IF~転生先で、私は鬼子を拾いました。   作:ゆう☆彡

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ようこそ~出会うべき人との出会い

 

《松陽side》

 

近頃、村で不思議な噂を聞くようになりました。

 

『銀色の髪に、赤い眼。まるで鬼のような子どもがいる。』

『戦場に座るその姿は、まるで鬼だ。』

『戦死した人の懐にある、握り飯をとって食ってるらしいぞ。』

『“屍を喰らう鬼”だ。』

 

まぁ、こんな感じでしょうか。とにかく、戦地に鬼と呼ばれる子どもがいるらしいのです。

 

少し興味があったのもありましたが、このままでは、その子どもが危険な目にあってしまう。そう思ったので、葵と蒼汰が帰ってきたら、戦地に赴こうとおもっているのですが……、

 

「2人とも遅いですね…。」

 

既に日が沈みかけているので、すぐに暗くなるでしょう。葵がついているので、大丈夫だとは思いますが…。

 

 

 

――――ガラガラガラガラ

 

帰って来ましたね、よかった。

 

「お帰りなさい、葵、蒼汰……?」

 

驚きました……。

蒼汰を抱っこしている葵の後ろ、もう一人おんぶされている子どもがいたのです。

 

「葵?その子は……?」

 

息切れをして、額にうっすら汗を浮かべていた葵の様子から、走って帰ってきたのがわかりました。

 

「父上っ!事情は後で話しますので、蒼汰をお願いしますっ!」

 

常に落ち着いている葵が、珍しく焦って早口で答えるので、何も言わず蒼汰を預かりました。

 

「あの子は……まさか、、、。」

 

 

わずかに見えた銀色の髪。

 

その子の服についていた…、そして葵の着流しにもかなりついていた、血。

 

 

「下りたのですか、蒼汰……?」

 

問いかけた蒼汰は、ぐっすり寝ていました。

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

何をこんなに慌てているのかって?それは、千段以上ある階段を上っていた時のこと…、

 

 

 

 

 

「ふー、、、。流石にきつくなってきたなぁ…。」

 

転生したとはいえ、生身の人間であることに変わりはないので…、当たり前のように疲れます。

それでも、約半分を上りきった私はすごいと思う。

 

まぁ、蒼汰も銀さんも軽いからなんだけどね。

 

 

果たして、安心したのがまずかったのか……。突然、背中にいる銀さんの呼吸が荒くなった。

 

「どうしたの!?大丈夫、ぎん……」

いやいや、待て待て……。

 

確か銀さんって、まだ自分が“銀時”だってわかってないんだっけ?……って!そんなこと気にしてる場合じゃないっ!

 

「ごめんね、もう少し我慢してね……。」

「はぁ………うっ……げほっげほっ……はぁはぁ…。」

 

だんだんと呼吸が浅くなっていく。

更に、私の背中はどんどん熱くなっていった、銀さんの熱で。

 

「うそ……、熱あったの?」

それとも、長い間の緊張から開放された反動か…。

 

今は、蒼汰も抱いてるし、下ろして見てあげれない。とにかく力の限り急いだ。

 

 

 

「頑張って……。大丈夫だよ。」

 

そう言ったら、私の方を掴んでいた手を、さらに強く掴まれた。まるで、助けて……、って泣いてせがる子どものように。

 

 

 

 

 

 

「葵、氷水を持ってきましたよ。」

「ありがとうございます、父上。」

 

氷水に手ぬぐいをつけてしぼり、頭に乗せる。それで簡単に良くなるはずもなく、相変わらず荒い呼吸で辛そうにしている。…大丈夫かな……。

 

 

「それで……、一体何があったのですか?葵。」

 

おっとそうだった…。説明しなくては……。

 

 

私は正直にすべて話しました。

蒼汰が下りて行ってしまったこと、そこで見つけた戦争孤児であること、見つけた時のこと……。

 

とりあえず、父上には嘘は全く通用しない、いや別に、隠そうとしてるわけじゃないから、嘘つく必要も無いんだけどね。

先生だからかな……?嘘には過敏に反応するんですよ…。

 

 

「なるほど……、つまり、噂は本当だったというわけですか。」

「噂……?」

 

私が話終えると、次は父上が話してくれました。

 

………って。

私が行かなくても良かったんじゃんっ!もうすぐ、会えるんだったんじゃんっ!!―――まあ、いいけど…。

 

「そんな噂が……、」

「えぇ。

葵が見つけてくれてよかったですよ。他の人が見つけていたら、また人を殺しかねませんからね。」

 

いやいや、あなたでも大丈夫ですからっ!ってか、私が無事だったことの方が、もしかしてすごいんじゃね!?

 

「そうでしたか……。

それで、父上。この子をしばらく、こちらにおいておいてもよろしいですか?私が責任もって、面倒見ますので……、お願いします。」

 

お願いした、頭を下げて。

答えはわかっていた、明確だった。

 

 

父上は笑顔で、

 

「もちろんですよ。しばらくなんて言わず、ここに住まわせましょう、本人が望めば…ですが。」

 

うん、聞かなくても良かったな。父上は…、吉田松陽とは、こういう人だ。原作でも、目の前にいるこの人も。

 

「ありがとうございます。」

 

 

 

 

 

 

 

 

銀さん、みんながあなたが目を覚ますことを待っているよ。

だから、早く目を覚まして。

 

早く、あなたの笑顔が見たいから。

早く、元気な姿が見たいから。

 

ずっとあなたのそばにいるから。

 

そして……教えて。

 

 

 

運命が…、あなたが、松陽先生ではなく私を選んだ理由を。

私であることに、どんな意味があるのかを。


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