トメィト量産工場   作:トメィト

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ヒャッハー。オッタルさんとのバトルだー!

描写は期待してはいけない(戒め)


最強と最凶が交わるのは間違っているだろうか?

 

 

 

 

 猛者(おうじゃ)オッタル。

 この世界の中でも、レベルの高い冒険者達が集まることで知られるオラリオにおいて最強の名をほしいままにする冒険者。

 そのレベルは現在認知されている最高レベルの7。

 彼に肩を並べる人間はおらず、このオラリオに居る冒険者達の憧れであり目標でもある男。

 

 

 そんなオッタルが現在対峙しているのは最近話題になっている異世界からの訪問者樫原仁慈。

 神の恩恵なしという圧倒的なハンデを背負っているにも関わらず、並みの冒険者やモンスターでは相手にならないレベル5の一流冒険者を真正面から降した男である。

 その技量に疑念を抱くところはなく、現在神々から最も恐れられている男でもある。

 

 

 オラリオ内でどちらも知らないものの方が少ない者同士の睨みあい。

 中心にいるアスフィは本気で帰りたいと思った。

 

 

 「お前が、カシハラジンジだな」

 

 

 「そうですけど……どちら様?」

 

 

 仁慈の言葉には答えず、樫原仁慈本人であると言う確認を取った瞬間背中に背負っている出刃包丁のような大剣を抜くとその剣先を仁慈に突きつけた。

 

 

 「あのお方の命により、今からお前の力を試す」

 

 

 「無視か……」

 

 

 自身のかけた言葉を完全に無視して戦闘宣言とも取れる発言をしたオッタルに仁慈はがっくりと肩を落とした後、また話を聞かない勢かと呆れかえっていた。

 

 

 「ちょ、ちょっと仁慈さん!?流石にこの人は相手が悪すぎます!」

 

 

 「アスフィさん知っているんですか?」

 

 

 「知っているも何も、このオラリオ最強の冒険者ですよ。そして唯一のレベル7でもあります。こう言ってしまうのもなんですが、先日相手したティオナさんなんて目ではありません!」

 

 

 「うぇ……マジですか……でもこれどう考えてもこのままさよならできる雰囲気じゃなんですけど」

 

 

 そう言いつつアスフィと仁慈は同時にオッタルを見る。

 彼は武器をこちらに向けたまま微動だにしていなかった。一応構えるまで待ってくれるらしい。紳士である。不意打ち上等の仁慈にはなかなか出来ない芸当だ。

 だが、そんな紳士な彼も逃げようとすれば最強の力を遠慮することなく振るうであろう。

 何故なら、オッタルにとってのあの方といえばフレイヤだけであり、彼が彼女の命令に逆らうことなどありえないからである。

 

 

 「確かに……」

 

 

 「力を図るだけだから、多分命まではとらないでしょうし……とりあえず、アスフィさんは下がっててくださいな」

 

 

 まったく気負った様子もなく言い切る仁慈にアスフィの不安は最高潮まで達した。彼が強いのは知っている。そして、その強さに油断することなく全力で敵と戦っているのも知っている。何故ならそれはつい先程のインファント・ドラゴンとの一戦で拝見済みであるからだ。だが、オッタルはそういう次元ではないのだ。

 あれは冒険者ではなくモンスターにカテゴリしたほうがいいのでは?と思えるほどのものなのである。

 

 

 「先手は譲る。全力で来い」

 

 

 「なら、胸を借りるつもりで………行くぞ」

 

 

 アスフィの疑念や心配など知ったことかと言わんばかりに仁慈は神機を構えたまま、地面を蹴り上げてオッタルに向かっていく。その速度はティオナと戦ったときよりもさらに早く、もうアスフィの目では捉えきれないほどのものであった。

 しかし、最強たるオッタルには捕らえられる速度だ。彼は仁慈が近付くタイミングに合わせて出刃包丁のような大剣を横薙ぎに振るった。

 自分に向けられた斬撃に気が付いた仁慈はスライディングの要領でその斬撃を潜り抜けると、すぐさま跳躍、重力も合わせた一撃を頭上からお見舞いする。だが、オッタルは背負っていたもう一本の大剣をすぐさま引き抜き、仁慈の一撃を真正面から受け止めた、そのまま弾き返した。

