クロスアンジュ 遡行の戦士   作:納豆大福

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第10話  アンジュVSゾーラ(?)

 

 

 

「ふぅ………ちょっと休憩にしましょう。」

 

その日もアンジュはトレーニングに精を出していた。

ここに来てから、もはや日課となっている。

 

そして、そのトレーニングの合間に、アンジュは食堂へ足を運ぶのだった。

 

 

 

 

カウンターで料理を受け取ると、席に着く。

 

「アンジュー。一緒に飯にしよー。」

 

「アンジュちゃん、ここ空いてるかしら?」

 

すると、そこにヴィヴィアンとエルシャがやって来て、アンジュのいるテーブルの席に座った。

今まではアンジュと一緒に食事を取るのは、この二人である事がほとんどだった。

 

しかし、この日は違っていたのである。

この日は、この二人だけでなく、他にも同席しようとする者がいた。

 

 

 

「おっ。やってるね。」

 

「邪魔するよ。」

 

「私も、ここ……いいかな?」

 

そう言って来たのは、ゾーラとロザリーにクリスであった。

 

 

彼女達は“前回”の最初の頃とは違って、アンジュとは友好的な間柄になっていたのである。

 

何故なら、嘗て戦闘中にゾーラが危機的状況に陥った時、アンジュはそれを身を挺して

助けたからだ。

だから助けられたゾーラは勿論、ゾーラの事を慕っていたロザリーとクリスもアンジュには

感謝している。

更に前回の戦いでも、自分達がピンチの時にアンジュが颯爽と現れて助けてくれたので、

アンジュに対して更に好感を持つようになったのであった。

 

だから今では彼女達はアンジュの事を受け入れ、そして友好的に接している。

 

 

 

 

そしてこの日、アンジュと同席するのは彼女達だけではなかった。

 

 

「アンジュ様。私達もご一緒させてください。」

 

「アンジュ。ここ空いてる?」

 

アンジュのいたテーブルに、ココとミランダもやって来た。

 

 

「どうぞ。」

 

アンジュがそう言うと、二人とも喜々として席に着く。

 

 

その結果、気づいたらいつの間にか大人数での食事になっていた。

アンジュも今ではすっかりこのアルゼナルの面々と打ち解けていたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

「あの、アンジュ様。 良かったらこれ、どうぞ。」

 

「え?」

 

ココがそう言って、デザートのプリンをアンジュに差し出した。

 

ココの大好物にして、アンジュからは大不評の、アルゼナル産のプリンである。

 

 

「これは、あなたのでしょう。いいの?」

 

「はい。いいんです。アンジュ様に食べて貰いたくて……。」

 

「そ、そう………。」

 

その時のココの目はとても純粋でキラキラと輝いていた。

 

「あ、ありがとう。」

 

そんな目で真っ直ぐ見られながら差し出されたら、アンジュは断る事は出来なかった。

 

 

(正直、私にとってはかなり不味いのよね、これ。やたら甘ったるいし……。)

 

そう思いながらも、自分を慕ってくれているココの純粋な好意を無下にも出来ず、

受け取ってしまったアンジュ。

 

(やったー。アンジュ様に受け取って貰えた。 /////)

 

頬を赤くしながら、嬉しそうな表情をするココ。

 

 

「あらあら。」

 

そんなココの様子を見て、微笑ましく思うエルシャであった。

 

 

 

 

するとその時、ロザリーが動いた。

 

「アンジュ。 先輩からもプレゼントだ。ありがたく受け取りな。」

 

ロザリーはそう言いながら、自分の皿にあったニンジンをフォークで刺すと、アンジュの皿に

入れてきた。

 

「え! いや、ちょっと……!?」

 

「な~に……遠慮するなって。」

 

「それって単に、あんたの嫌いな物を押し付けてるだけなんじゃないの?」

 

「そんな事はねえよ。 あとついでにこのピーマンもくれてやろう。こいつも中々美味いよ。」

 

「コラッ!! やっぱり、嫌いな物を押し付けてるだけでしょ!!」

 

