IF~転生先で、私は鬼子を拾いました。   作:ゆう☆彡

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投稿間、空いてしまって申し訳ありません!

見捨てず、最終話までお付き合い下さいぃぃっっ!!


『僅か』を『一瞬』へ。

 

《松陽side》

 

 

『葵は私に、いえ……、私たちにたくさんの幸せを運んできてくれますね。』

 

 

いつの日か、私の愛おしい人である晴香が、私に言った言葉です。

 

 

たった二歳で病に侵されて寝込んでしまったあなたに、晴香は毎晩謝っていました。

丈夫に産んであげられなくてごめんなさい。

苦しいのを変わってあげられなくてごめんなさい。

 

どれもこれも晴香のせいではないのに、たくさん謝っていた晴香の姿は、今でも苦しいほど覚えていますよ。

 

 

『母上と父上……?』

 

あなたが初めて話してくれた言葉です。

もう目を覚まさないと言われていたあなたが目を覚ました時、私は自分でも驚くほど喜んでいました。晴香に出会った時と同じような気持ちになったんです。

 

 

 

『私が責任を持って、面倒見ますので……お願いします。』

 

その言葉の通り、あなたは蒼汰を、銀時たちを大切に育ててくれました。たくさんの愛情を込めてくれました。

それは、いつも私の家に溢れていました。その空間が、私は大好きでした。

 

 

『この世で最も大切なものを守りたい時に使います。例え……自分の命を犠牲にしても。』

 

あなたが示してくれた答え。見せてくれた覚悟。

親子だからでしょうか。あなたが何を伝えたいのか、何をしたいのか、しようとしているのか、分かってしまったような気がしたんです。

 

 

『ありがとう。』

 

背中越しに言ったあなたの顔を、私は想像でしか見ることは出来ませんでした。あなたはどんな顔をしていましたか。

きっと、大切な弟たちを……いえ、きっと私も守ってもらっていたのでしょうね。

 

 

 

 

私が親であるせいで苦しめていたはずなのに、あなたは私をいつも慕ってくれました。

剣の稽古をつけて欲しいと頼んできた時も。真剣な目をして、まっすぐこちらを見るあなたの目から、私は逃げられないと思ったんですよ。

 

そして、その目で……

 

 

 

 

 

 

『ここからなるべく遠くに行ってください。少しの間で構わないんです。』

 

その声で、私に伝えに来てくれたあなたを、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──キーンッッッ!!!!

 

 

「「っ!!!」」

「私の手助けは不要でしたか?

 

 

 

 

 

……葵。」

 

 

 

父として、守りたい。

 

あなたがまっすぐ放ったあの宿題の答えから十年。

その刀を握る、あなたの横で。

 

 

「父上……っ。」

 

 

───────────────────────

 

 

「松……陽……!?」

 

葵と虚の間に入り、双方の刀を止めたのは、虚でもあった吉田松陽であった。

 

 

「銀ちゃんっ!!」

「桂さんっ、高杉さんっ、大丈夫ですか!?」

 

松陽を呼んできた神楽と新八がすぐに駆け寄る。

 

 

「お待たせしました、将軍様。」

「礼を言うぞ、蒼汰。」

「いえ。」

 

将軍に一礼し、副長である土方の横に将軍を守るようにして蒼汰も立つ。

 

 

 

 

 

 

「よくやった。」

「っ!!……ありがとうございます。」

 

それは蒼汰が敬愛する、真選組鬼の副長からの珍しい褒めの言葉だった。

 

 

 

 

 

「まさか……、自分の姿を見ることが出来る日が来るとは思いませんでした。嬉しいですよ、あなたに会えて。

 

あなたの大切な娘のおかげですか、……松陽?」

 

 

初めて見た銀時たち、そして実の息子である蒼汰でさえも驚いただろう。葵だって、自分の世界にいた時、その展開には驚いたのだ。

まさか目の前に、自分が敬愛する師が二人もいるとは思いもよらない。

 

「私も嬉しいですよ。ですがそれは、あなたを見たからではありません。」

「……。」

 

 

 

 

「私の大切な娘が、刀を握って弟たちを守ってくれている、

 

 

 

そして、その横に立てている自分がいるからです。」

「!!」

 

その言葉と共に松陽に向けられた笑顔に、驚いた葵。そして、

 

 

「松陽……、」

 

その姿を見て驚いた、かつての弟子……朧。

 

 

「話は後でゆっくりしますが……、」

 

そう言うと何をしたいのか察したのか、葵がすぐに促した。

 

「どうぞ。」

「!?」

「私の話は後でも大丈夫みたいですから。」

 

その言葉に後押しされて、僅かばかり葵の横から離れる。立った場所は朧の目の前。

 

 

 

「長い間……苦しい思いをさせてしまって申し訳ありませんでした。

そして、葵を信じてくれてありがとうございます。」

 