 体重も乗せた一撃だったが、大木のような豪腕から繰り出される力に押し負け、仁慈は後方にミサイルのように飛んでいく。何時ものように体勢を整えることが出来なかったが、壁とぶつかる直前に神機をダンジョンの壁につきたて勢いを無理矢理殺し、なんとか激突だけは回避する。

 

 

 

 そのまま突き刺した神機の上に立った仁慈は相手であるオッタルをまっすぐに見つめると彼も同じように仁慈に視線を返した。その視線には、その程度かという落胆の色が浮かんいる。

 オッタルの心情を受け取った仁慈は、唇の端っこをニィと釣り上げると、地面に降りて神機を壁から引っこ抜く。直後、先程と同じようにオッタルに突っ込んだ。それに対する彼の対応は同じ横薙ぎの斬撃を放とうとしたが、

 

 

 「――――ッ!?」

 

 

 フッと、視界から仁慈の姿が消え失せた。

 一瞬にして捕らえられなくなり、焦りを覚えたオッタルだが長年の経験をもって冷静を取り戻し、仁慈の気配を探ると彼の気配を感じたほうに体の捻りを加えた大剣を向ける。その直後にトラックが高速で物にぶつかったときのような重量感のある音が響き渡る。そこにはお互いの獲物をぶつけ合いながら向きあう二人の姿があった。 

 アスフィは、そんな2人を見ながら若干震えていた。この戦いで一番皺寄せを受けているのは間違いなく彼女であろう。

 

 

 さて、アスフィが怯えていても関係ないと、武器と武器をぶつけ合う。しかし、ここで忘れてはならないのはオッタルにはもう一つ武器があるのだ。

 彼は片方の武器で仁慈の攻撃を防ぎながらもう一つの大剣で仁慈を斬りつける。その出刃包丁のような刃が仁慈の体を真っ二つにしようと迫り来る。

 が、その程度のことを予測できないほど仁慈は弱くはない。彼は神機を持っている左手を離してフリーの状態にすると、迫り来る凶刃を親指とその他四本の指で挟みこみ受け止めて見せた。

 オッタルが大剣を動かしてみてもビクともせず、がっちりと固定されている。

 硬直状態にあった彼らだが、仁慈がオッタルの腹に蹴りを不意打ち気味に繰り出した。大剣を止められたことに気を取られていたオッタルは不覚にもその蹴りを受けてしまう。二メートルはあるだろうその巨体を蹴り飛ばした仁慈はそのまま、オッタルに追いつき追撃としてもう一発蹴りを叩き込み、ダンジョンの壁にぶち込んだ。

 猛者たるオッタルがブッ飛ばされ尚且つ壁に叩き込まれる。オラリオに住むものなら誰もが驚愕するであろう光景だが、オッタルのことを詳しく知らない仁慈には関係ないことだ。むしろ、まだ俺のバトルフェイズは終了してないぜ!と言わんばかりに神機を咬刃展開状態にすると、オッタルが突っ込んだ場所を切裂こうと振るう。

 この男、人型を相手するときは躊躇するがひとたび戦闘に入るととことん容赦がない男である。

 

 

 一部の壁や岩を切りながら殺到した神機にオッタルは大剣の内の一本を両手で握って受け止める。

 そして、神機を受け止めた後、もう一本の大剣を仁慈に向けて投擲した。彼はこれを上半身をそらすことで回避するが、視線オッタルに戻したときには既に彼は仁慈の目の前まで来ていた。

 それを確認するとすぐさま咬刃展開状態の刃を戻す。その時、伸びてきた刃が収納する際に神機に戻ってくるため、オッタルも収納に巻き込まれる可能性がある。

 背後をチラリと見たオッタルはそのことを即座に予測すると仁慈の頭上を飛び越えて、彼の背後に刺さっている大剣を引き抜いて回収した。

 回収し終えたときには既に体を反転させて、元に戻った神機を構えた仁慈の姿が。

 

