ミツルギ視点
それはある日のこと。
アクセルの街で「初心者殺しが近くにいるのではないか?」と言う噂の調査と、ひと月ほど前に星が落ちたと言う項目の予言師の依頼と言うことでかの街に王都から向かった。
着いた先で、予言師の依頼に関しては手詰まりだったけど、初心者殺しに関しての噂はビンゴだった。
すぐさま僕たちは初心者殺しの討伐に向かうことになったのだけど、その時に1人の少女とアクセルの街郊外ですれ違った。
頬を軽く斜めに切り裂かれたような傷に赤い髪をなびかせて、白いシャツにジーンズのと言う場違いな格好で全力疾走してくるその様は必死の表情で、並走するように飛翔する妖精を連れていた。
呼び止めようと思ったけどその速さは異常だった。 まるで二倍速で動いているかのように。
「やぁ、一体どうs「生き残れたぁぁ! ばんざーいッ!」
「待ってください、マスター!?」i――え?」
話しかけたが、思いっきりスルーされた!?
「「キョウヤが無視された!?」」
声を揃えてクレメアとフィオが驚き、僕は呆然とその後ろ姿を見送る。
「まさか、初心者殺しから逃げてきたの? たった1人で生き残ったの、あの子!?」
「そんな! 初心者殺しから生き残るなんてかなりの手練れよね? でも、なんであんなに必死に逃げるのかな……」
「と、とにかく2人とも。 レベルも十分上がってきているし、なにより、君達が初心者殺しに後手に回ることはないだろう? さ、先を急ごう」
そしてしばらく歩いた場所には穴からは這い出てくる大型のサーベルタイガーに似た魔物を見つけた。
「やっぱりいたか! フィオは援護を!クレメア、行くぞ!」
「任せて、キョウヤ!」
魔剣グラムを抜き、初心者殺しに斬りかかる。 が、初心者殺しと言えど僕でも気を抜けない相手の
しかし、グラムの一撃をろくに避けることもなく、頭蓋を斬り伏せられた初心者殺しはあっけなく討伐できた。
「なんでなこんなに簡単に討伐できたのかな……」
「うーん? これって火傷と裂傷じゃない?」
「這い出してきた穴も結構深い」
もしかしてここまで初心者殺しを弱らせたのは、あの子がやったのだろうか? アクセルに逃げ帰っていった彼女が。
「拍子抜けしたけど、討伐は出来たわけだし。 今日はもう宿に戻ろうか」
「ちょっといいかな、キョウヤ。 あの子がやったかもならあたしちょっと気になる」
クレメアが珍しく他の女子に興味を示していた。僕が他のパーティーの女性メンバーと話していると面白くなさそうな顔をするのに何故だろうか? そんなクレメアがこんな話をするなんて本当に珍しい。
「初心者殺しをここまで追い詰めるなんて相当な手練れだと思うのよ」
「そこらには爆発跡だから爆発魔法。 こっから察するに、魔法職か、魔法を扱える職業かな? それとそこらへんに飛び散ってる金属片は武器の破片かなぁ?」
クレメアの言いたいこと、フィオの推理を聞いて僕も彼女に興味が湧いて来た。 僕はあの子が何者なのかを知る必要がある知れない。
赤髪のあの少女を探そうと言う2人に同意して僕たちは街に帰還した。
そして翌日。
僕たち3人は手わけして調査を行なうついでに少女を探した。 王宮から承った依頼はこの地に落ちた〈星〉の調査。
抽象的で流れ星こと隕石がここに落ちたならアクセルの街は消し飛んでいるはず。
なんにせよ手がかりが全くない状態なので、予言師の依頼の方は難航していた。 聞き込みをしようにも当ても何もないから余計に困る。
アクセルの街には予言師がいない。 駆け出しの街に予言師がいても仕方ないといえばそうかもしれないけど。
とまぁ、たまたま落ち合った先の、3人で入った喫茶店に例の彼女はいた。
「いらっしゃいませ! 3名様ですか?」
華やかな雰囲気のウエイトレスの格好をした赤髪青目の超絶な美少女だった。
「あ、ハイ」
「では、座席にご案内いたします!」
先導されて座席に着くと、彼女は注文が決まれば呼んでほしいと言い残してカウンターに引っ込んで行き、お冷やを3つとおしぼりをお盆に乗せて持って来てくれた。
「この〈店のオススメ〉ってメニューを3つお願いするよ」
「はい! かしこまりました!」
紅茶とケーキのティーセットを頼み、彼女の運んで来たケーキと紅茶を楽しみながら、僕たちは情報を交換して話し込んでいた時にふと視線を感じて、その視線を追ってみるとそこにはあからさまに神々しい光を放つ妖精が飛んでいた。
「ふむふむ、その剣は〈魔剣グラム〉ですか?」
「え? あ、あぁ、そうだよ。 僕の自慢の魔剣さ」
「あ、あの時の妖精!」
「か、可愛いー……」
妖精は僕の目の前に降り立つと、じっと見つめて来た顔に何か付いていますか?
