二度目の中学校は”暗殺教室”   作:暁英琉

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食べ物だって、やりよう次第なのである

「それでは授業はここまで。みなさん昼食に入りましょう」

 

 殺せんせーが教科書を閉じるのを合図に各々が弁当を取り出したり、机をくっつけたりし始める。

 俺の席の周りにもだいたい毎回倉橋とか矢田あたりが来て姦しくなるのだが、今日はなかなか珍しいやつが弁当を持ってやって来た。

 

「比企谷君、一緒に食べても大丈夫ですか?」

 

 青基調の包みを手にした磯貝に思わず首をかしげる。E組のクラス委員ということもあり、なんだかんだ話すことも多いが、昼食を提案されるのは初めてだった。いつもはだいたい前原や片岡、岡野といった最前列組で食べている印象なのだが。

 

「前原の奴、昨日付き合ってた子に振られちゃったらしくって、少しそっとしておきたいんですよ」

 

「ああ、なるほど」

 

 そういえば、クラスのムードメーカーたる女たらし野郎前原が朝からやけに静かだったと気づいた。そっか、振られたのか。というか、六月くらいにも振られたとか言ってなかった? どんだけとっかえひっかえなの?

 初めてではないとはいえ、失恋ってやつは辛いのに変わりはないのだろう。後でマッカンでもおごって――

 

「ま、どうせすぐに別の子と付き合うでしょうけどね」

 

 やっぱやめた。なんだあのリア充絶対慰めたりしねえ。

 ブスッと顔をゆがめた俺に磯貝は苦笑しながら、菅谷の席を持ってきて腰を下ろす。包みを開きだしたので、俺も自分の弁当を引っ張り出した。当然、マイプリティシスター小町のお手製弁当である。今日は生姜焼きがメインディッシュのようだ。最近は俺の食欲が増してきているせいか、弁当に肉料理が入ることが多くなってきた。八幡、お肉すきー。

 生姜焼きにもいろいろ種類があるが、我が家の生姜焼きは豚バラを使ったものだ。薄いから必然的に柔らかくて食べやすいし、ご飯の上に乗っけて生姜焼き丼にするのにも適している。前に定食屋でロースの少し厚めの肉が出てきたときは自分の知識とのギャップに冗談ではなく目玉が飛び出そうになった。いや、さすがに冗談。あれはあれで食べ応えあって美味かったけどね。

 一切れ摘まんで口に運ぶと、舌の上で食べ慣れた醤油の味と、鼻に通る生姜の風味が広がる。柔らかい豚バラ肉からあふれ出た旨味が舌を喜ばせてきて、自然と唾液が分泌される。

 ここで白米を口に運ぶと、冷ましたことで少し硬くなっている白米に醤油ダレが絡まってまたおいしいのだ。さすが小町の生姜焼き。一度で二度おいしいなんて八幡的にポイント高い。

 

「……ん?」

 

 思わずほころんでしまう顔をわずかに上げると、向かいの弁当が目に映る。磯貝のそれも男子向けらしいボリュームのあるもので、メインディッシュはハンバーグのようだが、どことなく白いような……? 豆腐ハンバーグだろうか? あれって水抜きが面倒だって小町が言っていたな。それを弁当に使うなんて、こいつんちの母親すげえな。

 いや待て。なんかこれ、ただの豆腐ハンバーグじゃなくないか? ひょっとしておからハンバーグだろうか。どの道大豆な件。まあ、畑の肉って言うしね!

 

「ずいぶんヘルシー志向なんだな」

 

 ぼそりと呟いた俺に一瞬キョトンとした磯貝は、俺の視線の先にあるおからハンバーグ(たぶん)に気づき、嬉しそうにニッと笑った。

 

「栄養価高いですからね、ぬかバーグ」

 

「まあ、確かにおからは……ん?」

 

 んん? 今なんて言いましたこの子。ぬか……バーグ? ぬ、か……?

 

「ぬかって……米糠のことか……?」

 

 米糠とは米を精米して白米にする段階で出る部分のことである。つまり、玄米-白米の部分。日常生活では糠漬けなんかで使われる程度のはずだが……。

 

「そうですよ。ぬかに少量の水とつなぎ代わりのおからを混ぜて焼くんです。栄養価も高いし、何より知り合いの米屋さんから無農薬の米糠をもらっているから実質タダ! おからと調味料代しかかからない家計にも優しい料理なんですよ!」

 

 う、うん……なんか力説されても困るのだが。というかこれ、お前が作ったのか。確かに玄米が元なのだから栄養価が高いのもわかるし、玄米部分に溜まりやすい農薬などの人体には害になる物質も無農薬のものをもらうことで、極力回避しているのもわかる。

 ……けど、そこまでして食べたくはないぞ?

