クロスアンジュ 遡行の戦士   作:納豆大福

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今年最後の投稿となります。
今年度はありがとうございました。
来年もよろしくお願いします。




第11話  待望の再会

 

 

 

アンジュが再びヴィルキスの乗り手となり、戦線復帰を果たしてから、数日が過ぎた。

あれから何度も出撃したアンジュはヴィルキスを完璧に使いこなし、次々とドラゴンを

狩っていく。

 

そして来るべき、モモカとの再会の日に備えて、アンジュは順調にお金を貯めていった。

 

 

ただ“前回”とは違って、他者を押しのけて一人で獲物を独占する極端な荒稼ぎはしていない。

 

あの時とは違って、新兵のココとミランダが生きている。

“前回”の初陣の時に死んでしまった二人だが、今回はアンジュのフォローのおかげで生き延び、

今に至る。

その時点でもう十分にアンジュは責任は果たしたと言えるが、アンジュはその後も二人の事を

気にかけ、戦闘中には二人が死ぬ事がないようにフォローするなど、彼女達の面倒を見ている。

 

その関係から今回のアンジュは、部隊の隊列を無視するような勝手な行動はしていない。

 

尤も、ヴィルキスとアンジュの腕をもってすれば、他者を押しのけて獲物を独占したり

しなくても、十分に稼げるので、アンジュにとっては問題ではなかった。

 

 

 

(この調子でいけば、モモカがこっちに来る日までに、十分な金額を蓄える事ができるわ。)

 

貯金通帳を見ながら、アンジュはそう思った。

アンジュは派手な荒稼ぎはせずに、地道にコツコツと稼ぎ、貯金していった。

 

 

 

 

 

アンジュは日々お金を稼ぐ一方でトレーニングも決して欠かさなかった。

それは勿論、モモカを守っていく事が出来るように、強くなるためである。

 

仮に敵が襲いかかってきたとしてもモモカを守れるように、あらゆる訓練を徹底的に

行なってきた。

アサルトライフル、ハンドガン、ナイフなど、あらゆる武器の扱いに習熟し、徒手格闘の訓練もやってきたのである。

そのおかげでアンジュは、メイルライダーとしての強さだけでなく、歩兵としての戦闘能力も

かなり鍛え上げられていった。

 

 

 

 

 

ある日、アンジュは自室でカレンダーを眺めた。

 

そのカレンダーのある日付には印が付けてある。

それはモモカとの再会の日である。

 

そして今日はその前日である。

 

「いよいよね。」

 

アンジュは逸る気持ちで一杯だった。

 

かけがえのない大切な仲間。

会いたくて会いたくて堪らない人。

 

そんな人との再会の日が間近に迫っているのだ。

アンジュは待ち切れない思いだった。

 

(モモカ………。)

 

 

 

 

 

 

 

そして翌日……

 

 

アルゼナルに警報が鳴り響く。

 

侵入者の報せに、アルゼナル全体が動揺する中、アンジュは警報が鳴った瞬間に素早く動いた。

アンジュは走る。

 

(モモカ………。)

 

 

遂にこの時が来た……そんな思いで頭が一杯だった。

とにかく1秒でも早く会いたいと言わんばかりに、全速力で走るアンジュ。

 

 

 

そして彼女は辿り着いた。

そこには一人の少女と、それを取り囲む警備兵達がいる。

 

 

「モモカ!!」

 

アンジュは叫んだ。

そして、人波をかき分けるようにして、包囲の輪の中へ入っていった。

 

すると、そこにはいた。

 

 

アンジュの事に気づき、声を上げる少女。

 

 

アンジュはその少女の姿をよく見た。

それは間違いなく、記憶の中にあったモモカの姿そのものである。

 

ノーマである自分に、どんな時も決して変わる事なく、愛情をもって接してくれた人。

嘗ての親友や家族からも裏切られ、絶望の淵に立たされた時に、そんな自分の心を

救ってくれた人。

そして、命に代えてでも絶対に守ってみせると誓った、大切な人。

 

そんな人が今、目の前にいる。

 

 

 

(モモカ………間違いなく、モモカだわ。)

 

モモカが生きていたという事実を、アンジュは改めて実感する事が出来た。

こんなに嬉しい事は他にない。

 

 

 

そしてモモカもアンジュとの再会に、喜びで胸が一杯だった。

 

「アンジュリーゼ様!!」

 

モモカは堪らずアンジュの方へ走ってきた。

 

「モモカ!」

 

そんな彼女を、アンジュは受け止める。

そして、力一杯抱きしめた。

 

アンジュは思わず嬉し涙を流す。

 

 

本当なら、もう二度と会う事など出来ない筈だった。

しかし突如起こった奇跡によって、こうして再会する事が出来たのだ。

今はただ、その奇妙な運命に感謝するばかりである。

 

 

(もう二度と離さないわ。)

 

心の中で呟きながら、モモカを強く抱きしめたのであった。

 

 

 

 







今回はここまでです。

それでは皆さん良いお年を。

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