艦娘の咆哮 ~戦場に咲き誇る桜の風~   作:陣龍

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大体白紙状態から4時間で仕上げた一品です。誤字脱字は多分ないとは思いますが今回初登場の
艦娘の口調が変かもしれません。その時は編集を入れる予定です。多分大丈夫なハズですけど…


第二話 ファーストコンタクト

「・・・平和だね」

 

『なにも接触してきませんからねー』

 

「・・・他の妖精さんたちは何してる?」

 

『日向ぼっこしていたり組体操していたり釣りしていたりですねー。あ、でも何か会った時はすぐさま持ち場に戻れますのでご安心をば』

 

「・・・あ、茶柱たった」

 

『おー、コレは何か良い事が起きそうですな!』

 

 

駆逐艦『桜風』が同盟国である日本へ向かう事を決定し、妖精さんがワイワイ騒ぎながらそれぞれの職場に戻り、航行を開始してから約一時間と三十分。『桜風』が最悪の事態を想定し、有り得ないと思いつつも懸念していた『帝国軍残党による襲撃』も発生せず、今艦艇のそこかしこでは暇を持て余した妖精さんが思い思いに寛いでいた。初め『桜風』は暢気にだらけている妖精さんに対して眉を顰めたが、副長から『何も起こっていないのに気を張っていたら倒れますよ』との説得にアッサリと折れ、結局副長と一緒に艦橋でお茶をしばいていた。

 

 

「・・・副長たちはさ」

 

『なんですか?』

 

「不安じゃないの?艦長がシュルツ大佐から『私』に代わったばかりか、兵装も変な風に改装されていたりでさ」

 

『有りませんよ不安なんて。艦長が艦長で無ければ私たちは一体誰を艦長とすればいいのです?大丈夫です、艦長なら』

 

「そっか。・・・ありがとう、副長」

 

『どういたしまして。まあ行き成り身一つ艦一つで放り出されれば心配になるのも分かりますが、あんまり気に病むとお肌や髪に毒ですよ?』

 

 

別に肌や髪が荒れてもその位良いじゃない。そんな思いを抱きながらも『桜風』はお茶を啜る。

 

・・・うん・・・初めて入れたお茶だけど、まあ美味しい、かな。

 

今までの駆逐艦だった時代には体験した事が無い、と言うより有る筈が無い静かで平和な時間。そんな平和な時間は、レーダーに唐突に反応が現れた事で終わりを告げた。

 

 

「・・・副長」

 

『分かってます。総員!直ちに持ち場に戻れ!』

 

『おー!』『アイアイサー!』『直ちに持ち場に戻りまーす!』『すみませんあと少しで魚が釣り上げらr』『はーい妖精さんは仕事場にしまっちゃおうねー』

 

 

言葉や雰囲気は相変わらずだが、その動きは正しく熟練兵の動きを彷彿とさせる鋭さを見せながら彼方此方に向かう妖精さんの姿を見て、正直な所自由奔放な妖精さんの行動をみて少々大丈夫か不安に思っていた節の有る『桜風』は、その事に対して心中で反省と謝罪を行いつつも、レーダーに確認された情報を艦内に残っていたデータベースと照合させていた。そして適合するデータを呼び出して・・・副長共々、『桜風』は思いっきり頭を傾げていた。

 

 

「ねえ副長。・・・普通、私が沈んだ後にジェット戦闘機まで開発していた日本や世界各国が等しく技術後退するって事、有り得ると思う?」

 

『二度目の超兵器大戦か何かが発生して人類文明が崩壊したのなら有り得なくもないかもしれませんが・・・』

 

「そんな雰囲気無いよね・・・じゃあなんで『彩雲』が飛んでいるんだろ・・・?」

 

 

『桜風』と副長がいきなりそんな話をしだす事になった存在。それはあの大戦中に日本が開発するも、急速に航空機や対空火器が進化して行く時代にあっさりと取り残され、結局余り有効活用される事無く終わったレシプロ軍用偵察機である『彩雲』だった。駆逐艦『桜風』が自沈される前は、日本もウィルキアも普通に超音速戦闘機を使用していた。今更『彩雲』の様な骨董品を態々使用する様な理由は無かった。まあ『骨董品』と言っても、『彩雲』が開発されたのは大戦中ど真ん中で、登場から終戦するまでの期間自体は一年も無かったのであるが。

 

 

『艦長ー!彩雲から通信が入っていますがどうしますかー!?』

 

「・・・よし、取り敢えず繋げて。今は少しでも情報が欲しいから」

 

『分っかりましたー!では通信に繋げまーす!』

 

え、電文じゃなかったの。そんな『桜風』の疑問を余所に、通信任務に就く妖精さんは軽妙に機器を操って5秒と経たぬ間に準備を終えて『では音声入りまーす!』と『桜風』に報告した。本当にこの駆逐艦の妖精さんは有能である。

 

 

《・・・あ、繋がった?えっと、聞こえます?》

 

「・・・はい、感度良好です。貴方の声、しっかりと良く聞こえます」

 

《・・・はい、こちらもしっかり聞こえます。私は日本海軍に所属している航空母艦『瑞鳳』です。貴方のお名前、聞かせてくれます?》

 

 

・・・まあ、こんな状態じゃ、分かる訳無いわよね・・・

 

通信相手の女性の声に自重の笑みを浮かべる『桜風』。幾度と無く帝国軍の大艦隊や超兵器を撃沈し続けた『あの時』には、戦意高揚の為に良くアメリカやイギリスのマスコミによって報道されていたが、その時の『桜風』の艤装はこんな物では無かった。分からなくて当然であり、仮に実際に名乗ったところで信用されるとは思えなかった。無論、名前を聞かれた以上、答えるしかないが。