即座にツッコミを入れるアンジュ。

そして周りの者達は、そんなアンジュとロザリーのやり取りを見て笑う。

 

 

そんな感じで、アンジュ達の食事は賑やかな一時となった。

 

 

 

 

そんな中、ゾーラが呟いた。

 

「フフフ……中々美味しそうじゃないか。」

 

その呟きは誰にも聞かれる事は無かった。

そして、その時のゾーラの目線はアンジュに向けられていたのである。

それは、まるで獲物を見るかのような目だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アンジュ。今、空いてるか?」

 

ゾーラはアンジュに声をかける。

その時のアンジュはランニングマシンでの走り込みトレーニングを丁度終えた所だった。

 

「何か用? これからシャワーを浴びるけど、その後で良ければ……」

 

汗を拭いながら、アンジュは答える。

 

「ああ。それで構わないよ。 ちょっと話があるんだ。後であそこの部屋にまで来てくれ。」

 

「分かったわ。」

 

「それじゃ。待ってるよ。」

 

そう言って、ゾーラはその場を立ち去る。

この時、ゾーラがニヤリと笑っていた事に、アンジュは気づいていなかった。

 

 

 

 

その後、シャワーを浴びてサッパリしたアンジュ。

彼女はゾーラの指定した部屋に向かった。

 

(話って一体何なのかしら? 仕事に関する事?)

 

廊下を歩きながら、アンジュは考える。

 

(それにしても………)

 

そしてアンジュはこの時、ふと思った。

 

(ゾーラの事について、何か重要な事を忘れているような気が……。)

 

アンジュが思ったのはゾーラに関する事である。

彼女の事について、何か重要な事を忘れてしまっているような気がしてならなかった。

しかし、それが何なのか………思い出す事が出来ないのである。

 

 

そして、そんな事を考えているうちに目的の場所に到着した。

 

アンジュはドアをノックして中に入る。

すると、そこにはゾーラが一人でいた。

 

 

「来たか、アンジュ。」

 

「それで話って?」

 

「アンジュ……初陣の時の事、覚えているかい?

 あの時、私が油断しちまったばっかりに危うく死ぬところだったんだが、それをアンジュが

 助けてくれた。」

 

「ああ、その事ね。

 それなら別に、もういいわよ。機体大破に伴うお金だって、ゾーラが立て替えて

 くれたし……。」

 

「でも私はその時のお礼をまだちゃんとしていない。」

 

(そんなの別に気にしなくていいのに………案外律儀な所もあるのね。)

 

そう思いながら、アンジュは口を開こうとした。

 

 

その瞬間だった。

 

 

 

「えっ……?」

 

気がついたら、いつの間にかゾーラが間近に接近していた。

そして押し倒され、そのまま組み敷かれてしまっていたのである。

 

 

「なっ!!」

 

「だからさ………お礼として、とびっきりの快楽をあげよう。」

 

仰向けに倒されたアンジュの上に、ゾーラが覆い被さるようにして押さえ込んでくる。

その時の彼女は少し息が荒くなっており、その瞳は情欲に染まっていた。

 

 

(そうだ、思い出した! こいつは、そういう奴だった!!)

 

この時になってアンジュは思い出したのである。

ゾーラが好色で、気に入った子がいるとすぐに(性的な意味で)食おうとする、そんな女である

という事を。

 

実際、アンジュは“前回”ゾーラに襲われた事があった。

部屋に連れ込まれ、押し倒され、挙句の果てに唇を奪われ、その上で犯されそうになったので

ある。

幸い、その時は寸前の所でドラゴンが襲来し、出撃命令が下ったため、難を逃れる事が出来た

のだが、それが無ければそのまま完全に(性的な意味で)食われている所だった。

 

“前回”、そんな経験をしたアンジュだったが、それ以上に重要な事が他にたくさんあったので、すっかり忘れてしまっていた。

そしてゾーラに襲われた今になって思い出したのだ。

ある意味致命的な、痛恨のミスである。

 

 

「ちょっと! 放しなさい!!」

 

「フフフ。良いではないか。」

 

アンジュは必死でもがくが、完全に取り押さえられており、逃れる事が出来ない。

 

そしてゾーラが耳元で囁く。

 

「遠慮するな。 なーに、大丈夫さ。すぐに気持ち良くなる。 とびっきりの快感を味わわせて

 あげよう。

 さあ、私に身を委ねるんだ。」

 

 

アンジュはある意味、最大の危機を迎えていた。

 

(やばい! これ本当にやばい!!)