 

「諦めた方がいいですよ、比企谷君。磯貝君は金額的なことに関しては我を失ってしまうところがあるので……」

 

 口を開きかけた俺に、前原の近くにいるのがいたたまれなくなったのか磯貝同様やってきた片岡がため息交じりに諭してきた。その目は、もう諦めてしまったように力がない。ああ、お前も色々がんばったんだね……。

 磯貝の家は一昨年に父親を事故で亡くしてしまい、母親がパートで磯貝も含めた三兄弟を養っているらしい。しかし、さすがに三人分の学費、しかも一人は私立に通っている子供の養育費をパートだけで補うのは難しい。

 そんな母親を助けるために、校則違反であるアルバイトをしているところを見つかり、E組に落とされたのだそうだ。そうして貧乏生活を送っている過程で、節約技術や安価な食べ物への知識も増えていったのだと言う。縁日の金魚とか。

 

「試しに食べてみてくださいよ! 案外おいしいんですよ!」

 

「……じゃあ一口」

 

 そっと箸を伸ばしていつもの自分の一口よりも一回り小さいサイズを切り出す。口の中に入れて噛みしめてみると――なるほど。塩こしょうをベースにしたシンプルな味付けだけど、おからのアクセントもいい感じに噛み合ってなかなか食べ応えのある味だ。

 

「……美味いな」

 

 うん、お世辞抜きで美味いと言えるだろう。ぬかバーグを飲み込んで発した俺の感想に、磯貝の表情が明るくなる。普段は割と大人びた印象だが、こいつもなんだかんだ中学生らしい表情をすることが多くて兄貴分としては見ていて楽しい。

 ただ……。

 

「じゃあ、お礼に生姜焼きやるよ」

 

「いいんですか!」

 

 俺の弁当から生姜焼きを受け取った委員長は、そっと匂いを嗅ぎ……震えだした手を押さえてゆっくりと豚バラ肉を口に運んだ。目を閉じて一噛み一噛みをじっくり味わうように噛みしめていた磯貝は、名残惜しそうにゴクリと嚥下した。

 

「美味い、美味いです……」

 

 その一言に全E組が涙した。そうだよね、本来なら普通の肉が食いたいよね。

 また磯貝に弁当を分けてあげよう。というか、磯貝の家に食べ物のおすそ分けとかできないか小町と相談しようかと、割と真剣に考えることになった昼休みだった。

 

 

     ***

 

 

「八幡さん、E組のLINEグループに茅野さんからのチャットが来ています。どうやら緊急のようです」

 

「ん?」

 

 机に向かって今週勉強した内容の復習をしていた土曜日の夕暮れ時。律の声に身体をひねると、ベッド脇に置いたままだったスマホの画面を律がLINEの画面に変えているところだった。自分でアプリ起動する手間がないし、Siriちゃんより断然有能だからいいけどさ、やっぱりあんまり勝手にうちのスマホちゃんを操作するのはやめてほしいなって。

 まあ、言っても無駄なのはわかりきっているので、小さくため息をついてベッドに腰を下ろす。手を伸ばして内容を確認すると、プリンのアイコンが一番最新に表示されていた。

 

 

茅野カエデ

 (私から暗殺計画の提案があるので、明日は八時に学校に来てください!)

 

 

「ほう」

 

 思わずうなってしまった。茅野と言えば、過去の暗殺においてのあまり前に出るタイプではなかったと記憶している。訓練での成績も下位組で、そのせいか常に支援役に回っていた。どちらかというとマネージャーのような印象だ。

 そんな茅野からの暗殺の提案……なるほど、どうやらずっと機を狙っていたらしい。

 

「しかし、日曜に学校か……」

 

「お嫌ですか?」

 

 そりゃあ嫌に決まっている。なんてったって日曜には良い子の週一の楽しみニチアサが待っているのだ。それを返上して学校に行きたいなんて学生がはたしているだろうか? ……いるよね。そりゃあね。

 

「ま、暗殺のためなら行くしかないだろ」

 

 そのためにわざわざ椚ヶ丘に足を運んでいるんだし、とフリック操作で了承の返事を打ち込む。

 

 

茅野カエデ

 (あ、比企谷君はマッカン持ってきてね!)

 

 

 (りょうかおい!)

