少し短くてすいません。
もう少しで原作からは脱しますよ。
「わしを裏切った全てのものに、目にものを見せてやる!!」
殺意を浮かべた定々が朧と葵に連れられ、江戸城の屋上につく天導衆の船に乗り込む。
「我らも後から参る。舵は吉原だ。」
深く帽子をかぶった奈落に、朧は指示を出した。
しかし、
「……朧。」
小さな声で葵が囁いた。見つめる先は一点、定々が乗り込んだ船の後方。それは城内で大量に見た、紐に取り付けられたクナイ。風になびいて、─カンカンと音が鳴っていた。
「吉原?」
「!!」
その声は二人の背後。
次の瞬間、定々を連れていた奈落は切り捨てられ船から落ちて来た。
「なっ!?」
定々の見た船上は、すべての奈落が倒され、真っ赤に染まっていた。
「残念、当船の行き先は極楽ではなく……」
定々の後ろに立つのは奈落ではなく、桂小太郎。
船の中心であるエンジンに立つのは、刀を構える高杉晋助。
「地獄行きだ、コノヤロー。」
背後に立つ坂田銀時の木刀が、朧の顔にヒットし、壁まで吹き飛ばされた。
「貴様が守ってきたというのならば、最後まで守るものが頭というもの。敵に縋りついた時点で、貴様は頭ではない。」
船上では桂が二本の刀で両脇の着物ごと壁に縫い付け、天導衆の持つ杖の武器を足の間に投げ拘束した。
──ドガーーーンッッッ!!!
そして、高杉によって船のエンジンは爆破された。
「貴様、性懲りも無く再び我が前にまい戻ろうとは……っ。
まだ抗うか、まだ吼えるかっ。その瞳を閉じれば二度と失うことは無いというのに。
それでも貴様はまだ、戦場に立つか……白夜叉っ。」
炎と煙が立ち込める場で、白夜叉と八咫烏が見合った。
「既に何もかもが遅い。お前たちがどのように足掻こうと、もう何も戻らぬ。国も、仲間も……葵もだ。」
上空には、今までの船と比べることすら出来ないほどの大きさと数の船が浮かんでいた。
「まさか……、騒ぎを聞きつけて天導衆自らが降りてきたのかっ!?
終わりだ……貴様らは、もう終わりだ!!」
再び江戸に、定々の醜い高笑いが響いた。
「貴様が来るべきはここでは無かった。自らの愚かさを恨み、地獄へ帰れっ!!」
──シュンッ!!!!!!
───キーンッッッッッ!!!!!
「!?」
朧が投げたクナイを、一振で全て撃ち落とした。
そして、そのクナイによって船が爆発を起こし、黒い黒煙があたりを覆い尽くした。
──シュンッ
「!?」
───シュンッ!
────ザシュッ!!
黒煙の中から飛んできたのは、奈落が使用する経絡を麻痺させる毒針。全く視界のない中で、寸分の狂いもなく朧の身体に当てた。
「地獄へ帰れ?
ここが俺とお前のデート場所じゃねぇかよっっ!!」
背後から人影が浮かび上がったのを見逃す朧ではなかった。その姿を現す前にすかさず蹴りを入れ、弾き飛ばした。
「俺の技が、俺に通ずるとでも思ったか。
我が暗殺術は、敵の経絡を読み攻める技ではない。己が経絡を操り、その芸を最大限引き出すものだ。毒を廃することなど、造作もないことよ。」
「お、朧……っ。」
「!?」
黒煙が晴れた先にいたのは、朧の放った毒針にやられた銀時ではなく、その毒針によって壁に貼り付けられた定々の姿だった。
「その辺にしといてやれよ。確かに地獄に落ちるだけじゃ足りねぇような奴だが、てめぇで作った法で裁かれんのがそいつには似合いだ。」
「貴様っ!!」
振り向いた朧が何か言う前に、銀時の刀が振り下ろされた。
──ガンッッ!!!!!!
銀時が振り下ろした方向に黒煙が舞い上がった。
──カタカタ──カタカタ
銀時の刀が微かに震える。
「なんで……」
斬ったことに恐怖するはずもない。
「どうして……っ」
力が余り、強く握りしめているわけではない。
「そこまで、そいつのこと守んのかよ……、
葵姉ぇぇぇっっ!!」
「……。」
上から振り下ろされる銀時の刀を、腕一つで受け止めていたから。
そのまま振り回す葵の刀をかわすために、銀時は後退した。
──カチャ
葵が刀を構え直す。
「何があったのか知らねぇけど……、
俺は引きずってでもあんたを連れて帰る。」
「……そうですか。」
「!」
ありえない速度でその間合いを詰めてきた葵を、ギリギリのところで防いだ。
「へっ……、勝負だ、葵姉。」
気づいた。
刀を防ぐのがギリギリになったのは、その葵の速度だけが原因じゃなかった。
──ちゃんと、……あんたはいる。
連れて帰ると言った時の葵の顔は、
「ちゃんと、笑ってる。」