難しいですねぇ、アレ。三年位ぶりにゲームセンターに入ったこの身としては、まだまだ
慣れるまでに時間がかかりそうです
後今回は少し短いですね
「……ぐぬぬぅ……何故です、何故あのバケモノどもを我が国に受け入れようとするのですか!この国は!この国民は!?」
「その通りです鳩鷹監事。あの様な生態が不明確にも程が有る、しかも旧日本軍の軍艦の化身等と言う恐ろしくおぞましい存在をわが国の統制下に置くだけでも空恐ろしいと言うのに、あまつさえ
「鯉江代表、現在インターネットや広告にて我等と危機感を同じくする有志が多数集まってきています。ここは今日本が危機に有る事を政府、そして世界に知らしめるべきだと思われます!戦前の様な軍国主義国家に日本を逆行させてはなりません!!」
首都圏の某所に有る雑居ビルの一室にて、大声で
「しかし瑞野委員長。現在我らの呼び掛けに答えて参加を表明して頂ける政治家や著名人は殆どおりませんが…」
「心配はいりません。インターネットにて平和への戦いに賛同する有志は既に多数の反響が有ります。我らの強固な意志を世間に見せていけば、おのずと私達の高貴なる戦いに心動かされるはずです」
欠片も答えになっていないが、彼女の答えに構成員は特に何も反論をする事は無い。既にこの団体の構成員や後援者の多くは絶対的な『戦時下』と言う現実によってこの団体に所属するだけの余裕が無くなったか、『戦時下』と言う現実を突き付けられた結果思想を拗らせて明後日の方向に全力大暴走し続ける彼等幹部の極まった思想に着いて行けずに離脱しており、現在ではこの幹部たちの思想を本気で心酔している同類か、若しくは何らかの事情でこの泥船から逃げ出せなくなっている人間しかいなかった。本当は都心に居を構えていたと言うのに、今では都心から離れた雑居ビルに移転せざる負えなくなっている事が、彼等の過激な平和思考団体の凋落具合を明確に示している。
「その通りだ、瑞野委員長。現在の日本には悪しき思想が蔓延している。70年前の侵略行為を肯定する様な無知な者達には、私達が教え導かなければならない!!」
「鯉江代表……!」
「確かに今の私たちは、今の独裁政権とそれに連なる扇動者によって東京都心から追い出されましたが、この非人道的な行為に怒ってくれる正義の人はたくさんいます!ならば、私たちはその彼らの声なき声に答え、独裁国家へと突き進む今の日本を変えて見せようでは有りませんか!!」
「…………此処まで逝かれた連中が未だに日本に居るなんて、俺知りたくなかったよ。何だよ
「諦めろ
「うへぇ…………俺、笑顔の仮面張り付けるの苦手なんだけどなぁ……」
「十分合格ラインを越えているだろうが。その顔立ちで今の女に尻引かれるまで同級生を良い様に粉かけておいて」
「お、おおおぉぉお女って何言ってるんだよ父さん俺と彩夏はそう言った関係じゃ、つーか俺は粉なんか掛けてねぇ!!?」
「以前家にお前の同級生が何人も来ていたぞ」
「……なん…………だと……?!」
それぞれ双眼鏡と鳥類図鑑を持ち、イヤホンをしてバードウォッチングをしている様相でカモフラージュしながら、雑居ビルでの頭が悪くなる咆哮を聞いていた少年と壮年の男性二人組。現在風馬家の当主である壮年の男性、風馬虎一とその息子である風馬才牙は、日曜日を丸一日潰して神奈川県から一度東京都まで出て、東京の各地に設置された各種装置の生存状況を確認しに来ていた。因みに今盗聴しているこの雑居ビルで装置の確認作業は終了である。
「……しかし、ここまで精密に一言一句聞こえると言うのも問題だな。才牙の言う通り、あの逝かれた連中の声を聴き続けていたら精神が参りかねん」
「と言っても
「何も嗅がせてなどおらん。昔からの約束はそうそう切れんだけだ。……ふっ……才牙もそれなりに警戒心が抱けるようになったな。初めは無警戒過ぎて容易に騙され続けた末に訓練相手の満理ちゃんに何度も川や穴、果ては田んぼへ落とされていたと言うのに」
「父さんその昔も昔な事はもう良いだろ!?今はもう大丈夫だし!!」
「ほう……なら、今度里帰りした時に満理ちゃんともう一度勝てるまでやってみるか?」
「すみません父さんお慈悲を100%勝てないのでそれだけはマジでご勘弁ください……」
