういう風に言うものではないな、少なくとも俺達が来る前に波を食い止めたのだろう?経験は俺達より上だぞ」

 

 騎士というのは何かとメンツや誇りを気にする。関係が悪化すると動きにくくなる、それは両方に悪影響だろう。

 

「そういうものか?」

「お気になさらなくて大丈夫ですよ。それに、こちらにご用意した料理は勇者様が食べ終わってからの案内となっております」

 

 いつの間にか、城での優先順位の頂点にいるらしい。粗相でもして世界を救わないなどとなったら目も当てられないので、当然といえば当然だ。

 

「それなら、ありがたく頂こう」

「ええ」

「そうだな」

 

 それぞれが席につき食事を始める。

 

「主、願わくはわれらを(しゅく)し、また主の御恵(おんめぐみ)によりて

われらの食せんとするこの賜物(たまもの)を祝したまえ。

われらの主キリストによりて願い(たてまつ)る。 AMEN

聖父(ちち)聖子()聖霊(せいれい)との御名(みな)によりて。 AMEN」

 

 十字を切りながら食前の祈りをし、食べ始めようと周りを見るとほぼ全員が唖然としていた。

 

「どうした、早く食べんと冷めるぞ?」

「え…と、アンデルセンさん。今のは?」

「ん?ああ、食前の祈りだ。お前たちが頂きますというように、キリスト教では食前と食後に祈りを捧げるのだ」

「祈りのセリフは全部覚えているのですか?」

「当然だ、毎食毎食言うのだからな。」

 

 何を当たり前なことをと思うが、そういえば由美江が言っていたな。日本人は食材そのものに感謝して食事すると。唯一感心できる習慣だが、それは主よりもたらされたものなのだから、主への感謝は当然行うものであろう。

 なんとも言えない空気になったが、当の本人は何事もなかったように食事を始め、思い出したかのように三人も食事を食べ始めた。

 

「とこしえにしろしめたもう全能の天主、

数々の御恵(おんめぐ)みを感謝し(たてまつ)る。 AMEN

願わくは死せる信者の霊魂(れいこん)

天主の(おん)あわれみによりて安らかに(いこ)わんことを。 AMEN」

 

 食後の祈りも驚かれたが、いちいち反応していてはキリがないのでそのまま食堂をあとにする。

 

―来客室―

 

 食事を終え部屋に帰ると疲れが出てきたのか三人は寝る用意を始めた。

 

「風呂とか無いのかな?」

「中世っぽい世界だしなぁ……行水の可能性が高いぜ」

「言わなきゃ用意してくれないと思う」

「まあ、一日位なら大丈夫か」

「そうだろ。眠いし、明日は冒険の始まりだしサッサと寝ちまおう」

 

 キタムラの言葉に二人はベッドに入る。

 

「あれ、アンデルセンさんどちらへ?」

「就寝前の祈りだ、流石にうるさいだろう」

 

 本当は祈りの時の視線が鬱陶しいからなのだが、言うと余計にうるさくなるので言わないでおく。

 

―王城廊下の大窓前―

 

 夜空を映し出す大きな窓、月が昇り神聖な雰囲気を醸し出している。

 

「イエス、マリア、ヨセフ、心も体も御手(みて)にゆだね(たてまつ)る。

イエス、マリア、ヨセフ、臨終の苦しみの時にわれらを助けたまえ。

イエス、マリア、ヨセフ、永遠の(いこ)いを迎える恵みを与えたまえ。

聖父(ちち)聖子()聖霊(せいれい)との御名(みな)によりて。 AMEN」

 

 膝をつきロザリオを握り祈りを捧げる。この地に来たのも、主のお導きによるものなのかもしれない。

 だとしたら、主はこの世界を救うことを望まれておられるのだろうか。

 信徒無き、審判の時を迎えようとしているこの世界を。

 

「…主よ、我を導きたまえ。

救い無き我に導きを…」

 

 道なき子羊、羊飼から見放されたような弱き者。それが今のアレクサンド・アンデルセンだった。

 

「…誰だ?」

 

 ふと、右側から視線を感じる。監視しているわけでもなく、ただ見ているという視線が。

 立ち上がって右を見ると青い髪を左右で縛っている(ツインテールの)少女が立っていた。

 

「こんな時間に何をしている、子どもは寝る時間だぞ。と言うか、この城は夜に子どもが徘徊できるのか。」

 

 杜撰というか、気が抜けているというか。仮にも王城なのにこれで大丈夫なのか?などと思っていると少女が口を開いた。

 

「別にどこにいても構わないでしょう、私の住んでいるお城なのだから」

「ここに住んでいる?…ああ、なるほど」

「むしろ貴方の方こそ、ここで何をしているのよ!見慣れない顔だけれど」

「今日ここに連れてこられた『勇者』らしいからな。お前の父親がそう言っていたぞ、王女様?」

「え、なんで分かったの?」

「なんとなくだ」

 

 基本的に城には警備の兵士や住み込みの召使などが住んでいるが、まだ小さい子どもが住み込みできるほど人手が足りないようには見えないし、何より夜自由に歩き回れるのは王族ぐらいのものだろう。アンデルセンはそう決めつけた。

 

「と言うか連れてこられた?じゃあ貴方が伝説の?」

「盾の勇者だそうだ、面倒なことにな」

 

 何気なしにそう答えた。

 

「え、貴方盾の勇者なの?」

「なんだ、意外そうな声を出して」

「あ、いや。なんでもないわ(おかしいわね、お父様やお姉様が言っていたような悪魔には見えないけど)」

(…悪魔?)

 

 とても小さな声で、しかし確かに少女は『悪魔』と言った。

 

「それより何をしていたのかだな」

「そ、そうよ。こんな廊下の真ん中で何していたの?」

 

 先程までの警戒心は多少和らいだらしく、少女は質問をしてくる。

 

「お祈りだ」

「お祈り?なんのお祈りをしていたの?」

「『今日一日無事に過ごせました、感謝いたします』というお祈りだ。寝る前に天を見ながら捧げようと思ってな」

「ふーん、不思議な事をするのね。三勇教じゃあ特になにもしないのに」

(三勇教?)

「あ、もうこんな時間。そろそろ帰らないと」

「ああ、そうしろ。夜遅くまで起きていると、からだに悪いぞ王女様」

「分かっているわよそんなこと!あと、私にはちゃんと『メルティ=メルロマルク』って言う名前があるのよ!」

「今初めて聞いたが、まあいい。お休みメルティ嬢」

「お休みなさい、えっと…貴方の名前知らないんだけど!」

「騒がしいな、アンデルセンだ」

「そう、じゃあお休みなさいアンデルセン!」

「ああ」

 

 そう言って少女は廊下を走っていった。

 

「…思わぬ収穫があったな」

 

 メルティが言っていた『三勇教』、そして自分を『悪魔』と読んだこと、どうやら順風満帆な出だしにはなりそうにもない。

 

「全ては御主のお導きのままに」

 

 再び祈りを捧げ、アンデルセンは来客室に戻り眠りについた。

 

 明日から始まる、不確定な未来を乗り越えるために


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