 

アンジュは必死で、ゾーラを制止しようとする。

 

「ちょ、ちょっと待ってストップ!!」

 

「照れるな、アンジュ。」

 

「いやいやいや、別に照れてないから!! とにかく止めなさい!!」

 

「本当に可愛いねぇ……アンジュ。」

 

「話を聞け!!!」

 

もはやアンジュが何を言っても無駄だった。

今のゾーラはもう止まらない。

 

 

「それじゃあ、いただくとするか。」

 

そう言うと、ゾーラは自分の唇をアンジュの唇に近づけていった。

 

「ちょっ! やめっ……むぐっ!! んむぅ!!」

 

そして、噛みつくかのようなキスをしてきた。

 

「んんっ!! んんんー!!」

 

アンジュは何とか振り解こうとするが、頭を押さえられているので、それが出来ない。

そんな中、アンジュはこの状態から脱出すべく、必死で思考を巡らせた。

 

(このままじゃ本当に犯されちゃう! そんなの絶対に嫌だ!

 ええぃ! このままやられれてたまるものですか!!

 こうなったら、やられる前にやれってやつよ。

 負けるものか!! 食われる前に食ってやる!!!)

 

この時のアンジュの頭はパニックに陥っていた。

完全に思考がおかしな方向へ向かってしまっている。

 

 

すると、アンジュは相手の口内へ舌を捩じ込んだ。

それはまさにヤケクソであった。

 

 

(むっ!! 自分から舌を入れてくるとは、中々大胆じゃないか。 面白い。

 こっちも負けてられないね。)

 

ゾーラも負けじと、舌で応戦する。

 

 

(負けるものかああああ!!!)

 

アンジュも攻め手を緩めない。

 

 

アンジュとゾーラの戦い(?)は激しさを増していったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ゾーラ隊長、遅いなぁ。どこ行ったんだろう?」

 

「何かあったのかな?」

 

ロザリーとクリスが廊下を歩きながら話していた。

 

 

 

「もしいるとしたら、あの部屋だろうね。」

 

「そうだね。」

 

そう言いながら、ロザリーとクリスの二人は、ある部屋の前まで来た。

そしてドアを開ける。

 

 

「「!!!」」

 

すると二人は驚愕し、目を見開いた。

何と、そこにはゾーラが倒れていたである。

 

「隊長ー!!」

 

「どうしたの、隊長!? 一体何があったの!?」

 

ロザリーとクリスはすぐさまゾーラの所へ駆け寄りった。

 

 

するとゾーラが呟く。

 

「凄かった……///////」ポッ

 

この時のゾーラは頬を赤く染め、潤んだ瞳をしていた。

 

((乙女みたいな顔してるー!!!))

 

ロザリーとクリスに衝撃が走った。

二人は絶句する。

 

 

 

 

 

一方、その頃のアンジュはというと………

 

 

「ハァ……ハァ……ハァ……………か、勝った。」

 

彼女は息を切らしながら、フラフラと覚束ない足取りで廊下を歩いていた。

 

アンジュとゾーラの勝負の行方は、アンジュの勝利である。

アンジュは見事にゾーラをKO(?)したのであった。

 

 

(な……何とか乗り切った。 もうこんなのは二度と御免よ。)

 

そう思いながら、アンジュはふらつきながらも自室へと戻って行った。

 

 

 

 

 

 

 

そして、翌日。

 

 

「なあ、アンジュ。 今夜にもう一度………」

 

「断る!!!!」

 

猫撫で声で迫るゾーラと、それをファイティングポーズで威嚇するアンジュの姿が

あったとか……。

 

 

 

 


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