思春期真っただ中で有る筈の年頃の少年が自身の父親にからかわれ、それに対して真っ赤になってスグサマ青になりつつ言葉を返す。『核家族化』だの『親子関係の希薄化』等が叫ばれる事の多い現代ではめったに見られなくなった仲良い親子のホッコリする光景だ。話している内容が普通の親子間の会話で混ざる事の無い単語が複数混ざって居るが。
「でも公安や自衛軍が諸外国からの浸透に対処に追われているからと言って、昔は兎も角
「満理ちゃんが『適正有り』と言う事で横須賀で提督をやる事になった以上、こうなる事は大体予想ついていたであろうが」
「そらそうだけどさー。まさか一回二回程度ならまだしも、二桁突入する位に何度も
「……まあ、その点に関しては否定は出来んな」
「だよね。なんだかんだ言われる事が多いけど、日本の警察はトップクラスに優秀だからねー、見つからない様に、発覚しない様に
世間話をするかのように違和感満載の言葉を交わす両名。場合によっては警察官に職務質問からの最悪任意同行を求められかねないが、生憎この二人が居るのは完全に
「……さて、野暮用も終えた事であるし、帰るとするか」
「了解。あ、帰りに彩夏にお土産買いに行きたいんだけど」
「……やはり尻に敷かれているではないか」
「し、しししし敷かれていなどないわ何言ってるんだい父さん!?」
そうして神奈川の自宅に帰る風馬家当主と次代当主。後に里帰りにて大分久し振りに深山満理奈と逢うのだが、それはまた大分後の話である。
「フフフフフフ…………
「日向さーん?!お願いですから戻ってきてくださーい!?なんで、なんで日向さんまでこうなるんですかー!!?」
「……伊勢」
「御免提督、アレはもう無理だよ」
「伊勢、お願いだから遠くを見ながらそんな事言わないで、提督からのお願いだから」
神奈川県に住む深山提督の親戚が色々やっていた頃、その深山提督は先日『桜風』が体育座りしていた埠頭で、今度は航空戦艦娘の日向が先日の『桜風』と同じく体育座りで改装前扶桑姉妹並みの不幸オーラを発しているのを目撃し、完全に諦めきった眼の伊勢をどうにか日向の再生事業に参加させようとお願いしていた。こうなった原因は、まあ、日向が呟いたとおりに『多数のヘリを落した上に今度は瑞雲の飛ばし方も忘れかけた』せいである。
「そうは言うがな『桜風』。私は日向だ。瑞雲を姉より劣る程度に愛している日向だ。その日向が瑞雲を海没させるなど有ってはならない事態なのだ。そうか、もしや瑞雲よりも姉の伊勢を大事にしているから瑞雲神が御怒りになられたのか?ならば日向は瑞雲に、瑞雲は日向に……」
「日向さんお願いだから元に戻ってください!!いきなり『
「……日向にとって、私は瑞雲以下なんだ」
「伊勢、日向は今錯乱しているだけだから。きっと瑞雲より伊勢のほうが大事に思っているから……」
涙目の『桜風』がハイライト消失済みの両目で口から魂を漏れ出させている様な表情の日向をガックンガックン揺さぶり、遠い目で黄昏る伊勢を現世に引き戻す深山提督。先日の『桜風』と黒潮の一件とはまた違った、色々とカオスな光景が此処に有った。
朝潮型駆逐艦の霞が持つ『桜風』に対する恐怖感、不信感を聞き届けた深山提督は、荒療治として『桜風』と超兵器『ドレッドノート』戦に帯同させることを決めたのだが、『桜風』はこの事に対して難色を示した。否、正確に言えば拒絶した。『桜風』曰く『戦場に非戦闘員を載せる訳には行かないし、それに超兵器と戦闘する時は単独戦闘が最良の手段である為、近場に友軍艦が存在する事は不測の事態を発生させかねない』と言下に深山提督の提案を完全否定した。
『桜風』の言っている事は至極もっともである。何せ以前摩耶と鈴谷を艦橋内に入れた状態で戦闘した事は有るが、アレは演習内での話である。実弾が飛び交う戦場に非戦闘員を連れて行って100%無傷でいられる自信や度胸……と言うよりも驕りは流石の『桜風』にも無い。特に全てが異次元の性能を誇る『超兵器』相手の場合は、不確定要素は一つたりとて例外無く排除するべきであった。
当然ながらこの『桜風』の反応を予期していた深山提督は、次善の策として『ヘリコプターに搭乗して対ヴィルベルヴィント戦と同じく戦闘区域外での観戦』を提案し、『桜風』は『戦闘時は即座に離脱する事』を絶対条件として渋りながらも承諾した。本当はまるで島津兵の如く自身の身を一切顧みずに敵艦に突貫する『桜風』を、状況によっては霞に引き戻させるようにしたかったのだが、『桜風』の意志の強固さ……有体に言えばどうしようもない頑固さには白旗を上げるしか無かった。