 

 

 絶対暗殺と関係のない指示に思わず書きかけのままツッコんだわ。またあいつマッカン補充忘れたのかよ。

 

 

     ***

 

 

 ニチアサの予約をしたことを四回ほど確認して学校に向かう。休日ということもあり通学の電車の中に人は少ないが、チラホラと力のない目をしたスーツ姿がいたりする。休日に仕事とか社畜ほんと辛そう。社畜にだけはなりたくねえなぁ。できれば働きたくないまである。一日中本読んでゲームしてって生活が一生送れたらいいのに。

 そんなどうでもいいことを考えながら電車に揺られていると、やがて椚ヶ丘駅に着く。本校舎の隣を抜けて一応舗装された山道を進むと校舎――の前になんか変なものが見えてきた。

 

「……なんだあれ?」

 

 プラスチック製の高さは四、五メートルはありそうな謎のオブジェ。円錐の途中を切り出したような台形のシルエットは、しかしよくよく確認してみると半円をいくつも繋げてぼこぼこした形になっていた。中には上下二ヵ所に十字のパイプが通っている。

 なんとも奇怪なオブジェだ。けど……なんか妙に見覚えがある。

 

「ふふふ、どうよ比企谷君!」

 

 首をひねるを通り越して呆然と謎の物体を眺めていると、したり顔の茅野が校舎から出てきた。その手には「㊙計画書」と書かれてファイリングされた紙の束。そしてさっきの発言から察するに……。

 

「これがお前の考えた暗殺計画か」

 

「そういうこと! これで廃棄されちゃう卵を救済しつつ、殺せんせーを殺しちゃおってわけ!」

 

 卵を救済? 茅野の言葉の意味が分からず再び謎オブジェに視線を戻して、あぁと納得した。

 サイズが大きすぎて気づかなかったが、この形、どおりで見覚えがあるはずだ。その微妙にオリジナリティを主張するデザインは、プッチンしてぷるるんと皿に出てくるプリンの容器そのものだったのだ。

 

「巨大プリンか」

 

「そっ! 巨大プリンの底に対先生BB弾と爆弾をセットして、殺せんせーが食べている間に爆破するんだ!」

 

 そういえば、先週ぐらいに卵が供給過多になって大量に処分されるってニュースが流れていたな。捨てられるだけの卵をうまく活用して暗殺の計画を練ったわけか。

 茅野が言うには、殺せんせーが前に巨大なプリンに飛び込んでおなか一杯食べるのが夢だと言っていたらしい。なにそれ、俺もやりたい。マッカン片手に飛び込みたい。

 そこでその夢をかなえさせて、油断しているところを爆殺する。というのが茅野の作戦のようだ。なるほど、子供らしいぶっ飛んだ発想だ。もはや暗殺とは言えない気もするが……油断しているところを殺すわけだから一応これも暗殺……かな?

 

「おはよ……なにこれ?」

 

 グラウンドまで入ってきた渚が中央に鎮座する巨大プリン型を見て珍百景を見たような顔をしていた。うん、やっぱそれが普通の反応だよね。自分の反応が一般的なものだったようで、八幡ちょっと安心。

 

「しかし、これ本当にできるのか?」

 

 確か前にテレビで巨大プリンを作ってた企画では、プルプルのプリン自体が自重に耐え切れず崩れてしまっていた。普通に作ると同じように失敗するのは必至な気がするが……。

 

「ふふーん、当然! 対策も考えてあるんだよ!」

 

 俺の心配に、プリン大好き少女はニシシと笑って計画書を差し出してくる。というか、めちゃくちゃ分厚いんですがこれ。少し腰を落として渚と顔を並べて中を開き――

 

「ほー……」

 

「すごい……」

 

 二人して思わず感嘆の息を漏らした。

 

 

 

 マヨネーズ工場の業者が割り混ぜた大量の溶き卵がタンクローリーから流れ出てくる。いやもうこれだけでシュールなんだが、それを流し入れた特大のボウルの周りで皆がエプロンつけてる姿が超シュール。ちょっとだけ寺坂が給食のおじちゃんみたいな雰囲気出しているのがポイントだ。なんのポイントなのん?

