IF~転生先で、私は鬼子を拾いました。   作:ゆう☆彡

33 / 55

たくさんの方に読んでもらえて、本当に嬉しいです(*^^*)
ありがとうございます!


始まりの狼煙

 

 

むかーし、むかしある所に、殿様とその家来がいました。

この殿様の奥方は、この国一番の美しい方で、とっても殿様を大切にしていました。

でも殿様は、そんな姫の気持ちを利用し、牢獄に閉じ込め酷いことばかりさせていたのです。

 

だから姫様は、毎日、牢獄で泣いていました。

 

そんな姫様が哀れで、家来はいつも姫様の涙を拭いてあげていたのです。

いつからか彼は、姫様に恋心を抱いていたのです。

 

 

しかし、家来は殿様に姫様を始末するように命令されました。逆らえば命はない。でも、愛する人を殺めることなど出来ない。

 

代わりに二人は、約束したのです。

 

『一緒にここから逃げ出そう。』

『次の満月の晩、あなたをさらいに来る。』

 

そうして二人は、指切りげんまんを交わしました。

 

 

でも、彼が来ることはありませんでした。

殿様は全てを知っていたからです。

 

 

“会えば姫様を殺す”

二人の約束は、死よりも思い鎖に変わりました。

 

だから、彼は決めたのです。

例え何度月が通り過ぎようとも、

例えシワだらけの醜い老人になろうとも、

例え姫様が彼を忘れていようとも、

 

 

彼女と会える日まで生き続けようと。

 

 

 

そうして彼は今でも、三本の足で這いつくばりながら生きているのです。

 

 

───────────────────────

 

 

「そうして姫様と家来は……「いい。」」

「もう……、結構です、姫様。」

 

 

そよ姫がじいやに寝物語として聞かされていた、話。

その話がなんなのか、彼らにはすぐに理解出来た。

 

「やっぱり、眠れませんでしたか。」

「いや。」

「……?」

 

獄中の者たちが立ち上がった。

 

「そっから先は、もう知ってんのさ。」

 

背を向けていた銀髪が、半身を向けてうっすらと笑った。

 

 

「そろそろ開けてくれんだろ。まさか、聞かせるためだけにいる訳じゃねぇだろ。」

「……?なんの……」

「姫様、ありがとうございました。」

「みどりさん……?」

 

牢によしかかって話を聞いていた潮屋が、懐からジャラジャラと音を立てて、物を取り出した。

 

「ったく、ここまでテメェの計算だったのかよ。」

「僕は姫様を、ここに案内しただけですよ。一人で寝るのは寂しいと言われたので。」

 

 

潮屋によって、牢の扉が開かれた。それと同時に……

 

「何、もたもたやってんだ。……出てこいっ、処刑の時間だ。」

 

思い扉も開かれ、真選組が立っていた。

 

「さっさと白装束に着替えやがれ。」

 

投げつけられたのは、彼らの白装束(武器)

 

 

「旦那ァ、処刑台は予約しちまったんで、ちゃんと首繋げて戻って来てくだせェよ。俺達の首が飛ぶんで。」

「せいぜい、処刑に相応しい積み重ねてくるこった。ちなみに、罪状はなんだ。」

 

「将軍の下の髷もぎ取った罪。」

 

 

真選組の列の間を、歩いていく四人。

 

 

最後に出てきたのは、白。

 

「忘れないで。この城中に、あなた達の味方なんていない。

こっちについた以上、あなた達も、もう後戻りは出来ない。」

「心配いらねぇよ。お前らが好き勝手暴れてくれりゃあ、あの狸ジジイもちょっこり出てくるやもしれねぇ。

俺たちゃ、美味しいとこだけ、頂くさ。」

「……。」

 

 

──ザシュツ!!

────ドサッ

 

「!?」

 

突然、白と黒の間に血塗れの二人が落ちてきた。

 

「土方副長。

一応、僕が幕府の監視だということ、忘れないでくださいね。」

「その言葉は、血に濡れたその刀閉まってから言えよ。」

 

牢の上、巨大な満月に照らされるのは二つの影。

 

「見事な腕前ですね。」

「幕府の方も、城中で怠けている奴らだけじゃないんですね。」

 

そう言うと、一人はそこから飛び降りた。

 

「副長。」

「なんだ。」

「この城を落とそうとしてるの、万事屋(あの人方)だけじゃないみたいです。」

「はぁ?」

 

 

副長補佐の監察、吉田蒼汰から聞かされたのは、

 

「……、

 

高杉晋助率いる鬼兵隊、桂小太郎率いる桂一派がこの城めがけて攻め入ろうとしてます。」

 

 

……それは、一筋の反乱の狼煙。

 

 

 

「では、真選組の皆さんも各々行動してください。」

「俺たちに、あの狸じじいを守れってんですかィ。」

「……

 

僕は姫様について行かなければならないので、出来れば城中に入っていきて頂けると助かりますね。」

 

城を守るのに、守る側が城の中に入る必要は無かった。

 

「はっ。幕府もとんだ奴を送り付けてきたもんだな。」

 

 

 

潮屋が城に向かって歩き出す。

少しして立ち止まり、少しだけ振り返った。

 

 

「本気で国を取ろうとするならば、

 

 

 

 

……白も黒も忘れた方がいい。」

 

それはいつもの声ではない。

 

何か言い知れぬ圧を感じる声色だった。

 





もうちょっとだけ原作多用引用が続きますm(_ _)m

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。