頑張って魔法剣士になりたい元男に祝福を!   作:狭霧 蓮

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この暴龍からの逃走を!

「退路を断たれた!?」

「みんな、注意するように! 指示を出す余裕はなさそうだから、隙を見て撤退できるようにしておいてほしい!」

「「りょーかい、キョウヤ!」」

「わーったよ――チクショウ、最近ろくな目に合わねえよ!? みんな、エンチャントくわえとくぞ!」

 

俺は剣を抜くと、氷の魔法剣と風の魔法剣を発動しつつ、他の面々の武器にも魔法剣を与えた。 適当に(クレメア)(キョウヤ)(フィオ)に与えておいた。

 

「どの属性が弱点かはわからん、ハルナ。 奴の情報は!?」

「現在、該当データがないんだよマスター! アレのデータが無いから、解析中! ちょっと持ちこたえて!」

「データが無いだと!?」

 

ハルナが言うにはあのドラゴンは突然変異体の属性らしく、該当データが無いと言うのだ。

星のマナからデータを取っているハルナの言うことは正しい情報だ。

 

「仕方ねぇ、行くぞ!」

 

ハルナに解析を任せると、俺は暴れるドラゴンに攻撃を仕掛けた。

 

右手の逆袈裟斬りから切つけるが弾かれ、反動を利用して上段から左手の氷の剣を叩きつける――が、ギィィィッンッ!と当たり前のように弾かれた。

振り回される尻尾に気がついてその場でしゃがんで回避、バックステップで距離を取りながら、キョウヤ、クレメアと変わる。

俺は剣を鞘に収めて投擲ナイフを二本手に取るとに魔力を充填、飽和ギリギリまで魔力を溜め込んだナイフをドラゴンの鼻っ面に投げつけた。

すぽっと1つが龍の鼻の穴に飛び込んでマナが溢れ出て弾け、2つ目のナイフが仰け反って開いた口の中に飛び込み内部で爆発した。

体内粘膜内で、無属性の魔力の拡散は流石に効いたようで

 

GIGAAAAッ!!

 

直後に怒りの咆哮をあげていた。 骸龍の目の周りが赤く発光して四肢からも同じような光が見える。

 

「頭吹き飛ばすつもりだったが、どんだけタフなんだよあん畜生め――よく見たら、ティガ◯ックスに似てるなおい!?」

「いや、メタい事言ってる場合じゃ無い!」

 

ミツルギのツッコミは、怒り狂った骸龍の咆哮にかき消され、奴っさんはあちこちに走り回り突進を繰り返す。

見た感じ、黒◯龍だよ!?

 

「解析完了! ってこのスカルヘッド・ドラゴン……上位個体ですよ!? これはまずい、今のミツルギくんとグラムじゃあの鱗は切れませんよ!? あの鱗……アダマンタイトの成分が出てます!」

「んだと!?」

 

ハルナの叫び声を聞き、グラムを突き立てようと頑張っていたキョウヤもなんだってと言わんばかりの驚きっぷりだった。

確かに、先程から闇の魔法剣付与のグラムを火花を散らしながらはじきかえすあの鱗は硬すぎる。

クレメアもフィオも頑張っちゃいるが……このままじゃジリ貧だ!

 

「龍壁を無力化するには龍殺しが必要……キョウヤのグラムならなんとかできるのか!?」

「わからない! グラムはまだ僕を仮初めの所有者としてしか見ていないんだ!」

「なんだと!?」

 

つまり、グラムは本来の持ち主であるジグルド以外には使われたく無いってのか!?

 

「ええい、四の五も言ってられねえ! ちょっとばかしか奴を抑えてくれ! 1分でいい!」

「! わかった、2人とも時間を稼ぐよ!」

「わかった、任せなさい!」

「頼みますよ、ハルヒちゃん!」

 

俺は中級魔法、アイクシル・ランサーを放ち、ドラゴンを牽制しつ、ナイフを手に取り魔力を充填。

俺は体にエンハンスド・ツヴァイを与えて身体能力を二倍にするとドラゴンの動向を観察する。

動き方の擦り合わせを慎重に……行動パターンを頭に叩き込み、戦術を組み立てる。

即興の罠、落とし穴は作れる。 たとえナイフが数本でもやってやる!

そこに行くまでに導く誘導の罠と、挑発。 ヘイト管理をしくじれば間違いなく全滅する。

リスキーだが、俺に見えたのは1つの作戦しかなかった。

 

「よし。 みんな、あとは俺に任せてくれ!」

「無茶はしないでくれよ! ケンナシくん!」

 

俺はナイフ足元に4本突き刺してその場を離れる。

並列思考のスキルを用いて演算。 右手に魔力球を浮遊させるとそのなかでアイクシル・ランサーとヴィンド・スラッシャー、フレイム・ブラスターを同時に発動させる。

高速詠唱のスキルで詠唱は省けるので無し。 そして、左手に弓を持った。

 

「〈トライ・バースト〉オォォッ!」

 

俺は形状崩壊を始めた魔力球を引き絞り、魔導矢弾(トライ・バースト)を弓に、魔力で編んだ弦につがえて放った。

これは魔導矢弾作成のスキルで作り出せる魔弾で、魔導矢弾作成は魔法剣から派生するスキルの一種だ。

魔法を合成して魔法弾を作れるスキルだ。

トライ・バーストは氷、風、火を合わせて生み出される魔弾……その性能は辛い水蒸気爆発並みだ。

そのため、避けもせず当たった骸龍はと言うと強力な爆薬で顔を吹きとばされたようにダメージを負っていた

 

GAAAAA!?