 

 「…………」

 

 

 「…………」

 

 

 人智を超えたスピード下で行われた攻防にアスフィはもう何がなんだか分からなくなってきていた。

 だが、彼女を責めることは出来ない。

 片や、オラリオ最強にして最も神に近い男。片や、神と恐れられるものたちと殆ど同じながらもその神々を刈り倒す、神に仇名す男。

 ぶっちゃけ、どちらも人にカテゴライズしていいのか不明の化け物である。理解できないのも当然といえよう。

 

 

 「………オッタルと言ったな」

 

 

 「…………」

 

 

 「……今回はここまでにしよう。武器のほうも限界だろう」

 

 

 そう指摘する仁慈。オッタルは自身の武器の状況を見て驚愕した。

 そこには所々刃こぼれをしている自身の武器の姿があったからである。ここ最近ダンジョンに潜っていないからといって武器の手入れは怠っていない。であるならば、この傷は今の戦いの中でつけられたものなのだろう。

 

 

 

 「………その申し出を受けよう。今回は、お前の技量を測りそこなった私の負けだ」

 

 

 仁慈の力量を見誤ったとして自らの負けを認めたオッタルは二本の大剣を収める。それを見た仁慈も神機をそっと下ろした。

 そのまま踵を翻し、ダンジョンの出口へと歩いていくオッタルだったが、ふと立ち止まると視線だけをこちらに向けて一言。

 

 

 「次は、お互いに全力で剣を交えよう」

 

 

 それだけ残して、オッタルは去っていった。

 仁慈はその言葉を聞いて少しだけ笑うと、アスフィを呼び出す。 

 

 

 

 そこから先、帰るまでのダンジョン探索はアスフィの説教をBGMとして決行された。仁慈は割とマジで反省したという。

 

 

 

 

 

 

              ――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 「―――――それでオッタル。彼はどうだったかしら?」

 

 

 バベルの最上階。いわずと知れたフレイヤファミリアのホームの一室に主神たるフレイヤの問いかけが反響する。

 問われたのは、今日ダンジョンで仁慈と戦いを繰り広げたオッタルである。

 

 

 「………よい戦士でした。力と技量、双方共に高いレベルを誇っており、まさに戦うために生まれてきたといわれても納得できるほどの逸材です。今回の戦いも、全力ではなさそうでした」

 

 

 「あら、並大抵のレベル5やレベル6もなぎ倒せる貴方がそこまで言うの?」

 

 

 「……正直、あの者が本気で戦うことがあれば私やロキファミリアの勇者(ブレイバー)達以外は相手にならないかと」

 

 

 「そう……そうなの………フフフ……」

 

 

 オッタルの報告を聞いたフレイヤは、持っているグラスを手でもてあそびながら考える。

 

 

 「(強さとしては十分合格ライン。魂の輝きも鈍ることはない。むしろ、オッタルとの戦いを経てさらに輝きを増している……あぁ……もう、我慢できない……)」

 

 

 もてあそんでいたグラスを一気に傾け、中に注がれていたワインを飲み干すと、フレイヤはスッと立ち上がる。

 

 

 「オッタル。彼を私のものにするために、近々会いにいくわ」

 

 

 「かしこまりました。他のものにも伝えておきます」

 

 

 「えぇ、お願いね」

 

 

 飲み終えたグラスとワインを持って部屋を出て行くオッタルを見送ったフレイヤは水晶に映るベルと仁慈を見る。

 

 

 「(ベルのほうは後もう少し………あぁ、本当に楽しみだわ……)」

 

 

 水晶に映る彼らを撫でながらフレイヤは恍惚とした笑みを浮かべていた。

 

 

 

 

 

 




オッタル「(あの者が来れば毎日戦いたい放題なのでは?)」
仁慈「(なんだろう。今どこかでジュリウスみたいなことを考えた大馬鹿野朗がいた気がする)」
ダンジョン「(何あの2人超怖い、痛い)」

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