「でもさ提督、実際どうするのさ。ずっとヘリコプターの操縦に修練してきた伊勢でも一斉に動かすとあんな感じになるし、私だと安全に飛ばせるのは集中して5機か6機だよ?実戦だと直線航行しかできない低速戦艦なんで、護衛が居ても的にしかならないと思うんだけど」
「その分正規空母の艦載機で
「……何時も扱う瑞雲とは全く勝手が違うと言っても、喪失し過ぎだよね……。日向に代わって謝るわ、提督」
「伊勢は気にしないの。それに『桜風』の開発した艦載機も艦娘装備の範疇に入っているお陰で、調達する為の資源もそう多くは無かったしね」
「……一機に付きボーキサイト100もかかるんだけどね」
余談だが、今日に至るまでに日向が着艦、着陸失敗や失速、操縦不能等で墜落、水没させたヘリコプターの数は、一番初めに開発成功した為に搭載して訓練に励んでいた
「そうか、そう言う事なのか。瑞雲が日向となれば、日向は瑞雲となれる。良しならば往かねばならない」
「え、ひゅ、日向さん!?何処に行こうとしているんですか!?そっちは海ですよ工廠や宿舎は反対ですよ!?」
「止めてくれるな『桜風』。今日向は瑞雲の神へ謝罪し、そして瑞雲となる為に海に沈む瑞雲と一体にならねばならないのだ」
「日向さーーん!?お願いですから正気に戻ってーー?!」
「……提督」
「……何、伊勢?」
「如何にか出来ない?アレ」
「……伊勢の泣き顔に免じて如何にかしてやりたいけど、如何やれば良いのか分からないわ…………」
知ってた。そう煤けた笑顔で呟く伊勢の眼球には、堤防の先端から自身の操作ミスで墜落させた瑞雲の元に泳いでいこうとする自身の妹と、それを泣きながら力づくで抑える今回の騒動の大本の元凶である小さい少女が映し出されていた。元凶と言っても『そう言えばヘリコプターの習熟度具合ってどのくらいですか』と言う事を不用意に言っただけなのでは有るが。
「……ふむぅ。流石にそう何度もは釣り上げられはせぬか」
横須賀で色々と真面目にカオスな情景が作り出されている中、そんな頭が痛くなりそうなほどに面白い光景が有る事など想像だに出来ない『ドレッドノート』は、先日マグロを一本釣りして味を占めたのか数日の間はのんびりと釣りをしていた。とは言え、流石にそう幾度も大物が釣り上げられるはずも無くここしばらくは坊主の状態が続いていた。
「……果てさて。釣りも暫く休まざる負えんが……今度は一体何をするべきかのう……」
半日近く粘るも戦果は鰯のような小物がいくらかだったために切り上げた『ドレッドノート』。釣りの為の用具を手早く片付けながらも、彼女は未だ『決闘』までに相当の時間が有るこの余暇時間を如何に使うかに思考を割いていた。とても平和である。
「…………うむ……そう言えばこの世界ではあの
甲板から艦内を戻り、釣り道具を片付ける為に歩く彼女は唐突に、この世界における常識を知ったあの頃を思い出していた。カリブ海でいきなり復活した時には、乗員を捜索しても当然ながら誰一人としておらず、自身に搭載されている、今の今まで黙り込んでしまっていたパーソナルコンピューターを使用して、この世界の全容を確かめていた。その時に『深海棲艦』と『艦娘』とか言う今まで聞いた事も無い『兵器』の存在と、故国ウィルキアは存在しない事を知って人知れずに頭を抱えていたりしたが。
「…………うぅむ……良し、我は決めた。一度ニューギニアに行き現地での物資回収を行うぞ。我の望むものが存在すると良いのじゃが……まあ、無ければ無いで如何にかして見せようぞ」
日本本土では様々な言葉や思惑が飛び交っている中、『ドレッドノート』はそんな事を知る事も無いまま自由に行動を開始する。『超兵器』時代とは違う世界で初めて得られた自由な選択。例え『桜風』との決闘で如何なる結末を辿ろうとも、決闘が始まるまで全力で悔い無き
次回は息抜きの為に『桜風』に私服をいい加減に買わせる予定。下手したらデモ行進する平和団体と
直撃する可能性も無いかもしれませんがそれはまた書いている途中の流れ次第です
追記:冒頭の野党政治家と平和団体の部分を一部改修。強い眠気に投稿する気持ちだけ先んじて過去の言葉を捻じ込みをやるのはアカンですね、はい