 

 

「こちらは、駆逐艦『桜風』。ウィルキア王国近衛海軍に所属していて、終戦後に日本海溝に自沈処分にされた後に、何故かこのような形に発現してしまったみたいでして。現在同盟国である日本に救援を求める為に・・・」

 

《・・・え、あの、ごめん!ちょっと待って!!?》

 

 

・・・まあ『沈んだ筈の駆逐艦が蘇った』なんて普通信じないよねぇ・・・

 

とは言え『桜風』にとって見れば、この突拍子もない現象が事実なのだからどうしようもない。さて、どうやって説明したものか。そう考えていた『桜風』にとって、航空母艦『瑞鳳』の通信手が放った一言は、全ての思考を停止させた。

 

 

《ウィルキア王国近衛海軍って、一体何の事ですか?日本の同盟国に『ウィルキア王国』なんていう国は有りませんよ?》

 

 

 

 

 

・・・え?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・取り敢えず、『桜風』さんには横須賀に向かう様にお願いしました。・・・これで良かったですよね、青葉さん?」

 

「はい、有難う御座います瑞鳳さん!」

 

「・・・本当は、私たちが迎えに行く事が出来れば良かったのにね・・・」

 

「それは仕方が無いですよ。青葉達はかなりの時間本土近海の深海棲艦を調査し続けて来ましたから、もう燃料があんまり残っていませんし」

 

 

駆逐艦『桜風』とは違って木製の材質が目立つ重巡洋艦や木製甲板の軽空母、そして『桜風』よりもかなり小さな駆逐艦で編成された小規模艦隊が横須賀へと航行していた。艦載機と通信オンリーとは言え、駆逐艦『桜風』と初めに接触した艦娘たちである。彼女達は連度習熟に加えて、最近妙に大人しくなってきた本土近海の深棲海艦の調査をしていた。『桜風』を発見したのは、本当にただの偶然であった。

 

 

「しかし『ウィルキア王国』に『桜風』ですか・・・青葉も色々と取材してきた自負が有りますけど、この二つは今まで聞いた事が有りませんねー」

 

「鳳翔さんや陽炎ちゃんは何か知らない?」

 

「いえ・・・私も聞いた事は有りませんね・・・」

 

「私も無いわ。少なくとも私の妹に『桜風』何て言うのは居なかったはず」

 

 

世界最初の航空母艦にして第二次世界大戦を最後まで生き残り、復員船で多数に日本人を故郷へ送り届けた『鳳翔』も、帝国海軍駆逐艦の集大成である陽炎型駆逐艦のネームシップである『陽炎』にも一応瑞鳳は心当たりが無いか聞いてみるも、二人とも首を横に振るばかりであった。

 

 

 

「うーん・・・取り敢えず提督にこの事、報告するね」

 

「お願いします、瑞鳳さん」

 

 

・・・駆逐艦『桜風』。名前としては帝国海軍の駆逐艦と思われるも、終戦まで生き残った青葉も鳳翔さんも知らず、しかも本人は所属を『ウィルキア王国近衛海軍』と断言した。・・・ふふ、これは特ダネの予感です!『桜風』さんには横須賀に付いた後は事情聴取と言う事で全部話して貰いましょう!そして【週刊:艦隊青葉新聞】に個人情報や機密情報に配慮しつつも出せる情報はババーンと張り出すんです!ふふふ、青葉の記者魂が煮えたぎって来ました・・・!

 

 

新たな特ダネの予感に握り拳を作ってテンションが大変な事になりつつある青葉を見て、彼女の艦艇に乗っている妖精さんは『また青葉さんの発作が起こっちゃったな』『ああなったら気が済むまで取材相手を解放しないだろうなぁ』『その癖相手が本気で嫌がったらアッサリ引き下がるんだから性質が悪言ったらありゃしないね』『取り敢えず被害者になるであろう『桜風』さんとやらに合掌』『なーむー』などと酷い言い様だが、この艦では割と日常茶飯事の光景であった。

 

 

 

・・・彼女達は知らなかった。本土近海の深海棲艦が突如消失したのは、AL/MI作戦で人類側の主要戦力が遠隔地に存在している隙に『戦艦棲姫』や『戦艦ル級flagship』、新型艦載機を搭載した『空母ヲ級flagship』が本土に来襲してくる前触れであったことを。

 

・・・『桜風』は知らなかった。空母『瑞鳳』からの指示に従って横須賀に向けて航行した結果、深海棲艦でもトップクラスの精鋭艦隊と衝突するコースに乗っていた事を。

 

・・・深海棲艦の侵攻部隊は知らなかった。神の悪戯か、それとも悪魔の微笑みか。侵攻中に遭遇し、景気付けにとばかりに攻撃した一隻の駆逐艦が、別世界ではありとあらゆる地獄絵図を切り抜け、突破し、勝利し続けた『人類史上最高の戦闘艦艇』で有った事を。

 

 

 

いかなる絶望をも、たった一隻で覆し続けた駆逐艦『桜風』と、この世界の海洋の覇者と言える深海棲艦侵攻主力部隊が日本本土沖合で激突するのは、そう遠い未来の話では無かった。




さて、次回は『艦娘レベル1『桜風』VS深棲海艦侵攻主力部隊』による決戦になると思われます。
今更だがホントにあんな装備で大丈夫なのだろうか桜風。まあ前話には記載していませんが
照明弾も探照灯も搭載してますし、ナイトビジョンと合わせれば何とかなるか、『ノーダメージ攻略』

追伸:深海棲艦が間違っていたので修正

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