 そこに砂糖とバニラオイル、同じくタンクローリーで運んできた牛乳が主な主原料だ。

 

「そして、潰れない対策のために凝固剤はゼラチンと寒天を混ぜて使うの」

 

 コラーゲンが主成分のゼラチンに対して寒天は繊維質の海藻から作られているから強度は確実に高くなる。さらに二十五度程度で溶けてしまうゼラチンに対して、寒天の融点は圧倒的に高い。熱で崩れてしまうのを防ぐ役割もあった。

 さらに椚ヶ丘で有名なスイーツショップ『プリネーゼ』の四層プリンを参考にした全四段の構造は、下の部分は凝固剤多めで自重に耐えられるように固めに、上の部分は生クリームを多めにすることでプリンの柔らかさを維持する作戦になっている。

 

「じゃあ、適度にこれも投げ込んでね」

 

「……なにこれ?」

 

 茅野から渡された箱に入ったものを取り出して、首をかしげる。というかちょっと引いてる。本人は全力なんだから引いてあげないで!

 片岡が持っている色とりどりのプルプルした立方体はいわゆる飽き対策だ。オブラートに包まれた中には様々な味のフルーツソースやムースクリームが詰まっていて、これが溶け込むことであちこちに味の変化が生じる。いくら好きでもこのサイズで同じ味だと飽きてしまうからという匠の粋な計らいだった。

 そして、普通のプリン容器にはない、容器の中を通る複数のパイプ。巨大なプリンを確実に固めるために、この中に冷却水を流して中からも冷やすのだ。

 

「すげえ……」

 

「科学的に根拠がありつつ味もしっかり研究してある……」

 

 皆作業しつつ、感嘆の声しか上げることができない。というか、なんか数人引いてるまである。おい速水、白目向いてるけど大丈夫か?

 何がすごいって、これを容器の設計から全て茅野が一人で計画しているところだ。計画書には縮小モデルでの強度実験の結果なんかも書いてあった。もはやあれは論文と言っても過言ではないレベル。というかこれを自分たちが食べられないとか悲しすぎない? 今すぐ暗殺中止して皆で食べるようにしない? 絶対マッカンに合うよこれ。

 

「やるねー、茅野ちゃん。卵のニュースから一週間でこれ全部手配したんだ」

 

 赤羽にしてはずいぶん素直な「やるね」に茅野が恥ずかしそうにはにかむ。それもあるが、元々やってみたかったことらしい。経費も防衛省から出るから、機会としては最高だったと。

 後方支援に徹して、実行部隊やトリガーにはほとんどなったことのなかった茅野がここまで積極的に行動する。その姿は四ヶ月近く過ごしてきた俺たちからしても新鮮で――

 

「そうと決めたら一直線になっちゃうんだ、私」

 

 そのせいか……なぜか頭の中を違和感がかすめた気がした。

 

 

     ***

 

 

「「「「できたー!!」」」」

 

 翌日の早朝。一晩かけて冷やしたプリンは型を外しても崩れることはなく、表面を整えてカラメルの表面をバーナーであぶると、見事なプリンが出来上がった。もうまじでまごうことなきプリン。プッチンでぷるるんなプリンのCMでも使えそうな素晴らしさだ。

 

「やあ、超美味そう」

 

 皆、思わずあふれるよだれを飲み込んだり自分たちの作った、もはや作品とすら呼べるものを写メに取ったりしている。

 そんな中俺はおもむろにマッカンを取り出し、茅野にも一本渡して――ちなみに昨日ももちろん渡している――、……二人で頷いて一歩前に出た。

 

「「じゃあ、食べようか!」」

 

「「「「そのために作ったんじゃねえよ!!」」」」

 

 ぐぬっ、どうやら全員当初の目的を忘れていなかったようだ。計画者の茅野が忘れていた気がするが……あ、倉橋に説得されて我に返った。やけになってマッカンを飲み干した。やけマッカンとは新しいな茅野。

 

「比企谷君、あれは殺せんせー用なんだからね?」

 

「絶対マッカンと一緒に食べたら美味いのに……」

 

 こんな美味そうな甘味が目の前にあるのに食べられない世の中じゃ……POISON。あの中に入っているのはBOMBだけどね。

 仕方なく持っていたマッカンのプルタブを開けて、一気に飲み干す。

 やけマッカン……悪くねえな。

 

 

 

「…………こ、これ全部先生が食べていいんですか?」

 

 始業時刻ちょい前になって出勤してきた殺せんせーは、二時間くらい待てをさせられた犬のようによだれをだらだらと溢れさせていた。端的に言って汚いが、これくらい反応してくれないと昨日一日かけた甲斐がないというものだ。こうしてプリンに意識が行ってくれれば、殺せる確率も高くなるしな。

 

「廃棄卵を救いたかっただけだから、いーよー」

 