 

怯んだ骸龍に対して俺は弓を放って氷の魔法剣を付与した剣の柄を握り、白刃を鞘から疾らせた。

疾る剣から空気中の水蒸気が固まった三日月塊……氷の斬撃が飛翔した。

斬撃は龍の顔に儚い音を響かせて砕け散りながら命中、絶対零下の温度は龍の目を、その粘膜を氷結させて奴の目を一時的に失明させた俺は挑発するように効かない中級魔法を雨あられと撃ち込こむ。 魔力残量は気にしない、疲労もないし、まだまだ撃ち込める。

龍壁に阻まれて有効打にならないチクチクと刺すように魔法を撃ち込んでみるがダメージは皆無みたいだ。

しばらくすると、骸龍は視力を回復させ、俺を睨めつけるように直視して、唸るそこにアイクシル・ランサーを撃ち込んで、挑発する。

 

「おら、こっちだ」

 

GAAAAAAAAAAaaa!!!

 

直後に怒り狂う骸龍、それを俺は冷静に見つめる。

地を蹴り、爪を振り上げて飛びかかってきた骸龍の手前には、着地予測地点には俺の張った罠が。

 

「じゃあな、デカブツ」

 

その声とともにナイフを起爆した。 縦に指向性を待たせて穴が掘られた。

そして骸龍は底に落ちて行くと、そこに俺は掘った穴の淵にナイフを投げて二本突き立てると爆破して岩、土を穴に降らせて奴さんを生き埋めにしてやった。

 

「埋めたのかい……?」

 

ミツルギの問いかけに俺は弓を回収して折りたたむと、矢筒に差し込んで固定しながら答える。

 

「奴がこの洞窟の天井を登ってたのを見てな……埋める方がいいと思ったのさ。 まぁ、穴を掘れるドラゴンだとかなら自力で出てくるだろうし」

「じゃあ、逃げるが」

「勝ちよね!」

 

フィオとクレメアの意見をミツルギはわかったと受け入れて俺たちは逃走した――それはもう、見事にな。

それからしばらく、洞窟を抜けて火山地帯を走り抜いた俺たちは振り返った。

 

「やれやれ、なんとか事なきを得たとも言えるね」

「最後のやつすごかったよ、ハルヒちゃん!」

「うん、真面目に1人であんなことするなんて」

 

逃げ延びた俺は、3人に感謝なのか嫉妬なのかわからない感情を感じた。

ハルナに遠視を頼むと、快く引き受けてくれた。

 

「エンシェントドラゴン達はもういないようですね。 遠視で探しても見えませんので……あ」

「なんだ、その「あ」っていうのは!?」

 

直後に、地震のような揺れとともに、大地がめくれて黒い影が飛び出した。

 

GAAAAAAAAAAaaa!!

 

天を衝く咆哮、発光した目の周り、赤い四肢……激昂した黒き暴龍が、そこにいた。

威嚇のつもりか、骸龍は吠え唸っていた。

 

「やっぱり穴掘れんのかよこいつ!?」

「「ぎゃー!?」」

 

クレメアとフィオがハモりながら悲鳴をあげる。

 

「やっぱり、アダマンタイトを持ってると狙われるみたいだな!」

「アダマンタイトのコーティングされた鱗、骸龍の主食は鉱石……あり得なくないね!」

「つまり、アスナイまで逃げてもこいつは追ってくるぞ、間違いなく」

「なら、ここで……倒すしかない」

 

ミツルギは覚悟を決めたのか剣を抜く。

 

「みんなは先に逃げてくれないか? ここは僕1人で食い止めるか――「ふざけんじゃねぇよ、このバカが」……え?」

 

俺も剣を抜き、左手に取り出した弓を持つ。 矢はあと7本ある。

 

「お前だけ残して俺たちが逃げれるわけねぇだろうが。 だいたい、クレメアとフィオが黙っちゃいねぇぞ、ミツルギ」

「そうよ! 私達だって戦えるんだから!」

「キョウヤが死んであたしたちが生き残るのなんて絶対ナンセンスなんだからぁぁあ!」

「みんな……ありがとう!」

 

俺たちは各々の得物を構えた。

 

「さあこのドラゴンを――」

 

「「「狩るよ!」」」

 

さぁ、狩の時間だ!




たくさんの評価ありがとうございます。
とまぁ、評価とお気に入りでモチベーション保ってるわけじゃないんで酷評なりなんなりはご自由にどうぞ。

あくまでも私は、描きたいように書いてまいりますので

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