いや、この姿どこかで……あ、デート◯ライブのヒロインの1人――長いこと読んでないから名前が思い出せない!
と、とにかくそのライトノベルのキャラに似ていた。
「ふむむ? この魔剣、あなたを正式なマスターと認めていないようですね。 どうやら仮初めのマスターレベルですか」
「へ? それってどういう」
「あ、失礼。 私の名前はハルナと申します。 星霊のハルナです!」
はぐらかされた! はぐらかしたよね!? ってなんだか違う感じの……
「星霊ってなに?」
クレメアが興味津々に聞くと、彼女はにこやかに対応してくれた。
「はい、星霊は管理を任された管轄の、数多の恒星を、その創生から消滅までを観測する者ですね。 創世神に作られた〈
「なにその壮大な寿命!?」
「いや、待って。 この子から感じる魔力トンデモナイ事になってるんだけど、ナニコレ一体!?」
「お、落ち着くんだ二人とも!」
混乱する二人を宥めながら、僕はもう一度星霊を名乗るハルナさんを見つめてみた。
「ステータスはかなり高めですね、えっとあなたのお名前を聞いてもよろしいですか?」
「あ、僕かい? 僕はミツルギキョウヤ。 この子はランサーのクレメアでこっちの子は盗賊のフィオだよ」
「ミツルギさんですね。 ひとつ依頼を受けてもらえませんか? 場合によったら、グラムの性能を強化して差し上げますから」
「え、グラムの強化を?」
「その気になれば
その条件ならと、僕たちはハルナさんの依頼を受ける事にしたその内容を聞いて、僕たちが耳を疑ったわけなんだけど、それはまた別のお話。
☆ こ の す ば !! ☆
俺はバイトを終えてから晩飯を食べようと冒険者ギルドに行く。 昨日か一昨日かに勇者候補の魔剣使いがこの街にやってくると言う話も他の聞いていたがあまり気にしていなかった。
こちとらこの前初心者殺しに殺されかけたわけだし、ちょっとの間冒険はやめておこうと思っていたのだが。
「と、言うわけでパーティーを組まないかい?」
「なんで俺なんだ?」
俺はソードマスターの転生者を名乗るミツルギキョウヤに、パーティーに誘われた。
「君があの初心者殺しを弱らせたんだろう? なら、君はダイヤの原石と言っても過言じゃないほどの実力を持ってる事になる。 そんな優秀になる事が約束されたような人材を君は見逃せるかい?」
「いや、待て。 俺を過大評価しないでほしい」
「謙虚なのは大事でいい事だね。 だけど、卑屈になるのは良くないよ、ハルヒトさん」
「卑屈になんかなってねぇよ!? 自信くらいは持ち合わせてるよ!?」
このイケメン、俺をバカにしているのだろうか? 軽く上から目線だし、そのくせに悪気は感じないから余計に腹がたつ。
女冒険者二人、ランサーと盗賊を連れているのだが、遠距離と近距離をこなせる冒険者の仲間を欲しているらしい。
で、この前の初心者殺しを討伐したのが彼らであり、あそこまで弱った初心者殺しを見るのは初めてだったらしい。 奴をあそこまで弱らせたその手腕をぜひうちのパーティーで発揮してくれないだろうか? とミツルギは俺に持ちかけてきたのだ。
「ソロでやっていくのはさすがに世知辛い世界だよ? レベリングを安全にしたいなら僕たちがサポートする。 僕らは未来のパーティーメンバー候補を見極められる。 どうかな、お互いにwinwinでいい関係じゃないかな?」
「……そりゃそうだろうなぁ。 俺には得しかねぇが、あんたらのいくクエストについて行って、ステータス差で足を引っ張りかねないぞ?」
「大丈夫さ。 僕たちがキチンと護衛と君のレベルが上がりやすいようにサポートする。 だから、一週間だけ臨時パーティーとしてうちに来ないかい? これでも僕は、王都で名の通る冒険者だからね」
ミツルギは俺のレベルに合わせてクエストの予定を組むと言った。 普通ならこの提案は超がつくほどの待遇なのだろうが……
「わかった、わかった。 じゃあ、3日待ってくれるか? こっちもいろいろ準備があるし、白シャツとジーンズじゃあんたらの冒険について行ける自信がねぇ」
「わかった。じゃあ、3日後にここでまた会おう」
そう言うミツルギに、俺はソードマスター様の一行についていくことになったわけだ。
今現在、俺のレベルは5なんだが、本当にこいつらについて行けるのか、不安だ。
ちなみに取ったスキルは
双剣、弓、片手剣、狙撃、中級魔法、軽業、中級強化魔法、武器魔法付与、爆破魔法付与、筋力強化、体力強化をとってある。
ステータスは
筋力 13 体力 20 知力50 魔力 99+ 敏捷41 器用36 幸運 30 となっていた。
まぁ、頑張りますか
次の話からミツルギパーティーと冒険スタート! さぁどんな試練になるのか