それは、精一杯の感謝と、そばにいることが出来ず注げなかったたくさんの愛が込められていた。

 

 

どれほど成長したとしても、一度、師として仰いだものからの感謝と愛ほど嬉しいものはなかった。

 

「……あなたが無事であるなら、それ以上は何もいらない。」

「そうですか。」

 

そう言って、松陽は微笑んだ。

 

 

 

 

 

 

「美しいですねぇ。

 

私にかかればすぐにでも消えてしまうような命。弱者が、命を懸けあって守るなど、自ら死にに行くようなものですよ。」

 

様子を見ていた虚が、嫌味のように言い放った。

 

「そんなに互いを命をかけて守りたいのであれば、

 

 

……守らせてあげますよ。」

 

「松陽っ!!」

 

 

 

人外なスピードと、その力で真っ直ぐ二人に突っ込んできた。朧を守るように、松陽が腰に刺してある刀を握った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──キーンッッッ!!!!

 

 

「……また、あなたですか。」

 

虚の握る刀が、松陽と朧にあたる前に止まり、カタカタと音を立てる。

 

「ずっと守ってきた人たちに剣を向けられて、黙って見ているわけないでしょう。」

「……フッ、」

「何かおかしいことでも?」

 

刀を受け止め、葵が虚と真っ向から対峙した。

 

 

「気づいていますか?私とあなたの差を。」

「……。」

 

 

 

──ザッ!!

 

────キーンッッッ!!!!!!!!

 

 

お互いが引き、再び剣が交わる。

 

「感情とは、人を弱くする。

 

松陽が来てから、あなたの力は突然下がっている。剣を受け止めているのも、先程よりも余裕が無い。

……松陽が来て、安心でもしましたか。」

 

 

──ガンッ!!!!!

 

力の押し合いに負けて、葵が後退する。が、怯むことなく、次は葵から攻撃を仕掛けた。

 

 

──キーンッッッ!!!!

 

若干押されているとはいえ、拮抗に近い二人の力は中心で交り、睨み合った。

 

 

「確かに、感情は人を弱くします。ですが……それは、あなたも同じでは?」

「私が感情に左右されている?

 

あなたは私を、少々見くびっているようですね。」

 

 

──ガンッ!!!!!

 

「っ!!」

「たかが人間を相手に、私が狼狽えるとでも?」

 

力に負け弾き飛ばされた葵だったが、その顔には僅かに……

 

 

 

──ドガーーンッッッ!!!!!

 

今日一の爆発を起こしたのは、葵の最大限の力を込めた攻撃。

今日初めて、僅かであるが、虚が剣を受け止めるために仰け反った。

 

「!?」

「……、見くびっているのはあなたの方だ。」

「……。」

「感情は……、人を弱くするだけじゃないっ。

 

 

 

向けられて、……向けられていると感じることで、強くなることもあるっ!!」

 

 

 

 

 

虚の目の前から仕掛けられる攻撃。

 

このわずかな時間の中で、虚と葵が剣を交わした数は数える程しかないのかもしれない。

ただ、虚の中では既に“吉田葵”という人物への観察は終了していた。そして、そこから……

 

 

 

『この状況で自分に真っ向から向かって来る意味は無い』という答えが導かれた。

 

かすかに生まれた疑問は、例え虚といえど、注意を散漫にさせる。いや、虚程の実力であるからこそ、周囲に警戒を向けるのは当たり前の行動であった。

 

 

 

「考え過ぎですよ。」

「!?」

 

目の前に迫る、自分よりも遥かに浅はかであり、実力もしたであるはずの少女から感じたのは、言い知れぬ恐怖。

それが、虚から生まれたイレギュラーである“吉田松陽”によるものであると、気づくことはない。

 

 

 

 

散漫になった注意が、葵の放つ殺気によって一気に集約される。多少の警戒が、いつもよりも僅かに葵からの攻撃を慎重に防がせた。

 

 

 

その全て。

 

 

全ての『僅か』が、

 

 

 

 

 

 

一瞬の隙を生む。

 

 

 

 

 

──ギーーンッッッッ!!!!

 

 

「葵姉の狙った通りじゃねぇかよっ!」

「なにっ!?」

 

葵の剣を受けた虚の背後から飛び出したのは、桂、高杉、そして銀時の三人。

 

 

三人を幼い頃から見てきた葵であるからこそ、

 

そして、幼い頃から葵を慕ってきた三人であるからこそ、

 

 

 

『僅か』を合わせた『一瞬』を。

 

口で言わずとも、見ただけで察せる四人であるからこそ、

 

 

 

 

「感情が、信頼が。

 

何も感じない、力だけを持つあなたを上回ったんです。」

 

 

 

成せた技。

 

 

 

 

「……っ、」

 

 

三人の剣が、三方向から、虚の身体を貫いた。






残念ですが、まだまだ続きますm(_ _)m

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