「もったいないから全部食べてねー」

 

 夢がかなったと涙する殺せんせーを残して教室で爆発の機を伺う中、超絶甘党生物はいそいそとスプーンと平皿を取り出した。なにそれ、マイスプーンなの? ああ、文字通りプリンに飛び込んでいった。いいなぁあれ、いつか自分でもやってみたい。

 ものすごい勢いでプリンを消化している殺せんせーと、内部に設置したカメラを見比べる。起爆のタイミングは、うっすらと光が漏れだしてきた瞬間だ。

 

「プリン……爆破……」

 

 殺せんせーが食べ進めていくにつれて皆の視線の比重がカメラに集まっていく。タイミングを逃すまいと緊張が走り、口数も減っていく中、茅野の声がやけに鮮明に響いた。

 視線を向けた先でじっと窓の外、殺せんせーが食べ尽くしていくプリンを見つめる茅野の目には、なにやら様々な感情が見え隠れしている。その瞳がゆらりと一度揺れたかと思うと、ジワッと涙が……え、茅野さん……?

 

「ダメだーーーーっ!! 愛情込めて作ったプリンを爆破なんてだめだ!」

 

 茅野が壊れた。リアルに涙をダバーと流しながらグラウンドに向かおうとする茅野を寺坂が羽交い絞めにして止めるが、それを払いのけようと茅野も必死に暴れる。お前、そんなパワー持ってたのな。単純な力なら渚より上なのではないだろうか。

 

「プリンに感情移入してんじゃねーよ! 吹っ飛ばすために作ったんだろうが!」

 

「嫌だ!!」

 

 まあ実際、自分の好きなものを、それも自分の作ったものを壊すって精神的にクルからな。やっぱり自分たちで食べたいよな。

 

「このままずーっと、校庭でモニュメントとして飾るんだい!!」

 

「「「「腐るわ!!」」」」

 

 お前のプリン愛の方向性はなんかおかしい。

 

 

 

 結局、途中でプラスチック爆弾の匂いに気づいた殺せんせーが先に爆弾を処理してしまい、プリンの残りを皆で食べることになった。爆弾にも匂いがあるんだな。となると作れる爆弾も種類が限られることになりそうだ。

 

「惜しかったね、茅野。むしろ安心した?」

 

「爆破しなくて済んだからねー。実際に爆破してたら今頃茅野ちゃん気を失ってたかもね」

 

「あはは……」

 

 渚と赤羽に恥ずかしそうに茅野は笑い返す。実際、安心したというのも事実なのだろう。

 

「また殺るよ。ぷるんぷるんの刃だったら他にもいろいろ持ってるから」

 

 受け取ったプリンを照準を合わせるようにターゲットに向けた茅野は、自分たちで作ったデザートを楽しそうに口に運びながら渚や赤羽と話している。

 

「…………」

 

 そんなあいつらから視線を外して、俺も自分のプリンを一掬いして、口に含む。ラッキーなことにちょうど味変えのためのフルーツソースのところに当たったらしく、プリンの味に混じってさわやかな梨の甘さが広がった。日本生産量千葉一位の梨を引き当てるあたり、さすが俺は千葉の男だ。

 保冷バッグからマッカンをまた取り出して、くぴっと一口。さわやかなプリンと梨の甘さがマッカンの暴力的な甘さを一層引き立てた。

 うん、やっぱこの二つ合うわ。




食べ物のお話を二つほど。

磯貝はまあ、あんまり突っ込みすぎるとあれなんですが、なんか貧乏ネタでちょっと話を作りたいなと思っていたので。いや、さすがに原作はここまでひどくないと思うけど……金魚食うまで行くところを考えるとちょっと全否定はできないんですが。
まあ、あんまり書かないコメディ的なのに挑戦したということでここはひとつ。

松井先生も言っていましたが、この巨大プリンは実際潰れずにあのプルプルフォルムを維持できるのか興味あります。誰か実際に作れください。
後、市販のプリンがあの波みたいな特殊な容器な理由を知っている人誰か教えて。2,3時間ずっとそれ調べたけどどこにも書いてなかったです。自分で答えまでたどり着いていたら、その雑学を茅野にしゃべらせて予定でした(ぐすっ

ちょっとお知らせ。
まあ、前からなんですがTwitterやってます。
@elu_akatsuki
ここ最近特に用事で一日中出払っていることも増えてきたので、更新できない日なんかはTwitterの方で呟くと思います。よろしければフォローしてもらえると~。

それでは今日はこの辺で。
ではでは。

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