IF~転生先で、私は鬼子を拾いました。   作:ゆう☆彡

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二年半の“色”

 

「やぁ〜〜〜、久しぶりだねぇ。元気にしてたぁ?」

 

……。

目を開けて最初に思ったこと。

 

 

 

きもい。

 

「えぇぇぇ、、、。」

 

二年半たっても思うことは同じ自分と、同じ気分にさせる目の前の奴に、ある意味尊敬する。

あっ、でも前はカタカナだったから、少しは柔らかくなってるんだな。

 

「ボクが心読めること、忘れてないよねぇ?」

 

「忘れてないから、あえて考えてるんですけど。」

 

「おぉ。二年半たっても、相変わらずだねぇ、今は……葵ちゃん?」

 

「………。」

 

 

人の、人に対する評価とか思いというのは、そう簡単に変わるものじゃないと思うけど、久しぶりに会った相手にここまで殺意が湧くとは…。

あぁ、そもそも人じゃないのか…。

 

「えぇぇ?酷いよぉ、葵ちゃぁん。」

 

 

………。

キモイ神様は放っておいて…

「ひどくなぁい?」

 

「……ここどこ?」

 

前に神様と会った空間とは明らかに違うそこ。

真っ白ではなく、すごく色とりどりな部屋。

 

「何色が多いと思うぅ?」

 

「……黒。薄い…茶色?、、、銀色…………!!

 

これって…」

 

「ボクが君と会っている場所は、今も前もまぁったく変わってないよぉ。

ここは君の頭の中、君の思考に合わせてこの部屋は変化するんだぁ。」

 

 

…つまり、最初に会った時は、私は何も感じてなかったってこと……?

 

「そうだよぉ。」

 

で、この部屋のこの色……。目立つ三色……。

 

「蒼汰。父上、、、銀さん…………。」

 

「そのとぉり!今の君の思考を占めている人たちだよぉ。」

 

 

あんなに真っ白だった私の感情を、こんなにも色鮮やかに…、

 

「それでぇ、君の最後の特典は、その人たちのために使うのぉ?」

 

「もちろん。」

 

神「ウンウン♪即答、素晴らしいねぇ。

 

……どんな特典にするぅ?今、蒼汰くんと銀時くんを助けるぅ?」

 

「違う。」

 

「??」

 

「剣術。」

 

「!!……へぇ。」

 

「…自分で身につけようと思ったけど、それじゃあ遅い。今やらなきゃ…殺らなきゃだめだから。」

 

もう二度と、あんな思いはしたくない。

向けられる凶器に、怯える私の大事な者。

 

もう二度と傷つけたくない。

 

 

「どのくらいの強さにするぅ?」

 

「……最大で。」

 

「!!」

 

「私は…必ず守るために使う。

あいつらとは、あんな奴らとは違う。」

 

「……うん!わかってるよぉ。

 

君は、鍛錬もしてきたみたいだし、すぐに使えると思うよぉ。」

 

「すぐに出来る?」

 

「もっちろぉん。」

 

 

言うのと同時に、転生した時と同じように身体が光に包まれた。

 

「特典は使い切っちゃったけどぉ、ボクは君の頭の中にいるからねぇ。何かあったら、呼んでみてよぉ。案外役に立つかもよぉ。」

 

 

こんな神様でも、やっぱり救ってくれたことに代わりはないんだよね…。

そんな思いがうまれて、出てきた言葉。

 

「……ありがと。」

 

 

「!?

うん、頑張って。」

 

初めて言ったお礼に、初めて標準語で返された。

なんか、驚いてたのが気に触るけど…、まぁいいや。

 

 

「葵さん。」

 

「……何?」

 

元の世界に戻るであろう瞬間に、神様に呼ばれた。

これまた初めて、“さん”呼びで。

 

 

「君の思考の中の“この色”がこれ以上広がりませんように、僕は願ってるよ。」

 

「…?どういう……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

葵は最後まで言い終わることなく、……いや、双方が言い終わることなく、葵は元の世界に戻った。

 

 

「この色はもう………見たくないから。」

 

そう言って、そこにあった姿は跡形もなく消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

隠されていた場所から見えた色は、小さな…とても小さな“赤”だった。




葵さんが、やっと転生者らしくなってきます。

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